第八十三話「聖戦勃発?」
「……マジすか?」
「私とガイが嘘を付くと思うかね?」
「すみません、理解したくないだけです」
「その気持ちはわからないでもない」
「ケント君、行動は早い方が良いよっ」
「……ですよね」
長い間……ではなかったな。
せっかく家を増築したのに……これはのほほんフラグではなかったって事か……。
外に……皆集めるか。
「すぅ…………全員集合ぉっ!!!」
…………。
「「「「………………」」」」
俺の大声なんて珍しいからか……皆何かを察してるな。
「えーっと…………」
「代わろうかっ?」
「……何て言えば良いんでしょう?」
「残すべき人と離れた方がいい人かなっ」
簡単に言ってくれるなおい。
本来なら俺も離れた方が良いんだろうが……。
守護者様が残る以上、俺も居なきゃまずいだろうしなぁ……。
となると……俺より序列の低い人はNGってこった。
うむ、すぐに終わらせてやんぜ!
「…………ラーナ、ギン、ビアンカ、キャスカ、トゥース、ハティー、ガラード、スン、セレナさん」
「「「…………」」」
「すぐに家を出る準備をしてくれ」
「おいレウス、説明くらいあったっていいんじゃねぇかい?」
「トゥース、レウスがどういう思いで言ってるのか察しろ」
「しかしよぉセレナ……」
「レウスのこの様子だ。
荷造りしてる時間はない……行くぞトゥース」
「きゅいぃ……」
「レウスがそう言うなら……私はそうするぞ!」
「私もよっ!」
「……我慢するのだ!」
「……レウス、ガラードはここが好きだ。
ご飯も好きだ。
だが、ご飯と同じくらいレウスが好きだ」
「……あぁ」
「またご飯を作ってくれ」
「……腹空かせて待ってろ」
「……この中だと私だけ仲間外れって感じね?」
「朱雀さん……」
「皆の事は任せて頂戴」
「スン達も負けてないですよ」
「あははん、ちゃんとチャッピーに会わせなさいよ?」
「アイツがどう思うかですよ」
「あなたにもまた会いたいわ?」
「それは……もちろんです」
『レウス……?』
『ギン、スンとハティーに付いて行きなさい』
『う、うん……』
背中で語るとはこの事だな……。
皆の背中に行きたくないと書いてある。
………………さて。
「アタシ、リボーン、舞虎、トルソ……意外に魔物が多いわね〜♪」
「レウス君、いいかね?」
「お願いします」
「オーディスを含む新ギルド「神者ギルド」が、この家に対して宣戦布告をしてきた。
隣接する中央国には手を出さないそうだが、それも安心できぬ。
ここより東の地の離れに新たな家を仮設し、そこを防衛線とする。
魔界を代表とする諸君らの今後は各々にお任せする。
……間も無くこの地は聖戦となるっ!」
え、これ聖戦なのか?
「奴ら魔人門を越えられるんですか?」
「奴らの中に魔物使いがいるんだっ」
「空からですか……」
「魔竜を従えてたんだよっ」
「あー、だからオーディスに逃げられたんですね」
「そーいう事っ」
こんな状態だからな、魔物使いが現れてもおかしくない。
「僕がスンちゃんにだけ教えてくるよっ」
「お願いします」
「一番皆にうまく伝えられるだろうからねっ」
「あいつらは……ゲブラーナのビアンカの家に行かせてください」
「了解しましたっ」
さすがにデュークは落ち着いてるな……。
「レウス様……」
「ガイさん?」
「神者ギルドは魔王より……前線であるジャコールより、ここを最大の脅威と認めたのです。
……現在勇者ギルドでは、聖戦への参加者を募っております。
無論、ジャコールを離れる訳にはいかない勇者も多数おりますので、参加者は限りなく少ないでしょう」
「そうですか……」
「奴らまさか人界を選ぶとはな……」
そりゃそっちのが効率的だしな。
「オディアータは大丈夫なんですか?」
「ダイムのやつはこの件を私に一任した」
「適任だと思います」
「補佐はレウス君だぞ?」
「適してないですねぇ」
それって一任って言わなくなくない?
「国が滅ぶかもしれない事態でダイムはふざけないさ」
「何を期待してるんでしょうかね……」
「ふっ、それは私にもわからんさ」
「学校はどうなるんです?」
「しばらくは閉める」
「しばらくで済みますかね……」
「手紙の下部に敵の情報が載っているから見てみなさい」
「……えーっと……オーディス、ロキ、ゴライアス、ゴロウジ、ダタタベコム、ダイアナ、ナビット、トイジス、スザンヌ、ベイダー……?」
「神者ギルドはそれで全員だ」
「マジすか……」
かなり少ないな…………あ、オーベロンの名前に斜線入ってるわ。
いや、書き直せよ……。
あれ、ダタタベコムはオーディス討伐に参加してたんじゃ?
しかしこの人数なら……。
「なんとかなりそうとは思わない様に。
奴らは死を覚悟して向かってくるぞ」
「……何でそこまで?」
「革命者の考えはわからんよ」
「…………」
「だがオーディスとロキの事だからな、自分達が一番だというプライドかもしれん」
「簡単に言いますね……」
「聖戦……互いに譲れないものがある。
プライドとは人にとって切り離せないものでもある。
レウス君には無縁かもしれないがな?」
「……何してでも生きてやりますよ」
「それが悪い事でもかね?」
「…………それは……わからないですね」
「それがレウス君のプライドかもしれん」
「……納得です」
「因みに表向きには、世界を平和に導ける力を独占しようとする集団への天誅……だそうだ」
あぁ、だから聖戦か……。
軽い聖戦もあったもんだなおい。
「自己再生の剣技でここまで盛られるとは……」
「仕方あるまい」
「ところでダタタベコムさんの件ですが……」
「オーディス討伐後にいなくなったらしいが……既に仲間だった様だ……。
彼はオーディスを崇拝していたからな」
「自己再生の剣技……ダタタベコムさんに教えてないんですか?」
「マイムマイム君が、教える者をデューク君に委任したそうだ。
教えたのはアクセル君のみで、他はレウス君に任せると言っていたらしい」
「流石ですね……」
普通新キャラが出てきて、ある程度の時間を置いてから次のイベントだろうがよ……。
なんでこんな慌ただしいんだよ……。
いや、「普通」ってのはこの世界じゃ通じないのか。
くそっ、忌々しい……。
「レウス〜、アタシ達はどうしようかしら〜?」
「ガラテアさんが言ってたろ、各々に任せるって……」
「アタシ達は総意でレウスに従うわよ~♪」
「オーディスとロキを別の人が相手するなら問題ありませんわ」
「私とレウス君の仲じゃないですかぁ」
「カタカタカタタッ」
ぬぅ、ちょっとうるっとしたじゃねぇか……。
……ィイイン
「チャッピー着地ぃぃいいいいいい!!!」
…………。
「レウス、ねぇ待った、寂しかった!?」
「……1ヶ月って言わなかったか?」
「1ヶ月位に感じた1週間!」
皆で行った修学旅行! みたいな感じで言われたわ。
「とりあえずおかえり」
「え、ちょっとそっけなくない!?」
「タイミングが悪かっただけだ」
「チャッピー、待ってくださいッス!」
「おぉブルスもか!」
「あれ、ブルスの時の方がなんか嬉しそうじゃない!?
ねぇ、何でっ!?」
構ってちゃんに拍車がかかってる気がする……。
「チャッピー、こんなに速かったッスか!?
自分が追いつけないなんて驚きッス!」
「チャッピーも成長してるって事じゃな~い?」
「ねぇレウス、聞いてるの!?」
「カカカカカカッ」
「皆さんやかましいですわ」
「お元気そうで何よりですぅ」
「ハハハハ、とんでもない光景だなガイ」
「えぇ、勇者時代の私がこの場所に立ったのなら死を覚悟したでしょう」
「某も同じでござる」
「うるさくてすみません」
「ハハハ、構わぬよ」
「それでは早速仮設の家というのを作るでござる。
ガラテア殿、ガイ殿、数十分で終わる故その間の護衛をお願いしたいでござる」
「うむ」
「承知しました」
「お願いします」
2ヶ月後……。
まぁ皆ビックリするわな?
そりゃ、いきなり2ヶ月とはビックリだわな?
だって向こう側からの攻撃がほぼないんだぜ?
こっちはビクビクだっつーの。
まぁ、こっちの相手も大変なんだけどな……。
「だーかーらー、毎日会いたいと思うのはわかりますけど、毎日会いに行ったら嫌われる可能性が高いんです!」
「だからそれは何故なんだ!」
「しつこいからです!」
「ぬ、ぬうぅっ……」
「ビーナスさんにはアクセルさん経由で自己再生と自動回復を教えておきましたから、もし魔人門が襲われたら逃げてこちらまで来ますって」
「アハハハハハッ、オーベロンさんがメモとってるよっ!」
「うるせぇ狂人っ!
俺ぁ、レウス先生に付いて行くと決めたんだよ!」
「ったく、未だに慣れねぇぜ……。
何で妖魔王がここにいんだよ……」
「ゴディアスさんもここに来て頂けるとは思いませんでしたよっ」
「へっ、だりぃが弟の暴走止めるのは兄貴の役目だぜ?」
「ケジメってやつっすね!」
「おう、わかってるじゃねーかボーズ!」
「異様な空間だわ……」
「あ、イリスさん、また後で修行手伝ってください!」
「もちろんよ、レウス君の相手だったらいつでもいいわ」
「ボーズ、今度また俺とも勝負すっか?」
「……耳削がないでくれるなら良いですよ」
「ひゃひゃひゃひゃっ、あれは趣味みたいなもんだっつーの!」
「趣味で俺をいじめないでください」
「くふふふ、なんとも面白い面子が揃ったものよ……」
「自分もそう思います……」
現在ドンファン曰く「仮設」の勇者ハウスにいるのは……。
会話の中にいたのは俺、デューク、オーベロン、イリス、マイムマイム、ミカエル、そしてゴディアスだな。
この中に更にエミーダとガラテアとドンファンが加わる。
ぼぼ新築のこの家の屋根には「ここにいます」と書いてあり、俺の家の屋根には「こっちじゃないよ」と書いてある。
戦争時の赤十字マークみたいなもんかしら?
実際中央国には近づかず空から魔竜が偵察に来る事がある。
空にはマカオに跨ったガラテアと、チャッピーに乗ったエミーダが交代で見張ってる。
敵の魔竜にも交代で誰か乗ってるみたい。
ドンファンの師匠ベイダーからの手紙が、よくドンファンに届く。
内容が「疲れた」や「面倒」や「こいつら陰湿過ぎ」とかそんなんばっかだ。
なんで抜けないんだろ?
相手の行動が気になって修行があまり出来ないが、余力を残しての修行って事でイリスやマイムマイム、ミカエルとちまちまやってる。
最高戦力のデュークは修行の相手を頼めないからな。
もちろんチャッピーやマカオやブルスとは戦ってるぞ?
あいつらは気総量がヤバい位にあるから基本疲れ知らずだ。
トルソとは戦い辛くて仕方ない。
ちまちま動き過ぎなんだアイツ。
多少は想像してたが、小さ過ぎるとここまで戦い難いとはね……。
マイムマイム曰く、戦力では圧倒的に勝ってるそうだが、油断を突かれればあっさり瓦解するだろうとの事だ。
あぁ怖い。
あ、不定期だがたまにレイアも来てるぞ。
イリスとミカエルとマイムマイムの仕事は基本的に魔石探索だ。
狙われない様に夜中に出るが、ブルスやら舞虎やらに乗ってくから追われ様がない。
敵は魔竜しか飛べる生物がいないからな。
因みに頑張る俺達に色々仕送りしてくれる勇者が多数……。
届いた順番で書いてくぞ。
意外な人が…………いや、感謝だけどな?
ライオス君、パワーマスターの魔石3個
レイヴン君、スピードマスターの魔石3個
ケミナちゃん、テクニカルマスターの魔石1個
ガッシュ君、テクニカルマスターの魔石1個
ビーナスちゃん、パワーマスターの魔石10個
ノエルちゃん、スピードマスターの魔石2個
ディウム君、神技の魔石1個
リンダちゃん、テクニカルマスターの魔石1個
勇者ハウス一同、各マスター魔石5個、特抵抗、特硬化の魔石5個
ジィビット君、神力の魔石2個
アクセル君、神速の魔石2個
タイトス君、パワー&スピードマスターの魔石1個
ストーム君、各マスター魔石1個ずつ
ナデシコちゃん、特抵抗の魔石1個
ゴリアンカちゃん、特硬化の魔石1個
ダイアン君、テクニカルマスターの魔石1個
アーク君、各マスター魔石1個、特抵抗、特硬化の魔石1個
スン、各神系魔石1個
結婚式みたいに送ってきおってからに。
ライオスとレイヴンでワンツーフィニッシュ決めやがったんだぜ?
勇者ハウス以外でスンがとんでもないの送ってきたぜ……。
アイツマジ天使。
かなり無理したんだろうってのが伝わってくる……。
この魔石の管理は俺がやってる。
ガラテア曰く補佐の仕事らしい。
魔石なんて強くなった勇者にはいらないんじゃね? とか思ってない?
実はな……魔石限度数7のチャッピーの爪が大好評でしてハイ。
もう毎日の様に爪切りされるチャッピーが面白くて可哀想でハイ。
マイムマイムは魔石限度数6の武器だったし、ゴディアスは魔石限度数7の武器だったけど、限度数6の武器が成長したやつで、元から7なら新調したいって事で私がチャッピーの爪をチョンパしました。
オーベロンの武器も一応これで作ってる。
元の武器返そうとしたら、「3年で結果を出す!」とだけ言われて断られたんだ。
そういえば……魔竜魔竜言ってたけど元魔王10位のスピリットドラゴンの事だぞ?
100歳位のいたずら好きの子供だってマカオが言ってた奴だ。
善悪のつかない年頃なのか、もしくは神者ギルドの中に友人でも出来たか、はたまた脅されてるのか……。
まぁこういうのは脅されてるってのが相場だ。
なんたって敵の親分は魔物嫌いのオーディスだからな。
参加者の欄にスピリットドラゴンがいないのが良い証拠だ。
コンコンッ
「はい、どなたですか?」
「我だ……レウスにお客様だぞ」
「…………魔竜か?」
「え、何でわかったの!?」
どうやら世界は俺の脳内のフラグを回収しにくるらしい。




