キャプテン G.W
彼を見たもの誰もが嫌な顔をしない。
その自慢の筋肉を見せつけるように堂々とした立ち姿。
金色の戦闘スーツと仮面を被り、真っ赤なマントを翻す彼を皆こう呼ぶ。
『 キャプテン G.W 』と
◇
彼の仕事はとてもハードだ。
忙しそうに街のパトロール。金色のスーツが目に痛い。
彼の派手な格好でもって小さな子供には大人気。一度空から降り立つと周りには子供たちが集まる。
彼はそれを笑顔で返す。ヒーローの鏡と言うべき存在。
同じく金色に輝く仮面も心なしか喜びで溢れているように見える。
しかし彼の本当の仕事は悪人退治である。
街には悪が満ち足りていた。それを根絶するべく立ち上がった心優しき青年。
正体を隠し金色のスーツに身を包んだ彼に立ちふさがる悪は全て打倒してきた。
今日も彼は悪を許さんと戦うだろう。
ほら今こうして説明している最中だって…
「GWキィィック!!!」
「へびぼぅ!」
彼の必殺技『GWキック』によって一つの悪が倒された。
派手に爆発しながらもその実爆発の被害は上がらぬ不思議空間。
住宅街で行われる迫力満点の戦い。
これに盛り上がらぬ男子などいないだろう。
歓声はどこからともなく巻き起こり、集まる人だかりにもやはり笑顔を絶やさぬ我らがヒーロー。
かっこよすぎるぞ!キャプテンG.W!
そろそろ疲れてきたぞ!キャプテンG.W!
「ハハハッまあそういわずに付き合ってくれたまえ。これも全てはみんなの為さッ」
いつの間にか私の前にいる彼に言葉が出ない。
気が付かれた、気が付かれた、逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ。
し か し ま わ り こ ま れ て し ま っ た !
「悪をくじき、人々の安泰を願う。とっても素敵なことだろう?君もそんな『キャプテンG.W』になってみないかい?」
いっいや、いやだー!
私は今年のG.Wこそ満喫してやるんだッ!ヒーローごっこなぞ支度もないねッ!
「…仕方ないね。僕もこんなことはしたくなかったんだけど。。。」
肩を抱かれる私、このままどこぞへ連れていかれると言うのだろうか。
この時私は助けを呼ぼうとした。
が、今更ながらあれほど囲んでいたはずの人の群れが今は消え、無人となった住宅街に風が吹き荒れる。
なん、でだよ。今年こそ私は旅行したりショッピングを楽しんだり、徹夜に現を抜かせるなどと思っていた、のに。。。
「さぁ行こうか!我らが正義の名のもとに沢山の人を助けるんだよ!」
人の二倍はあろうかと言う巨体に私のような平均以下の男子など太刀打ちできるわけもなく、私は正義の光に包まれた。
それからの記憶は存在していない。
ただ覚えているのは目にくっきりと焼きつけるような金色、であった。
※ 社畜を意図していることは読んでの通りである。