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第五十八話「なんとも言えない」

 2位って言ったらエミーダ・カトルスか。

 確かガラテアの弟子で、二刀流で、魔王情報マニアじゃないか。


 ……その2位が我が家のリビングのソファーに腰掛けております。

 威圧感……皆無だ。

 キッとしてる分、少し圧がある位か?


 ハティーと同じ位かそれより小さいかじゃないか?

 ハーフエルフで、身長は130センチくらい?

 胸は皆無で美人だがキツイ印象。

 確かに二刀流だが、俺の剣よりかなり短いのが2本。

 いや、これはダガーの二刀流か?

 服は簡素な緑色の服……というよりパジャマみたいだな?

 かなり若く見えるが、ガラテアの話だと200歳は越えてるとか?


 例のごとくいつのまにかリビングにおった。

 窓から出てるからいけないんだな。

 今後は普通に玄関から出よう。


「初めまして、レウスです」

「エミーダ・カトルスだ」

「お久しぶりです、エミーダさんっ」

「デューク……いつまでこっちにいるつもりだ?」

「レウス君の強さを20位台にはしたいんですよねっ」

「レウス……43位だったな」

「はいっ」

「レウス、立ってみろ」

「え、こうですか?」

「回って」

「……はい」


 ワンと言えとか言われるのかしら?


「……ふむ、現段階で35位に届かないというところか」

「ええ、僕もそう思いますっ」


 だそうです。


「後3年はかかるんじゃないか?」

「1年でもっていきますよっ」


 え、あの狂人怖いんだけど?


「まぁいい。

 難しいと思うがやってみろ」

「勿論っ」

「ふむ、最近は魔王の動きも消極的だ。

 1年位なら大丈夫……か」

「みっちり()ればすぐですよ。

 なんたって僕の弟子ですからっ」

「レウス、よくこいつの弟子になんてなったな?」

「ガラテアさんが理想だったんですけど、追い込まなきゃ死んでしまうので……」

「レウス君、それは追い込んで良いって事かいっ?」

「十分追い込まれてると思いますけど?」

「レウスの言う通りだ。

 お前の手加減は、勇者から見ても過酷な修行だろう」

「えぇ、ホントかいっ?」


 突っ込まないし突っ込めないぞ?

 エミーダか……。

 なんか普通な感じだな。


「ところで今日はどうしたんですっ?」

「ガラテアさんに挨拶と……報告だな。

 すぐに戻るつもりだが、良い報告があったのでな。

 思わずこちらへ帰って来てしまった」


 帰って来たって事は中央国の出身なのか?


「良い報告ってなんですっ?」

「昨日、魔王の9位を仕留めたんだ。

 これだけでかなり魔王バランスが崩れるぞ?」

「アハハハハッ、レウス君残念っ」


 魔王の9位?

 炎帝朱雀ちゃんだよ。

 白虎の舞虎(まいこ)さんのマブダチで、俺に関する情報を聞き出せそうな唯一の魔王です☆

 やってくれたなコイツめ。


「残念とはなんだ?」

「レウス君は白虎と友達なんですよっ」

「ほぉ?」

「で、どうやらレウス君は赤ん坊の頃から魔王に狙われてるみたいで、その理由を知ってそうな上位魔王の朱雀に、白虎が聞いてくるって約束をしてたんですよっ」

「そういう事か……レウス、すまない事をした」

「いえ、それが勇者の仕事なので仕方がありません」


 あれから半年経ったから舞虎が既に朱雀に会って情報を手に入れてる可能性もある。

 まぁあれから舞虎がこっちに来ないって事は、その可能性は限りなく低いな。

 朱雀登場を楽しみにしてた皆様ごめんなさい。

 悪いのは俺じゃない、エミーダだ。

 一応謝る日本人の俺。


「しかし、ここには驚かされたな」

「外で騒いでるあの3人の事ですか?」

「3「人」か……。

 全員が全員あぁなれれば良いんだろうがな」

「そうですね」


 今、スン、ハティー、ガラード、キャスカは外で鬼ごっこをしてる。

 3人って言ったけどキャスカを数に入れなかっただけだぞ?

 鬼ごっこは勿論俺が教えた遊びだ。

 常時キャスカが鬼だけどな。

 転んで泣いて、常時鬼で泣いて、見かねたスンが鬼になってあげる。

 なんとも微笑ましい。

 エミーダから見たらなんとも異常な光景なんだろう。


 ドンファンとセレナは買い出しで、トゥースはダンジョンに行って、ビアンカは部屋でラーナを寝かしつけてる。

 因みにラーナは1歳だ。

 生まれたのが風の月(11月)だから、空の月(1月)で歳が変わるこの世界は、生後2ヶ月でも1歳だ。


 そう思うと昔の元服システムって大変だわな。


「ところでレウスは何故魔王と呼ばれてるんだ?」

「魔物使いの王太孫(おうたいそん)を略されてるだけです。

 中央国の王族だってのは公表してないですけど……」

「なるほど、そういう事か……」

「やっぱまずいですよね?」

「いや、「ジャコール」で話題になっているだけだ。

 面白い奴が現れたってな」

「アハハハッ、確かに面白いよねっ」


 面白い位に困ってますよ?

 風評被害ですよ全く……。

 あ、ジャコールってのは魔界唯一の人間の町の名前だ。

 学校の授業で習った。


 最近学校編がない?

 あの勇者達は使い捨てなのかって?

 そ、そういう言い方はよくないぞ。

 いつかきっと……そう、いつかきっとだ。


「おう、レウス!

 今戻ったぜ…………あぁ?

 誰だい、この可愛いお嬢ちゃんは?」

「…………だ、誰だお前は?」

「勇者ランキング101位のトゥースってもんだ。

 お嬢ちゃんの名前は?」

「……勇者ランキング2位。

 ェミーダ・カトルス……だ」


 …………。

 エミーダの顔が超赤いぞ?

 いや、そういう(サブ)イベントいらないから。


「ランキング2位ぃっ?

 ハッハッハッハ、ミーダ嬢ちゃんは勇者様か!」


 どうやら最初の「ェ」は聞き取れなかった様だ。

 そしてトゥースは信じてないな。


「トゥース、「エミーダ・カトルス」だ。

 そして本当に勇者の2位だ」

「……まじか?」

「まじだよトゥースさんっ。

 あとエミーダさんは200歳を越えてるから、「お嬢ちゃん」はマズいんじゃないっ?」

「いや、良い……」

「へっ?

 あぁ、そういう事かっ」


 どうやら狂人も気付いた様だ。


「じゃあレウス君っ、トゥースさんとエミーダさんに留守番を任せて、僕達は修行に行こうかっ!」

「ソーデスネー」

「あぁん?

 良いのかよ置いてって?」

「トゥース、良い機会だからエミーダさんに色々教えてもらえ」

「おぉ、そうだな!」

「デューク、レウス…………感謝する」


 恥じらいはないみたいだな。

 肉食系だ。

 まぁそうじゃなきゃ魔王マニアにはならんか。


 次回の「幼女と野獣」をお楽しみに。


 ……嘘だからな?

 もうないと思うぞ?





 ここ数日でトゥースと戦ってみた。

 やはり強くなってる。

 凄く野性的な戦い方になってるな。

 前は直線的な感じだったけど、変幻自在な感じだ。

 まぁゴチョウやマイガー達と毎日戦ってればこうなるか。

 既にキャスカより強い。

 多分80位前後ってとこだろう。

 気の達人(オーラマスター)の事を教えたら早速使いまくってた。

 あれがこなれて、神系魔石が入れば70位前後になるんだろう。

 負けてられないわ。








 はい、夜です!

 今日の切断回数は3回!

 俺の血がぁあああああ!

 って事で肉ばっか食ってます。


 修行から帰ったらエミーダはいなかった。

 トゥース曰く魔界に帰ったそうだ。

 登場早々に好きな相手が出来たらファンがつかないんじゃないか?

 まぁ2位だしな、勝手に活躍するだろう。


 なんかトゥースが神速の魔石を2個、神技の魔石を1個、神力(しんりき)の魔石を1個持ってた。

 どうやらエミーダに貢がれたらしい。

 え、ずるくね?

 俺結構苦労したんだぜ?



 そういやデュークに少し嬉しい事を言われたぞ。


「最初に戦った時よりかなり斬りにくくなってるよっ」


 だそうだ。

 これは成長の実感だな。

 まぁ、毎日斬られてるわけじゃない。

 あいつ俺の血の総量を知ってるんじゃないか?

 ギリギリ大丈夫な範囲で斬られてる気がする……。





 チーン!


 ふざけた音が鳴った。

 さて、ランキング戦か魔王か強い魔物か……。


 《勇者ランキング55位 モディアム 死亡確認》


 ………………。

 俺が最初に挑もうと思ってた人だわ。

 俺が見た時50位だったから魔界に行ったのかしら?

 50位の実力者が人界で死ぬって事態は滅多に起こらないからな。


 うーん、毎回これには慣れないなぁ……。

 勇者が101人になると誰か死ぬジンクスでもあるのかしら?


 あぁ、死ぬのは嫌だなぁ……。

 うん、こんな時は寝るに限る。

 よし、おやす――おはよう。



 なんかこれ久しぶりじゃね?


 さて今日は学校だ。

 最近行ってないような感じになってたかもしれんが、ちゃんと一日おきに行ってるぞ?


 ガラガラガラっと。


「おはよー」

「「「…………」」」


 何か空気が重いな?

 俺なんかやっちゃった?


 モディアムが学友だったとか?

 なんかケミナが俺を見た途端……泣いた?



 チチチチーン!


 皆の勇者証明(ブレイブカード)が鳴った。


 なんぞ?


 《勇者ランキング68位 ラスティ 死亡確認》

 《勇者ランキング54位 グランダル 死亡確認》


 …………。

 ……まじかよ。




「きゅぅ……」

「……」

「レウス……グランダルさんとラスティさんが……」

「……あぁ」











 2人の勇者が死んだ。

 詳細はこうだ。

 ノエル、ケミナ、グランダル、ラスティでダンジョン攻略に向かった。

 黄金魔石が眠ってるってダンジョンをケミナが偶然見つけたらしい。

 勇者ギルドにまだ届いていない情報だったから、急いで支度して攻略に向かったそうだ。

 最初ケミナ1人で潜ろうとしたらしいが、出会った最初の敵がセカンドレベルの魔物だったって事で一時退避。

 ケミナがノエルに相談し、ラスティとグランダルが近くにいたので協力を相談した所、2人は快く了承したそうだ。

 確かに黄金魔石なら勇者にとっては欲しい魔石の一つだろう。

 本来であれば協力する以上、分け前が発生するんだろうが、ノエル含む三人はボランティアで付いて来てくれたらしい。

 さすが勇者だわ。

 ……あとはもう大体はわかるだろ?


 最奥にフォースレベルの魔物「ショーグン」がいて、ノエルとケミナを逃がす為に2人が時間稼ぎをした。

 ショーグンは前にキャスカが倒したブジンの強化版みたいな奴だ。

 豪華な鎧を着ていて、持ってる剣は「将軍の剣(ジェネラルソード)」っていわれる魔石限度数5のレア武器だ。

 ダンジョンから脱出したケミナとノエルは二手に分かれて、イリスとミカエルの所へ走った。

 ダンジョンは中央国の南側にあり、イリスとミカエルの家が南区にあるからだ。

 北区なら向かうのは、勇者ハウスもしくはガイの所、それか勇者学校なんだろう……。

 昨日は休日だから学校にいるのはガラテア位だろう。


 イリス、ミカエルは不在だったそうだ。

 しかしストームと偶然会った。

 すぐにストームとノエルがダンジョンに走り、ケミナは次に近いとするガイの所まで向かった。

 ストームにノエルが付いたはダンジョン案内の為、ケミナがガイの所へ走ったのはストームで対処出来るか分からなかった為だ。

 なにせフォースレベルだ。

 ガラードがフォースレベルだから、それを相手にする様なもんだ。

 勿論これはストームの指示だ。

 長く生きてる分、状況対応能力は非常に高い。


 ストームがダンジョンに潜った時はもう遅かったそうだ。

 グランダルとラスティの亡骸を横目にストームが奮闘した。

 ノエルは一瞬取り乱したそうだが、勇者の序列がまだ低いだけで戦士時代を積んでない訳じゃない。

 人の生き死には経験してるんだろう。

 すぐに感情を押し殺し、状況に対応したそうだ。

 ストーム1人だけだと危なかったらしい。

 ノエルが援護し、ストームが直接戦闘。

 俺があげた自己再生にめっちゃ感謝してた。


 倒すまでには至らなかったが、救援のガイが到着して撃破成功。

 ケミナならダンジョン攻略を口実に俺を誘ったかも?

 今回は俺を驚かせたい系で誘わなかったようだ。


 ケミナがダンジョンを偶然見つけなければ。

 俺を……ランキング上位の奴を誘ってれば。

 全員で戦っていればもしかしたら……。

 イリスとミカエルがすぐに見つかれば。

 ダンジョンが北区にあれば。


 こんな事にはならなかった。


 たられば……これが意味のない事は知ってる。

 ここにいる奴らは人の「死」に対して強い連中だ。

 戦士ギルドの顔見知りが、ある日突然いなくなる……そんなのは日常茶飯事だ。

 ケミナが泣いてるのは自分のせいと感じている部分があるからだろう。

 俺だって学友が死んだ事は悲しい。

 だが前にも言った通り、人は「いつ死ぬか」じゃなく「どう生きたか」だと思う。

 グランダルとラスティは全滅必至の中、2人の勇者の命を救った。

 これまで結果的なものも含め、どれだけの命を救ってきたんだろう……。

 凄いの一言だけじゃ片付かないよな。

 仮に俺があの2人と同じ実力で、同じ事が出来るかって言われたら……即答出来ない……訳じゃない。

 その覚悟はもう決まった。

 決まったのはついこの前だけどな。

 即答出来ないのはなってみなきゃこの覚悟が本物かってわからないだけだ。

 チャッピーとマカオはそれを簡単にやってのけた。

 グランダルとラスティも勇者だった……いや、やはりこの勇者って「記号」で言ったらダメなんだろうな。

 素晴らしい人間だった。


 やはり人の死には慣れない。

 身近な人なら尚更だ。

 チャッピーとマカオが死んでたら俺はどうなるんだろう?

 スンが、キャスカが、ビアンカが、トゥースが、ハティーが、セレナが、ガラードが……。

 どう感じるんだろう……。


 ……むぅ、いかんいかん。

 こういうのは考えちゃいかんのだ。


 しかし、やはり勇者はタフだなぁ……。

 デュークは平常運行で、セレナ、ストーム、リンダ、ガッシュは口数は少ないものの普段と変わらない様子だ。

 いや、内心はわからんけどな?

 ハティーとスンも野生出身だけあって4人と似た感じだ。

 ハティーは前に眷属失った時も悲しそうだったが、俺と普通に話してたしな。

 キャスカ、ノエル、ナデシコ、ビアンカは少し暗い表情だけど問題なさそうだ。

 いや、内心はわからんけどね?

 キャスカも戦士が長いからなぁ。

 ケミナはまだ泣いてるが、嗚咽もせず声も出してない。

 ただ涙が溜まっては流れてる。

 ある意味凄いけど、やはり慣れ……ていいのかわからんが、そういった経験からくる強さが伺える。


 普段通りのイリスの座学。

 普段通りのイリスへの挑戦。

 普段通りのデュークの俺への拷問。


 日本の昔……戦国時代とかもこうだったのかしら?

 死を悲しむ暇がないって感じなのかな?

 むぅ、やはり慣れないぞ!








 数日後……本日はトゥース君入学の日です。

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