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転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)  作者: 壱弐参


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第三十二話「中央国」

 ハティーのやつ、俺より速くなってないか?

 中央国に向かいながら走ってると、デュークはともかくとして俺の最速に付いて来る。

 最速って言っても持久走って意味だから少し息切れする程度だぞ?

 瞬間的にはもっとバビュンだ。(オーラ)も使うしな。


「……レウス君、今って(オーラ)使ってるっ?」

「いえ、使ってませんよっ?」

(オーラ)はバンバン使った方が良いよっ! 操作も滑らかになるし、体力向上にも繋がるしねっ」

「え……体力に比例するんじゃないんですかっ?」

「密接な関係でね。逆も然りなんだよっ!」


 つまり(オーラ)を使い込めば体力が向上し、体力向上訓練をすれば(オーラ)総量が増える。

 二つを同時に行えば相乗効果ってわけだ。


「いきますっ」

「よし! ハティーちゃん、少し速くなるよ!」

「わかっ、たぞ!」


 日常的に(オーラ)を取り入れればもっと操作が滑らかになるって事だな。

 うーん、勉強になる。


「足全体に(オーラ)がいってしまってるよっ! 使う筋肉だけに(オーラ)を凝縮するんだ。それだけでかなりの(オーラ)を節約出来るよ!」

「む……こうですか」

「右足で地面を蹴ったら、もうその右足の(オーラ)は出してる必要がないでしょっ? 地面を蹴って身体が宙に浮いてる間は(オーラ)を出さない!

 次、左足っ!」


 こ、こまけぇええええ!! 足つるっ!

 しかし、これが完璧になったら戦闘でかなり節約出来る。

 10位は伊達じゃないな。


「こういうのは剣に(オーラ)をまわす時だって有効だよ!

 刀身全てに(オーラ)をまわすんじゃなくて、刃の薄い部分の先だけに(オーラ)を凝縮するんだ」


 修得の先にこんな緻密(ちみつ)な作業があるのかっ!


「ぬ……このっ……くっ!」

「おぉ、やるねぇ! その気の達人(オーラマスター)を修得出来れば50位なんか余裕だよ!」


 ……。

 くそ、これは違う剣技なのか! 道理で出来なかった訳だ!

 教えられなきゃ、その先があるとは思わなかった。

 しかし全ての剣技の先を見れば新技習得からの修得もいけそうだな。

 私頑張ります!


「極めれば下位の魔王の腕だろうが、足先だろうがスパスパ斬れるよっ! 楽しみだね、レウス君っ!」


 楽しみではないな。

 死闘で仕方なくならわかるが、楽しんで斬った事なかったわ。豊かな感性ですね。


「レウス、ちょっと速い、ぞ!」

「よし、もっと速度あげるぞ!」

「な、んでなのだ!?」

「アハハハッ!」


 やかましいやつらだなおい。


「レウス君、お腹減らないっ?」

「ん、まぁそれなりには!」

「ここら辺には陸魚っていうおいしい魚がよく走ってて、今視界の端に見かけたんだけどどうするっ?」


 魚が走る時代になったそうです。

 しかし魔物大図鑑に載ってなかったな……ローレベル以上の魔物なのかね?


「魔物ですかっ?」

「いや、無害だから動物に分類されてるよっ」


 まぁ小腹も空いたしいいか。


「よし、休憩にしましょうっ。ハティーストップ!」

「ガゥッ、ぞ!」


 ……。


「じゃあ僕が獲って来るよ」

「あ、すみません。お願いしま――」


 はえぇ! もういない!


「ただいま」


 もういる!

 これが陸魚ってやつか。

 土色の皮膚に生脚が四本生えてる。その四本の美脚にサンダル、ブーツ二足、革靴履いてる。

 足の裏が痛いのかファッションなのか……。形はなんかの動画で見たライギョを大きくした感じだ。


「足はいらないんだっ」


 陸魚が魚になった。スパンと斬れた。

 綺麗な脚が四本地に落ちてる。

 陸魚という存在を知らなければ女性2人の惨殺死体に見えてしまうだろう。

 これはあとで燃やした方が良いな。


「脚が生えてた部分を地に置いて、上から切れば」

「おぉ!」


 身が地面に当たらず食えるなこれ。

 デュークは中々のコックだ。


「ハラワタを引きずり出す音がたまらないよねっ」


 あなたの存在が堪りません。


「はい、ハティーちゃん」

「食べ、ていいのか!?」

「勿論だよっ」

「お前良い、やつだなっ!」


 お前はダメなやつだな。


「はい、レウス君」

「あぁ、どうも」

「んんふう、おんお!」

「口に食べ物が入ってる時に喋らない」

「んん!」

「うん、気をつけるよっ!」


 お前もそのタイプだったか。

 陸魚の味は……少し酸味のあるマグロだった。

 うまいが、日本人の舌にはあまり合わない気がする。


 チーン!


 勇者証明(ブレイブカード)がふざけた音を出した。

 俺のじゃない。狂人の方だ。


「んん! うんふんふんんお!」


 気をつける気がないって事がわかったわ。

 どうやらランキング戦らしい。


「ふぅ、ランキング17位のドンファンだね」


 あー、確か神技の魔石を欲しがってた奴か。


 チーン!


「明日ランキング戦だね。黄金魔石はこれで3個目だっ」


 おぉ、このままどっか行ってくれるのか!?


「場所は中央国」


 知ってた知ってた。

 この世界は俺に理不尽に出来てるんだ。

 しかし10位と17位の対決か。興味あるな。


「見学してもいいですか?」

「勿論っ」


 何かしら吸収しちゃる。

 おそらくデュークはチャッピークラスの実力……いや、それ以上かもだが、それだけのやつの戦闘なんぞ中々見れないからな。

 しっかりと勉強してやんぜ!


「巻き込まれて死んだらゴメンネッ」


 ……。


 四本脚を燃やして、たどり着きました中央国首都オディアータ!


 凄い! 鉄筋コンクリだ!

 木造石造多々あるが、コンクリの家も目立つ。伊達に中央名乗ってないな!

 南はともかくとして、西に普及してないのはやはり特許でもとってるからか?


「しかしハティーちゃんの尻尾は、『呪い』ってだけで信じるもんなんだね」


 そうだ、この世界の警備システムはかなりずぼらなんだ。

 勇者や戦士に色々任せっきりだと思う。

 さて、ランキング戦は2日後だが、もう既にスンがいるかもしれないから一応勇者ギルドに行くか。

 勇者ギルドはどうやら北区固定みたいだな。西や南の国もそうだったからな。

 東と北はどうか知らんが、行ってみればわかるだろう。

 ありました「やしうゆ」。この名前もデフォか、ボキャブラリーがないギルドだな。


「じゃあハティーはここで待機」

「なんでだ!?」

「うん、今の喋り方は完璧だ」

「本当か!?」

「あぁ、ここでそれを練習してるといい」

「うん! なんでだ、なんでだ、なんでだ、なんでだ、なんでだ……」


 下手に理由を付けるよりも、別の方向に意識をシフトさせてやれば簡単だ。

 チャッピーとハティーは似てる部分がある。ちょろいぜ。

 勇者ギルドは何処も一緒だな。

 北区にあって「やしうゆ」って店で、中は木製の椅子が数脚。

 対面のソファーが1セット、テーブルが何脚か。

 そして職員は一人だ。


「いらっしゃいませデューク様。そちらは100位のレウス様ですね」


 南でも言われたが、勇者ギルドの中でだけ勇者全員の顔が知られているみたいだ。

 100人しかいないという事と、緊急の用事の場合もあるからだ。


「初めまして、レウスです」

「初めまして、ガイと申します」


 ガイは白髪のオールバックだ。オールバックと言っても髪は短めだな。

 右目に眼帯だ。額から右目の眼帯にかけて斬り傷がある。戦闘で無くしたみたいだな。あぁ怖い。

 顔はマイムマイムに似て(しわ)が多い。

 なんかこう……歴戦の戦士って感じだ。

 スカート以外はレティナとほぼ同じ服装だけど、ポンチョ的なアレの下からでもムキムキなのがわかる。それにこの人……俺より強いわ。


「ガイさんはね、戦士ギルドの判定員もやってるんだよっ。元々勇者ランキング27位だったけど、去年引退したんだ」



 あー、そんな事をチャッピーも言ってたような気がする。戦士ギルドの判定員を複数の勇者がやってるってな。

 マイムマイムとガイ……これで複数だな。

 去年で引退したって事は俺がその話を聞いた時は勇者だったって事だ。


「魔物に右目を引き抜かれるまではとっても強かったんだよ?」


 当人の前でそれを言うお前のメンタルがとっても強いな。


「ふふふ、デューク様も相変わらずですね」

「いくらギルドの決まりだからって『デューク様』ってのはむずかゆいですねぇ」

「勇者には敬意を払う、これは決まりです」

「はいはい」

「ガイさん」

「なんでしょう、レウス様」


 確かにむずかゆいな。


「ランキング101位のスンは、まだここに来ていませんか?」

「あぁ、あの()いスライムのスン様ですね。いらっしゃいましたよ」


 青い……だと!?

 老人の言う事だ。緑を青と言う可能性もなくはない。


「本当ですかっ? では中央国に!?」

「はい、勇者の手続きをしたのは私ですから」

「どこにいるかわかりますかっ?」

「レウス様が来たらと、伝言を預かっております」


 おぉ! さすがスンだ! 頭が良い!


「毎日15時にはここに顔を出すそうです。それと、これは意味がわからないのですが、手拭いを沢山用意しておくように……との事です」


 ……おぉ。さすがスンだ。頭が良い。

 15時までは……あと30分か。手拭い買いに行こう。


「ん……何やら外が騒がしいですな」


 手拭い買いに行けそうにないな。あの狼め。


「なんでだ!? なんでなのだ!? なんでだ!? なんでなのだ!? レウスが戻って来ないぞ!」


 人だかりが出来てる。


「ガイさん」

「なんでしょう、レウス様」

「あれを中に入れちゃまずいですかね?」

「ふっふっふっふ、ここは勇者が認めた者であれば入って差し支えないですぞ?」

「助かります」

「なんでなのだ!? なん――わぁっ!? 尻尾はぁ、尻尾はだめなのだぁああ!!」


 拉致成功だ。


「おぉレウス! ……なんでだ!」

「完璧だ」

「本当か!?」


「この銀毛……その尻尾。もしやデスウルフリーダーですかな?」

「いかに、も! 私はデスウルフリー、ダーのハティーだ!」

「宜しくお願い致します、ハティー殿」

「お前強いな!」

「ありがとうございます。ハティー殿も中々でございます」

「そうか!?」


 ハティーが丸め込まれた。

 これは魔法の言葉だな。


「おや……レウス君、誰か来たみたいだよっ?」

「きゅ?」


 青いスライムだ。

 隣には爆乳の金髪ねーちゃんがいる。あの乳は既にビアンカの領域を超えてるな。

 青いスライムはスンにそっくりで、爆乳ねーちゃんはキャスカに似てる。


「レ……レ、レゥ……うぅう……」


 あの鼻水……キャスカだ!


「きゅーっ!」

「……おぉ」


 って事は、あれはスンか!


「レウスゥウウウッッ!!」


 倒れされた! 重い!

 顔面にスン……溺れる!

 下腹部にキャスカの乳……溺れる!


「うぅうう……っ! っうぅうううぅ……うっ、レウスゥ」

「きゅきゅー!」

「んーっ……んんーっ!!」


 死ぬ! 死ぬぅ! 俺まだエラ呼吸出来ないの!

 皮膚呼吸じゃ足りないの! このままじゃ死んじゃうのぉおおおおお!!


「な、ななななななななんなのだ、お前たちは!?」

「スン様、そのままではレウス様が窒息死してしまいますぞ」

「レウス君、愛されてるねぇ」


 こっから記憶ない。









 おはよう。いや、もう夜か。

 勇者ギルドのソファーの上だな。俺の服が冷たくて重い。

 どうやら手拭い代わりにされたらしい。

 対面のソファーにはいい感じの太ももがあり、俺の枕代わりにスンがおる。相変わらず最高の枕だ。


「きゅ!」

「おぉ、久しぶりだなスン」

「レウス、起きたのか!」

「久しぶりキャスカ。良い乳になったな」

「ぬ、ぬぅっ!」

「きゅ、きゅっきゅ!」

「お目覚めですかな、レウス様」

「ガイさん……よっと。すみませんソファー借りちゃって……」

「ふふふ、なかなか微笑ましい光景でしたよ」

「レウス! 起きた、か!?」

「起きてない」

「起きてるでは、ないか!」

「おはようレウス君。その服、着替えてきたら?」

「えぇ、そうします」


 おのれ、レジストマントにまで少し塩分が付いてやがる。


 はい着替えました。

 キャスカとハティーが睨み合ってるが、俺が倒れてる間もそうだったらしいので気にしない事にした。


「そういえばスン達はどこの宿をとってるんだ?」

「きゅ!」


 うお!? スンの身体が長方形みたいになった!

 小型の黒板みたいだ。

 おぉ!! 文字が浮き上がってきた!

 すげぇええええ!!


 《南区の宿に泊まってるよ》


「へぇ~、大したスライムもいるもんだね。いつも踏み潰してたけど、これからは気をつけよう」


 お前は気をつけない人間だってさっき認識した。

 見ろ、スンもドン引きじゃないか。


「じゃあ俺もそこの宿にしようかな」

「きゅー!」

「レウスと同じ宿かっ!」

「こいつと同じ、宿なのか!?」


 おーおー、睨み合ってる睨み合ってる。


「数日だけだ。そしたらこいつらはエヴァンスへ帰す」

「レウス!」

「きゅぅ……」

「せっかく会えたのに別れちゃうのかい?」

「ちょっと理由がありまして……」

「理由って?」


 ぬぅ、突っ込んでくるな……。


「それはちょっと……」

「言いたまえ」


 声の圧変わった。

 超こえぇえええ!


「君の強さで彼女達と行動が出来ないって事は、彼女達を危険に巻き込む可能性があるからって事だ。魔界ならまだしも人界だ。人界で勇者と行動して危険になるなんて事は滅多に起きないものだよ? それも1人は勇者になれるだけの実力を持っている。キャスカちゃんも見た所、判定レベル130台はいけるだろう。この2人を人界で連れられない? これは変な事だねぇ。……そしてハティーちゃんもそうだ。昼間に言った通り、ハティーちゃんもローレベルからセカンドレベルの実力を持っている。この子すら連れ歩けないって事は、レウス君が抱える問題ってのは相当なものだと思うんだ。これは僕にも……いや、僕たちにも聞く権利くらいはあるだろう」


 ……確かに正論だな。

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