第七十四話「ジャコール」
……状況を整理しよう。
最狂、変態、俺で魔人門をくぐった。
魔界に着いた。
可愛いキッパリドワーフのキィに出会った。
黒髪美人エルフのビーナスに出会った。
そのビーナスに俺が求婚されてる。
最狂は勿論、変態とキィまで笑ってる。
お日様も笑ってる。
「一目惚れした……結婚してくれ」
「無理です」
「何故だ?」
「既に妻が3人います」
「では離縁してくれ」
「無理です」
「何故だ?」
「…………」
初期のガラードみたいだ……。
さっきのデュークとの対話が普通の状態なんだろうが……何かしらあるとそれしか見えないタイプか……。
「俺が嫌だからです」
「……では私が4人目に甘んじよう」
「お断りします」
「……定員制なのか?」
普通その答えに行き着くか?
「俺がビーナスさんを好きではないからです」
「それはこれからでもどうにかなる」
「…………」
強引だな……。
無視するか?
いやでも斬られたら怖いな……。
んー、デュークがいるし強気で良いか。
「お断りの返事はしました。
先を急ぐのでこれで失礼します」
「まっ、待て!」
こんな問答は面白くないってのに……。
「これ以上は……嫌いになりますよ?」
「ぬっ……」
お、効いたわ。
避難成功。
「…………はぁ」
「いやぁ、久しぶりに涙が出る程笑ったよっ」
「アタシもゾクゾクしちゃったわ〜♪」
「少しは助けてくださいよ」
「あぁいうのは自分でなんとかした方が良いんだよっ」
「確かにそうですけど……」
「けど、これが原因でケント君の身が危なくなるかもねっ」
「……なんですと?」
「ビーナスさんのファンって、魔界でとっても多いからねっ」
「…………」
最終回が近いな……。
皆さん今までありがとうございました。
遺影はスンに描いてもらってください。
あの子、絵も上手いんです。
「魔王の一部にもファンがいるからねっ」
前から後ろから攻められるそうです。
皆さん今までありがとうございました。
棺の中には松坂頭の肉を入れてください。
また食べたいな……。
「その代表格が妖魔王オーベロンだよっ」
さよならさよならさよなら。
ついに狙われる理由が明らかになりました。
レウスが狙われる理由は色恋沙汰!!
まぁ、まだそっち方面は決まった訳じゃない。
「ところで……」
「ん、なんだいっ?」
「魔界……普通っすね……」
「一体何を想像してたんだいっ?」
「空が常に暗くて毒沼やらがある様な……」
「あはははっ、そんなとこあったら面白いねっ」
「レウスの元いた世界ではそれが魔界だったの〜?」
「そもそも魔界が無かったわ。
言葉はあったが、架空の話で存在しただけだからな」
「大地が続いてたら右も左も大差ないわよ♪」
「そりゃそうか」
「さっ、ジャコールまで急ぐよっ」
「ういーっす」
「は〜い♪」
はい、ジャコールに到着しましたよ!
流石魔界!
襲ってくる魔物の多い事多い事……。
ジャコールまでの道でフォースレベルの魔物は出なかったが、サードレベルまでの魔物と多数戦った。
俺も数十匹倒したが、デュークとマカオは百匹以上倒してる……。
やはり羽のない魔物が多かったわ。
セカンドレベルのダースネイク、サードレベルのキングゴーレム、ローレベルのファイアフロッグ、サードレベルの横綱サタン、セカンドレベルのリーゼントスライム等……。
多種多様な魔物が沢山でおじさんお腹一杯です。
…………食ってはいないからな?
魔物の特徴?
想像は得意だろう?
まぁ、想像しにくいとしたらダースネイクとかかしら?
ダースネイクは黒い大きい蛇だな。
酸をブレンドした炎を吐いてくるぞ。
大きさは青竜位。
横綱サタンは前に戦った事のあるリトルサタンとかラージサタンの亜種みたいなもんだ。
肥えて大きくなったソレだな。
リーゼントスライムはスンの親戚…………かと思いきや!
目つきがマジこえぇ。
親戚だとは思えないな。
いやそうなんだろうけど?
額……つまりデコ付近が前に20センチ程出てる人型のスライムだな。
デコが出てる奴程強いらしい。
デコの伸縮が自由自在の俺のスンが最強だって事はわかった。
後は……わかるだろ?
さてジャコールに着いたわけだが……。
町というより村って言うのが適当かもしれん。
大きさがエヴァンスの4分の1程だな。
もちろん外壁で覆われてはいるが、魔界だったら外壁程度が意味をなさない事はわかるだろう?
まぁ、人界からは50位以上の勇者しか来れないんだからこの規模の町だって事は納得だ。
町造りした奴はとんでもないな。
ウチも外壁作ろうかしら?
ウォールレウス!
……いや、怒られそうだな。
町の出入り口は1つ。
そこには超目つきの悪いリーゼントスライム……じゃない。
目つきの悪いリーゼントドワーフがおる。
最近ドワーフがよく登場するな?
ビックリなのは服装だな。
白いロングコート……いや、あれは特攻服というやつだ。
背中に文字は入ってないがな?
腹にサラシ、白いボンタン……。
靴が残念!
赤いビーチサンダルみたいなやつだ。
結構老けてるな……人間の40手前ってとこか?
ドワーフなら80〜90ってとこだな。
眉毛無いが剃り込みはバッチリ!
ただ身長が…………155センチってとこだな。
ドワーフの中では高い方なんだろうが……マジ残念。
しかしこいつ……めっちゃ強いな?
十中八九こいつがゴディアスだな。
「おぅデュークゥ……しばらくぅ」
「お久しぶりですっ、ゴディアスさんっ」
やはりか。
「ダリィ……門番マジダリィ……」
「あははっ、お疲れ様ですっ」
門番なのかよこいつ。
いや門番は強くないと出来ないし、ジャコールの場合、20位以上の勇者がローテーションで回すんだ。
「おう、そいつが例の騏驎のマカオってヤツか?」
「ええっ、そうですよっ」
「騏驎かー…………勝負すっか?」
何でそうなった?
「遠慮しとくわ〜♪」
「ちっ、つまんねーなぁ…………おぅ、お前ぇは何だ?」
「あ、初めましてっす、38位のレウスっす!」
「おぅ、なかなか良い態度じゃねーか」
「おそれいりますっす!」
「あー、魔王って呼ばれてる勇者ってのはお前ぇか」
「おっす!」
「なるほどな、騏驎連れてりゃ魔王は名乗れっか」
「恐縮っす!」
「まぁきばれや」
「あざまっす!」
やはりこのタイプはこれ系だな。
失敗するとハードラックっとダ○スっちまうけどな。
しかし魔人門の門番には8位のビーナス、ジャコールの門番に9位のゴディアスか……。
いよいよ魔界に来た実感が出てきたな……。
あー怖い。
「ケント君、ゴディアスさんとあれだけ話す人ってすっごく珍しいよっ」
「あれだけって、ほんのちょっとのやり取りじゃないですか」
「基本1回のやり取りで終わっちゃう人だからねっ」
確かにさっき俺以外はすぐ終わってたな……。
男は黙って的なタイプって事か?
んー、ジャコールは木造ばかりだな。
しかも建物が町の中央に数軒あるだけだ。
学校で習った情報によると、勇者ギルドは6位のジィビットがやってるそうだ。
勿論戦士ギルドなんてあるはずもなく、建物も基本仮眠する施設だけだって話だな。
んで、町の外れには広場があって、そこでランキング戦をやる事が多いそうだ。
食い物は基本的に自分で調達するんだと。
魔物の中にも食える奴が多いからそれで事足りるだろう。
俺も基本そうやって生きてきたしな。
はい来ましたジャコールの「やしう」……あれ、「ゆ」が破損しててねぇぞ?
誰も直さないのか。
まぁしゃあないか。
ともかく勇者ギルドです!
はい、ガチャっとな……。
「「ほぉ、もう来たか……」」
そう言ったのはエミーダちゃんと……マイムマイムだ。
久しぶりの筋肉爺の登場だな。
オーディスに……以前俺が倒した39位のディウムもいるな。
知らない顔も多数。
今のランキングだけ見せとくか。
■1位 最狂デューク
■2位 オーディス
■3位 エミーダ・カトルス
■4位 完璧超人ガラテア
■5位 アクセル
■6位 ジィビット
■7位 ディストール
■8位 ビーナス
■9位 ゴディアス
■10位 ダタタベコム
■13位 音越えのドンファン
■14位 バース
■18位 拳天聖ミカエル
■19位 キャット
■23位 マイムマイム
■25位 キィ
■30位 超技のイリス
■38位 魔王レウス
■39位 ディウム
■44位 剛壁のスン
■45位 獣撃のハティー
■46位 猛腕セレナ
■47位 大黒柱ストーム
■48位 魔王狩りのライオス
■53位 激剣ガッシュ
■60位 レイヴン
■62位 妖聖リンダ・ロクスウェル
■65位 妖紳士タイトス
■78位 重戦斧のビアンカ
■81位 機動勇者ナデシコ
■85位 疾風のキャスカ
■86位 美流剣のノエル
■87位 風弓のケミナ
■88位 カシュル
■98位 トゥース
現在35人の勇者が登場しております……。
ラスティとグランダル、名前だけのモディアムも入れたら38人か……。
どんだけ登場させるんだよ。
皆の頭もショート寸前だぞ?
「くふふふふ、大分強くなったようだの?」
あー、そういえばメッサッソンはこんな喋り方してたな。
流行らない笑いだと散々言った記憶がある。
「お久しぶりです、マイムマイムさん。
まだまだ38位ですよ」
「既に20位台に食い込む様な実力と、アクセル君から聞いてるが?」
「それ尾ひれ付いてると思います……」
「くふふふ、謙遜だな……。
しかしジャコールの勇者ギルドに騏驎がいるとはな、時代も変わったという事か……」
「宜しく~♪」
「うむ、宜しく頼む……」
「レウス~、アタシ外いるわね~♪」
「ん…………あぁ了解」
「くふふふふ、オーディス殿か……」
すんごい目つきだわ。
魔物滅殺! って感じの目。
あえてデュークを先頭に歩かせたのは正解だったな。
まぁ、そのデュークは既に顔見知りに挨拶に行ってるがな。
「やぁレウス、トゥースは元気か?」
「…………いきなりっすね」
俺への挨拶は「やぁ」だけかよ。
「恋は一直線だからな」
「好意をちゃんと伝えてます?
あいつ十中八九気づいてないっすよ?」
「むぅ……中々難しいものだな」
「一直線なら「夫になってくれ」ってスパンッて言ってしまうのがいいかもしれませんよ?」
「むぅ……魔王戦より緊張するな」
「相手は98位ですよ」
「何を言ってる、私の中の1位だ」
「そりゃごもっともで……」
「今から少し行ってくる」
「気をつけてー」
トゥースも大変だな……。
「レウスお久ー」
「ディウムさんも元気そうで……」
「お前上位に知り合い多いなー」
「やたらめったら訪ねてくるんすよ」
「ハハハハ、人望ってやつかー」
「そういやディウムさん魔界は長いんです?」
「まだ2回目ー、沢山の勇者や魔物がいて色々と勉強になるよ。
レウスも色々な人に修行つけてもらうといいよー」
「あー、落ち着いたらそうしますね」
「うん、それじゃねー」
「ういっす」
「意外に知り合いが多いんだな?」
「マイムマイムさん程じゃないっすよ」
「くふふふ、長く生きてるだけだよ」
「それこそ謙遜ですよ」
「ふむ……レウス君、久しぶりにいっちょ戦ろうじゃないか」
「まじすか?」
「1年半……どれだけの実力をつけたのか見てみたい」
「まぁ発つのは明日なのでいいですよ?」
「うむ、では広場まで行こうか」
さーて、筋肉爺さんとの距離……どれだけ縮まったかな……。