第三十九話「そして在学」
デュークは平常運転だった。
大半はドン引きしてたわ。
デュークに興味持った奴もいるけどな。
ガッシュとグランダルだ。
やめとけ、腕が落ちるぞ?
学校は午前は座学、午後は実技だ。
実にわかりやすい。
今は昼の休憩だな。
しかし食事をしてる奴はいない。
やはり、リバースする可能性があるのか?
「ねぇねぇレウス君」
……子供がおる。
あぁ、ノエルか。
「あぁ、ノエルさんですね。
改めて初めまして。
これから宜しくお願いしますね」
「うん、宜しくねっ」
「ノエルさんは……ハーフ?」
「うん、そうだよー」
凄くのほほんな子や。
「えーっと、何かご用で?」
「次の実技の場所わかるかなーって思って」
前へならえで、他の奴に付いて行こうとしたんだが、教えてくれるんならそれはそれで良いか。
「いえ、わからないので皆に付いて行こうと思っていました」
「あのねー、実技はランクで違う場所で行われるんだよー」
ほぉ、だから教えに来てくれたのか。
勇者の良い人発見。
「私とナデシコさんはランク8だから、他の4人と一緒に行こー」
眠くなる話し方だが、癒し系で中々悪くない。
左手回復を修得したら奥義書をあげよう。
取り柄は回復だけですから。
「是非お願いします」
「そろそろ、時間だし他の人にも声掛けてくるねー」
「あぁ、大丈夫ですよ。
全員知り合いなんで俺が話しますよ」
「ほえー、そうなんだ」
「デュークさん、セレナさん、実技に行きましょう」
「りょーかいっ」
「うむ」
「スン、キャスカー、行くぞー」
「うんっ」
「きゅー」
狂人勇者。
寡黙勇者。
魔物勇者。
鼻水勇者。
子供勇者。
なんとも珍妙なパーティだ。
ナデシコも合流。
「皆さん宜しくお願いします」
綺麗なお辞儀だわ。
レティナを思い出す。
「宜しくお願いします」
「宜しくねっ」
「宜しく頼む」
「きゅーい」
「お、お願いします」
鼻水出てる出てる……あ、落ちた。
はい、ランク8の実技場です。
大きさはテニスコート2個分って感じ?
どうやら講師はいないらしい。
何をするんでっしゃろ?
「デュークさん、ここ何する所なんですか?」
「んー…………忘れちゃったっ」
狂人の記憶に残らない実技らしい。
ナデシコ大先生が教えてくれるみたいだ。
「ここでは、気操作の修得を目指します。
修得が出来た段階で、あの端にある奥義書用紙を気操作の奥義書にし、実技時間終了後にイリス先生へ提出すれば、明日からランクが7となります」
……。
俺の記憶にも残らなそうな実技らしい。
「あぁ、思い出したっ。
1日で終わったランクだから憶えてなかったんだっ」
それには同意だな。
「セレナさん、気操作は?」
「無論、修得済みだ」
「スンは」
「きゅーい!」
「キャスカはどうなんだ?」
…………。
黙ったまま泣くなよ。
察しづらいだろっ。
「アハハハハハハッ、キャスカちゃん鼻水凄いよっ!
さ、これで拭いなさい」
前の行が無ければ、イケメン度が上がるんだぞ?
見ろ、涙が頬を伝わず地面へ急降下じゃないか!
あーあー……。
うん、スンに任せよう。
「セレナさん、暇つぶしに少し相手してください」
「うむ、望むところだ」
「アハハハハハッ、キャスカちゃん涙出すぎぃ!
手拭ビショビショ……アハハハハハッ」
デューク絶好調だな。
でも、もしかしたらこれでキャスカもタフになって、精神的に成長するかもしれないな。
勇者になったんだし、俺に付いて来るなら耐えられなきゃな。
俺やっさしー。
「デュークさん酷いですよー。
大丈夫、キャスカさん?」
「え、これって酷い事なの?
ねぇ、レウス君?」
俺に聞くなよ。
「まぁ、一般的にはそうかもしれませんね」
「わかった、気をつけるよっ。
…………プッ、アハハハハハハッ、手拭いからも涙がでてるぅっ!
アハハハハハハハッ!」
知ってた知ってた。
ノエルもナデシコもドン引きだ。
俺が失神してる時はどうだったんだろう?
まぁ笑ってただろうな。
うん、スンに任せよう。
はい、放課後というやつです!
デューク、セレナ、スンと俺はランクが7になりました!
その夜に……。
チーン!
左手回復修得!
チーン!
勇者証明が光ってる?
なんじゃろな?
《3日以内に欲しい物の更新をお願いします》
ふむ……さてどうしたものか。
集めにくい物から順に集めていくか。
挑戦者が来るとは思えないけど。
欲しい物をテクニカルマスターの魔石1個にして更新した……かったが項目にない。
仕方ないからスピードマスターの魔石にして更新。
気も枯渇したしもう寝よう。
おやすみ……。
チーン!
昨日からうるせぇカードだな。
なんだよ、ったく。
■ランキング戦詳細
■99位【レウス】 VS 3位【ガラテア】
■挑戦者【ガラテア】
■提示品【スピードマスターの魔石】
■日時【雪の月2日(本日)】
■場所【オディアータ、勇者専門学校】
■よろしければ「了承」の文字に触れて下さい。
【了承】
え、よろしくない。
凄くよろしくない。
上位ランカーがことごとく俺を狙ってくる……。
なんなんだよ一体!
くそっ。
……。
了承するしかねぇかぁ……。
狙いはマイムマイムと同様だろう。
とりあえず力試しって感じか。
はい、学校です。
大きいグラウンド的な場所にクラス全員とイリス、ミカエル、ガイやドンファンまでいやがる。
ドンファンはここの臨時講師に招かれたらしい。
魔界はいいのか魔界はぁっ!
そして目の前には3位のガラテアちゃん。
「これを……」
「あ、はい、どうも……」
「では、かかってきたまえ」
覚悟を決めます。
「いきますっ」
戦闘開始!
ダッシュ!
効かない十字飛剣よりも接近戦で勝負だっ!!
ギィイイイイインッ!!
嘘……。
腹が斬れない。
後ろで手を組みながら直立不動で受けた……。
これはつまり、どれだけ剣を振っても、斬れない?
「レウスくーんっ」
なんだ狂人っ。
「ガラテアさんは完璧超人って呼ばれてるよっ」
なんだその無○超人みたいな二つ名は。
完璧に付けこむ隙なんてあるのかよ!?
「レウス君、勝とうとするな。
試せる事を試せ」
試す……。
よし、イメージだ。
何だってやってやるっ!
気口砲!
凝縮だ。
いっめぇえええええええじ!
「がぁああああああああっ!!!」
ゴゴゴゴゴゴッ!
おぉ!
十字飛剣並の威力!
けどガラテアは涼しい顔だ。
おのれ、ダーク○レアムの様な奴だな。
次だ!
スンレーザーのイメージだ。
剣から気を出せるって事は、別に口みたいな穴じゃなくても出せるんだ。
照準が合わせやすい目を使う!
凝縮いめぇええええじ!
秘技、目からビーム!!
ビィイイイイイイインッ!
パンッ!
わお、さっと手で払われたわ。
蚊を追い払う様に……。
くそっ、まだだっ。
両目…そして口!
三ヶ所からの気攻撃!
秘技、人間辞めちゃいましたっ!!!
ビィイイイイイイインッ!
「がぁああああああああっ!!!」
ゴッゴッゴッゴッゴッゴッ!!!
おぉ、威力数倍!
理想は顔全体から気攻撃が出る様にしよう!
大丈夫、俺は人間じゃないっ!
ハーフエルフだ!
「いるいる、あんな魔物っ」
魔界でそいつと仲良くなれるかもしれんな。
……お、手の防御を使わせたぞ!
片手の掌だけだが。
「まだまだだな」
まだあるぜぇええっ。
竜の剣(爪)1本で……。
集中っ、集中ぅうううっ!
そう、これは巨大ロボットの武器。
出来るだけ凝縮した気を剣に溜め込むっ!!!
巨大気ソード!
略して巨剣だっ!!
「っしゃあああああっ!」
ドッドッドッドッドッドゴォォォォオオオオオンッ!!!
すげぇでかいクレーターが出来た!
おぉ!
片手の腕の防御にいきました!
この技を瞬間的に出せる様になったら結構いいんでねっ?
「ありゃあ、俺の巨剣と同じ技じゃねぇか!」
ガッシュの武器は既に巨剣だろ。
俺の技名は巨剣で、「きょけん」でいく!
なんか響きが良い!
「終わりかな?」
「ちょっと気がやばいんで、次で最後です……」
二刀流で……。
上段から遅めの十字飛剣!
振り下げた下段から速い十字飛剣!
二撃目が初撃に追いつく!
米字飛剣っ!!
キィイイイイイン、ゴッゴッゴッゴッゴゴゴゴゴゴッッッ!!!
気枯渇。
凝縮するとここまで減りが早いのか……。
しかし、両腕ガードまでいけました!
「ふぅ…………参りました」
「…………ふむ。
時間をかけて気総量と体術の向上に努めなさい。
気の達人を修得し、努力を怠らなければ2、3年で30位台……もしくは20位台にはいけるだろう」
「は、はい!」
2、3年で30位か……。
なげぇな。
強い奴ホント多すぎ。
「面白い前座でござったぞ、レウス殿」
「前座?」
あれ、この後誰か戦うの?
「次、デュークッ!」
「えぇ」
まじか。
ごめん。
気残しておけばよかった。
大体見えなかった。
どうやらデュークがランキング戦を挑んだらしい。
色んな場所でバチバチ言って、俺が作ったよりでかいクレーターがドコンドコンと出来上がりまして、はい。
途中から俺達じゃ見てられない状態になり、ドンファン、ガイ、ミカエルを残してイリスに連れられて退避しました。
これ以上は中央国からクレームがきそうって事で、西の荒野に場所を移したらしい。
俺達はそのまま下校となり家に帰った。
命が惜しいので見に行きませんでした☆
ガイに聞いたら、結果はデュークの負けだそうだ。
爆発頭のアフロデュークが帰って来て「アハハッ、負けちゃったっ」だそうだ。
ガイの話によるとかなり僅差で負けたらしい。
なんでもガラテアが息を切らし膝を着いたとか?
ドンファン曰く、武器のエンチャント数さえ同数ならば、どうなっていたかわからないそうだ。
1位が究極系の武器なら2位や3位は伝説級の武器なんだろう。
対してデュークの武器は魔石限度数が6だ。
相手が魔石限度数8の武器を装備していたらこの2個の差はでかいだろう。
帰って来たデュークは欲しい物を黄金魔石から、「魔石限度数7以上の武器、もしくはその素材」に変更してた。
戦いに関してはしっかりしてんなコイツ。
ガイの話だと、人間でこのレベルは異常な事だとか。
どうやら上位5名はエルフ、ハーフエルフ、ドワーフで固められてるらしい。
当然っちゃ当然か。
寿命が違いすぎる。
ガラテアは約800年かけてあの強さだが、デュークは25年であの強さだ。
なんつーセンスだ。
いや、見えないところで努力……してそうにないな。
努力と言うより戦いが好き過ぎて、気が付いたら強くなっちゃいましたーって感じなんだろう。
他人の俺から見たら努力だが、デュークからしたら趣味なんだろう。
俺としては5位以内にドワーフがいるのにビックリだがな。
ドワーフの寿命は約250年だそうだ。
学校にいるグランダルはおそらく人間の40代あたりだろう。
5位以内……いや、10位以内の情報が知りたくてドンファンを質問攻めにしてみた。
勇者ランキングで確認出来るのは名前と欲しい物だけだからな。
1位から10位はこんな感じだ。
■1位 オーディス 【黄金魔石】
■2位 エミーダ・カトルス 【10位以内の魔王の情報】
■3位 ガラテア 【神速の魔石2個】
■4位 アクセル 【20位以内の魔王の情報】
■5位 ジィビット 【魔石限度数7以上の武器、もしくはその素材】
■6位 ディストール 【神技の魔石、テクニカルマスターの魔石3個】
■7位 ビーナス 【神力の魔石2個】
■8位 ゴディアス 【黄金魔石】
■9位 ダタタベコム 【装備中の武器】
■10位 デューク《狂人》 【魔石限度数7以上の武器、もしくはその素材】
1位から3位はハーフエルフだそうだ。
4位のアクセルがドワーフで、5位のジィビットがエルフ。
6位のディストールと7位のビーナスがエルフで、8位のゴディアスはドワーフ。
9位のダタタベコムは人間だそうだ。
ダタタベコムの欲しい物が異常すぎる。
装備してりゃいいのかって事でブロードソード……とかでもOKらしい。
つまり素手でランキング戦に臨まなくちゃいけないんだとさ。
ダタタベコムも素手で戦うという事でギルドに認められたそうだ。
ダタタベコムは素手での戦闘の達人なのか?
普段は武器を使ってるらしいから、武器で優劣がつくのを嫌ってるのかもな。
まぁ誰でも挑めるって事は、戦闘狂である事に違いはないんだろう。
上位陣も魔石を欲しがってるって事は、やはり武器の入れ替えが激しいのか?
魔界にもダンジョンは少ないがあるそうだ。
正確には少ないんじゃなくて、50人以下しか勇者が魔界にいないから、見つけてもすぐ攻略される。
周辺の魔物のレベルの高さから探すのが困難だろうし、魔王の中にも探す奴がいるだろうしな。
魔王と魔物が仲が良いって訳じゃないらしいから、それは有りえるだろう。
って事は、ダンジョンの法律は魔物の魔王が作ったのかしら?
まぁより優れた武器が手に入れば、その都度ウェポンエンチャントをしなくちゃならんからな。
特硬化、特抵抗を付けなければ神系の魔石が7、8個必要となる。
1個もない俺から考えたら途方も無い作業だ。
そう考えると俺は武器面では恵まれてるっちゃ恵まれてるのか。
右手のユグ剣もいつまでもつかわからないけどな……。
さて、そろそろ寝るわ。
……おやすみ。