第六十一話「仲間に……したかった」
感動の再会も卑猥な発言で台無しだなおい。
「うふふ、そんな顔すると思ったわよ~?」
「きゅーっ!!!」
「あらあら、スンちゃんも元気そうね♪」
「……こんなとこで何やってんだよ、マカオ」
おのれ、泣きたくても泣けないぞ。
よくぞまぁ生きててくれやがってからに。
「あら、やせ我慢しちゃって~♪
本当は嬉しい癖に~?」
「……そうだな」
「あら、そこは素直ね?」
「きゅきゅー、きゅきゅうぅうきゅう!」
「レウスの妹さんっ!?
やだわ、可愛いじゃない…………うふふふふ、食べちゃいたいわ♪」
くそ、どっちもいけるのか。
しかし、テレスの手前男として泣けん。
夜泣くわ、泣いてやるわ!
「マカオ殿は私を食べるんですの?」
「あら、食べて良いの?」
「出来ればご遠慮願いたいですわ」
「じゃあやめとくわ♪」
「……で、こんなとこで何してんだ?」
「あらアタシの探してる魔石がここにあったからよ」
「お前、上抵抗の魔石なんか探してたのか?」
「何言ってるのよ、魔物にとって気の攻撃は怖いものなのよ~?
……そういえばアタシ、レウスに気の事教えたっけ?」
「会った時に教わってれば、今までもう少しだけ楽が出来てたな」
「うふふ、冗談よ♪
チャッピーと話し合ってあえて教えなかったの♪
気に頼りきった戦い方になっちゃうでしょ?
気が枯渇した時が一番大事なのよ」
「けど気を使えば体力が――」
「体力は向上するけど、体術は身体に染み込ませないと意味がないじゃない♪
だからソッチを優先させたの♪」
「まぁ確かにそうだな……」
「で、上抵抗以上の魔石があるって知ってるのか?」
「勿論知ってるけど、中々見つからないのよ。
レウス持ってるの?」
「今持ってるぞ」
「レウス~、イイコトしてあげるから……ね?」
「気持悪いぞ。
あげるからそれはしなくて良い」
「さすがレウス、わかってるわね~♪」
「んで、外にいないって事でわかってはいるが、チャッピーのその後は知らないんだな?」
「えぇ、あの後目立たなく小回りの利く私がデュラハンを引き受けて、チャッピーは少し傷を負ってたから魔界へ行ったと思うわ」
「マカオは大丈夫だったのか?」
「軽傷だったけど一応魔界の朱雀ちゃんの所へ行って治したわ」
「朱雀……?」
「あの子自分は治せないけど、他の子を治せる力があるのよ♪」
「チャッピーもそこに?」
「それはないわね」
「なんでだ?」
「朱雀ちゃんがチャッピーにぞっこんで付きまとうからよ。
チャッピーはそれを嫌がってるの。
レウスは知らないかもしれないけど、チャッピーによく朱雀ちゃんから手紙がきてたわ」
朱雀はメスでチャッピーのストーカーらしい。
いや、だった……か。
「友達で申し訳ないんだが、この前朱雀が勇者の2位に殺されたらしいぞ」
「あらま…………じゃあ、100年経たないと会えないわね」
「……やはり不死鳥なのか」
「……よく知ってるわね?」
「まぁ良い、後で色々話すよ」
「そうね、とりあえずココを出ましょ♪」
「きゅいー!」
「残念ですわ」
「あはは、テレスは魔石よりも経験したかった感じだな。
今回はこんな風になっちゃったけど、また行こうな」
「もももも勿論ですわっ!」
「あらららら~?
レウスったらどうしちゃったのかしら~ん?」
「へん、妻も3人いるぞ」
「まっ、レウスのロストヴァージンねっ!」
なんで英語が絡むんだよ……。
ちょいちょい魔物は英語使うな……。
ハティーはポルトガル語か。
ガラードもチャッピーもだな。
謎い。
スンもQって言ってるとかは言わないぞ?
まぁ、ソードとかオーラとか出てる時点であるっちゃあるか。
これは……多分ご都合って事で許してくれるだろう。
「それはどういう意味ですの?」
「きゅ~?」
「2人はまだ知らない方が良い事だ」
「そうですの?」
「きゅぅ?」
「レウス止まりなさいっ」
「ん?」
「出入口に巨大な力の持ち主がいるわ……」
「もう1人いないか?」
「……いるわね。
スンちゃんと同じ位かしら?」
「きゅきゅい?」
「両方知り合いだ」
「あら、なら良かったわ♪」
「危ない奴だから先に俺が出るよ」
「怖いわね〜」
「後で良い技教えてやるよ」
「寝技かしら?」
「それはお前の特技だろ」
「レウスす〜ご〜い〜♪
何でわかったの〜っ?」
再会して数分だが、もう殴りたいわ。
今夜は馬刺しだな。
「アハハハハハハハッ、半分目的達成だねっ、レウス君っ」
「レウス、お弁当!」
「あらあらレウス〜、大物と知り合いなのね?」
「やはり魔界でもこの人は有名なのか」
「勿論よアタシの中のイイ男だけど会いたくないランキング第2位だわ」
「会いたくない理由はわからないでもないが、最近は話をすればわかってくれるぞ」
「あらそうなの?
じゃあランキング除外しておくわ」
「マカオさんだねっ、除外してくれてありがとうございますっ」
「イイ男は基本正義よ♪」
「騏驎か……子供の頃見かけて以来だな。
それよりご飯にしよう」
「うふふ、ガルーダ・ジュニアね?
親にそっくりだわ♪」
親もご飯LOVEだったらしいぞ。
「テレス、ご飯にしようか?」
「うぅ、足りるか不安になってきましたわ……」
「あら、それならアタシはお弁当箱でも大丈夫よ♪」
「へ?」
相変わらずの悪食だな。
だからどちらでもイケるのか……。
テレスのお弁当はやや濃かったが美味い料理だった。
まさか馬刺しが入ってるとは思わなかった。
さすが妹だ。
俺の好み……というか気分をわかっていらっしゃる。
きっとキャスカからよく馬刺しを食べてたとか聞いたんだろう。
因みにマカオのイイ男だけど会いたくないランキング第1位は、勇者ランキングの1位と並行してオーディスらしい。
なんでも魔物を見かけると斬りつける癖があるようだ。
魔界に魔物勇者連れてけねーじゃん。
まじ怖いわ。
マカオとは色々話した。
転生の話も含めてな。
朱雀からの情報はマカオから聞けた。
一つだけだがな。
命令を出してる一番上は魔王ランキング第2位の冥王ヘル・デスらしい。
理由は知らないとの事だ。
って事は、俺が狙われなくなる為には魔王の2位以上の力……つまり勇者の1位〜2位の実力になるか、それ相応の実力を持った人との繋がりが…………出来つつあるな。
ぶっちゃけこの世で一番強いのは魔物だと思う。
何たって魔石無しであの強さですから。
で、魔石付けられるんだろ?
多分チャッピーやマカオが神系統の魔石とグロウストーンを付けたら、余裕でランキング1桁台だろう。
もしかしたら無理かもしれないが、デュークの見たてでは余裕だそうだ。
マカオには特抵抗と神速とグロウストーンだな。
マカオが着けてた黄金魔石のネックレスから結構色々出たそうだ。
別れてから24ヶ月……24個だ。
まぁそれは後程書こう。
その24個の中に特抵抗ないのかしら?
さて、マカオを勇者ハウスに当然連れ帰ったぞ。
やっと再会した仲間が「まだ無理」とか言って、またどっか行ってしまうってテンプレはない様だ。
魔石でマカオを強化したら多分デュラハンが来ても結構ヤり合えると思うとの事だ。
チャッピーもマカオもスピード系の魔石を着けてたおかげで、かなり助かった様だった。
なかったらヤバかったって事だな。
魔石マジ感謝。
……魔物を従えてるとは思ってないが、やはりこれが理由なのかしら?
魔石を着ける事を嫌がる魔物、効果を知らない魔物に魔石を着けさせてるからな。
因みに前者はチャッピーで後者はハティーだ。
チャッピーは魔石なんかって思ってたし、ハティーは卑怯だとか言ってたしな。
確かに俺が助言し、俺の近くにいる魔物が魔石を着け始めたらそれは2位の冥王ヘル・デスにとって脅威だろう。
でもそうなると赤ん坊の頃から狙われてたって理由にならないんだよなぁ……。
それが成立するとなると、俺が魔物使いになる未来が見えてたって事だ。
未来が見えてるなら俺を殺しそこねるって失敗はしないはずだ。
冥王ヘル・デスにとってこれはオプションで付いてきた脅威なのかもしれん。
別の理由も確かにありそうだ。
5000年生きてるマカオも冥王ヘル・デスについてはほとんどわからないらしい。
謎だらけだな。
マカオと再会してキャスカが号泣。
遠目でわかる程、鼻水ランスが地面を刺してた。
脱水症状にならないのかしら?
後で水分摂らせよう。
そんなキャスカを見てデュークが笑い、セレナが木製のバケツを用意してた。
マカオもキャスカに会えて嬉しそうだった。
後はあの寂しがりやだけだな。
あいつは戻ってくるのかしら?
それをマカオに聞いてみたら戻ってくる可能性は低いそうだ。
あいつは俺が大好きだから、傷が治っても魔界で情報を集めまくるだろうってさ。
勿論、俺を殺させない為だ。
理由さえわかれば対策が容易だったりする場合が多いからな。
馬鹿たれめ。
本当に馬鹿たれめ。
…………再会したら色々褒めてやろう。
そして角をくれないか再度聞いてみよう。
聞くだけはタダですから!
頑張って肉体改造しよう。
マジで強くなってやる。
小指でチャッピー倒せる様になってやんよ。
ごめん、ちょっと言い過ぎたかも。
小指は無理かもしんないな。
とりあえずマカオと散歩しつつ案内だ。
「ところで良い技って?」
「あぁ、これこれ」
「奥義書なんて1000年ぶりかしら……。
あら、これスゴイわねぇ~」
「使わなくてもわかるのか?」
「……説明が難しいわね。
わかるというより……使ってるからわかるって感じかしら?」
「発動せず使う……?」
「頭の中でイメージするだけ♪
ちょっとコツがいるんだけどね~」
「頭の中で使うと自分の技になっちゃうのか?」
「いいえ、だから便利なのよ。
でも、これくれるんでしょ?」
「あぁ、勿論」
って事は、入学の時ガラテアはそうしてたのか。
自分の技になってたとして、持ってる技だったら奥義書が燃えるはずだからな。
イメージで技を……難しすぎて無理そうだな……。
これは剣技じゃないだろうしな。
それよりも強さに意識を置こう。
あぁ、因みにマカオにあげたのは自己再生と自動回復だ。
自動回復はこの前修得したばっかだけどね。
「そういやお前……」
「ん、な~に?」
「とんでもないエルフ言語仕込んでくれたな」
「あら、アタシらしさが出てたでしょ~?」
「おかげで直すのが大変だったわ」
「あら直しちゃったの?
うふふふ、頑張ったわねぇ~♪」
「その頑張りの時間は肉体鍛練に当てたかったぜ」
「そうね、じゃあ1本やりましょうか?」
「おぉ、いいのか?」
「許可をとる間柄じゃないでしょ~?」
「まぁな」
「すっかり剣2本が定着したみたいね♪」
「あぁ、だいぶ助かってる」
「じゃあ、いらっしゃ~い♪」
ギャラリーは黒騎死連中とスンとテレス。
久々だな。
相手になるのかしら?
修行開始!
色々あった。
修行終了!
戦闘描写?
あいつがめっちゃうざくて集中出来なかったわ。
いや、集中出来ないのは俺のせいなんだけどな?
それを言い訳にしたくはないですけどね?
あいつ「はい、1本♪」を連呼しながら俺の尻蹴ってきやがる。
それはまだ許せるんだが、その後に吐くセリフが不快だ。
良いお尻、逞しいお尻、プルンプルンね、あぁイイッ! とかもう、俺のモチベーションが……。
何が「イイッ!」だ。
良くないわ。
カイネルは苦笑しながら兜カタカタさせてたし、テレスは俺の尻ばっか見てたし、スンは《上だよ上!》とか応援してたけど、そんなスンボード見る余裕なかったわ。
オカマは相変わらず速いわ。
「レウス、成長したわね~……色々と♪
うふふふふふっ♪」
下半身見ながら言われても俺は反応しないぞ?
「どんな感じだ?」
「そうねー、勇者の序列の強さはあまりわからないけど、やっとアタシの足下……ってとこかしら?」
「そうかっ!
足下まで行ったかっ!!」
「あら~、アタシの足がそんなに好きなの?」
「…………あぁ、齧りつきたいと思ってたよ」
「……必死ねぇ」
マカオの足下がようやく見えたそうです!
ちょっとスンに抱きついてきます!




