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第四十四話「さらに在学2」

 おはよう。

 さて、今日は休みだ。

 ダンジョン情報やら討伐情報でも確認するかねぇ。


 ガチャンガチャンと鳴ってるな。

 朝から来客か。


「はいはー……」

「どちら様っ?」


 なんで客のお前が出てるんだよ。


「レウス君、何かしたの?」

「へ?」

「お城からのお使いだってさっ」


 兵士が3名。

 まさかフラグ回収か?

 いや、ヒットするとしたら勇者ランキングの俺の名前だけだろ?

 孤児とか13歳だとかの情報は出回らないだろう。

 フラグ回収だとしたらどうやって情報を?


「どの様な御用で?」

「国王陛下が西の国を救ったレウス様にお会いしたいとの事です」


 ゲブラーナ経由か。

 しかしブルームは何故俺がこの国にいるとわかったんだ?

 それとも他からの情報?

 可能性は高いな。

 俺が中央国にいると知っていても家まではわからないはずだ。


「すぐに準備しますので少々お待ちを……」

「かしこまりました!」


 はい、城です!

 造りはゲブラーナ城とソックリだな。

 けど少し古い感じだ。

 まぁ中央ってくらいだしな。

 そんなもんだろう。

 何故か狂人まで付いて来た。

 いいのか? と聞いたら問題ないとの事だ。

 こいつが城に入るのは怖いな。

 惨劇が起きそうだ。





 はい、謁見の間ってやつだ。

 端にガラテアがおる。

 まさかガラテア経由の情報か?

 いや、そうじゃないかも……。

 他に俺が呼ばれる理由はゲブラーナの件くらいか?





 あ、おじいちゃん出てきた。

 白髪と茶髪の混ざったもじゃもじゃで、髭も三国志の関羽みたいだ。

 王冠被ってて、目つきは結構鋭い。

 赤と紫の王っぽい服着てる。

 この威圧感はマイムマイムの5分の1ってとこだろう。

 やはり勇者は凄いらしい。

 エルフでこの年齢って事は……ガラテアと同い年位?



 さて、ここではガラテアのマネをすれば間違いはないだろう。

 一礼。

 へぇ、跪かなくていいのか。


 おぉおおおおおおっ!

 デュークも一礼してる!


「デューク、おひさー」

「おひさしぶりですっ」


 …………なんだこの国王は?

 周りに誰もいないって事は……勇者と王だけのプライベート空間って事か?


「ガラテアちゃん、この子かい?」

「その通りだ、ダイムちゃん」


 ……。

 聞きたくなかったな。

 あの感じだと幼馴染レベルだな。

 絶対そうだ。


「初めまして勇者レウス殿、国王のダイム・コンクルードだ」

「初めまして、レウスです」

「ゲブラーナの件はブルームに聞いている。

 同盟国を救って頂き感謝する」

「あぁ、いえ……」

「魔物に育てられたと?」

「えぇ、そうです」

「レウスという名はその魔物に付けられたのかな?」


 ……。

 さてさて、どうしたもんか。

 バレても問題ないか?

 いや、むしろ嘘を付いたら今後が面倒だな。

 面倒は嫌だからな。

 ここは正直にいこう。


「いえ、孤児となった際に着ていた服に、名前が刺繍されておりました」


 出来れば赤ん坊服のメーカーが、「レウス」って企業なら一番いいんだが、生憎(あいにく)この世界にそんな文化はない。


「歳は13で間違いないな?」

「えっと……何故俺の年を知ってるんですか?」

「あぁ、すまん。

 ガラテアちゃんに聞いてな」


 やはりガラテアちゃんからの情報か。

 あ、ガラテアちゃんが目そらした。

 おのれ……。


「そうですか。

 えぇ、13歳で間違いありません」

「魔物に拾われたのはどこかわかるかね?」

「質問の意図が見えないのですが……?」


 大体わかるけど、予め質問の返しを色々考えておきたいしな。


「お主ワシの孫じゃねって思ってな」


 単刀直入過ぎるわ!

 考える暇ねーじゃん!

 むー……どういこう?

 何故わかった!? とか言ってみるべき?


 そうだ、状況証拠しかないじゃん。

 証拠ないんだからしらばっくれられるはず。

 DNA鑑定なんてないんだしな!

 俺あったまいー!


「どうもってそれを証明するんですか?」

「右脇腹と左足の甲、右足の(もも)とうなじ部分に黒子(ほくろ)、ない?」


 めっちゃあるわ。

 うなじはわからんが、3ヶ所にはあるわ。

 なんでダイムが知ってるんだ?

 ジュリーかトムの情報か。

 どんだけ赤ん坊見てんだよ。

 見すぎなんだよ。

 なんでこんな爺さんに、身体の黒子(ほくろ)の位置知られなきゃあかんねん!


「えぇ、ありますよっ」


 ……。

 なんでお前が答えた?


 そしてなんで知ってる?

 あぁ、ドンファンと3人で風呂に入った時か。

 ドンファンが、ノエル可愛いノエル可愛いって言ってたんだっけか。

 ちょっとした修学旅行気分になったアレだな。

 お前も見すぎだわ。


「……やはりか」


 はぁ……。

 なるようになるかー。


「レウス君良かったねっ」


 良くねぇよ。


「誰かある!」



「はっ!」

「ジュリーとトムを呼んで来てくれ」

「かしこまりました!」


「お父さんとお母さんとの感動の対面だねっ」


 こいつ、わかってて言ってるな。

 めっちゃ笑い堪えてるわ。

 で、さっきからガラテアちゃんがこっちを見てくれない。

 ねぇ、ワタシを見て?


「「お呼びでしょうか、陛下」」

「この子、お前達の息子だってさ」



 だってさってなんだよ、だってさって。

 てかもう少し調べろよ。

 ハーフエルフで13歳でレウスで黒子が一致しただけだろうが。

 あぁ、茶髪もか。

 顔も少し

 おぉ、親父(トム)お袋(ジュリー)だわ。

 トムは相変わらずシルクハットだ。

 かなり老けたな。

 おそらく40代後半だな。

 ジュリーはエルフだけに全く変わってないな。

 ん、ジュリーはいくつなんだ?

 顔は25、6って感じだから……。

 300歳位?

 って事はダイムが500歳位の時の子か。

 元気な爺さんだなおい。


「レウス……なの?」

「レウスなの、か?」


 トムが前のハティーみたいな切り方したわ。


 さて、どうすべきか?


 1、「パパ、ママ!」

 2、「ちょっと頭が混乱してて……」

 3、「息子だってさ」

 4、「人違いです」

 5、逃げる。


 消去法でいこう。

 1はキャラじゃないな。

 寒気すら覚える。

 候補に挙げたのは一瞬の過ちだ。

 許せ。

 3は血を濃く受け継いでるアピール……なわけない。

 無しだな。

 4は面倒を増やしそうだし、長く拘束されるだろう。

 これも無しか。

 2か5だな。

 あぁ、5はダメか。

 デュークに捕まるわ。

 両脚切断されて「逃げちゃダメだよっ」とか笑いを堪えて言うだろう。

 あいつは俺の回復(ヒール)を瞬間接着剤かなんかだと思ってる節がある。

 俺もそう思ってたりする。

 この数ヶ月で切断の回数は20回を越えてるからな。

 ぶっちゃけ痛みにも慣れた。


 ふむ、なら2か。


「えっと、ちょっと頭が混乱してて……」

「混乱してない顔だねっ」


 ダメだったわ。

 わかったよ。


「……えぇ、息子だと思います。

 赤ん坊の頃の記憶が鮮明に残ってるので、あなた方……父上と母上の事は覚えています」

「おぉ、ではやはりレウスなのだな!」

「あぁ、レウス!」


 なんか芝居の様な言い回しだな。

 生か死か、それが疑問だったりするのだろうか?

 うーむ。

 産んでくれたのは非常に有難いのだが、世話になってないって事であまり感動が沸かない。

 異常なのかね?

 普通なのか?

 わからん。

 けどこんなもんか。


 よくあるアレだ。

 いきなりお父さんだよとかって言われても「くぴ?」ってなるアレだ。

 体験するとは思わなかったがな。

 今後どうするかだけ聞いとくか。


「俺は……どうなるんでしょうか?」

「あっ……」


 ジュリーとトムが辛そうな表情になった。

 やはり嘘でも抱きつけば良かったか?

 ここは普通の子供と違うところか。

 前世の記憶がある分、赤ん坊の頃から状況を理解してたからな。

 早くお父さんとお母さんに会いたい! とかならんかったし……。


「うむ、ガラテアちゃんどう思う?」


 そこお前で判断しろよ。

 まぁ俺が勇者だからトップランカーに意見を聞いてるんだと思うが……。


「レウス君には目的があります。

 その目的を完遂するまでは、今のままが一番宜しいかと思うよ」


 最後の「思うよ」でキャラ崩壊だぞ?

 しかし良い事言ったな。


「可愛い子には旅をさせろか。

 ……お前達、それでいいな?」

「「…………」」

「しばらくはこの国にいるつもりです。

 呼んで頂ければいつでも駆けつけます。

 俺も父上や母上とお話がしたいですから」

「おぉ!」

「勿論よ!」

「うむ、城へはいつでも来れる様に手配しておこう」


 眠ってた時の話の詳細も聞きたいしな。


「ぜ、是非妹にも会ってくれ」


 うほ。

 妹とやらがいるらしい。

 どんな妹だろう?

 パターンとしては「あんたなんかお兄ちゃんじゃない!」的な感じなのかしら?

 いや、こんな事を言う年齢じゃないかもしれない。

 ジュリーの影に隠れてそっと見る感じの年齢か?


「今から呼んでくるわっ」


「レウス君はお兄さんで王太孫(おうたいそん)になるのかなっ?」


 なんだその医薬品会社みたいな呼び方は。

 皆さん忘れてるかもしれないが、ワタシ元医薬品会社勤めですよ?

 まぁ、王の孫って事なんだろう。


「むずかゆいです」

「だろうねっ」


 あ、ガラテアちゃんと目が合った!

 あ、そらされた。

 もう許したからこっち見ろよ!


「さぁ、お入り。

 レウスお兄ちゃんだぞ」


 ちゃんは恥ずいな。


「初めましてお兄様。

 妹のテレスです」


 驚いた。

 俺と同じ位の年齢じゃないか?


「レウスの1つ下、12歳だ」


 まさか俺が生まれて3ヶ月目の時のアレか!?

 え、途中で止まったはず?

 すまんな、あれは2回戦目を止めたんだ。

 まぁそうじゃない可能性もある。


 テレス。

 茶髪で縦ロールだ。

 けどそこまで長くないな。

 肩から鎖骨にかけて位だ。

 目は大きくパッチリ。

 小顔でしっかりした印象だ。

 服はピンクと白の膝下まで位のドレスで、白い靴下だ。

 高すぎないピンクのヒール。

 THEお嬢様って感じだ。

 え、胸?

 おい、12歳だぞ?

 うん、少しだけあるな!

 ウエストほっせぇ。

 あぁコルセットかな?

 あれ、まじ大変らしいな。

 寿命縮めるんじゃないか?


「初めましてレウスです。

 宜しくね、テレス」


 おや、固まったな?


「ははは、テレスが赤くなるとは珍しいな。

 どうやら緊張しているみたいだ」

「ほんとね」

「そ、そうですわっ。

 お兄様の前で緊張してしまいましたわ」


 今のは緊張らしいぞ。

 俺にはそうは見えなかったが、親が言うんだから間違いはないだろう。

 多分な。


「……お兄様は……どちらに住んでいらっしゃるのですか?」


 ねぇ、もじもじしてるよ?


「えっと、北区の外れ……北東にある古い家に住んでるよ」

「こ、今度是非伺わせてくださいっ!」

「王族の方が来る様な場所じゃ……ないかもよ?

 というか外出出来るの?」

「問題ありませんわっ!」

「ははは、大分気に入られた様だなレウス」

「仲良く出来そうで私も嬉しいわ」

「父上、母上、

 また後日、色々話しましょう」

「うん、待っているよ」

「ホント立派になって……」




 はい、お(うち)です。

 帰り道で消えたデュークが家にいた。

 今日起こった事を全員が知っていた。


 おのれ狂人めっ!


 デュークはずっと笑ってたわ。

 まぁ大体の事情を話し、皆納得した様だった。

 キャスカは少し放心してたが、問題なさそうだった。

 ハティーも意外に大人だったわ。





 翌日だ。

 朝、学校行く時既にいなかったデュークは学校にいた。

 昨日起こった事を全員が知っていた。


 おのれ狂人めっ!

 中学生か!


 さすがに皆驚いてたが、大丈夫みたいだ。

 素晴らしい勇者精神。

 ナデシコが玉の輿云々言ってたのが少し怖かった。

 ゴリアンカが玉の輿云々言ってたのが超怖かった。

 ケミナは「……そしたら私、王妃!?」とか妄想内容が口から漏れてた。


 そこから話が右にそれ、左にそれて発展していった。

 現在俺の二つ名について色々話している。

 いらないからそれ。

 どうやら60位くらいから二つ名が付くらしい。

 勿論、他の勇者や贔屓にしてるファン的なのがそう呼ぶらしい。

 狂人デューク。

 猛腕セレナ。

 ドンファンは「音越えのドンファン」だそうだ。

 ガッシュは「激剣」でグランダルは「繊速(せんそく)の」。

 リンダが「妖聖」でストームは「大黒柱」だとか。

 ストームのはネタだろこれ。

 戦うお父さんって事か。


「レウス君はー、魔物使いって呼ばれるのが好きじゃないんだよー」

「凄いレウス!

 これでどうだ?」


 キャスカの頭がどうなんだ?

 因みに、今授業中だがイリスも話に加わってる。

 二つ名とは結構重要らしい。

 その二つ名でランキング戦を挑む勇者が「釣れる」からだそうだ。

 例えば「疾風のキャスカ」に対して、速度に自信のある勇者が挑戦してくる事がある。

 神速とかにしたら速さ自慢が集まるって事だ。

 イリスが「プライドの高い勇者が良いカモよ」とか言うとちょっとエロす。

 これも授業の一環なので問題ないそうだ。

 因みにイリスは「超技のイリス」だ。

 味わってみたいわそれ。

 ミカエルは「拳天聖」だそうだ。

 格闘系の勇者っぽいな。



「せっかくの王太孫なんだからソレで良いんじゃねぃかい?」

「グランダル、まだ公表してないんだからそれはダメよ」

「ビアンカの言う通りだ。

 しかし、少し伏せたりすればいいのでは?」

「タイトス……どういう事?」

「王の文字と何かを組み合わせるとかだな」


 なんとかキング的なアレか。

 恥ずかしいなソレ。

 え、俺はもう黙ってるぞ?

 世論は動かせないと知っているからな。


「おぉ!

 それじゃ、魔物使いも伏せれば問題ないんじゃねぇか!?」

「えーっと、つまりソレってー……」

「魔王だねっ」

「「「魔王レウス……」」」



 わろりん。

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