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第三話「出会い」

 エヴァンスを発ち、10分かからない位でスンとチャッピーのいる森へ戻って来た。

 かなり速いな。

 これが魔石の力か……すげぇな。


「戻ったか、待ちくたびれたぞ」

「きゅっきゅ!」

「お待たせ、さぁ、帰ろう」


 帰る途中、俺とスンは1回振り落とされた。

 こいつわざとやってるんじゃないか?

 ユグドラシルの木に戻って来た。

 水場で身体を洗って、買ってきた服を着用した。


「ほぉ、馬子にも衣装だな」

「ふん、そんな事言う奴にお土産はやらん」

「土産?

 ……レウス、それは気になるぞ?」

「スンにはこれだ」


 俺が指輪を差し出すと、スンは尻尾を形成し指輪をはめた。

 頭良いなこいつ。

 魔石は魔物にも効果があるのかな?


「スン、少し走ってみろ」

「きゅ?」


 よくわからない様な表情をしたが、言う通りに走ってる。

 良い子だな。

 ……おぉ、いつもより速くなってる。

 効くんだな魔石。

 スンもそれに気付いたみたいだ。

 尻尾が可愛いな。



 ところで、チャッピーがさっきからチラチラ見てくるんだが……。


「我のは?」


 うん、そんな顔してる。


「レウス、我のは?」


 そんな表情だ。


「さ、チャッピー、修行しようぜ」

「レウゥウウウウウウス!!!

 我にお土産は!?」


 ガキかこいつ。

 ちょっとちびったじゃねぇか。

 新品のパンツなんだぞ。


「ほれ、俺とお揃いだ」


 腕輪を見せてやった。

 獰猛な目が輝いてる。

 うん、怖い。


「むぅ、どこにどう着けよう」

「ちょっとかがめ」

「……こうか?」

「きゅー?」


 腕輪を中央に生えてるランス状の一本角にはめてやった。


「おぉ!」


 尻尾ブンブン振ってる。

 犬かこいつは。


「速度が上がる魔石がはめてある。

 速くなったか?」

「……どれ」


 うん、超速い。

 バビュンって感じ。


「すごいな、速くなったぞ!」


 尻尾振りすぎ。


「魔石なんかと、今まで馬鹿にしてたが、これは素晴らしいな!」


 おい、尻尾止めろ。

 あ、ここでステータス発表だ。

 前回とあまり変わってないけどな。


 ――パーティメンバー紹介――


 名前:レウス

 年齢:8歳6ヶ月

 種族:ハーフエルフ

 職業:魔物使い(剣士)

 装備:ユグドラシルの剣・丈夫な服(灰)・ブーツ(茶)・スピードバングル

 技:斬岩剣



 名前:スン

 年齢:約4歳6ヶ月

 種族:スライム(緑)

 職業:レウスの友達

 装備:スピードリング

 技:酸・形態変化



 名前:チャッピー(スカイルーラー)

 年齢:約3001歳6ヶ月(人間でいうところの30歳位)

 種族:ドラゴン

 職業:落ちぶれた空の支配者

 装備:背中にレウスとスン・スピードバングル

 技:咆哮(シャウト)火炎(ブレス)尾撃(テイルアタック)



 それから修行をした。

 予想通り魔石によってチャッピーの攻撃も速くなったが、俺も速くなったから差し引き0ってとこだ。

 しかし、ブーツの分の重さが影響して、俺の方が少し遅いかも?

 ふん、筋トレ筋トレ。


 チャッピーは文字が読めた。

 ラッキーだ。

 最悪また一般人(ハチヘイル)を頼るところだった。

 人間の文字を勉強していく。



 ちょっと面白い事が起きた。

 スンも勉強に参加してきた事だ。

 覚えたかどうかわからないって?

 地面に文字書いて「いつもありがとう」だってよ。

 やべぇ、超可愛い。

 頭も良い。



 因みに、一月に一回はエヴァンスに行く事にした。

 チャッピーだけ置いてな。

 不満そうな顔をしてたが、毎回お土産を買う事で許してくれた。

 その度に尻尾をブンブン振り回して、周りの魔物や動物が怖がってる。

 クチャって逝きそうだもんな。

 エヴァンスはユグドラシルの木から走れば30分で着く距離だった。

 買った大きな鞄にスンを詰めて行った。

 スンも喜んでたな。

 一般人(ハチヘイル)には毎回会ったぞ。

 入り口にずっといるんだもん。



 そんなこんなで半年経った。

 もう9歳だ。

 文字の読み書きを覚え、商人育成の本も読破した。

 そんな時期だった。

 いつも通りチャッピーとの修行。

 最近、チャッピーの左手はガチだ。


「ぬ……くっ!」


 とか言ってるから間違いない。

 間も無く右手を使わせる事が出来そうだ。

 お、入った。

 空の支配者の左手に傷入りました!


「……限界か、明日からは右手も使おう」

「おぉ!」


 成長を実感!

 いい調子だ!


「そ、そこまでだ、邪悪なるドラゴンめ!!」

「え?」

「へ?」

「きゅ?」


 女だった。

 中々の美人でブロンドだ。

 幼い顔立ちだが、出るところは出てる。

 実際若そうだ。

 14、5ってところだろう。

 ブロードソードみたいな剣を持ち、チャッピーを挑発してる。

 黒いマントに革製の鞄……旅人?


「そ、その少年から離れろ!」


 あぁ、なるほど。

 チャッピーもスンも理解したみたい。

 うちの子達ホント頭良いわ。

 さて、説明しないとな。

 何て言おう。

 何かすぐ理解してもらえる言い訳……。

 普通に説明したら「洗脳されてるのか!?」とか言われそうだからな。

 言葉は選ぶぜ?

 ふむ……怒鳴るか。

 そして黙らせよう。


「修行の邪魔をしないでください!」

「な、修行!?」

「その通りだ人間よ。

 我とこのレウスは、ここ、ユグドラシルの木で2年間剣の修行をしているのだ」

「こんな場所で修行だと!?

 信じられないな!」


 何言っても信じられないパターンだな。

 スンがきゅっきゅ言いながら頭に乗ってきた。


「なっ、スライムめ!

 そこから離れろ!」


 面倒だな……犯すか?

 無理だ、精通してないし、そんな度胸はない。


「この子はスン、俺の友達だ」

「きゅ!」

「こいつはチャッピー、俺の師匠兼、友達だ」

「そうだ、友達だ」


 どうやら俺の友達発言が嬉しかったらしい。

 スンは口が超緩んで、涎たらしてる。

 それ酸じゃないよね?

 チャッピーは相変わらず尻尾振ってる。

 強烈な風だ。


「……ふん」


 剣を納めてくれた。

 信じたかどうかはわからないが、敵意がない事は伝わったようだ。


「俺はレウス、あなたは?」

「……私の名はキャスカ・アドラーだ。」


 とりあえず握手だ。

 女の手。

 やばい。

 やわらかい。

 おっと冷静冷静。


「こちらにはどの様な用事で?」

「聖なる木、ユグドラシルの枝を採取しにきた」

「どれほど?」

「その枝から剣を作りたい。

 1本で十分だ」


 その立派なブロードソードがあればいらないのでは?


「チャッピー、とってきてあげなよ」

「仕方がないな」

「いいのか!?」


 この女、どうやって枝をとるつもりだったんだ?

 100メートルは垂直だぞ?

 俺でも登れないわ。

 あれか、行けばなんとかなる精神で来た感じか?

 うん、そんな感じの顔してる。

 ……枝が降ってきた。

 俺の数センチ後ろに。

 あいつ狙ってるだろ?


「おぉ、これで後は削り出すだけだ!」

「やってやろうか?」


 チャッピーは物作りが好きらしい。

 だからあんなに器用なのか。


「なっ、お前がかっ?」

「その剣に似せれば良いのかな?」

「その剣の方がよく斬れるんじゃないの?」

「レウス、聖なる木の斬れ味はあんな剣より凄いぞ?」


 え、そうなの?

 そんなにひゅごいの?

 最初からそんな武器でいいの俺?


「我の爪がもっと凄いだけだ」


 あ、ちょっと自慢したな。

 今こいつ天狗だ。


「そうだな、この剣には慣れてるので、これに似せてくれるのであれば助かる」

「うむ、一晩かかるが良いかな?」

「問題ない」


 因みにいつも俺とチャッピーが話してるのは魔物言語で、今キャスカとチャッピーが話してるのは人間の言語だ。


「きゅ?」


 そうだな。

 お前は「きゅ?」でいい。

 そうじゃなきゃいけないんだ。

 キャスカはその日一日野宿した。

 俺はいつも野宿だけど。

 雨?

 ユグドラシルの木の下には届きませんよ。

 この地域は台風的なアレはないからおだやかなもんだ。

 ただ夜の魔物は怖いぞ?

 目がギラってな。

 もりもりもりとはいかないまでも、じょろろろろって感じにはなる。

 そんな時はチャッピーの鼻がヒクヒクするんだ。

 あれはあれで面白い。


 キャスカがチャッピーのカリカリをジーっと見てる。

 あ、これ卑猥だね。

 ごめん。

 言ってみたかっただけだよ。


「きゅ?」


 そうだね。

 うん。

 ごめん。


 キャスカはチャッピーのカリカリをずっと見てた。




 悪かったって。


 チャッピーは見られるのがまんざらでもない様子。

 漆黒の頬が禍々しく染まる。

 キャスカが怖がってる。

 わろりん。


 とりあえず俺は寝る。

 で、起きた。

 キャスカも結局寝ちゃったみたい。

 キャスカの頭の少し離れた地面にキャスカのブロードソードと瓜二つの木剣が刺さってた。

 匠の技だな。

 チャッピーは数日寝ない事がままある為起きていた。

 ここで褒めると増長しそうだな。

 うーん、


「お疲れ様」


 これで十分だろ。


 うぉ、めっちゃ尻尾振ってる。

 労っただけだぜ?

 尻尾の爆風でキャスカが起きた。

 剣めっちゃ見てる。

 俺が前割った岩の前に立った。

 振りかぶった。

 斬っ……てない。

 超痺れてる。


「なんで斬れないんだよ」

「仕方あるまい、レウスのが数段高みにおるからな」


 俺9歳。

 キャスカは聞いたら14歳だった。

 俺が増長するよ?

 お、キャスカが睨んでる。


「ほぉ、面白い!

 この疾風のキャスカ、レウス殿に手合わせを申し込む」


 凄い、二つ名だ。

 疾風って事は相当速いのか。


「どうするのだ?

 レウス、人間で試してみるのも勉強だぞ?」

「そうだな、一理あるな」

「さぁ、勝負だ!」


 活発なねーちゃんだな。

 とりあえず、俺もキャスカもユグ剣だから、刃こぼれする事はそうそうないだろう。

 キャスカとの距離は5メートル位。

 おぉ、凄いオーラだ。

 見えないけど。

 言ってみたかっただけだ。

 許せ。


 お、歩いてきた。

 ん?

 これ走ってるのか?

 あぁ、走ってる。

 大分遅いな。

 剣の重さを利用して……剣速はまぁまぁだ。

 けど遅いな。

 ふざけてんのかこいつ?

 いや、必死そうだ。

 ふんって言って少し鼻水でてる。


「やれやれ、相手にならんか」

「きゅ、きゅ!」

「あぁ、レウスは今相当強いぞ」


 人間の言葉で言うなよ。

 キャスカも聞いてるぞ。

 あ、半泣きだ。

 鼻水めっちゃ垂れてきた。

 けど、この動きは練習になるな。

 1、2、ここで振り上げる。

 やっぱり。

 突いて、払って、体当たり。

 戦い慣れてるな。


「やれやれ、レウスめ、遊んでおる」

「きゅ、きゅ!」

「あぁ、キャスカを良い練習台だと思ってるようだな」


 おいそこ。

 やめろまじで。

 あぁ、本泣きだ。

 これはどうしようもないな。


「やめる?」

「うぅ……ひっく……疾風の……キャス、カ……だぞぉ、うぅ」


 なんぞこれ?


「あぁあぁ……泣かせおってからに」

「きゅきゅ!」


 お前らのせいでもあるからな?

 俺だけのせいじゃないからな?


「またいつでも相手になるから。

 ね、機嫌治してよ?」

「う……うぅ……ほんとぉ?」


 あらやだ可愛いわ。

 鼻水ばっちぃけど。


「基本ここにいるからいつでもおいで」

「わ、わかった!」


 口調変わったな。

 人前で無理してたみたいだ。

 可愛いじゃんキャスカ。


「さ、チャッピーやるぞ」

「あぁ、来い」


 チャッピーとの両手修行が始まった。


 やばい、死ぬ。

 チャッピー右手はあまり器用じゃない。

 そういえばユグ剣カリカリしてたのも左手だわ……。

 丈夫な服が一着バラバラになった。

 キャスカが俺の小銃をガン見してきた。

 いやん。

 キャスカの顔真っ赤だ。

 可愛い奴め。

 もっと見とくか?

 お?


 まぁ、ヒュンってするから服を着よう。

 身体も大きくなってきたから一回り大きいサイズでも買うかな。

 金は溜まる一方だけどな。


 この世界の金は10と1の桁の硬貨は存在しない。

 1万=100に直せよ。

 まぁ、どうにもならないから良しとしよう。

 1万レンジが金貨、1000レンジが銀貨、100レンジが銅貨だ

 全ての硬貨にユグドラシルの木が刻印されてる。

 ユグドラシルの木って有名なんだな。


 で、エヴァンスの町に来た。

 キャスカはこの町に住んでるんだそうだ。

 入口でキャスカと別れた。

 キャスカと一緒に歩いたらここまで4時間かかった。

 わろりん。


 あの換金所の主人。

 名前はビックス。

 ウェ○ジはどこだ?

 まぁ、このおっちゃんと結構仲良くなった。

 もらった売買表には俺が捨ててしまったり、燃やしてしまったりする物が結構あったりした。

 金はあって困る事はない。

 ユグドラシルの木の近くに俺が利用してるゴミ捨て場(空き地)、そこから色々持っていったりした。

 あった分は持って行ったから、もうないけどな。

 で、今日はいつもの毛皮とユグドラシルの枝を持って行った。

 ビックスは1分くらい硬直した。

 あれ、神聖な木だからダメな感じ?

 逮捕コース?

 違った。


「いいいいいいいいいくらで売ってくれる?」


 いが多いよ。

 お前が決めるんじゃないのか。

 そんなひゅごいのこれ?


「相場の最安値はいくらなんです?」

「ここから西の国「チャベルンの町」で数年に1本枝が市場に出るらしい」


 それは貴重だな。

 それがこんなド田舎に出回ったらビックリだな。


「で?」

「昨年出回った時に売れた金額は400万レンジだ……」


 うっひょおおおおおお。

 すまん。

 おが多かったな。

 けどここは換金所だからな。

 半額位がいいのかね?


「おっちゃんいくらなら出せるんです?」

「かき集めても200」

「そんな欲しいんすかっ?」

「あぁ、加工すれば値段は跳ね上がるからな」

「じゃあ100でいいすよ」


 いつも世話になってるからな。

 これくらいはしてあげてもいいだろう。


 ビックスは1分くらい硬直した。


「まじで?」


 現金な顔だな。

 チャッピーさえいれば錬金王になれるだろうが、緊急用にしよう。

 自然を傷つけちゃいけないしな。


「毎度!

 またなレウス!」


 革袋の中には現在137万レンジ。

 これを一般人(ハチヘイル)にあげたら倒れるんじゃないか?

 あげないけど。

 まぁ、大して欲しい物はないから、服だけ買って帰ろう。

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