第七十六話「ダイアン……」
んー、ここからじゃ声は聞こえんか……。
この距離だとカイネルでも無理だろうな……。
「もう1人いるねっ」
小さいな…………あれはドワーフか?
フードを全部被ってるから顔は見えないが…………リーゼントだけ突出してるぞおい。
よく見ればこいつの場合黒いロングコー…………特攻服だわ。
サラシに青いビーチサンダル……。
「小魔王ゴライアス……?」
「えぇっ、よくわかったねケント君っ!?」
「どう見ても……どう考えてもあれはそうでしょう……」
「あはははっ、そうだねっ」
「しかし、勇者の2位と魔王2人の密会ですか……」
「じゃあ帰ろうかっ」
「え、もう帰るんですか?」
「勇者の2位と、魔王の4位と7位だよっ?
これ以上は危険だからねっ」
「あー、了解です」
「確かに気になるけどねっ」
「深入りは危険よ〜♪」
せめて俺が戦力になればいけたんだろうが……まぁ無理か。
大人しく帰って…………誰に報告するんだ?
はい、何事もなくジャコールに帰還しました!
勿論、帰る途中で魔物には襲われましたがね?
「ところで、誰に報告するんです?
やっぱりアクセルさんとかガラテアさんですか?」
「どちらも魔界にはいないからねっ、まずはギルドマスター達に報告かなっ?」
「達……?」
「今なら北と西……それと東の国の戦士ギルドのギルドマスターがいるはずだよっ」
「あー……そういえばそんな存在がありましたね」
「因みに中央国の戦士ギルドのギルドマスターはガラテアさんなんだよっ」
あれ、チャッピーが昔「我をレベル判定するのは無理」とか言ってなかったか?
無理なのは判定員って括りの意味なのかしら?
「……そりゃ初耳ですね」
「あはははっ、あってないようなものだからねっ。
ただ、序列に関係なく周りからの信頼は厚いよっ」
「ほえー……」
「南の国の戦士ギルドのギルドマスターは今は誰もいないから、ケント君目指してみればっ?」
「あー、知り合いに目指してる奴がいるんで、そいつを応援したいんです」
「へー、推薦状に名前を書く時は声掛けてくれれば書くからねっ」
「大丈夫です、デュークさんは最初から人数に入れてます」
「あはははっ、了解しましたっ」
という訳で、ジャコールの勇者ギルドです。
ギルドの別室に俺とデュークが入り、西の国の戦士ギルドのギルドマスター「マイムマイム」、東の国の戦士ギルドのギルドマスター「ジィビット」、北の国の戦士ギルドのギルドマスター「アルモス」が続いて入って来たぞ。
ジィビットは前に話した勇者ランキングの6位のエルフだな。
チャコール色? のマントを羽織ってフードを被ってる。
髪の毛は紫色で、多分真っ直ぐおろしてて長いんだろうが、フード被っててよく見えないな。
顔は……可もなく不可もなく的なフツメンだな。
少し鼻が高い位?
見た感じ35歳位だから400歳位かしら?
アルモスは勇者ランキング11位のクォーターエルフの男だそうだ。
こいつは11位って事でわかると思うが……デュークって初登場時10位だったろ?
つまりデュークが以前戦った事があるって事で、話には聞いてたんだ。
じゃなきゃクォーターエルフって気づけない。
ホントに人間と見分けがつかんな……。
ソバカスが目立つ赤茶髪の短髪。
結構老けてて、見た目70歳とかかな?
クォーターなら300歳あたりかしら?
しかしかなり強いってのがわかるな……。
眼力が超やべぇ。
マイムマイムより怖い爺さんを初めて見たかもしれん。
白髪も目立つ程ないし、姿勢もピンと伸びてる。
なんとも若々しい爺さんだ。
服は白いが少し汚れた感じのローブで木靴を履いてる。
これにガラテアか……。
ダイアン……この中に入れるのか?
ギルドマスターになったとしても委縮しそうだな。
むしろ……だから誰も目指さないんじゃないか?
「初めましてレウスです」
「ジィビットです」
「アルモスじゃ」
あ、因みに今マカオは外にいるぞ。
地味ぃ~に気を使ったらしい。
「さてデューク、私達を呼び出して何を話すつもりなんだね?」
「オーディスさんに反乱の兆候有りですっ」
ど真ん中ストレートだな。
「「「…………」」」
「さっきレウス君とマカオさんと一緒にオーディスさんを尾行したら、ロキとゴライアスに通じていましたっ」
「証言だけで、証拠はないんですけどね」
「いや、レウス君も知っている通り、先のエミーダ殿の報告も受けている」
「想像以上に行動が早いという事でしょうか?」
「我らも迅速に行動せねばならんかもしれんというわけじゃな」
「アルモスさん、その……行動っていうのは?」
「……坊やになら話してもいいじゃろう」
「えぇ、そうですね」
「近々オーディス殿を討伐するという話が出ている」
わお、まじか。
「……証拠がないのに急過ぎません?」
「くふふふ、『疑わしきは罰せ』だ」
「事実ここ数年、オーディス殿は人の魔王と戦ったという情報がないのじゃ。
無論、魔物の魔王は討伐してるが、それは下位の魔王ばかり……」
「話に聞くと、レウス君は2人の魔王を味方に付けている様ですが、それは例外です。
本来であれば魔王と対峙したら倒す……無理であれば逃げる。
倒す、もしくは逃げた場合はギルドへの報告が必須となります。
レウス君の様にガイさんから報告を受けた場合、話は別ですがね」
確かにそれは勇者証明にも記載されてるな。
俺もガラードを倒した時、一応ガイに言いに行った。
ほぼ逃がしたに等しいけどな。
んでチャッピーやブルスの時はガイが直接見に来てたしなぁ……。
あ、やべ……カイネルの時言ってないかも……。
「レウス君っ、問題なのは公になってない事だよっ」
「…………」
あれはもうエスパーだな。
最狂……こう呼ぼうかしら?
「魔王と会っているのに知らせがない。
これはもう問題なのだ」
「今回が初めてだという可能性はないんです?」
「ではどうやって今回2人の魔王と会ったのじゃ?」
おっと凡ミス。
確かにそうだわ。
コンタクトをとったから会った。
2回目以降……もしくは何らかの手段で連絡をとったという事がわかるか……。
「むー、確かに……。
しかし簡単に討伐されてくれますかねぇ?」
「くふふふ、討伐参加者はエミーダ殿、ジィビット殿、アクセル、アルモス殿……他にはダタタベコムとゴディアス、ビーナス殿も参加する」
「すげぇ……」
オールスターだなおい。
しかし……こういうのって失敗するのが相場だろう?
「……デュークさん」
「僕も参加した方が良いかなっ?」
最狂め……。
「あ、はい」
「そうですね、デュークさんも参加して頂けたら非常に心強いです」
「レウス君の忠告は聞いておいた方が良いと思ってねっ」
「まだ何も言ってませんけど?」
「「「少し心配で万全の状態が望ましい……そんな顔をしてる」」」
ふぁっ!?
「くっくっくっく……面白い坊やじゃな」
「くふふふふ、期待の新人ですな」
「ふふ、デュークさんの信も厚い様で……」
「あはははっ」
「………………」
流石のギルドマスター達だな。
こいつらには死んで欲しくないな……。
「はいレウス君っ」
奥義書用紙…………。
今日は読みまくってくるなこいつ。
ちょいと自傷行為。
チチチーン!
チチチーン!
チチチーン!
チチチーン!
「では皆さんにこれを……」
「坊や……これは……」
「両手回復、間接回復、自己再生、自動回復の奥義書です」
因みに間接回復は回復の気飛ばして、遠隔操作して自分に向かわせれば、自分にも使えるんだぞ。
「なんとっ!」
「くふふ、これはレウス君の信を得たという事かな?」
「とてもありがたい心遣いですね」
「死んで欲しくない人って事です。
皆さんなら数日で修得出来ると思います。
皆さんの信じる人であれば、出来るだけ教えてあげてください」
「クックック……これは負けられぬな」
「そうですね」
「私は参加しないのに……いいのかね?」
「ガイさんにも教えてますし、マイムマイムさんはダイアンに色々教えなくちゃダメですからね」
「何故ダイアンの名前が出てくるのだ?」
「失礼だが……ダイアンとは誰の事じゃな?」
「西の国で戦士ギルドのギルドマスターを目指してる判定員ですよ」
「ほぅ、あやつがギルドマスターを目指していたか。
それでか……うむ、納得した」
「レウス君が認めるのであれば、推薦状には私達の名前を書きましょう」
「クックック、そうじゃな」
すまんダイアン…………推薦状にデューク、マイムマイム、ジィビット、アルモス、レウスの名前が載るわ。
過度の期待にストレスで死んじゃうんじゃないかアイツ?
…………不安だ。
まぁ、こいつらがオーディス派だったりオーディス派に教えちゃった時は諦めよう。
はい翌日です!
結局タイミングが合わず昨日の段階でエルフの里には向かえなかったので、本日向かう事に!
という訳で東のエルフの里まで走ってるんですが…………こいつぁ確かに障害が多いな。
フォースレベルの魔物「ショーグン」が現れたぞ?
今の俺からしたらそこまで強敵じゃないが、それでも強い。
よし、倒したぜ! って思ったら、次はトップレベルの魔物「ダイショーグン」……。
ねぇ、ちょっと手抜きじゃない?
デュークの話じゃ「ショーグンの群れを引き連れてるのがダイショーグンだよっ」だと。
…………群れ?
ショーグンの群れが現れた! が、最狂の曲刀の錆になった。
マカオも普通に倒してる。
で、俺の相手はダイショーグン。
何で俺がこいつなの?
デュークのとこ行けよ……。
いつも通り話しかけても反応無し。
ダイショーグンはショーグンと違って鎧を装着してない。
なんか暴れん坊なイメージの薄緑色の着物着てる。
剣はやはり…………バスタードソードタイプだ。
既にマカオとデュークは傍観モード……。
トップレベルの魔物との初対戦……。
因みに基本的にトップレベルの魔物を対応するのは30位から。
アクセルには30位程の実力はあると言われてるが…………30位からって事は、最低30位の実力が必要って事だ。
つまりギリギリ俺が対応出来るクラスって事……。
接戦が予想されます!!
戦闘開始!!
いつもの発動!
ダイショーグンがダッシュ!
嘘っ!?
もう目の前にいる!?
速度がやべぇな!
キィインッ
「ケント君っ、ダイショーグンの武器は貴重だよっ!」
それ今関係なくねっ!?
デュークでさえトップレベルとは1年に1回会うか会わないかだそうだ。
確かに隣で石ころ食ってるのはオーバートップレベルですからね。
キキキィインッ
接近戦では付いていける!
やはり俺は接近戦が得意みたいだな……。
嫌いですけどね?
だって殺意もってる奴らの顔が間近にあるんだぜ?
怖くてしょうがないわ。
しかしこの距離では最適な技が……。
キィイン……シシィンッ!
「シャシャラップッ!?」
ブジンと喋り方一緒かよ。
ドンファンから教えてもらった竜牙が決まり……ませんでした。
速度じゃ負けてるかもしれないから仕方ないっ!
だからこその新技です!
「レウス〜、今夜はご馳走よ〜♪」
だから関係ねぇだろ!
あいつらわざと邪魔してるんじゃないか!?
キキキキキィインッ
いくZE☆
新技、双竜牙っ!
キィイン……シシシシィンッ!
サザンッ!
良いのが腹部に2発入りました!
結構使えるね。
あ、双竜牙は上下に加え左右からも噛まれちゃうぞ☆ って技だ。
2刀流ならではの技だな。
因みに普通の竜牙は片手で発動するぞ。
「ケント君っ、夕飯は僕が作るからねっ!」
…………何か狙いがあるのか?
「シャーップ!」
うぉっ!?
着物の中から腕がもう2本出てきた!?
……剣1本でどうすんだ?
ヒュヒュヒュヒュンッ
剣先から気弾が!?
飛剣みたいだが気弾は丸い。
まぁトップレベルだし気も使うか!
ガラードも使ってたしな。
だけどこの程度なら……。
ババババババチィンッ
……弾けるんだぜ?
あ……。
弾いてる間にショーグンの死体から剣を3本拾われたわ……。
「シャシャシャシャシャッ」
「ケント君ピーンチッ」
……お前が言うなよ。