第七十二話「最狂の家」
はい、最狂の家に着きました!
最北東の家……。
どんだけ戦闘狂なんだよ。
これ一番魔人門に近い家じゃないか?
しかし……他が石造りの家ばかりなのに最狂の家だけ木造だ……。
色んな場所に修繕箇所が……。
それ以外は普通の家だが、魔物の攻撃のせいか?
いや、夫婦喧嘩か?
しかしデュークの怒ってる姿は想像出来んな……。
平常心のまま斬りつけそうだ。
そもそも喧嘩をせず日常的に戦ってそうだしな。
「扉の奥から……これは殺気……かしら?
……いえ、これは闘気ね?」
「怖い事には変わりないな」
「闘気がデュークちゃんには向いてないわね。
アタシと……これは……レウスね」
「あはははっ、お出迎えだねっ」
「ビンビン伝わってくるのだ!」
バァンッ!!
「……シッ!」
「あら、なかなかだわ♪」
「レウスさん、覚悟っ!」
「なるほど、俺にはアークかっ」
キィインッ
「ぬっ、ぐうううぅっ」
「アークにしては真っ直ぐすぎるぞ?
……それに声まで出して」
「母上の言いつけで……これは2対2だとっ!」
今なんて?
「あ~、ごめんレウス~♪
そっちいっちゃった~」
待て、相手は16位だぞっ!?
「だぁっ!」
きききききき気脳全開!!
ギリ追えるっ!
普通の縦一閃だ!
にゃろっ、十字受け!
ギィイイインッ!
「がっ……あ!?」
衝撃で後方に吹き飛んでます!
飛行魔石で前方に向かい飛ぶ……これで徐々にブレーキッ!
「あら、受けれるのねっ?」
くそっ、嫁さんもその喋り方かよ!
つーか、もう追いつかれてるし!?
「続くわよっ!」
下段、中段、喉への突き……の度に吹き飛ばされる!
受けれるが……どんどん手が痺れてく!
まともに戦えないとはこの事を言うんだな!
奥さんどんな人かって?
今答える事じゃねーよ!
こっちは忙しいんだ、後だ後っ!
えっと銀髪のエルフで、美人というよりかは可愛い系の顔つき。
イメージはしっかり者って感じ。
髪型は前髪を少し垂らしたポニーテール。
一番好きな髪型かもしれん……。
服?
俺が前に着てた丈夫な服(青)に赤いエプロンだ。
後は黒いブーツ!
……赤いエプロンの所々に赤黒い斑点が!?
それ何すか!?
「お股せ~♪」
字が違うんだよ!
「レウスさん、ホント凄いですっ!
母上の攻撃を受けれるなん……てっ」
キィイインッ
斬りかかりながら言うセリフじゃないな!
「いやぁ、レイアさんまだ本気じゃないよ!」
「あら、わかったかしらっ?」
よし、マカオの方に行った!
「なんたって長い事15位にいた人ですから!」
「今は16位なんだけどねっ」
先にアークから仕留める!
「ぐぁっ!」
よし、アークの腹部に一発で制圧!
急いでマカオの救援へ!
「あ、初めましてレウスです!」
「レイアよっ。
よろしくね、ケント君っ」
最狂の野郎……言いふらし過ぎだろ……。
「あら、2対1かしらっ?」
「うふふふ、形勢逆転ね~♪」
「あはははっ、それなら僕はこっちだねっ」
「「参りました」」
「えぇっ、もう終わりかいっ!?」
「レイアさんだけならマカオと良い勝負をするでしょうけど、そうなると俺はデュークさんですよ?」
「僕と戦う気だったのかいっ?」
「いえ、単純な計算ですよ。
どうぞマカオでお願いします」
「なんだか生け贄みたいな言われ方ね~♪」
「墓参りは任せろ」
「ふふふっ、デュークの言ってた通りの2人ねっ」
どんな風に伝えてたんだこいつは?
「マカオよ、宜しくね~♪」
「よろしくお願いしますねっ」
意外に普通な人だな…………いや、初対面で斬りつけてきて普通はないか。
地球だったら即逮捕コースだ。
「ぐぅうっ……」
「アーク大丈夫か?」
「ま、前より断然重い一撃でしたっ」
あー、気脳全開で攻撃力上がってたからか……。
手加減したつもりがここまで変わるものか。
そりゃ格差社会にはなるわ。
意外に気脳全開の気消費量は少なくて結構便利だな。
あくまで身体強化の一部だが、動きが速くなり、力も強くなってるから他の技の威力もかなり上がる。
チャッピーやマカオに1歩前進だな。
これ以上先はない……か?
いや、あると思わなきゃだな。
前もそう言い聞かせたはずなんだけどな…………技の限界を自分で決めちゃいけないって事だな。
先を頑張って目指す!
「あぁ、ごめんな……ほれ」
「おぉっ、これはっ!?」
「間接型の回復だ。
あぁ、そういえばこの剣技だけは皆に教えてなかったわ……。
デュークさんいります?」
「そんなにオリジナル剣技の安売りしちゃっていいのかいっ?」
「味方が死ににくくなるなら全然良いでしょう?」
「ホントプライドがないわね~♪」
「1番は目指してないからな。
平穏に生きていければそれでいいんだよ」
前にも言った通り勿論最強が一番良いんだがな?
「どうだアーク!
レウスは凄いのだ!」
「はいっ、尊敬してますっ」
「……あ、はい」
「照れちゃってっ、中々可愛いわねっ」
「目の前でこう言われたら大体の人は照れますよ」
「ふふふっ、奥義書なら家の中にあるから自由に使ってちょうだいっ」
「ありがとうございます」
「さぁっ、何もないけどあがってっ」
「アタシも良いのかしら~?」
「もちろんっ」
デュークって偏見無いよなー。
普通、家に馬並の動物が入るってなると抵抗あるだろう。
人格的なアレがあると認識は変わるかもしれないが……。
マカオには人格があっても人格に問題があると思うしな…………まぁ人格については俺も人の事言えないけど……。
「お邪魔します」
「ご飯は出来てるわよっ。
中央の席に掛けてちょうだいっ」
「レイアの料理は絶品なんだよっ」
「へー、それは楽しみですね」
「母上の料理は他では見ない料理ばかりですよっ」
他では……見ない?
独創性溢れる料理なのか?
「レウス凄いぞ!
この料理全てが黒いのだ!」
「……ホントマックロデスネー」
「あらあらあら~、おいしそうだわ~♪」
……何が入ってるんだ!?
イカスミ的なアレか!?
つーか夫婦で方向性が似過ぎなんだよ!
子供デューク、女デュークだろこれ!
家族で性格の統一するとか手抜きなんじゃないか!?
確かにこの段階では統一してるとは言い難いが、あまりにも似過ぎだ!
「さあっ、食べよっ」
「イ、イタダキマス……」
「おいしいわ~♪」
お前の意見は参考にならないのだよ。
「む、うまいぞレウス!」
むぅ…………恐ろしい。
「ではこの麺の様なモノから…………」
「どうかしらっ?」
「あ、うまいっすね」
「はいっ、母上の料理は最高ですっ!」
確かに美味いが不安が残るな……。
その後もパンの様なモノ、スープの様なモノ、サラダの様なモノと色々食ったが……確かに美味かった。
冷や汗をかきながらでしか食べられない料理だったがな……。
「ごちそうさまです」
「ふふっ、お粗末さまっ」
「さてケント君っ、明日の説明をしておくねっ」
「あ、お願いします」
「お昼前にここを出て、お昼に魔人門に着く様にしようっ」
「朝じゃなくて良いんですね」
「まだ一気にエルフの里には行けないだろうからねっ」
「なるへそ」
「それで、魔人門での手続き後にジャコールを目指すよっ」
「どれくらいで着くんですかね?」
「ハティーちゃんはマカオさんに乗るとして、夕方頃ジャコールに着くと思うよっ」
「了解です」
「何も無ければねっ」
フラグをたてるなよ……。
「……あー怖い」
「まぁ死んじゃう時は死んじゃうからっ」
「デュークさんはもっと怖い」
「えぇっ!?」
「一番怖い人が目の前にいるから安心出来るんですよ」
「あらあら、妬けちゃうわ〜♪」
「あはははっ、照れるね〜っ」
「それじゃマカオ、行くか」
「あらどこに〜?
ベッドはここよ〜♪」
「鞍を買うんだろ?」
「うふふふ、約束を忘れない男ってステキ♪」
「それでしたら私が案内しますっ」
「頼むよっ、アークッ」
「はいっ!」
「私も行くのだ!」
「ったく……」
はい、アグニスの南区の市までやってきました!
というか基本南区に大体の店があるみたいだ。
因みに大体このアグニスに住んでるのは戦士か元戦士、勇者、元勇者だそうだ。
一番多いのは戦士だけどな。
商人も元戦士が多いみたいだ。
この国で商売する奴は腕に自信がある奴か、命知らずの金目当てってとこだな。
別に商品が高く売れる訳じゃない。
この国で商売をすると戦士ギルドや勇者ギルド、東の国から助成金が出るんだ。
商人ってのはやはり金の匂いがする場所に寄り付くようで、結構賑わってる。
因みに戦士ギルドや勇者ギルドの運営資金は国の予算や魔物討伐で発生した討伐部位の売却金額とかだな。
ギルド公認の討伐部位はやはり高値で買う金持ちが多いらしい。
勿論、肉や素材も売れるけど、それをするのは個人単位でだな。
出入りの激しいギルドでは金が余る事もあるらしく、国に返還する事もあるそうだ。
ホント良い奴が多い世界だ。
にしても自然と視線が集まるな。
まぁ理由は嫁と変態なんだけどな。
しかしマカオを見ると拝む奴までいるぞ?
中央国でもたまに見たが、やはり伝説の霊獣ってのは凄いんだな。
中身を知ったらドン引きだろうな。
「泥棒ー!」
こんな荒くれ者の集まる地でとんだ勇者がいたもんだ。
「レウスさんっ、行ってきますっ!」
「行ってらっしゃい」
「レウス、私達は行かなくて良いのかっ!?」
「アークは勇者並に強い。
んで、姿は見てないが泥棒はどうやら一般人に見つかったみたいだ。
って事は一般人に見つかる速度って事だ。
アークだけで十分だろ」
「レウス、私達は行かなくて良いのかっ!?」
俺の丁寧な説明聞いてた?
「とりあえず見に行くか」
「わかったのだ!」
「は〜い♪」
アーク発見!
あー、やっぱり取り押さえられてるわ。
灰色のフードを被った…………あれ子供か?
顔は見えないがかなり小柄だ。
「アークお疲れ様ー」
「はいっ!」
『離せ!』
おやおや?
こいつぁ……?
「知らない言語ですっ!
レウスさんご存知ですかっ?」
「「「魔物言語……」」」
「アーク、フードを取ってくれ」
「はいっ!」
『や、やめろっ!』
「……こ、こいつはっ!」
……こいつぁビックリ。
「この赤黒い肌……レウスさんっ!
ブラッディデビルの子供ですっ!」
うん、知ってる。