第六十七話「元1位」
「元1位のオーディスだ」
2位って言えよ……。
オーディスはなんだろ……イケメンだ。
デューク的な爽やかイケメンじゃなく……一言で言えば濃いイケメンだ。
鼻が高く、彫りが深い。
髪は赤く短髪で、肌は色黒って感じだな。
イメージ的に……体育教師みたいだな。
ハーフエルフなのは前情報で知ってたが……600歳位か?
人間でいう30歳前後だろう。
剣は背中に……シンプルなバスタードソードタイプだ。
ガタイが結構良いな。
身長も190センチってとこか。
年取ったらマイムマイムみたいな身体になりそうだな。
服装は……普通の黒い冒険者的な服で、急所部分に金属的なのが色々付いてる。
急所へのダメージを減らす為だろうな。
これは勉強になる。
「そのガルーダ・ジュニアには案内を頼んだ。
もう用はない。
始末するのでそこをどきたまえ」
「……は?」
何をぬかすんだコイツはっ?
なるほど、皆が逃げた理由以上にコイツが怖がられてる訳がわかったわ……。
見かけたら斬りつけるんじゃなく、見かけたら殺すタイプだな。
昔のデュークもそうだったらしいが、こんな強引じゃないはずだ。
とんでもないのが1位にいたもんだ。
「あはははははっ、オーディスさんそれは困りますっ。
ガラードは僕の友人なんですからっ」
「レウス、あれは客じゃないのか。
私を殺すとか言ってるぞ」
「……ガラード、お前何て言われたんだよ?」
「デュークに会いに来たと」
「……いつだ?」
「脚を斬られた後だ」
…………。
「修行以外で斬られたら基本的に敵だと思え。
で、最速で逃げろ。
まぁ今回は言う事に従ったおかげで助かったがな」
「今度からは気をつけよう」
いや、前から言ってたんですけど?
まぁこいつの場合、言ってわかる時と、身をもって体感しないとわからない時があるからなぁ……。
あ、わかる時はアレだ、ご飯絡む時かもしんない!
「……友人?
……こいつが?」
「こいつではない、私の名前はガラードだ」
「俺の友人でもあります」
「……君は?」
「勇者ランキング38位のレウスです」
「ほぉ、君が魔王と呼ばれているレウス君か。
一度会いたいとは思っていたよ。
なるほど、魔物使い…………そういう事か」
何か嫌な感じの勇者だな。
ラスボス候補筆頭になるかもしれん。
「では、こいつの処遇については君達に任せよう」
「私はガラードだ」
「お前はちょっと黙ってろ。
キャスカ、セレナさん……もう俺がいなくても大丈夫だと思うので、少し離れた場所にガラードを連れて行ってください」
「わかった」
「了解だぞ!」
「ビアンカはラーナの所にいてあげてくれ」
「うんっ」
「トゥース、ビアンカに付いててくれ」
「おう」
…………セレナにお願いをするのは少し抵抗があったが、こいつのヤバさを肌で感じたらしいな。
「それで僕に何の用ですかっ?」
「今一度私と戦いたまえ」
「あれ、ランキング戦の申請はきてないですよっ?」
「野試合で構わん」
「嫌ですっ」
場が凍りついた。
なんだろう「ピキッ」って擬音と共に凍った感じだ。
デュークはいつも通りニコニコだが……。
なんか少し違うな……。
ちょっとドンファンに聞いてみるか。
「ドンファンさん」
「なんでござるかレウス殿?」
あ、小声で話してるぞ。
「あの2人……仲が悪いんですか?」
「実は……オーディス殿は強引な部分が多々あり、勇者内でもかなり不評なのでござる」
「デュークさんよりも?」
「レウス殿はデューク殿が不評だと思ってるのでござるか?」
「いや…………」
確かにデュークは嫌われてる様な感じじゃないな。
苦手って人はいるかもだが、明確に「嫌い」って感じる奴は少ないかもしれん。
しかし、勇者の中にもこんな奴がいたのか…………しかも1位だった奴。
相手が1位じゃ、あまり大きな声では言えんからな。
いや、何をされるって訳でもないと思うけど。
しかしそれでもちゃんと断るデューク…………さすが現1位だな。
「ほぉ、ではどうすればいいのかね?」
「ランキング戦の申請をお願いしますっ」
「……ちっ」
今舌打ちしたぞ。
俺もこいつダメだわ。
嫌い……というか好きになれそうにない。
「では別件の話をしよう」
「別件ってなんですっ?」
「どうやら自己再生の剣技を持ってるのはデュークしかいない様だ。
勇者存命の確率向上の為に、その奥義書を勇者ギルドに提供したまえ」
エミーダも持ってるはずだが……情報を回されてないのか。
かなり嫌われてるなおい。
中央国に何人も使い手がいるってのも知らないのか。
まぁ魔界にいるし仕方ないか。
オリジナル剣技ってのは基本的に秘匿にするもんだしな。
「それは僕が決める事ではありませんよっ」
「……デュークの原作ではないのか?」
奥義書だから原作か……オリジナルって言葉はないのね。
「レウス君の原作ですからっ」
「ほぉ……」
…………。
あれ、これってキラーパスなんじゃね?
勇者ギルドに提供する場合は、原作の俺じゃないといけないのか?
あげるのは任意なのに?
「レウス君、勇者ギルドの発展の為、是非自己再生の剣技を提供してくれないかね?」
「……か、考えときます」
「今答えたまえ」
おのれジャイ○ンめ……。
何て威圧的な目をしやがる……怖いじゃないか。
デュークに助け舟を求めるか。
「デュークさんどう思います?」
「君が決めたまえ」
ジャイ○ンより横暴だな……。
なんでコイツが右手回復を提供したんだ?
なんか納得出来ないな。
提供した事になんか裏がありそうだ。
ちょっと怖いが反論するか……。
「俺が決める為に、周りの意見を参考にするんです」
「……ちっ」
聞こえる様に言うなや。
「デュークさん、どうですかね?」
「レウス君が決める事だと思うけど?」
「意見と言いましたが、デュークさんだったらどうするのか……で構いません」
「んー、そうだねっ。
信頼した人にしか渡さないかなっ」
「ドンファンさんは?」
「某がレウス殿に竜牙の奥義書を渡した時を思い出すでござる」
…………デュークと同じ意見って事か。
確かに提供しても良いんだが、最近気づいた事がある。
奥義書が魔王に渡る危険性だ。
回復程度ならあまり渡っても問題ないんだ。
理由は簡単で、回復を使うのは基本的に戦闘後だからだ。
戦闘中に使える事もあるだろうが、相手より同等、もしくは速くなければ中々出来るもんじゃない。
戦闘中に使える自己再生が敵の手に渡る可能性があるのなら、これは提供しない方が良い様な気がする。
そして今回はオーディスの私欲だろ?
これはおそらく最強でありたいという欲望からだろう。
死なない為とかだったら共感出来るんだが、こいつにだけは渡さない方が良い様な気がしてならん。
勇者ギルドに提供したとして……例えば、西の国や南の国が滅びて、勇者ギルドに保管してある自己再生の奥義書が魔王サイドに渡る……。
考えたくはないが、こんなのは十分にありえるからな。
勿論、学友に渡した事を後悔してないぞ?
悪い奴はいないし、あいつらなら有効に使ってくれるはずだ。
あいつらがオーディスに渡すって可能性もなくはないが、オーディスはハブられてるから俺とデュークしか持ってないと思ってる。
いや、ドンファンが持ってる可能性を俺が示してしまったか……?
「ドンファン、お前は持っていないのか?」
「持っているでござる」
「では、取引をしないか?」
「御免蒙るでござる」
「……ちっ」
……俺の信頼してる2人がことごとく断る。
俺の場合は直感だが、2人はオーディスと面識があってこの対応…………。
やはり避けた方がいいか。
「レウス君、お邪魔させてもらうよ」
「……ガラテアさん」
「……ちっ、うるさいのが現れたな」
「ふっ、うるさくしてるつもりはないのだがね?」
「ガラテアさん、学校の方は大丈夫なんですかっ?」
「……あぁ、問題ないっ」
ん、なんだ今の間と「っ」は?
……あぁ、これはちょっとした暗号的なコンタクトだな。
ガラテアが学校の皆に情報規制を流したのをデュークが確認したのか。
……ガラテアがそうするって事は相当なんだなこいつ。
「やはり自己再生の件だったか」
「ガラテアさんも私の時みたくレウス君に協力しろと言ってくれませんか?」
「私の時……ってどういう事です?」
「オーディスの回復は私が提供させたのだ」
「へぇ……」
そういうカラクリか。
「本当にあの時を後悔してますよ」
「事実勇者の死者は減った。
それにあの時はオーディスも同意していたはずだが?」
「……っ」
「レウス君に意見させてもらうと、今回に関しては私は反対だな」
「なんとなく理由はわかります」
「うむ」
「……ったく、やっぱりうるさいじゃないですか」
「それはオーディスにとってだろう」
「まったく、口の減らない……」
「さ、話が終わったならオーディスさんは帰ってくださいっ」
「あー、デュークもこんなにうるさくなるなら面倒なんか見なきゃよかった」
「そんな繋がりがあったのでござるか?」
「昔ねっ、教わったのは1週間位だけどっ」
んじゃ俺は、オーディスの弟子であるデュークの弟子って事になるのか。
なんて贅沢なんだ。
しかし、デュークは師匠超えを経験したのか。
すげぇな……。
俺?
俺はいいんだ。
日本人らしく適当で。
いや、平穏までは超えるつもりで頑張りますよ?
「ではまた来るとしよう」
「オーディスさん」
「なんだねレウス君?」
「あなたの実力なら、魔物に一声掛けてからでも遅くはないと思います」
「なるほど、大した勇者様だな…………では失礼する」
……嵐パート2だったな。
「あはははっ、相変わらず怖い人だねっ」
「デュークさんでも怖いんですか?」
「自己再生が無いと勝てない人だよっ?」
「確かに恐ろしい……」
「学校の皆には知らせておいた。
この剣技については危険なので、あまり人に教えない様に……と。
無論それで制限が出来るわけではないがな」
「俺、結構ほいほいと教えちゃってますけど……」
「レウス君は別だよ」
「へ?」
「誰にでも教えてる様に見えて、信頼できる者にしか教えてない」
「そうですかね?
両手回復も魔石と交換してますよ?」
「あの時は私やイリス達の性格を知った上でだろう?
事実今回は教えなかった」
「今回のは……直感みたいなものですよ?」
「それで良い……その直感を信じたまえ」
「む、どういう事でござるか?」
「…………先日、魔王の中に両手での回復を使える者がいると報告を受けた」
「なんと!?
それは一大事でござるな」
「それは……つまり……」
「オーディスさんが魔王と繋がってる可能性があるって事だねっ」
「ガラテア殿、その魔王とは?」
「勇魔王ロキだ」
「確率がグンと上がったねっ」
「オーディスさんとロキは知り合いなんですか?」
「大親友だったんだよっ」
「そりゃグンと上がりますね……。
因みにその報告というのは……エミーダさんですか?」
「ほぅ、わかったかね?」
「ロキに対抗出来て、ガラテアさんに報告する人を、エミーダさんしか知らないだけです」
「トゥースさんのおかげで結構こっちに来てるしねっ」
「ふふふ、そうだったな」
「しかしこれはあまり話せませんね」
「いや、ここに住む者なら構わんだろう。
イリスとミカエルには伝えてあるが、学校の皆には言わない方が良いだろう。
一部の者にとってオーディスは神格化しているからな。
要らぬ混乱は避けたいのだ」
「実際の性格を知らないだけでござるな」
「あははははっ、そうだねっ」
オーディスの陰口を言ってるみたいだ……。
しかし、なんか不穏なアレだな。
学校の皆には言わない……しかし勇者ハウスに住む者には言っていい。
あれ?
…………学校の皆の半分は我が家にいるんですけども?




