第三十一話「エルフの里」
くそっ、これならもっと寝ておけばよかった。
「さ、今日は何処に行くんだいっ?」
お前のいない所に行きたいんだ。
「エルフの里に向かいます」
エルフの里の最長老に会って、眠った力をグイーンって上げてもらうんだ。
「エルフの里……なんでまた?」
「鑑定が必要な魔石があるもので……とりあえず歩きながら話しましょうか」
「へー、相当珍しい魔石なんだね。ちょっと見せてくれるかいっ?」
え、嫌です。
察して? ね?
「アハハハ、盗らないってばっ。勇者が盗みを働くと、上位勇者に粛清されちゃうんだよ?」
まぁ、そうだが……。
「……これです」
「青い魔石かー、うーん見た事ない……確かにこれは鑑定しなくちゃいけないねっ。俺が欲しい魔石とは違うな」
あげないあげない。
「黄金魔石が欲しいんでしたっけ?」
「いや、正確に言うと黄金魔石からしか出ない魔石が欲しいんだ」
「へー、そんな魔石があるんですね」
「銀色の魔石で、その名も退魔石っ」
すぐに効果はわかった。
魔物特化か……。
「対魔物になら神力を付けるより効果が出るからね」
「魔王にもですか?」
「魔王ってのは、人間の中にもエルフの中にもドワーフの中にもいるから、魔物の魔王って括りなら効果があるよ。おそらく1位のオーディスさんも、それを狙ってるのかもね」
新種族が現れた。ドワーフか……今度調べよう。いや、大体はわかるけどさ。
剣に集中し過ぎて不勉強だったしな。学校編ではお勉強とかが重要になってきたりするはずだ。
……多分な。
しかし、人間にもエルフにも魔王がいるのか。
やはり悪い奴カテゴリなんだろうか?
魔王ランキングってのは……やはり魔王ギルドってのがあるんだろうか?
いや、こんなふざけた世界だ、絶対あるだろう。
魔物で勇者を目指す奴が何故いないのかが理解できんな。
ん? ……って事は、スンが勇者になったら、やはりそれは凄い事なんだな。
チーン!
ふざけた音を出して勇者証明が光った。
「ん、なんだろ? あぁ、勇者の更新だね。101位スン、欲しい物【100万レンジ】」
10行もしない内にフラグを回収してきたぞ?
お金が欲しい物……って事は特に無かったのか。
しかしキャスカと共に俺を探してるんだったら、俺の情報を求めるのでは?
いや、俺の欲しい物を探して、ランキング戦でもすれば……。
あぁ、そういや俺も最初に欲しい物を決めてから勇者証明を貰ったわ。
俺は数日前に勇者になったから、俺のランキングはまだ周知されてない。
俺が勇者になったのをまだ知らなかったらこれは有り得るな。
100万レンジなら今あるから、俺がランキング戦を申し込めば会えそうだな!
……あれ? スンって13歳じゃなくね?
別れた時が8歳だから、今9歳じゃ……。
つまりこれは……年齢詐称か!!
外見から年齢がほぼわからない魔物なら出来る事か。
スンが……汚れちゃった。
俺も12歳の時にそうすればよかったんじゃ……って?
あの頃は勇者にあまり興味がなかったしな。ブレイブジャッジメントの件もあったし仕方がないっしょ。
「ん、どうしたの?」
「これ友人のスライム(緑)です」
「スライムッ!? 魔物が勇者になったのかいっ!?」
「小さい頃から一緒に暮らしてましたから」
「……レウス君って魔物使い?」
「西の国ではそう呼ばれてましたね」
「へー、凄いもんだね」
「デュークさん、ここから中央国の首都ってどれくらいですか?」
「んー、今のレウス君の速度なら半日位じゃないかなっ?」
「ちょっと勇者ギルド寄って行ってもいいですか?」
「勿論だよっ」
北区にある勇者ギルドでランキング戦の依頼だ。
えーっと、中央国、首都オディアータ、7日以内っと。
これでしばらくすれば……。
チーン!
■ランキング戦詳細
■100位【レウス】 VS 101位【スン】
■挑戦者【レウス】
■提示品【100万レンジ】
■日時【空の月22日(明後日)】
■場所【オディアータ、勇者ギルド】
■よろしければ「了承」の文字に触れて下さい。
【了承】
「あれ、友達なのに斬るのかい? あぁ、友達だからこそ斬るのかっ」
……。
ようやく「普通かなこの人」とか思ってたんだが、そういうのは危険だな。
斬るわけないだろ、俺のスンだぞ?
了承っと。
「俺を探してるらしいので、ランキング戦でなら会えると思っただけですよ」
「しかし戦らなきゃいけないよ?」
「修行でしょっちゅう戦ってたんで慣れたもんですよ。それに、会ってなかった1年でどれだけ変わったのか……単純にスンとは戦ってみたいですしね」
この語尾の「ですしね」ってあまり使いたくないよな。
一番最後が「しね」だぞ? え、今話してる相手はデュークだしいいだろ?
「へー、魔物と一緒に育ったわけか」
「さて、中央国に用事も出来たので、エルフの里まで急ぎましょうか」
「アハハハ、ハードスケジュールな子供だこと」
はい、エルフの里です。
ダダンから東に30分の迷いの森。さすがにリアルで何回も同じ場所を通ると不安になったわ。
北に3回、南に2回。そしたら画面が光った。
あ、間違えたわ。視界が真っ白になって、里の入り口が目の前に現れた。
この里でのミッションは魔石鑑定と、竜の剣(爪)の魔石限度数の確認だ。
「勇者ランキング100位のレウスです」
「勇者ランキング10位のデュークだ」
「「はっ、お疲れ様です!」」
門番のエルフは人間の言葉も喋れるのか。
ハードル走で飛び越えられそうな柵の門がある。前に立ったら風化してボロボロ崩れて行った。
これ毎回直すの大変じゃね?
って思ってたら、門を過ぎて10メートル位歩いたら復元されていた。
相変わらず変な世界だ。
エルフの里は、整地してない地面に、手作り感満載の木造建築の家が建ってた。
「レウス君、鑑定ならこっちだよっ」
怖い案内人がいるのでオカマエルフ言語の修正は今度だな。
明後日には中央国に行かなければいかんしな。
しばらく歩くと鍛冶屋っぽい店に着いた。
「僕は外で待ってるね」
待たないでいいのでどっか行ってください。
鍛冶屋の中に入ると眉間に皺の目立つ男が立ってた。
エルフだから耳がとんがってるな。髪は焦げ茶でベッ○ムみたいなソフトモヒカンだ。
正直似合わない。
年齢は人間の50歳くらいだ。エルフで計算すると500歳~600歳ってとこか。
顔はなんだろ……「人間とハーフエルフなんぞの仕事はするつもりはない」とか言いそうな感じ。
あ、笑った。
気持ち悪い位の笑顔だ。
『っしゃああせぇえええっ』
なんて?
『今日は何のご用でっしゃろ?』
普通だが変だな。
ナディアの喋り方との違和感がぱない。
『魔石の鑑定と、剣の魔石限度数の確認をお願いします』
『あれまっ』
眉を寄せながら目を見開き過ぎだ。
眉間の皺はそのせいか。
『んじゃ、まず魔石の限度数から見させてもらいますぅ。金額は10万レンジですぅ』
語尾の「す」が無声音じゃないな。関西弁みたい。
『…………では、お願いします』
『こりゃとんでもない剣ですわ。少々お待ちを』
どうやって調べるのかと思ったら、でかい顕微鏡みたいなのが出てきたぞ。
剣を台の上に乗せその上に大きいガラス…………それプレパラート?
『……ふふーん、こりゃ凄いですわ』
『わかりましたか?』
『魔石限度数7ですわ。しかもこれ、もうすぐ8になるかもしれません』
『8……? そこまで使い込んでないですけど』
『素材がお客さんを好いてますわ』
え、チャッピーきもい。
だが中々嬉しいもんだ。むずかゆいというやつだ。
『7や8いうたら、もはや伝説級の武器ですよ』
3日で生えてくる爪が伝説級らしい。
てことは牙や角はもっとか。良い機会だし聞いておこう。
『それ以上の武器とかってあるんですか?』
『魔石限度数が9や10の究極武器となると勇者や魔王のトップランカー…………というかトップの人が持ってる武器位しか知らないですねぇ』
どうやら魔王も剣を使うらしい。
火炎とか尻尾で攻撃してくるものだと思ってたわ。
爪で7なら牙が8~9、角が9~10って感じか。
チャッピーめ……やりおる。
チャッピーと合流したら定期的にチャッピーの爪切りをしよう。虫歯があったら抜いてやろう。
俺やっさしー。
『次は魔石鑑定でしたね。どれでっしゃろ?』
『お金はおいくらですか?』
『わからない魔石の場合もあるんで、成功報酬でええですよ』
おい、わからないフラグを立てるなよ。
くそっ、わからなかった!
『すんまへんのぅ、お客さん。この魔石は魔界のエルフの里に行けばわかると思いますぅ』
『……どうも』
『ありゃったしたぁああああっ』
ぬぅ、このサブクエスト長いぞ。
「どうだった?」
「剣の魔石限度数はわかりましたが、魔石はわかりませんでした」
「その黒い剣?」
「えぇ」
「良い剣だよねー、それ。最初声掛けた時も凄い剣だなぁって思ってたんだっ」
「良い目ですね」
「そっちのユグドラシルの剣も相当使い込んでるね」
さすがは勇者だな。柄の部分だけでそこまでわかるのか。
10位のデュークはどんな武器なんだろう? 気になるから聞いてみるか。
「デュークさんの武器ってどんな武器なんですか? 見た所、曲刀みたいな感じですけど」
「これかい? これは曲刀斑蟲って言うんだっ」
…………。
怖い名前だ。
「魔界に斑模様の芋虫みたいな魔物がいてね。何ていったかなー、スポットキャタピラーだったかなっ? 虫みたいなのに骨があってね、倒すのが凄く大変なんだけど、こいつの背骨がいい形に反ってて武器にするのに丁度いいんだ。硬度も申し分ないしねっ」
ほほぅ、良質の武器はやはり骨からなんだな。
鉱石や神の金属とかはないのかね?
「いやー、あいつの背中を切り裂いて、背骨を引っこ抜く時の音が変な音でね?
あの時は笑っちゃったなぁー。アハハハハハハハッ!」
……オブラートに包もうぜ?
「へ、へぇー。その斑蟲の魔石限度数っていくつなんですか?」
「これは6個だね。出来れば上位魔王の骨が欲しいとこだねっ。魔王ランキング10位の不死王イモータル・セイントの聖剣とか奪えたら欲しいなー」
不死王の名前と武器がおかしいが、やはり魔王の武器も上位にいくほどレベルが高そうだ。
魔王ランキングも今度目を通さなくちゃだな。
少し不勉強過ぎたな。強く強くってだけじゃいかん。知識から得られる強さにも重点を置こう。
さて、エルフの里での用件は終わったな。
ナディアの親父さんへの挨拶は今度にしよう。
エルフの里で新たな出会いとかいらないしな。
さて中央国へ向かうか。
ん? 迷いの森を出たところで何かが近づいてきた。
なんだあれ。四足歩行だな。
「レウス君さがってっ。おそらくローレベルからセカンドレベルの魔物だ。人界の人里近くでは珍しいな……」
「あれは……」
「銀色……デスウルフリーダーっ!? 判定レベル127の魔物がここまで化けたか!」
……おのれ、奴の鼻を見くびっていたか。
「すいません、知り合いです」
「はえっ!? デスウルフリーダーの知り合いっ?」
「レェエエエウゥウウウウウウスゥウウウウウウウッ!!」
お前国境をどう越えて来たんだ?
んー、あれは飛びついてくるな。獣臭くなっちゃうからやだな。
「ハティーお座りっ!!」
おぉ、急ブレーキだ。
「こ、こうか!?」
「凄い、普通の魔物が人間の言葉を喋った……」
でかい体に荷物が縛り付けてある。
皆に協力してもらったなこいつ。
「はぁ……森の中で着替えて来い」
「わかった、ぞ!」
「切るとこが違う」
「わ、かったぞ!」
「違う」
「わかったぞ、!」
どうやって切ったんだ?
「いいから行ってこい」
「うん!」
「いやー、驚いた。ハティーっていうの? あのデスウルフリーダー?」
「えぇ、ゲブラーナから俺の匂いを嗅いで追いかけて来たみたいです」
「ゲブラーナから……レウス君愛されてるねぇっ」
「困りもんですけどね」
「人間言語も仕込んだの?」
「えぇ」
「一体どうやって?」
「俺、魔物に育てられたので魔物言語がわかるんですよ。あいつが魔物言語を使えたのでそこから人間言語を教えました」
「アハハハハハハハッ……! 凄い、ホント面白いよレウス君っ! いやぁ、こんなに笑ったのは数年ぶりだ」
お前終始ニコニコしてるじゃねーか。
「レウス!」
「うおぉ、人化だ! レベル127にあんな事が出来るのかっ」
「で、お前どうやって国境越えて来たんだ?」
「あの大きな門、の、事か?」
「そうだ」
「崖、をよじ登ったぞ!」
「……」
「あの崖の先は確か大きな滝になってたはずだよ?」
そうだな、門からしばらく行ったら湖的なのが両サイドにあったっけか。
「レウスはやは、り男色家なのか!?」
男が隣にいるだけでそう思うのかこいつは。
「そうなのかいレウス君?」
「ありえません。で、滝は………………」
いやぁ、飛び込まないと先に進めないよね。
「す、っごいビックリしたけど中々楽しかった、ぞ!」
「愛されてるねぇ、レウス君」
「お前は一体何者だ!?」
「あぁ、初めまして。勇者ランキング10位のデュークです。周りには狂人デュークで通ってるよ」
その二つ名に自分で疑問を抱かないのか?
「変わった名前だよね、アハハハハッ!」
…………。
「お前強いな!」
「ありがと、ハティーちゃんも中々強いねっ」
「そうか!?」
ハティーが丸め込まれた。
そして、珍パーティが出来ちまった。




