第四十三話「さらに在学」
少し自慢する事がある。
気総量と体力、体術の修行は毎日続けてる。
それに加え、神系の魔石の複数装備、グロウストーンの成長によりかなり強くなった。
クラス内じゃデュークとスン以外はもう相手にならない。
デュークの相手はしないけど、たまに強制的に戦う事がある。
どうやら剣に魔石をウェポンエンチャントしてなかったのが、最大の理由だと考えられる。
いきなりのレア武器すぎて、最高の魔石が手に入るまでウェポンエンチャントするのを待ってたからな。
未だ剣に特硬化と特抵抗以外エンチャントしてないと言ったら、流石のデュークも呆れてた。
「レウス君は馬鹿なのかなっ?」
うっせ。
それについてはスンも一緒だったけどな。
魔石の恩恵はありがたい。
両手に効果があるってのは特にな。
皆には悪いが、これは先天的なモノだと思うし、ある以上は有意義に使いたいものだ。
この「特殊能力」について知ってるのは、勇者ハウスの全員とガラテア、ガイ、ドンファンだ。
デュークには「それなのにそんなに弱いの?」とか言われると思ったが、素直に羨ましがられた。
ガラテアには「少し調べてみる」と言われた。
そもそもそれくらいの特異性では襲われないとの事だ。
セレナには「魔石無し同士で戦っても負けるのは私だ」と地力の話になった。
ドンファンには「そんな事より早く強くなるでござる」と言われ、ガイには「素晴らしい能力なので大事にしてください」と言われた。
キャスカは首を傾げて「レウスが凄い事には変わりないんでしょう?」だそうだ。
ハティーは「夕飯は何だ!?」とか言ってたな。
スンはニコニコしながら《でも負けないよ!》だってさ。
勇者は良い奴が多いな。
んでもって、もっともっと強くならなくては!
そんなこんなで事件発生です。
首都オディアータ内の全ての勇者が勇者ギルドに集められた。
「皆様お疲れ様です。
首都オディアータにオーバートップレベルの魔物が近付いております」
「人界にオーバートップレベルとは……異常だねっ」
確かにな。
やはり俺が狙いか?
いや、まだわからんが……。
一応チャッピーは人目を避けてたしな。
こんな目立つ事をするんだ。
何か狙いがあるのかもしれない。
「ガイ、詳細を説明しなさい」
「南の国の首都ダダンより連絡を受けました。
人里を避ける様に移動していた様ですが、南の国に入ってから姿が確認でき、中央国から北の国を目指し北上中との事です」
「魔物の詳細は?」
「大きな竜との事です」
「本当ですかっ!?」
「レウス様……残念ですが、黒い竜ではないそうです」
「「レウス?」」
「いや、なんでもないです」
そうか、違う奴か。
慌てちまったぜ。
しかし、オーバートップレベルには国境も意味がないな。
軽く跳び越えるんだろう。
「きゅぅ……」
「レウス……」
「大丈夫だ」
「とりあえず行ってみればいいでしょっ。
ガラテアさんも僕もいるんだしねっ」
「そうだな……。
皆の者、野外学習だ。
危険を承知で付いて来なさい。
付いて来ない者はオディアータの南門の外側で待機」
「「「はいっ!」」」
「ではゆこう」
はい、オディアータから南へ30キロ程行った平地でございます。
来たのはガラテア、デューク、ドンファン、イリス、ミカエル、俺、スン、セレナ、ハティー、ストーム、ガッシュ、グランダル、リンダ、ラスティ、タイトスの15人だね。
前方ににガラテア、デューク、ドンファン。
約30メートル下がってイリス、ミカエル、俺、スン。
その後方、約70メールトにセレナ、ハティー、ストーム、ガッシュ、グランダル、リンダ、ラスティ、タイトスが構えた。
これがガラテアが許した範囲だ。
俺とスンがイリスやミカエルの隣なんて、まだまだ早いと思うが……。
……むしろ後ろに行きたいぞ?
オーバートップレベル……どんな魔物なんだろう。
おぉ、地響きだ。
ドスンドスン聞こえる。
なんか、音楽的な?
ダミ声の混じった鼻歌?
あぁ、姿が見えた。
肌は酸化した血の色って感じ。
羽はあるけど少し小さいな。
血より深く紅い瞳。
チャッピー並の大きな身体。
戦車の様な身体で、後足が異様にデカい。
手は小さいけど一瞬で死にそうな怖い爪が生えてる。
額には角が2本で、剥き出しの牙が印象的だ。
なんだろ……羽が生えたTレックス巨大化版みたいな?
ピ○ルがビックリしそうな……そんな感じだ。
「ん、ふふー……ん〜ん〜……あ〜ん〜♪」
おばさんみたいな竜だな。
待てよ……どこかで見たような?
「大地の支配者か……。
確か人間言語を喋れたな。
……止まりたまえ!」
「あら、なに勇者?
やめてよ、私戦う気はないわよ」
「では目的を聞きたい。
こちらに何の用事かな?」
「北の国に用があるの。
そこをどいて頂戴」
おのれ、大地の方か。
空の方を出せ、空の方を。
「中央国の民が不安になる。
出来ればもう少し人里離れた場所を歩いて頂けると助かる」
「んー、急いでるんだけどねぇ〜……」
「オバルスさんっ!」
「「「!?」」」
「んー…………あらやだ、レウスちゃんっ!?」
「お久しぶりです!」
「レウス君、彼女も知り合いかいっ?」
「空の支配者……チャッピーのガールフレンドです。
チャッピー経由で知り合いになりました」
「久しぶりねぇ。
あら……あらあらあら。
うふふふふ、思った通りイイ男になってきたじゃない?」
「そりゃどうも」
「チャッピーは元気?
最近あの人手紙よこさないのよ」
「ちょっとはぐれまして、探してる最中です」
「あらまホント?
色々ありそうねぇ。
急いでるから歩きながら話しましょうか」
「だそうですけど……ガラテアさん、いかがしましょう?」
「…………誰も襲わないかね?」
「うふふ、約束するわよ」
「……いいだろう」
「さ、そこの坊や達、乗って頂戴!」
尻尾の階段から背中へ。
やはり温かい。
「「「「…………」」」」
「皆さん乗ってください!」
「……え、えぇ」
「これにか……?」
「早くして頂戴」
「あ、あぁ!」
大体の話をオバルスにした。
イリス達にも話を聞かれたが、まぁ別に問題ないだろう。
「あのチャッピーがねぇ……」
「感謝してもし切れないですよ」
「マカオもでしょ?
あの人とはよく気が合ったわ〜」
「ははは、確かに気が合いそうですね」
「あらあら、どういう意味かしら?」
「じょ、女性的って意味ですよ」
「まあ、お上手♪」
「ところで、北の国には何の用事なんです?」
「ちょっと前に希少種の金剛竜が2匹も現れたらしいのよ」
あぁ、セレナが倒した奴だな。
もう半年以上前の話だが、この人にはそれがちょっと前なんだろう。
「その金剛竜の死体が、北の国の森に捨てられたって聞いてね。
回収に行くの」
「何故です?」
「今ね、金剛竜の皮でお布団を作ってるのよ♪」
…………。
ほら、狂人が笑い出した。
「下手すれば死んでたかもしれないんですよ?」
「女には………………やらなきゃいけない時があるのよっ」
…………。
ガラテアは呆れてるぞ。
「さて、ここらでお別れかしらね?」
「そうですね」
「レウスちゃん」
「はい?」
「ありがとね、帰りにお礼に伺うわ」
「また騒ぎになるからやめた方がいいと思いますよ」
「じゃあ、手紙出すわ♪」
「俺の家知らないでしょうに」
「それもそうねぇ」
「中央国の勇者ギルド宛に書いてくれればいいだろう」
「そうなんですかガラテアさん?」
「魔物の手紙……昔は宣戦布告の為に使われていたのだがな」
「お礼の手紙よ。
ありがと、ガラテアさん?」
「うむ、今度からは前もって知らせてくれると助かる」
「そうするわ♪
じゃあね、レウスちゃん」
「お元気で」
俺達を降ろした後、オバルスはバビュンと走ってった。
「大物の知り合いが多いねぇ、レウス君はっ」
偶然だ偶然。
「……レウス君」
「はい?」
「話があるから後ほど校長室まで来なさい」
「はい……?」
はい校長室です。
「かけたまえ」
「失礼します」
「君が狙われる理由…………それは、アレではないのかね?」
「オバルスが?」
「空の支配者、騏驎、大地の支配者……勇者のスライムとデスウルフリーダー……」
……なるほど。
「前者の魔物3匹は魔界を代表する魔物だ。
空の支配者は青竜と、大地の支配者は白虎と交流があると聞く。
騏驎は長く生きている分、魔界に顔が利くという話だ。
そして、一般人が倒せるはずのスライムが勇者になり、魔界に行く資格を有している。
そしてデスウルフリーダー……。
あの子もこれから強くなるだろう」
…………。
「青竜や白虎までもがこちら側……というよりレウス君に味方する様になるとしたら、魔界の均衡は一気に崩れる」
確かに説明はつく。
今までで一番ね。
そうなると赤ん坊の頃の話は偶然って事になるのか。
「…………」
「あくまで仮説だが、頭の片隅には入れておいてくれ」
「わかりました。
ありがとうございます」
「――って感じの話でもしてたんでしょっ?」
ホント鋭いな狂人め。
「その通りです」
「やはりでござるか」
「ドンファン殿、風呂が空いたぞ」
「おぉセレナ殿、かたじけない」
俺に許可とれよ。
ここ数日勝手に泊まってるの知ってんだぞ?
お?
「そうだ、レウス殿、某ここに住まわせて頂く事になったでござる」
……くぴ?
許可は?
「……それは初耳ですね」
「うん、僕が許可したんだよっ」
「へぇー……」
せめて女にしようぜ?
イリスとかリンダとかナデシコとかノエルとかケミナとかさ?
「デューク、悪いが少し訓練に付き合ってくれ」
「勿論っ」
「某も風呂でござる」
セレナとデュークは最近よくつるんでる。
人間同士で、デュークが25歳でセレナが26歳だしな。
年が近いせいか話も合う……のか?
セレナが両脚失って帰って来た時は超焦ったぜ。
あの野郎「レウス君、よろしくっ」だもんな。
セレナの美脚をゴロンと玄関に落としやがった。
スプラッター野郎め。
「レウス、ちょっといいか?」
「どうしたキャスカ、ほっぺにちゅーでもして欲しいのか?」
「むぅうううっ」
「そう、鼻水出さなきゃ美人なんだからもっと自信を持て」
「う……うん」
「で、何の用だ?」
「あ、明日、学校の後暇か!?」
「ん、まぁ暇だけど?」
「祭りがあるんだ!」
「おし、逢引だな!」
「そうだ!
…………ぇ、ちがっ!」
「……ちゅ。
楽しみにしとくわー」
祭りか……夜遅めまで修行すれば大丈夫だろう。
朝起きたら、昨日キャスカが立ってた場所にキャスカが立ってた。
かなり顔が赤いな。
どうやらずっとここに立ってたみたいだ。
「キャスカ、学校行くぞ」
「……はーぃ」
仕方ないから背負って学校に行った。
背中の爆弾は役得だろう。
午前の授業は全く頭に入ってなかったろう。
昼の休憩でようやく復活した。
あいつホントもったいないな。
まぁ頑張ってるし、出来るだけ優しくしてやるって決めたからな。
小さなわがまま程度ならいくらでも聞いてやろう。
というか、あいつはほとんどわがままを言わない。
ハイスピードの魔石のダンジョンに潜った時以来じゃないか?
あいつのわがままがなければマカオにも会わなかったしな。
間接的な命の恩人……支えでもあるな。
うん、もっと大事にしよう。
そこ、ニヤニヤするなよ?
はい、放課後で中央国の祭りです!
何の祭りかって?
なんでも中央国の王、ダイム・コンクルードの娘の生誕祭だそうだ。
ハピバ、ダイムの娘。
学校でリンダ、ケミナ、ノエル、ナデシコ…………ゴリアンカにも誘われたが、先約って事で断ってきた。
レウス君、意外に人気者!
「レウス、あっちに行ってみよう!」
「おう」
「レウス、それおいしいかっ?」
「やべぇ、めっちゃうまいわ」
「レウスレウス、あれを皆のお土産にしよう!」
「おー、いいかもな。
今買っちゃうと荷物になるから、帰りに買うか」
「ん-、売り切れないかな?」
「そん時ゃそん時だ」
「そ、そうだな!」
「レウス、凄いぞ!
空が光ってる!」
「花火……?」
あれは真夜中、学校のグラウンドでガラテアが練習してた技に似てるな……。
あの花火の真下に……いるだろうが、ガラテアのそんな姿は見たくないな。
勇者の3位をこき使うなよ……。
いや、有志参戦か?
そんなガラテアも嫌だな。
「レウス、見ろ!
あそこで手を振ってるのが、ダイム陛下とその娘、ジュリー殿下だぞ!
その隣はジュリー殿下の夫、トム殿下だ」
「ほぅ……………………………………………………………………………………見覚えのあるシルクハットだな」
「そうなのか?」
「…………赤ん坊の頃、ちょっとな」
「ん、どういう事だ?」
「んや、なんでもない」
……これは黙っておくか。
ダイムの名前は知ってたが、娘に関してはノータッチだったわ。
エルフが中央国の王だったのか。
人間とくっついたのはなぜだ?
孫世代を長く生きさせる為か?
狙われる理由がもう一つ浮上したわ……。
神め、良い家柄過ぎるぞっ。
まぁ、これに関してはこちらから近づかなければ大丈夫だろう。
「さ、お土産買って帰ろうかー」
「そうだな」
さ、修行修行っ。
チーン!
お、米字飛剣修得!
気も枯渇したし風呂入ってさっさと寝よう。
風呂は女性も入るって事で、スンと協力して小屋を作った。
単に囲うだけだから簡単だった。
入り口に「空き」と「使用中」を表と裏に書いた看板をぶら下げた。
間違いを出来るだけ回避する為だ。
勿論、間違いは起きるけどな。
ハティー、セレナ、キャスカでのイベントは発生済みだ。
描写がない?
妄想っていう便利な機能が人間の頭にはついてるんだ。
存分に使ってくれ。
俺も今夜、存分に使う。
あ、ごめん。




