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第四十一話「そして在学3」

 あの後数日でケミナは学校に顔を出す様になった。

 休憩の度に話しかけてくる。

 キャスカが遠目でそれを見てくる。

 お前も来ればいいじゃねぇか。



 俺はその数日の間にランク5の課題、「講師付き添いによるセカンドレベルの魔物討伐」を成功させ、ランク4になった。

 ランク5の課題で急に戦闘面になったな。

 これに関してはスン、セレナ、デューク共に一緒だ。

 キャスカはまだランク8。

 ランク4から3にいくにはサードレベルの魔物を5匹倒せばOKだ。

 そう考えると、ランク3からランク2へは急にハードルが上がるな。

 そこからは自己鍛錬が重要になるって事か。


 教わってばかりじゃダメって事だな。

 サードレベルの魔物を倒したらしばらくはイリスとの追いかけっこだろう。

 獣の様に追いかけるつもりだ。

 任せてくれ。


 え?

 ハティーが最近出ない?

 そりゃあなた学校編ですもん。


 チーン!


 《101位 ハティー 欲しい物【特硬化の魔石】》


 そりゃあなた学校編ですもん。


「はい、新入生の紹介よー。

 ランキング順位と名前と年齢を含めた自己紹介をして下さい」

「ハティーなの、だ!

 101位、で21歳だ!」


 そりゃ登場するだろ。

 むぅ、予想以上に勉強を頑張った様だな。

 ドンファンに今度何かあげよう。

 いや、ここはあげさせるべきか……。

 そうだな、ハティーにお礼というものを教えなきゃまずいな。


 にしても気づいてる奴はまた固まってるな。

 鞘から剣を抜こうとしてる奴までいる。

 ……あれはリンダか。

 相変わらずいい身体だ。


「落ち着いてリンダ。

 ハティーさんはスン君同様、正式な手続きにより勇者になったのよ」

「落ち着いていられるかっ!

 私の妹はデスウルフに殺されたのだぞ!!」


 あちゃー。

 そんなサブストーリー展開が……。

 まぁ実際死んでしまっているんだ。

 その気持ちはわかってやれないが、きっと辛いんだろう。

 気持ちはわかるとか、そんな上からは言えません。

 ……あれ?

 でもデスウルフって、襲われなかったら襲わないんじゃなかったっけ?

 前にハティーに聞いたら、ゲブラーナの西の森以外でも基本そうだって言ってたぞ?


 ハティーも困った表情だな。

 ちょっと聞くか。


「リンダさん、妹さんはどこで襲われたんですか?」

「何故そんな事を聞くんだ!?」

「重要な事です。

 デスウルフは基本的に敵に襲われない限り襲う事はありません

 正当防衛の可能性がありますからね」

「なっ、正当防衛なら殺していいのかっ!」

「……普段リンダさん……いや、俺達がしてる事と一緒じゃないんですか?」

「……っ」

「「「…………」」」


 あら、ほとんどの人が俯いちゃったわ。

 おいおいイリスまでかよ。


「うん、気をつけるよっ」


 ……。

 ちょっと黙ってろよ……。


「……南の国、ダダンの更に南の森だ」

「じゃあ、明日俺とハティーと共にそこへ行きましょう。

 そこで真実がわかるかもしれません」

「……わかった」




 はい、翌日の早朝4時です。

 クラス全員が付いてきたわ。

 イリス、ミカエル、ドンファンまで……。

 こいつらのネットワークは一体どうなってるんだ?

 皆考えるところがあるのだろうか?

 しかし、復調したばかりのケミナに速度を合わせなきゃいけないとなると、ちょいと時間がかかりそうだな。





 とか思ってたら、途中でイリスがケミナを担いだわ。

 19人の勇者の国境越え。

 世界の5分の1の勇者がここにおる。

 魔界はいいのか魔界はっ!!

 勇者ギルドの討伐はいいのかっ!!

 まぁ強制じゃないしなー。



 んで、約9時間で到達しました。

 ダダンの南の森です。


「ハティー、呼べるか?」

「元に戻らなくちゃダメなのだ!」

「んー、キャスカ、付いてってやれ。

 変身したら荷物を持ってきてくれ」

「わかったっ」

「なんでこ、いつなのだ!?」


 嫌ってる……のはハティーだけか?

 キャスカは聞き分け良い方だしな……。

 んー、女心はわからん。


「いいから行ってこい。

 言う事聞いたら今夜の飯は奮発しよう」

「行っ、てくるのだ!」



 行ってらっしゃい。




「戻った、ぞ!」


 おーおー、皆身構えちゃってからに。


「大丈夫、さっきのハティーですよ」

「え、えぇそうだったわね……」

「う、うん……」


 やはりスライムとは違い過ぎるか。


「レ、レウスゥッ」

「やぁ、レ、レウスゥッだよっ」

「ぬぅううっ!」

「人間の世界に触れるって事はこういう事だ。

 今のうちに慣れておけ」

「わかった、ぞ!

 私はレウスがいればいんだけどなっ!」

「はいはい」


 おのれ、恥ずかしい事を皆の前でぬかしやがって。


「じゃあハティー、この森のワンちゃん達を呼んでくれ」

「わかった、ぞ!」


 最近この切り方が多いな。

 少し統一性が見えてきたのか?

 切る回数も減った気がする。

 ドンファンに指摘されたのかもしれん。

 知らないとこで成長してるな。

 今夜から少しずつ教えてやろう。


「ガォオオオオオオオンッ!!」



 ……。

 ぞろぞろ来たな。

 さすがに人間がこの人数いて少し怯えてる様だ。


『俺はレウスッ! 

 お前達に危害を加えるつもりはないっ!

 この森のデスウルフリーダーに会いに来た!

 話がしたい!』

「ガゥウウ、ガウッ!」


 呼びに行ったみたい。


「へぇ、ホントに魔物言語喋れるんだねっ」

「嘘ついても得はないでしょ」


 因みにここ最近色んな魔物に話しかけてはいるが、話を聞いてくれる魔物は皆無だ。

 やはりローレベル以上の魔物は気難しいのかね?


「どうだ見たか!

 レウスは凄いんだ!」


 なんでキャスカが威張るんだ?


「レウス君凄いねー」

「す、凄いよっ、レウス君!」


 ケミナがなんか凄い一生懸命だ。

 顔が近いし、なんか顔赤いし、むぎゅっと胸寄ってるし……。

 あぁ、最後のは関係ないか。

 俺の視線の問題だったわ。

 すまん。


 おぉ、デカい銀狼きたわ。


『あ、兄上っ!?』


 なーんでそんな設定もってきちゃうんだよっ!?

 ややこしくなるか時間がかかりそうだ。


『妹かっ?

 久しいな。

 ……この人間やエルフ達はなんだ?』

『少し聞きたい事があって来ました』

『ふむ、聞こう』


 おぉ、なんか話のわかる奴っぽいな。


『詳しくはレウスが話すから聞いてくれ。

 私の命を救ってくれた恩人であり、仲間の……戦士達の墓を一緒に造ってくれたんだ』

『お前の恩人……このハーフエルフの子供が?』

『初めまして、レウスといいます。

 ハティー……妹さんにはいつもお世話になってます』


 世話してるんだけどな。


『ほぉ、喋れるのか。

 うむ、妹の言う事だ、間違いはないだろう。

 妹が世話になり、我が眷族の墓まで造って頂き礼を言う。

 ……して、話とはなんだろうか?』


 まともな奴だ。

 今はな。

 近い関係になるとボロが出るはずだ。


「リンダさん、妹さんが亡くなったのはいつですか?」

「……7年前だ」

「その時の妹さんの年齢は?」

「……13だった」


 今の俺と同い年か。


『妹さんに聞きました。

 デスウルフの眷族は、人に襲われない限り、人を襲う事はない。

 今も昔もそれは変わりませんか?』

『無論だ。

 我々は動物を狩り生きている。

 命の危険なくば、狩り以外で牙を()く事はない』

『ありがとうございます。

 ……彼女の妹が7年前にデスウルフの手により命を落としています。

 しかし彼女は妹が死んだ理由を知りません。

 互いに恨みを残さない為、その真実を確かめたくここへ来ました』

『……そうであったか。

 わかった、状況は理解した。

 レウス、少し待っていてくれたまえ。

 その者に心当たりがある』

『はい、ありがとうございます』


「……ふぅ」

「レウス君、あのデスウルフリーダーは何と言っていたのだ?」

「7年前、妹さんを手にかけた奴に心当たりがあるそうです」

「…………」


 こえぇ顔だなリンダ。


「決を出すのは話を聞いてからでお願いしますね」

「あ、いや…………わかった」


 スっと怒気がおさまったな。

 普段は激情するタイプじゃないしな。

 今は頭……いや、心が色々大変なんだろう。


 ん、戻って来たな。

 左目がないデスウルフだ。

 それと覇気というか、迫力がないな。


『レウス、待たせたな。

 こいつがそうだ』

『おまえがれうすか』

『喋れるのか?』

『あぁ』


 確かに前、ハティーが喋れる様になるデスウルフがいると言っていたが……あれがこれに繋がると誰が気付くんだ?



『7年前に、エルフの子供を手にかけたのか?』

『あぁ、おれがかみころした』

『その理由を知りたい』

『………………』

『頼む』

『……まだちいさかったむすめが、しんだ』

『…………そうか。

 ……ありがとうな』

『あれが、あいつのあねか?』

『あぁ、そうだ』

『たしかにあのときのむすめににてる。

 ……つたえてやってくれ。

 もしがまんできないなら……おれをきれと』




 ……。

 変に曲げないで伝えるのが……一番いいよな。


「……レウス君」

「理由を聞いたら一言だけ言われました」

「……何と?」

「小さい娘が死んだと……」

「……っ」

「もし我慢が出来ないならば斬れとも言ってました」

「…………事実、なんだな?」

「証拠はありませんよ」

「……あのデスウルフの目が何よりの証拠だ。

 確かに私の妹は少し攻撃的だったしな。

 仕方ない……」


 ん?

 斬るのか?


「……私の名はリンダ・ロクスウェル。

 今は亡きミーシャ・ロクスウェルの姉だ。

 …………お前の娘の墓に案内して頂きたい」


『なんと?』

『娘の墓に行きたいとさ』

『…………ついてこい』


「付いて来いって」

「わかった」


 俺は行かない方が良い……かな?


「ここで待ってます」

「あぁ」


 30分位で2人は戻ってきた。

 森に入ってった時より近くに寄りながら。

 まだ間隔は空いてたがね。


 そう簡単に歩み寄れるものじゃないんだろう。

 難しい問題だよなー。

 時間が解決するかな?

 ……まぁ、なるようになるか。


「皆、お待たせした。

 レウス君……いや、レウス、ありがとう」

「……リンダはもういいの?」

「あぁ」


『もう良いのかな?』

『えぇ、お騒がせしました』

『レウス、お前は面白い子供だな』

『……やはり兄妹なんですね』

『?』

『同じ事言われましたよ、妹さんに』

『ふふふ、大体の魔物がそう言うだろう』

『そうですかね』

『妹を頼む』

『きっともうあなたより強いですよ』

『あぁ、そうだろうな。

 だがお前のがもっと強い』

『……こっちに来る時はまた顔を出します』

『うむ、待っている』


 さて、南の国まで来た事だしな。

 エルフの里でパワーマスターの魔石を神力(しんりき)の魔石に変えて……ついでにエンチャントもしたいな。

 そういやスンも5個集まってたんだ。

 ちょうどいいか。


「俺とスンはこの後エルフの里に用事がありますが、皆さんはいかがします?」

「もちろん付いていくよっ」

「久々に行ってみるでござる」


 お前達何で付いてくんだよ。


 エルフの里に行った事がないって勇者もいたので、結局最後まで全員付いて来た。

 パワーマスターの魔石を神力(しんりき)の魔石にして、神力(しんりき)の魔石、神技の魔石、神速の魔石を竜の剣(爪)(チャッピーの剣)にウェポンエンチャントし、ユグ剣に特抵抗の魔石をウェポンエンチャントした。

 スンも神力(しんりき)の魔石をゲットしたようだ。

 指輪にして尻尾に……二つに分かれた尻尾にはめてた。

 どうやらスンは人間と同じ5個装備出来るらしい。

 まじで最強のスライムじゃね?


「きゅ?」


 可愛い。


 ハティーはリンダに連れられ、神速の魔石をバングルにしてた。

 どうやらあの2人に関しては和解した様だ。

 人化したハティーは尻尾込みで6個の魔石を装備出来る事になる。

 これはもう試したんだ。

 まぁ世界の理と言っても人間のものだしな。

 しかもハティーは剣がないから少し不利ってもんだろう。

 ハティーの爪で武器作れないかしら?

 小さいナイフでもいいから、エンチャント出来ればハティーの為になるだろう。


 全ての用事が終わってオディアータに着いた時には、結構遅い時間になってしまった。


「レウス、ご飯は何だ!?」

「今のはバッチリだ!」

「そうかっ!」


 飯か……。


「皆さん、ご一緒にご飯いかがですか?

 色々付き合せちゃったんでおごりますよっ!」


「ご相伴にあずかるでござる」

「宴会だねっ」

「いくよー」

「レウス君と一緒なら私もっ!」

「レウス君、いいのかしら?」

「自分も行きます!」

「私は食べるぞ」

「レウス、私もお金を出すぞ!」

「きゅい!」

「おぉ、すごいの、だ!」

「ワシも行くぞぃ!」

「ワタシもー!」

「俺もだっ!」

「む、良いのかな?」

「さすがレウス、わかってるな」

「よよよ、宜しくお願い致しますっ」

「楽しみですね」

「私はレウスと一緒がいいっ!」


 18人、誰が何言ってるかわかるかな?

 正解は改行の先にあるよ☆

















 順番にドンファン、狂人、ノエル、ケミナ、イリス、ミカエル、セレナ、リンダ、スン、ハティー、グランダル、ビアンカ、ガッシュ、ストーム、タイトス、ラスティ、ナデシコ、鼻水だ。



さて、飯じゃ飯じゃ!

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