第六十八話「天才」
オーディスの事に関しては一応勇者ハウスの全員に話した。
一部に話すのを避けようと思ったが、あいつのヤバさを体験した人達なら良いかなーと思いましてハイ。
いや俺が教えた誰かがロキと接触して教えた可能性もあるし、ロキ自身が自分で習得したとかあるかもしれんけどね?
今はこの線が一番濃厚だろう。
しかしオーディスのあの魔物の対応の仕方……。
おそらく魔王とオーディスが繋がっていても、魔物の魔王に教えてる可能性は低そうだな。
ロキだけかもしれないし、他の人系の魔王とも繋がってるかもしれん。
しかしロキと親友とはいえ、魔王と繋がるメリットはなんだ?
魔物の魔王…………素材目当てか?
確かに青竜の角とかゲット出来ればウハウハだわな。
しかしオーディスは究極武器を持っているのでは?
新調したいのか?
それだけで魔王と繋がるかね?
そういやデュークとのランキング戦を嫌がってたな。
ケチだとは思ったが、黄金魔石が重要なのかしら?
飛行魔石と退魔石と回復魔石……これ以外でも特別な魔石が出るのかしら?
あぁ、やはり神系の魔石は黄金魔石から生まれないそうだ。
魔石王のデュークに聞いたから間違いないだろう。
んー、わからんなー。
「レウス、お客様だ」
「本当に?」
「本当だ」
「どんな奴だ?」
「ハーフエルフの子供だ」
「誰だろう……ノエル?」
「ノエルは子供ではないだろう」
「まぁ、そうだな」
そういう判断はつくのかよ。
「はい、どちら様ー?」
「初めまして、貴方がレウスさんですねっ!?」
「え、えぇそうですけど?」
銀髪の美少年が立っとる。
身長は145センチ位。
八重歯が特徴的なベビーフェイス。
髪はそうだな……うぇ〜ぶって感じだ。
冒険者風の服の色は、色落ちした青っぽい。
んー…………知らないが知ってるな。
こいつぁ最狂と死神の息子だな。
「デュークさんの息子さん?」
「おぉ、素晴らしい洞察力でっ!」
語尾がそっくりだわ。
「あぁ、とりあえずあがってくださいな。
…………デュークさーん、息子さんですよー!」
…………来た来た。
「あれぇ、来ちゃったのかっ」
「父上、お久しぶりですっ」
うん、そっくりだわ。
「まぁ、とりあえず座ってください」
「ハイ、失礼しますっ!」
ぞろぞろ来たなおい。
「ほぉ、デューク殿の息子でござるか」
「おぉ、中々良い面じゃねぇか!」
「確かに似ている」
「きゅきゅー!」
「あら、可愛い子じゃない?
レウスと会った時を思い出すわ♪」
「ビアンカ、浮気をするならレウスはキャスカと私で半分こするぞ!」
「そうだぞ!」
半分こは怖いな。
是非割らないで頂きたい。
俺はケーキみたいに切れない仕様なんだ。
「何言ってるのよ、私はレウス一筋よ♪」
「ぬぅううう」
「あら、こりゃ可愛いお子さんですわ」
「あらあらあら〜?
この子とんでもないわね♪」
「マカオ、とんでもないって?」
「この子この歳でかなり強いわよ」
「あーなんだ、そんな事か」
「あら、驚かないのね?」
「1位と16位の子供だぞ?
俺が元いた世界じゃ、こういうのは天才と相場が決まってるんだ。
俺より強くても驚かないよ」
「ほんとプライドがないわね〜」
「プライドで命は買えないだろう」
「レウスさん達観し過ぎですわ」
「よく言われるよ」
「すすす凄いっ!
騏驎に玄武、外には白虎とガルーダ!
スライムはともかくデスウルフリーダーまで!」
今のは聞き捨てならんな。
俺のスンだぞ?
しかしガルーダ?
まぁジュニアかどうかの見分けはそこまで付かないか。
省略してるだけかもしれんしな。
「きゅぅ……」
「大丈夫だスン。
お前が一番だ」
「きゅいー♪」
「レウスさんっ!
まさかスンというのはっ!?」
「勇者ランキング44位のスンだ」
「おぉ、あなたが剛壁のスンさんでしたかっ!
先程は軽率な発言をしてしまい失礼しましたっ」
「きゅぅっきゅ」
「ところでデューク殿……」
「ん、なんですかっ?」
「息子殿のお名前はなんというでござる?」
「あわわわわわ、申し訳ありませんっ!
私はアークと申しますっ!」
あわわわわわとかって普通言わなくなくなくない?
にしても悪なんて怖い名前をよく付けたもんだな。
おっと俺の脳内自動変換機能が……。
レイアの「ア」とデュークの「ーク」か。
混ぜたら怖い名前になったな。
「ところで、アークは何しに来たんだいっ?」
「おぉ、そうでしたっ。
母上に色々な者と戦えと言われたのですっ。
東の国の名のある方達とは大体戦えたので、一番近くのここへやって参りましたっ」
「ほぉ、それは良い心掛けでござるな」
ほぉ、それはとんでもないな。
こいつの年齢位の時の俺はそんな事考えてもなかったわ。
たしかアークは俺の2つ下だから今12歳と6ヶ月か。
12歳って事は俺がゲブラーナにいた頃か……。
あの頃はある意味いっぱいいっぱいだったぜ?
まぁ色々してましたがね。
「どなたか私に胸を貸して頂けないでしょうかっ」
「アタシの胸は硬いわよ~♪」
「馬鹿、誰が良いと思う?」
「まだレウスとは勝負にならないと思うわ♪」
「俺にやらせてもらえないかい?」
「尻髭さんが?」
「わざと間違えんなや!」
「卑猥、どうよ?」
「いいんじゃな~い?」
中々良い勝負をするらしいぞ。
「ま、参った、俺の負けだ!」
あんまり良い勝負をしなかったぞ。
「ありがとうございますっ」
「尻髭さん、かませ犬みたいになったな」
「うっせぇわ!」
うん、やはりサラブレッドだな。
おそらく8割位の力でトゥースに勝ってるな。
多分スン、セレナ、ガルーダ、ハティーと今度こそ良い勝負をするんじゃないか?
「きゅきゅいー」
「お、スンやってみるか?」
「おぉ、是非お願いしますっ!」
「きゅい」
《よろしくお願いします》
「おぉ、スンさん凄いですねっ」
「きゅい~♪」
天狗スンを久しぶりに見たが…………可愛い。
他の人の戦闘って久しぶりだな。
トゥースの戦闘?
ギィーンってやってガァーンってやってドーンって感じだ。
「では、行きますっ!」
戦闘開始!!
スンは動かずアークがダッシュ!
アークがダッシュしながら2連飛剣を放つ!
シュシュイィイン
と同時に加速!
うお、飛剣に乗った!?
「む、あれは中々難しいでござるよ」
どうやるんだ?
足にオーラを集中して、飛剣の面に乗るのか。
斬れない様に反発の気も出すんだろう。
走って飯食いながら喋ってるみたいなもんか。
うん、例えがばっちいな。
スンも少し驚いたが既に迎撃態勢!
アークが飛剣から更に跳んだ!
これはかなりの速度!
アークが跳んだ反動で、飛剣が1つ墜落!
スンを通り過ぎた瞬間、アークが再度飛剣を放つ!
スンが前から後ろから攻められちゃう!!
なんと、スンの顔が一瞬2つになった!?
前方向きの顔と後方向きの顔だ!
ちょっとアレだ!
しかし、これにより合計2つの飛剣をしっかりガード!
あーっと、アークがスンの頭上に跳んでいる!
しかしスンはそれを読んでいた!
キィイイイン……ドンッ!
スンキャノン発射!
「嘘っ!?」
上空で身体を反らし回避!
スンはこの機を逃さない!
スン拡散ビームだ!
瞬間的に出したタコ唇の数は15!
俺と戦った時より増えてる!
ビビビビビビビビィイイイン!
「くっ、血死領っ」
ババババババババチィイイン!
うっそ。
あれ俺でも教わってないのに!
って事は技解除も教わってるな。
気総量は俺以上にあるかもしれん。
「きゅーい」
「あははっ、凄いですねっ」
うん、そっくり。
アークのあの武器はなんだろう?
曲刀みたいだけど短めで両刃……ククリ刀みたいな感じだ。
魔石の数が親以上って事はないだろうから入ってても5ってとこか?
オバ武器だったら、スンにある少しの余裕はないだろうな。
ほんととんでもない戦士もいたもんだ。
こういうのが現れちゃうと、それより弱い奴が霞んでしまうぞ。
尻髭とか尻顎とか……。
お、再開しそうだ。
「きゅい!」
スンがスプリングダッシュ!
「うぉっ!?」
アークの正面に突っ込んできたスンを、アークが剣で受け止める!
「嘘っ、なんですかこの硬さはっ!?」
そうなんだよ。
スンが最近どんどん硬くなるんだよ。
え、卑猥?
だって硬いんだもん!
まさに二つ名に相応しい壁だわ。
特硬化と特抵抗を多めに装備してるだけあるわ。
俺でも巨剣と猛剣使わないと傷つけられん。
「きゅいー!」
「ならこっちですっ!」
おや、剣を納めたぞ?
「連浸打波っ!」
アーク、素手での猛連撃!
スンが全部受ける!
「きゅきゅきゅきゅ…………きゅぃいぃー!?」
おーっと、スンにダメージ!
あいつめ、俺のスンになんて事しやがる!
後で勇者ハウス裏に呼び出しだな!
しかし体内ダメージ狙いか……連打の浸透技……瞬○殺みたいだなおい。
スンはほぼ水分だから、この手の技は天敵って事だな。
「きゅぅう…………きゅ!」
お、スンが本気モードになった!
アークもそれに気づいたのか、再度剣を持つ!
「きゅぅううう!」
「わっととととっ!」
うおぉおお、すげぇ!
スンの連撃にギリギリ付いていってる!
「きゅ!」
ビビビビィイイン!
「なぁっ!?」
うほ、スン器用になったなおい。
攻撃しながらスンビーム出したぞ。
…………あれどう防ぐんだよ。
しかしまぁこれは…………。
「決まったわね~♪」
「スンちゃんの勝ちっ」
「ぐぅうう……負けましたっ」
「きゅぃ~♪」
うん、可愛いな。
多分魔物の中じゃスンが一番変幻自在だな。
勿論ハティー、ガラード、スンの中でって事だぞ?
マカオがそうだったとしても、俺の実力じゃそれを見る事は出来ないからな。
しかしデュークとの戦いでもマカオは結構正統派な戦い方をするんだよなぁ。
そういう事なのかしら?
舞虎とトルソはまだ見てないからわからん。
「いやぁ参りましたっ。
連戦を言い訳に出来ない程の差を感じましたっ」
お、回復してる。
自己再生をデュークが教えたのか。
って事はレイアにも教えてるな。
……まぁそうか。
こんなに広まるとは思わなかったぜ。
え、アークが自己再生を使えるならもうちょっと戦っても良かったんじゃないかって?
地味に差があるからそれは仕方ないだろう。
多分俺と再会した時のスンなら負けてるわ。
「だってさトゥース」
「ったくよぉ、肩身が狭いぜ!」
「大丈夫だ、十分強くなってるよ」
「……ビアンカ、大変だ!
レウスが俺を褒めたぞ!」
こいつは俺をどう見てるんだ?
まぁ確かに面と向かって褒めた事はあまりないな。
「私と2人で話す時は結構褒めてるわよ?」
「き、気持ち悪い奴め!」
「お前に言われたくないわ」
「あぁ、そうだな!」
「お、おぅ……」
「ハッハッハッハッハ!」
機嫌が良くなったみたいだ。
「次は私の番なのだ!」
「おぉ、宜しいんですかっ!?」
「気残ってるのかい?」
「まぁまだ半分位はっ」
…………イイナイイナー。