第三十七話「そして入学」
我が家だ……。
帰って来れた……。
「ただい――」
「やぁ、お帰りっ」
ぬぉっ!?
「えぇ、ここで殺るのかいっ?
んー……構わないけど折角買った家が壊れちゃうよ?」
「や、やりませんよっ」
「では剣を戻したまえ」
くそっ、誰のせいだと思ってるんだっ!
あれはトラウマだ。
ん、ドタドタと階段を下りる音が……。
「レウスッ!」
「なんだハティー」
「これ、を見ろ!」
何これ魔石?
橙色……スピード系か。
レベルは……あれ、中に光が1つしかない。
けど光が超大きい。
これは……。
「神速の魔石?」
「そうだ!」
「な、なんでお前がこんなの持ってるんだっ?」
「拾ったのだ!」
「どこでっ?」
「東の森の中、の人間の骨の側に落ち、てたぞ!」
おのれ、運の良い奴め……。
「ただいまレウス!」
「おかえりキャスカ」
「レウス、これを見てくれっ」
紫の魔石。
テクニカルストーンだ。
中の光が超大きい……。
「神技の魔石……」
「そうだ、凄いだろう!?」
「拾ったのか?」
「剛剣で魔物を倒した時、掘り起こされた地面の中の白骨死体と共に見つけたんだ!」
くそっ、運の良い奴め……。
「きゅーきゅぅ!」
「お帰りスン。
神力の魔石でも見つけたか?」
「きゅきゅ?」
おぉ、流石スン!
俺の大親友だ!
《パワーマスターの魔石が5個溜まったから、今度エルフの里で神力の魔石と交換してくるね》
……。
今日はやけ食いだな。
俺が手に入れたのは、デュークとのランキング戦の特硬化のみ。
神系の魔石がまだ1個もない俺になんだこいつらは!?
おのれ、もう少し俺を引きたてようとかないのか!
神系の魔石欲しいよぉおおおおおお!!
よし、今日も自傷行為に力を入れよう。
デュークのおかげ……デュークのせいで今日はかなり気を使っちまったが、まだ残ってるしな。
錬度は上がったけど、錬度だけなら安全に上げたい。
準備が出来てから実践技術を学ぶべきだと思うぞ俺は。
さ、回復回復ぅ。
チーン!
右手回復修得したわ。
……しかし気が晴れない。
気が枯渇したら即寝よう。
こんな時は寝るに限る。
チーン!
おはよう。
勇者証明に起こされた。
なになに……。
《勇者専門学校入学のお知らせ。
説明を行いますので、本日、空の月31日の昼12時に勇者ギルドまでお越しください》
4時間前に送ってくんなよ。
はい、4時間後の勇者ギルドです。
スン、デューク、セレナ、なぜかキャスカ、そして俺が集まった。
ついにハティーまで勇者になりたいと言い始めたので、まず戦士ギルドに入らなきゃダメと教えてやった。
すぐに戦士ギルドへ行ったハティーだったが、名前が書けずしょんもりして帰って来た。
帰って来てから偶然家に来てたドンファンをひっ捕らえてたので、現在ドンファンに文字を教わってる頃だろう。
ドンファン……可哀想な奴。
「で、なんでキャスカがここにいるんだ?」
「ふっ、レウスこれを見ろ!」
わお、勇者証明だわ。
昨日、スンと出かけてブレイブジャッジメントを狩りに行ったのか。
神技が手に入れば、おそらくいけるだろうしな。
しかし、勇者の更新のが鳴らなかったぞ?
チーン!
《101位 キャスカ 欲しい物【特抵抗の魔石】》
なるほど少し誤差があるのか。
俺が勇者になった時、マイムマイムの勇者証明の勇者更新の音が鳴らなかったのはこれが理由か。
ランキング戦はすぐなのに、おかしなもんだ。
で、この人は誰だ?
ハーフエルフっぽいがナディアに似た緑色の長い髪だ。
ソファーに座ってる俺達の対面にガイが連れてきた。
腰かけてるソファーまで髪が届いてる。
少し老けてるが整った顔立ちで、優しそうだ。
ハーフエルフでこの老け方……800歳以上?
茶色いローブを着ていて……なんか大魔道師って感じだな。
因みにエルフの年齢は、成人体系までは人間と同じ速度で成長する。
20歳位~200歳位までは若いままだ。
1000歳で人間の85歳位になるとか?
老後長すぎで怖いな。
ハーフエルフだと更に倍だしな。
若い時間も長いが、老後も長い。
まじ怖い。
流れからいくと、この人がガラテアか?
しかし、そうなると3位のわりに強そうに見えない。
しかししかし、このパターンからいくと、実力を表に出さないとかそんな感じなんだろう。
「お久しぶりです、ガラテアさん」
「久しいね、デューク君」
気のせいかデュークも少し緊張してる?
おっと、挨拶挨拶。
「初めまして、レウスといいます。
よろしくお願いします!」
「やぁ、初めまして。
ガラテアだ。
宜しくね、レウス君」
「きゅっきゅ!」
《初めまして、スンといいます。
宜しくお願い致します》
あらやだ、スンのが礼儀正しいわ。
「これは驚いたな。
いや、失礼。
宜しくね、スン君」
「初めましてガラテア様。
キャスカ・アドラーと申します」
誰だあいつ?
「アドラーというと……エヴァンスの出身ですかな?」
「はい、エヴァンスの町長、トッテム・アドラーの娘でございます」
「美しい上に、武芸まで勇者の域に達するとは、素晴らしいお嬢さんだ」
「お褒めに与かり光栄ですわ」
あぁ、キャスカさんか。
登場が久しぶり過ぎて混乱したわ。
「セレナです。
宜しくお願いします」
「噂は聞いてるよ。
宜しくね」
どんな噂なんだろう。
うーん、気になるな。
「……さて、今回君達は勇者専門学校に入学したいとの事だが、入学に必要な物は揃えてあるかね?」
「僕はこれです」
やはり緊張してるな。
いつもの「っ」がない。
「スピードマスターの魔石だな。
確かに受け取った」
「私は金銭を用意しました」
「………………うむ、確かに」
「きゅい!」
「これは……」
奥義書に手をかざしてる……。
そんなんでわかるのか?
いや、そんな事はないはずだが……。
「……ハハハ、これは面白い奥義だ。
人間では使えないが……なるほど、確かにオリジナル剣技だ。
スン君、確かに受け取った」
「きゅーい!」
まじか。
わかったみたいだ。
「私もセレナさんと同じで金銭を」
「………………うむ、確かに」
最後は俺か。
十字飛剣からだ。
「これはどうでしょうか?」
「ふむ…………ほぉ、二刀流とは珍しいな」
やはり奥義書の中身が視えるのか。
一体どうやるんだ?
俺が知らないだけって事じゃないはずだ。
「しかし、これは既に登録済みだな」
無理か。
次はカマイタチだ。
「では、これはいかがでしょう?」
「どれ…………ふっ、想像力豊かだね、レウス君。
うむ、これなら問題ないだろう」
あり?
あっさり通ったぞ?
となると、俺以外の二刀流はごく少数、もしくは1人って事か。
「うむ、全員入学資格は満たしてる様だな。
では明日、雪の月の1日から、君達に北区の西にある勇者専門学校に通って頂く。
学校は基本的に1日以外は偶数日に出席する様に」
ほぼ1日おきに休みか。
「勿論、1日以外の奇数日にも来て頂いて構わないが、授業は設けていない。
奇数日には勇者としての仕事や休養、訓練に当ててくれたまえ」
「「はい」」
「きゅい」
「うむ。
デューク君、レウス君、スン君、セレナ君、キャスカ君を含めて生徒は15人となる」
やはり少ないな。
勇者になってからの学校だしな。
プライドが邪魔して入らない奴も多いだろうし、卒業してる奴も多いんだろうな。
セレナもこの前ガイに「やはりあの件お願いします」とか言ってたし、入るのを躊躇ったんだろう。
教えてくれる人がいるなら、大いに習うべきだと思うがな。
先人の知識や技術は大事にしなくちゃな。
怖い人以外で。
「欠席の連絡は、明日お渡しする【生徒手帳】から申告してくれたまえ」
生徒手帳?
また電子機器的なアレか?
勇者証明が存在するだけで、もうあまり驚かん。
しかし10人の勇者が新登場か……色々大変じゃないか?
いや、きっと1人か2人位ずっと欠席してます……的な奴がいるはずだ。
そいつが実はアレだったりアレアレだったりするんだ。
「では明日8時、勇者専門学校の講師室まで来たまえ」
「「はい!」」
「きゅい!」
はい、その明日とやらです。
講師室……。
しまった.
新キャラがもう2人いるじゃないか!
大丈夫なのか!?
色々と!
扉をガチャっと開けました。
あ、やべ、ノックするの忘れた。
誰かおる。
「初めまして」
「え……君は?
は、初めまして」
金髪美女だ。
キャスカより薄い金髪?
黄色とかに近い感じだな。
服はナディアの私服にそっくりだが紺色だ。
ワイシャツの胸元がおっぴろげーだ。
谷間全開程度だ。
丸見えじゃないぞ?
それでもいいけどな。
君達の妄想は自由だ。
勿論、俺のもな?
あれは……F~Gですな。
髪はぱっつんで頭頂部でお団子にしてる。
眼鏡キャラ初登場だ。
銀色のイヤリングをしてるな。
うなじが色っぺぇ。
5~6センチの黒いヒールを履いて、俺より少し高い程度……160センチ位か?
まつ毛がレンズにつくんじゃ? って感じの長さだな。
THE秘書って感じのキリっと感だ。
けどなんか優しそうな?
年は20前半ってとこか?
「レウスといいます。
本日より入学する事になりました。
宜しくお願いします」
「あ、あぁ、イリスと申します。
これから宜しくお願いします」
「イリスちゃんっ。
お久しぶりっ」
「……ぇ?」
「8年ぶり位かな?」
「な、なんでデューク先輩がここにいるんですかっ!?」
「今日から新入生っ、聞いてない?」
「きききき聞いてません!
今日は新入生が5人来るって……」
「なんだ、聞いてるじゃないかっ」
「……っ!」
デュークのせいで可哀想な思いをしたって事は、ひしひしと伝わってきたな。
8年前って事はここの生徒時代か?
デュークは今25歳だそうだ。
20位だと思ってたのに、地味に童顔な狂人だ。
イリス。
勇者ランキング30位で、欲しい物はテクニカルマスターの魔石3個。
技術肌な姉御!
テクニカルマスターイリス!
神技のイリス!
色々と、ご馳走様ですっ!
あんなお姉さん有りだな。
うん、この世界の素晴らしい点の一つだな!
「なっ、デューク先輩!?」
お前も後輩なのか。
頭が光ってる。
色白だ。
なんか幸薄そうな顔してる。
そしてこいつは鼻眼鏡だ。
眼鏡かけさせればいいってもんじゃないんだぞ?
新キャラ大事にしろよな?
お?
しかしなんだこいつの格好は?
ジージャンにジーンズ……下駄!?
こんな服装いままで見た事なかったわ……。
イリスは腰に細い剣を差してるけど、こいつは腰のやや上、背中部分にダガーを差してるな。
横から抜くタイプのアレだ。
年は20前半かな?
デュークの事を先輩って言ってるって事はそうなんだろう。
「あ、ミッキーじゃんっ!」
おい、それはやめろ!
「違いますっ、自分の名前はミカエルです!」
なんだあだ名か……。
正式名称じゃないし、セーフだろう。
しかしこんなミカエルは嫌だな。
ミカエルと聞くと、どうしても頭に天使が浮かぶ。
ジージャン、ジーンズは嫌だな。
ミカエル。
勇者ランキング21位で、欲しい物は神力の魔石1個と特硬化の魔石1個。
うーむ……。
21位に見えない。
80位と言われても納得するだろう。
「これから宜しくねっ」
「「…………」」
仕方ない。
相手は狂人だ。
上位9人以外はほとんどこんな顔をするだろう。
いや、上位9人の中でさえいるかもしれない。
おっと、話を進めなくては。
「えっと、ガラテアさんにここに来る様に言われたんですが、どうすれば良いのでしょうか?」
「きゅい」
「やだ、可愛い」
当然だ。
俺のスンだぞ。
《勇者ランキング100位のスンです。
宜しくお願いします》
「「よ、宜しく……」」
うん、これが普通の反応だな。
きっと今までの他の奴の精神がおかしかっただけだな。
「今日は驚く事だらけね……」
「100位……いや、99位のレウス君がこんなに小さいとは思わなかったよ。
スン君にも驚いたし、そして……あの人にも……」
やっぱり俺の存在にも驚いてたのか。
しかし一番驚いたのは狂人の存在か。
まぁそうだろう。
再入学なんて普通なら異例だ。
それがランキング10位の狂人なんだから超異例だ。
「アハハハハッ!
授業が楽しみだねっ」
俺は楽しみじゃないな。
席は離して欲しいものだ。
「セレナだ、宜しくお願いする」
「あぁ、こちらこそお願いします。
お噂は伺っておりますわ」
噂って一体なんだ?
伏線か?
伏線なのか?
それは嫌だから今度聞こう。
「で、そちらの美しいお嬢さんは?」
「お上手ですわ、ミカエル先生。
私、キャスカ・アドラーと申します。
これから宜しくお願い致します」
キャスカさん。
再登場してからなんか影薄くね?
まぁ、今のキャスカとレベルが違う人が多すぎるからな。
仕方ないっちゃ仕方ないか。
「では、こちらに掛けてください」
「はーいっ」
「「「はい」」」
「きゅぃ」
……。
嘘ついたわ。
これは驚くな。
「これが生徒手帳です。
紛失には気をつけて下さいね」
ほぼほぼスマホだわ。
勇者証明の大きさならまだ驚かないが、小型化して出てくるとは……。
勇者証明と同じで銀色だな。
言われるがまま、名前とか年齢とかを入力した。
スンはちゃんと13歳って書いてた。
スンが……汚れちゃった……。
そしたらなんか表示された。
■レウス
■13歳
■男性
■ランク8
……どうやらこの学校はランクシステムがあるらしい。