第三十六話「入学まで」
まぁ、あんな事もあるよな!
次はえーっと……そう、ダンジョンだ。
中央国に勇者が多そうなので、全然情報ないかと思ってたら、めっちゃ討伐情報やダンジョン情報があった。
デュークやドンファン、ガイの話ではこれが日常茶飯事らしい。
やはり100人でなんとかするってのは大変なんだそうだ。
特に多いのは魔物討伐だ。
上位の勇者は魔王の相手をしてるから、普通の魔物にまで手が回らない。
だから人界に強い魔物が出ても、あまり討伐に行けないらしい。
人界ではローレベルからサードレベルが多い。
フォースレベルの魔物が発見された時は、20位~40位の勇者が対応するとの事だ。
因みにチャッピーとマカオは、オーバートップレベルの魔物に該当するらしい。
ガイ曰く、スンはおそらくサードレベルクラスの魔物に該当するとの事。
あぁ、これは俺がガイに聞いたんだ。
スンも知りたがってたしな。
って事は、俺が対応出来るのはローレベル、セカンドレベル、ギリギリでサードレベルってとこだな。
魔物の魔王も大体がトップレベルかオーバートップレベルに該当するそうだ。
下位魔王だとサードレベル、フォースレベルもいるとか言ってたけどな。
あ、キャスカとスンにグロウストーンをネックレスにして渡したんだ。
デュークが「さすがレウス君、わかってるねぇ」とか言ってた。
首にグロウストーン。
これは勇者の中で当たり前の事らしい。
それを聞いたセレナが、町中を駆け回ってグロウストーンを探してた。
南の国まで行ってようやく見つけたらしい。
どうやらドンファンはスンが気に入ったらしく、スン、キャスカ、ハティーの指導に当たってる。
俺にはデュークとガイ、セレナが付いた。
ガイには毎回聞いてるぞ?
「ガイさんギルドは大丈夫なんですか?」
「問題ありません。
ギルドには留守番機――」
わかったよ。
どうやら、後人の育成も勇者の仕事の内らしい。
世界の均衡を保てないからな。
そう言われるとなんか納得してしまう。
え、世界?
いつの間にか壮大な話になってない?
チャッピー達と合流して落ち着いたら隠居生活だよ?
俺は魔物の討伐をし、デュークとガイは後ろでただ見ていた。
前に俺とスンが監督してキャスカにやらせたのと一緒だ。
ローレベル以上の魔物は一癖も二癖もある奴が多かった。
印象に残ってる魔物は……。
セカンドレベルのフライダークカメレオン。
羽で飛んでる真っ黒なカメレオンだ。
大きさは……マイムマイムくらい?
速くて体当たりがやばい。
岩をスっと通り抜ける様に貫いていく。
危機を察した時は擬態する。
カメレオンの特性は知ってるよな?
それが飛んでるんだ。
つまり透明だ透明。
とんだステルス野郎だ。
そいつがめっちゃ速く動くからな。
少し……いや、かなり手こずった。
あいつが伸ばしてきた舌が、運良くユグ剣に絡み付いてな。
竜の剣(爪)でそれを斬ったら、擬態が解けて動きも鈍った。
その時ようやくちょんぱ成功。
討伐部位は舌。
セカンドレベルの魔物でこれだ。
困ったもんですよ!
次はローレベルの魔物、エレファントマンモス。
これは名前からしてふざけてると思ったが、現れたのは体長15センチ程の茶色の象だった。
鼻が異常でな。
鼻だけ2メートル位あった。
あいつが地面を鼻で叩いたら、俺の剛剣並のクレーターが出来た。
物理法則的なアレアレはどうなってるんだ?
鼻だけで数合俺と叩きあった。
どうやら気で鼻を覆ってるらしく、
ユグ剣では斬れなかったが、竜の剣(爪)で徐々にダメージを与えてったら、15合目位で鼻のちょんぱに成功。
討伐部位は鼻。
サードレベルの魔物、ブレイブアンデッド。
勇者のアンデッドってだけじゃない。
高レベルの戦士とかのアンデッドもそう呼ぶらしい。
この「とか」っていう理由は、戦士や勇者じゃなくても、やはり強い奴ってのはいるからだそうだ。
このレベルも死ぬ前の肉体の強さで変わるらしい。
アンデッド補正で大体1段階レベルが上がるんだとか?
想像したくはないが、俺がブレイブアンデッドになったら、フォースレベルになるって事だな。
この魔物は討伐の競争率が激しい。
良い武器、良い魔石が出に入る可能性が高いからだ。
わかると思うが、生前の装備品をいただけるからな。
勿論、倒せればの話だ。
アンデッドってのは厄介で、死ぬ前の肉体の力に更にアンデッドの力が乗るから、相当に手強い。
このブレイブアンデッドの強さは一定じゃないって事が一番の問題だ。
戦闘した者が倒せなくても勇者ギルドに報告出来れば、その情報からすぐにどのレベルか反映されるが、倒せず逃げ切れなかった場合、その勇者は…………死ぬ。
この前亡くなった88位のダニッシュはこいつにやられたらしい。
ブレイブアンデッドってだけでローレベルに認定される。
ダニッシュが殺された事で一気にサードレベルに上がったわけだ。
ダニッシュの遺体はガイの手により回収され、その斬り口からガイがレベルを判断したらしい。
ガイは自分が倒す事も考えたらしいが、俺の存在を知ったって事で任せようと思ったのだとか。
え、怖いんですけど?
ブレイブアンデッドと戦う時、ドンファンの爆槍弾の手前の作業を真似て試してみた。
実力は俺より下とわかったから試したんだぞ?
気の弾を身体から出し、空中浮遊保持させる事に成功した。
これで打てば爆剣弾になるんだろうとか思ってたが、ここまでの過程は気の「変形」と「遠隔操作」になるらしい。
つまり爆槍弾は剣技じゃないって事だな。
俺との修行の時、ドンファンが宙でスピードを上げたのは、足の裏から気を出し、それを遠隔操作で空中で保持させ蹴ったんだろう。
細かい作業を一瞬で行うドンファンはやはり凄い!
それをブレイブアンデッドに向けて投げ、ブレイブアンデッドの意識を俺以外に向けさせる。
そしたら簡単にブレイブアンデッドの首が落ちた。
討伐部位は首。
遠隔操作……戦いの幅が広がるなおい。
これは是非とも修得せねば!
スンも覚えてたしな。
ブレイブアンデッドが持ってた剣は損傷が酷かったので放置。
テクニカルマスターの魔石が2個、パワーマスターの魔石を2個ゲットした。
スピードは大事だぜ?
因みに現在セレナが持ってる武器、「古代の剣」はブレイブアンデッドから手に入れたそうだ。
この武器の素材は不明らしい。
魔界で頻繁に見つかる事が多く、良質な剣なので多くの勇者が愛用しているとか?
魔石限度数は4で、ユグ剣と一緒。
人界で見つかる事は稀らしい。
ダンジョンには3か所潜った。
しかし、全てがローレベルの敵だったので、これといった収穫は魔石位しかなかった。
スピードマスターの魔石が1個。
特抵抗の魔石が1個。
もう1つはハズレだ。
セレナはどうやら俺の成長が見たかっただけみたいだ。
勇者ギルドの魔物の討伐報酬なんだが、ローレベル、セカンドレベル、サードレベルは一律50万レンジなんだってさ。
フォースレベル、トップレベル、オーバートップレベルは一律80万だ。
上位ランカーになると、報酬を断る人が多いらしい。
魔界に行くと金を使える場が少ないし、それまでに稼ぎ過ぎて有り余るのだとか?
そりゃそうだ。
だがしかし、ここは人界でアタクシはお金が大好きざます。
落ち着いた後、もしここでチャッピー達と暮らす事になったら、食費が馬鹿になりませんからね。
毎回ユグ木まで行かせる手もあるが、絶対いじけるからなアイツ。
討伐した魔物は8体。
400万でうはうは。
装飾屋に行ったがマスター系の魔石は置いてなかった。
この町にも市があり、やはり南区に店が並んだ。
そこの市でパワーマスターの魔石を1個見つけた。
200万と割高だったが、今は金よりも力なので、即決購入した。
因みにスンとキャスカとハティーは「もう自分で魔石を手に入れる」と言ってきた。
なんか成長してるなアイツら……とか思ってたら、スン以外はドンファンに注意されて俺に言ってきたらしい。
どうしようもないな。
スン以外は。
修行編だ。
セレナと戦ってみた。
今度はガチでな。
結果は……ギリギリ勝てた。
セレナには「勇者学校が荒れそうだな」って言われた。
この身体になってから戦い漬けだからな。
まだまだだけど、頑張っている……方だとは思う。
え、戦闘の詳細?
最近戦闘多かったろ?
休憩って必要だと思わない?
………………わかったよ!
修行開始!
色々あった!
修行終了!
な、大体伝わったろ?
無理?
……そうだな「決闘 接戦 動画」で検索すればいいんじゃないか?
世の中便利になったよな。
変な動画が出てきても責任はとらないからな。
俺がこっちに来る前に検索した時は、なんかのオンラインゲームの動画とかが出てきたな。
まぁ、今どう読んでもダイジェストみたいな流れだろ?
察してくれると助かる。
あぁ、ガイとも戦ってみたぞ。
なんであの人引退したの?
見た感じ身体の動きは、ほぼマイムマイムと同じ……いや、それ以上だった。
聞いたら、片目を失うまでは15位だったらしい。
爺さん勇者恐るべし。
修行内容は……逃げ惑う俺、蹂躙する鬼って感じだな。
笑顔で腕の骨を折って来やがった。
その後のあいつのセリフが「大丈夫ですか?」だと。
どうやら上位ランカーは鬼畜が多いらしい。
俺の鬼畜度とは文字通りレベルが違うわ。
ほぼ毎日そんな事してたから、自己再生の錬度がかなり上がったわ。
最後だな。
1回だけ。
1回だけ狂人と戦った。
セレナとの戦闘を話さないで申し訳ないが、これだけは詳細を話そう。
修行開始!
スッ…………。
なんの音だ?
「レウス君、腕落ちたよ?」
左腕が……ない!?
っっっっってぇええええええええええええっっ!!!!
ふざけんなっ!!!
「がっ……っくぅうううっ!!」
「早くくっつけないとっ」
くくくくくっつくのかっ!?
落ちた左腕を拾ってくっ付けて、自己再生をして少しくっ付いたら、右手回復との二重掛けをした。
「はっはっ……付いた」
「レウス君、脚落ちたよ?」
……。
狂人だ!
きっとこいつは強人と興人と狂人が見事にブレンドしてるんだ!
「ってぇええええええっ!!」
「早くくっつけないとっ」
回復ぅううううううう!
直後の気全開!
これで多少はガード出来るはずっ!
「うん、遠距離じゃ難しいかっ」
近距離で殺るそうです。
嘘、見えなっ!?
「いぃいいいっっっ!?」
腹部を曲刀斑蟲が通過した。
あ、逆走した。
「かっ……ひゅ……」
「うん、良い声だねっ」
気全開だぞ!?
反撃を考えず全て防御と回避に回す!
剣を納め両手回復と自己再生!
「へぇ、攻撃を捨てるんだ?」
「う……動きが見えなきゃ、剣を持ってる意味が無いので……」
「そうだねっ。
それにしても凄い回復力だねぇ」
身体が超震えてる……。
死ぬだろこれっ!
回復がなきゃ今頃バラバラじゃねーか!
何で戦ったのかって?
これランキング戦なんですっ!!
すぐに参ったと言えばいい?
ランキング戦ルールで、開始してから1分間は降参禁止なのだよっ!
ご都合ですね?
俺にとってはめっちゃ都合悪いわっ!
俺がデュークとの修行を避けてたら、あの野郎申請してきやがったっ!!
「くっ……なんでランキング戦を?」
「デュラハンがレウス君を狙う理由が知りたくてねっ」
「俺が知りたいですよ」
「1分経っちゃうからその話は後ねっ」
くそっ!
少し稼げたけどこれ以上の時間稼ぎは無理だ。
後退っ!
「いらっしゃいっ」
後ろにいた!?
ぐぅうううううっ!?
背中が熱いっ!
斬られた!
手が届かんっ。
ここは自己再生のみかっ!
「もう少しかなっ」
もう少し?
何が!?
動きが全く見えない!
どうすりゃいいっ!?
「見る時使うのはどこだい?」
また腕がぁっ!!
っぅううううっ!!
いてぇえええよおおおおおお!!
み、見る時……そりゃ目だろっ!!
目に気を集めても、よく見える様になるわけじゃないぞっ!
それはもう試した!
「目に筋肉が無いとでも思っているのかい?」
………………。
……くそっ、そういう事かっ!
め、目に集めるんじゃないっ!
目の……奥に集中するのかっ!
「きたこれっ!」
かすかだが……いやかなり動きが見える!
「よくできたね。
じゃ、剣を抜いたら?」
「……いえ、参りました」
「あれ、1分経っちゃったか?
んー………………残念っ」
修行終了……。
……学ぶべき事が多すぎる。
そしてデューク怖すぎ。