第六十四話「気になるアイツ」
別件で気になる奴の情報だ。
現在のチャッピー達の順位はこんな感じ。
■青竜 25位
■チャッピー77位
あれだな、青竜が駆け上がって情報を集め、チャッピーは隠れ蓑にしてる感じなのかしら?
マカオの話だとそんな感じの可能性が高いとの事だ。
しかし、マカオはともかく、俺でもこの結論に行き着くのに冥王がそれに気付かないとは思えないな。
まぁ冥王に直接聞く訳じゃないんだろうが、大元はそこだからなぁ……。
気付いてるよな。
だとしたら情報制限とかするのかしら?
しかし、口外してるのか?
冥王がゲロっちまわない以外、俺を狙う理由を探すのは難しいのでは?
「そうだねっ」
「……そんなにわかりやすいですか?」
「そうだねっ」
「はいはい気をつけますよー」
「そうだねっ」
お昼の番組を観てる様だ。
あ、現在デュークと2人きりで修行……苦行中です。
俺も強くなってるが、デュークも強くなってる。
やはりこいつは影ながら努力をしてるのか、異常な戦闘センスの開花が更に起こったのかは不明だが、差が縮まる気がしない。
デューク曰く段々追いつかれてるとの事だが……。
まぁ寿命チートがある以上、いつかは追いつくんだろうが…………待てよ?
90歳のデューク対78歳の俺……。
なんか勝てない気がしてきたぞ?
ラスボスだったら諦めるって決めてるし、勝てなくても問題ないか。
うん、とりあえず吸収出来るものは吸収しておこう。
はい、夜でございます!
ガラードフォンが鳴りました。
リビングに急に黒い顔が出てくるとビビるな。
ニュッて出てくるからな……。
「レウスお客様だぞ」
「どちら様だ?」
「亀だ」
塩水でも欲しがるのかしら?
亀……?
「はい何でしょう?」
「初めまして、玄武という者です」
「え……?」
「下ですわ」
「下……」
「そうですそうです……もうちょいですわ。
はいすとっぷ」
「…………」
ちっっっっっっっっっさっ!!
買ったばかりのミドリガメかゼニガメかって感じの小ささだわ!
お祭りとかで1000円札括りつけられてそうな感じ。
体の大きさと声の大きさが比例してないぞ。
普通に聞こえるわ。
つーか甲羅がワニガメみたいにごつごつしてるだけで、後はミドリガメだわ。
こいつ強いのか?
「で、その玄武さんが何の御用で?」
「実はですね……あ、その前に塩水を1杯頂けませんか?
めちゃくちゃ喉が渇いてるんですわ」
「…………少々お待ちを。
……キャスカ、涙を少し…………いや、ダメか」
あ、この世界の塩水は少し高級だぞ。
海水はないから塩が高いんだ。
勿論岩塩から塩を採ってる。
海水ないのに岩塩がなぜあるのかとか思ったが、昔沈んでたとか考えればまぁ納得だわな。
ゴーレム系の魔物からも採れたりするんだぜ?
「スン、この岩塩細切れでよろ」
「きゅきゅー」
スン、の超細かい網状の刃で色んな角度から数往復ちょんぱ。
あの大きさだからな……コップ1杯で良いべ。
濃度は……塩90%位でいってみようか。
ほぼ塩水完成だ!
かき混ぜられなかったわ。
真っ白な水だこと。
「……どうぞ」
「こんなに沢山いいんですかっ?
まじ感謝ですわ」
玄武がすとっぷとかまじとか……。
まぁいいか、いつも通りだしな。
「んぐ、んぐ、んぐ…………ぷはぁ!
塩加減絶妙ですわ!」
喉渇く原因それじゃないか?
お前岩塩舐めてればええやん。
「あら、玄武ちゃんじゃない♪」
「きき騏驎もおったんかっ?」
言っちゃいけない名前になったな。
どもっただけだから気にするなよ?
この感じだとマカオの事が苦手なのか?
まぁ得意としてる奴の方が珍しいだろうけどな。
「1000年ぶりかしら?」
「会いたくなかったですわ」
「仲悪いの?」
「この人飛べるんだけど、飛べるのは少しの時間だけなの。
だから昔に口に咥えて運んであげたんだけど、その時飲み込んじゃったのよ♪」
「うん、お前が悪いって事はわかった」
「あの時は必死で騏驎の食道を駆け上がりましたわ。
消化されたらかないませんわ」
「んで、玄武さんはどんな御用事で?」
「ここに来れば名前が頂けると舞ちゃんに聞きましてな。
急いで駆けつけた次第ですわ」
……その足でか?
どうやって駆けたんだろう?
トカゲみたいな動きなのかしら?
ていうか名前って他の奴ら付けられないのか?
舞虎に付けてもらえないのだろうか?
俺のネーミングセンスは皆無と言っていい程なんだがなぁ。
「……名前ですか。
うーん、名前名前……」
「期待してますわ」
亀……タートル……玄武……。
塩……ソルトか。
タートル……ソルト……。
「トルソでいかが?」
「いただきますわ」
語尾に「わ」が付いてるが女みたいな喋り方じゃないぞ。
そうだな……ゆでたまごが好きそうな人をモノマネしてる感じの喋り方だな。
「トルソちゃんは名前貰いに来ただけ?」
「いいえ、永住するつもりで伺いましたわ」
今さらっと変な事言わなかったかコイツ?
「騏驎がいるのは予想してませんでしたが、まぁ仕方ありませんわ」
「……なんでそんな話になってるんです?」
「青竜ちゃんとチャッピーちゃんの了解を頂いたからですわ」
「…………」
ついに住んでない奴が居住を許可しはじめたぞ。
……まぁこの大きさだし問題ないか。
塩水の水槽でも作ってやるか。
あぁめんどくせ。
ついに四神の1人まで来ちゃったよ。
こいつサルモネラ菌とかもってないよな?
皆に手洗いの徹底を心がけさせよう。
「はい、新人さんです。
仲良くしてやってください」
「すんません、やっぱり帰ってもいいですか?」
「…………狂人の事ですか?」
「あんなバケモンいるとは思いませんでしたわ」
「チャッピー達から聞いてません?」
「去り際ニヤニヤしてたのはきっとこのせいですわ」
「でしょうね」
「バケモンかっ。
人間なのに変な言われ方だねっ」
「別に引き止めるつもりはありませんけど、話せば結構わかってくれますよ?」
「じゃあいますわ」
「…………」
嘘言えば良かったか。
四神の中でも最弱だが、チャッピーやマカオよりは強いらしいし、居て困る事はないだろう。
この身体の大きさで強いとか想像出来ないけどな。
「ところで、チャッピー元気にしてました?」
「あぁ、伝言ありますわ」
それを先に言えし。
「手紙でもよかったんですが、私の身体に余る大きさだったので諦めましたわ」
持とうとしないで咥えて来いよ。
チャッピーより強いならそれなりの腕力……首力あんだろうが。
「……それで何て?」
「えーっと……。
《我、早くレウスに会いたい。
寂しいぞ。
いつになったら会える?》との事ですわ」
疎遠になった彼女みたいな事言ってきたな。
しかも最後が質問形式かよ。
俺が返信出来ると思ってるんじゃないか、アイツ?
しかも恥ずかしげもなく、よく人に言えるなこの内容。
ほら、最狂が笑い出した。
「やはりあの竜は面白いな」
やはりセレナも真顔で言ったぞ。
「レウス、その竜とはどういった関係なのだ!?」
「ハティーには言えない様な深い関係だ」
「そそそそうなのか!?」
「そそそそうなのだ」
「ぬ、ぬぅ……」
「ハティーちゃん、レウスにとってスンちゃんみたい人よ♪」
「おぉ、妻候補ではないのだな!」
ありえんだろう。
《僕も久しぶりにレウスと一緒に寝たいよ》
天使のわがまま。
まじ許すわ。
「んじゃ今夜おいでやす」
「きゅいー♪」
え、ここ最近の妻達の進展度?
やっぱり気になるもんかね?
えっとね、2人きりで寝る様にはなった。
ビアンカとはあれから十数回ピーをいたしております。
相変わらず積極的です。
キャスカとはまだズキューンしてないです。
キスまでだな。
俺の鼻下が鼻水まみれになるのは御愛嬌だ。
最初なんか大変だったんだぜ?
あいつ俺のベッドに入らないで、ずっと立ったままでいやがって、結局俺も寝落ちしちゃってさ?
朝起きたらまだ立ってたよ。
そこから、今日は布団につま先まで入れてみよう……とか。
今日は膝まで……え、足首まで?
今日は両膝を……え、片膝と片つま先まで?
両肩が布団に入るまで4ヶ月かかったわ。
ギャグだろ?
俺もそう思う。
しかし緊張でガチガチのキャスカを見ればわかってもらえるだろう。
見れない?
想像し創造しろ。
キミなら出来る☆
ハティーはだな…………アハーン手前まではいったかな。
覚悟は出来てるらしいのだが、俺が何かをする度に「それはなぜそうするのだ!?」って色々聞いてくるからもう大変でしてハイ。
性の事について色々勉強中だ。
俺もビアンカからの情報や生前のエロ孔明知識のみだからな。
なかなか難しいが徐々に進行中だ。
そして俺の部屋に来る順番は……なんとジャンケンだ。
どうやら妻の中で弱肉強食の理があるらしい。
勝者だけが伺える小屋。
それが俺の部屋だ。
おもしろい妻達だ。
「スン、今日は私の番だったんだぞ?」
「きゅぅ……」
「キャスカがよければ3人でもいいぞ」
「ふふ、勿論問題ないぞ」
「きゅいー♪」
「レウスさん、私の寝室はどこですか?」
「……布団で寝るんですか?」
「居候の身になりますから敬語は結構ですわ。
せっかく住めるのであれば自分の部屋は欲しいですねぇ」
プライベートもあるか……。
まぁ玄武ですし……。
あ、因みにマカオはリビングまで入って来れるが外で寝てるぞ。
ガラードと地味に仲良しだ。
「俺が使ってた部屋があるから…………ここを使ってくれ」
「わかりましたわ。
どうもありがとうございます。
あ、部屋に水槽なんか置いてあります?」
普通は併設されてないんだ。
「明日買いに行くよ……トゥースが」
「俺かよ!?」
「あぁキミだ」
「ったく、玄武さんだっけか、どんくらいの大きさがいいんだい?」
「そうですねぇ……あなたの身長位でお願いしますわ」
贅沢なミドリガメだ。
「わかった、ドアに通るギリギリ位の大きさのを買ってくるよ」
「砂利や木、手頃な石なんかも欲しいですわ」
なんて贅沢なミドリガメだ。
そもそも玄武って蛇的なアレも付いてるんじゃねーの?
なんでただの亀なんだよ。
翌日、トゥースがバカでかい水槽を買ってきた。
本当にドアギリギリの大きさだわ。
水の取り換えが面倒だなとか思ったら、トルソが入ってると水が浄化されて綺麗になるから注ぎ足しだけで良いそうだ。
便利な奴だが、そんなご都合微妙じゃね?
いや、きっと魔界に人間の足じゃ越えられない毒沼とかあって、コイツが一っ風呂浴びれば浄化されて通れる……そんなイベントがあるはずだ。
ガラードで飛べばいいけどな。
俺もう飛べるし。
あ、飛べる事に関して少し話しておくか。
残念だが、あれは戦いには使えないな。
人間に空での戦いは無理なんじゃないかって思う。
3Dのゲームとかを思い出してくれ。
右のスティックで視点を変えると首まで動いちゃうアレ。
あんな感じが飛んでる最中ずっとだ。
慣れればいける?
いやぁ、あれはホント真っ直ぐ速くって位しか無理だ。
方向転換くらいならギリいけるが、とても自由自在ってのは難しい。
これは多分、遺伝子レベルで空中感覚が人間にないんじゃないかって思うわ。
ってわけで、ただ飛べるだけ……だな。
もう少し使い勝手が悪かったら、ウェポンエンチャントした事を後悔してたところだ。
普通に使えるが戦闘では無理。
日常生活に支障はないみたいな感じだ。
まぁそんなわけで――
「あー、レウスさん」
「ん?」
「多分数日以内に、青竜ちゃんがレウスさんに挑みに来ますよ」
…………それを先に言えよ。