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第三十話「南の国」

 この鼻の穴が大きいゴリラみたいな兵士をどうしてくれよう?

 とりあえず正攻法で……。


「いや、あの勇者なんですけど……」

「こんな子供の勇者がいるわけがないだろ? 俺達は忙しいんだ、さっさと(うち)に帰んな」


 テンプレートを綺麗に並べやがって……とりあえず退避だ。

 作戦タイムってやつだな。


 さて、何かないか?

 そうだ、勇者証明(ブレイブカード)にヘルプメニュー的なのがあるとかレティナが言ってたな。

 えーっと……関所に関係しそうな項目は。

 お、困った時ってのがある。


 《困った時――は何とかするのが勇者です☆》


 ……おのれ、無駄なページを作りやがって。

 他にはないか?

 情報的な……うん、ない。

 こりゃ詰んだな。


「キミ、どうしたの?」

「へ?」


 ……青年だ。

 イケメンだ。

 20代前半位?

 俺と同じ茶髪で、なんか青が色落ちした様な冒険者的な服を着てる。

 髪はそうだな……うぇ〜ぶって感じだ。

 そして赤いハチマキ……それはいらなくないか?

 そして終始ニコニコしてる。

 ――しかし……。

 マイムマイムと同じ……いやそれ以上。

 全身鳥肌立ったわ。

 なんぞこいつ?

 退避!


 ヒュッ……ヒュン


「逃げないでよっ」


 ……引き剥がせない。

 ちょっと怖い。


「キミ凄いね」

「いえ、あなたの方が……15倍位凄いと思います」

「アハハハ、面白い回答だねっ」


 うーむ……ニコニコはしてるんだが、信用のおけない感じだ。

 なんかこう……ラスボスになりそうな感じのアレだ。


「ど、どちら様でしょうか?」

「あー、すまないね。僕はデューク、勇者をしているんだっ」


 あー……確か見た。

 ランキングは……10位だ。

 欲しい物が1位と同じで黄金魔石だったから記憶に残ってる。


「レウスです。先日勇者になったばかりです」

「えぇ、ほんとにっ!?」

「まぁ、はい」

勇者証明(ブレイブカード)は持ってるかい?」


 見せてもいいのか?

 見せちゃダメという説明は受けてないが……軽々しく見せてもいいものなのか?


「僕のはこれ。大丈夫だよ、紛失しても再発行してくれるからっ」


 あー、確かそんな事もヘルプに書いてあったな。

 減るもんじゃないからいいか。


「……これでいいですか?」

「ふーん、どうやら本物のようだね。そう、キミが100位のレウス君かっ」

「初めまして」

「初めましてっ。で、こんな所でどうしたの?」

「あの門を通れないのでちょっと作戦を……」

「……名乗った?」

「ランキング100位のレウスですと……」

「あれ、どんな人でも門までは連れて行く様に指導してるはずなんだけどな?」

「こんな年齢ですからね、仕方ありません」

「じゃあ、僕が連れてってあげようっ」

「まじっすか!?」


 あ、やべ。


「あはは、よっぽど通りたいみたいだね?」

「いや、でも……」


 何か嫌な感じがする……人とかバッサリやっちゃいそうなアレだ。

 まぁ門が通れるならそんな事はしないか。


「さ、いいから行こうっ」

「あ、ちょっ……」


 男と手を繋ぐ趣味はない……ってぇええええっ!!

 なんだこの力は!?


「あはははっ、やっぱり凄いね。その年でこれだけの力を出せるなんてっ」


 歩きながら俺の実力を測ってるのかっ?

 乱暴過ぎるだろ。

 ……これ絶対手の痕が残ってる。


「勇者ランキング10位のデュークだ」

「「はっ、お疲れ様です!」」

「キミかな、彼を門まで案内しなかったのは?」

「は、え……しかし――がっ!?」


 殴った!?

 あれはみぞおちだ……苦しいぞあれ。


「ちょ、デュークさん、何やってんですかっ」

「大丈夫、これは許されてる事だからっ」


 合法?

 何で?


「勇者は有事の際に動く事が頻繁に起こる。勿論1人で動くからね、こういう所で止められたら町や村が滅ぶ事だってあるんだ。だから厳しく指導してるはずなんだけどね」


 いや、だからって……。


「キミ、それ教わらなかった?」

「お……おそ、わ……りまし――がふぅっ!?」


 蹴った……。


「以後、気をつける様にねっ」

「……っ、……ぃ」


 デューク、怖すぎ……。

 こいつは危ない奴だ……普段魔物をちょんぱしてる俺が言えた事じゃないかもだが。

 ようやく門まで来た。

 勝手にね。

 勇者証明(ブレイブカード)に反応して門が……倒れた!?

 五体投地の様に……。

 ぬり○べの様に……。


「さぁ、行こう。レウス君っ」

「あれはやりすぎですよ……」

「レウス君じゃなく僕にやってたら斬ってたところだよっ。アハハハハッ!」


 …………危険だ、早く離れよう。

 こいつは勇者から魔王になるタイプだ。

 きっと旅の終盤とかで身内をバッタバッタ斬る感じのアレだ。

 やはりラスボス的な感じだな。

 先に行き先を聞いて別のルートを行こう。


「デュークさんはどちらへ?」

「んー、予定はないよっ?」


 ……危険だ、早く離れよう。

 先を急ぐと言い、首都ダダンまで急ごう。


「本当にありがとうございました。申し訳ないですが、俺は首都ダダンまで急ぐので失礼します」

「へー、じゃあ僕も行こうかなっ」


 ……俺が危険だ。

 しかしこれは強制イベントみたいだ。

 仕方ないか、隙を見て逃げ出そう。


「じゃあ行きましょう、か?」

「うんっ」


 はい着きました。

 首都ダダン!

 時間で約5時間。

 国境検問所からは街道が設置されてたが、歩いてる奴は殆どいなかった。西の国と南の国って、やはり仲がよろしくないんだな。

 デュークはこっちが全力で走っても涼しい顔して付いてきた。

 俺は後数年であの段階まで行けるのか?

 いや、出来ればもっと早く……。


 ダダンは木造建築の家が多くて、家には窓が多かった。

 昔俺が住んでたような(わら)の家まであった。

 さすが南、気温も暖かく……というか少し暑いね。

 走り続けたんで結構疲れたわ。


「レウス君はこの後どうするの?」

「とりあえず宿を探して今日は休みます。夜中ゲブラーナを発って走り通しだったもので……」

「アハハハハッ、普通の人はその距離を1ヶ月以上の時間をかけてここまで来るもんだよっ。勇者になったばかりの人間にもそんな事出来ないよ? うーん、凄い子供もいたもんだねっ。……レウス君は上位を目指さないの?」


「魔界には入りたいと思ってます。なので50位になれればそれで良いです」

「欲がないねぇ。10位以内の特典は中々良いんだよっ?」


 なにそれ、アタシ知らない。


「10位以内にならないと教えてくれないんだけどね。世界のダンジョン情報が勇者証明(ブレイブカード)から見れるようになるんだっ」


 そいつぁ便利だ。

 因みに勇者は戦士ギルドから依頼を受ける事や、情報を見る事は出来ないが、勇者ギルドで確認する事が出来る。

 何が違うかと言うと、その国の戦士ギルドで討伐出来なかった魔物、2週間以上攻略報告がないダンジョンや、戦士には手に負えないと勇者ギルドで判断した魔物やダンジョンを紹介している。

 その危険度は【ロー・セカンド・サード・フォース・トップ・オーバートップ】に分かれているとかなんとか。

 6速のMT車みたいだな?

 エルフの里から帰ったら、この国の勇者ギルドで情報を確認しよう。

 学校編で他の国に行けるかわからんからな。

 え、ここ最近真面目?

 ふっ、俺は勇者だぞ?

 大人の階段も強制的に上ったし、過去の俺じゃないって事さ。

 約束はしないけどな。


「レウス君、聞いてる?」

「え……あぁ、それは便利ですね」

「さぁて、レウス君の宿を探そうかっ」


 え、付いて来ないでください。


「そんな、悪いですよ」

「その年じゃ宿をとれるかわからないでしょ?」

「13歳から成人なのでは?」

「成人扱いはされるけど、お金を持っているとは思われないからねっ」

「まぁ確かに……」

「公的機関には勇者ってのは便利だけど、民間にはまだまだ普及……と言うか、通用するものじゃないからね」


 一理あるな。

 という訳で、デュークおすすめの高級ホテル的なアレに来ました。

 木造だけどな。

 なんだろ……ペンションみたいな感じだ。

 1日7000レンジ、メシウマホテルならコンパニオンでも呼ばない限りそんな値段にはならんぞ。


「何かの縁だ、ここは僕が払うよっ」


 待てよ、お前も泊まる風な言い方だな。


「いえ、結構です。借りは作りたくないんです」

「へー、プライドが高いのかな?」


 借りを作って大丈夫な人くらい見分けつくってーの。


 はい、ようやく部屋に着きました!

 普通の部屋に調度品が多いくらいだ。

 どこが高級なんだ?

 飯に期待しよう。





 普通だった。


 深く考えないようにしよう。

 さて、寝る前にアレをしなくてはな。

 そう、自○だ。

 うそうそ、自傷です。

 まだ回復(ヒール)を一度も使ってないんだ。

 寝る前に部屋でやるのが一番良いと思ってな。

 竜の剣(爪)(チャッピーの剣)の先端で人差し指にチクっと。


 痛い!

 痛い子みたい!


 んで、右手の掌をかざす。

 おぉ、逆再生みたく塞がってくぞ!



 ……ふむ、これは問題があるな。

 傷が塞がっても血が体内に戻るわけじゃない。

 大きな傷を負った時は、回復出来ても満足に動けない可能性を考慮しなくちゃあかんな。

 あとこれって左手じゃ出来ないのか?

 ちょいとやってみよう。

 ……出来るわ。

 両手?

 腿にちくっとやってみたけど……出来るわ。

 つか回復めっちゃ早いわ。


 因みにこれは回復魔石(ヒールストーン)込みの回復力だ。

 剣を少し遠ざけて回復(ヒール)を使うと半分位の速度で回復した。

 これはかなり良い魔石だ、上位勇者が欲しがるわけだな。

 ところで、疑問に思ってたと思うが、「何故周りの奴等は二刀流にしないの?」とか考えてた?

 剣が2本あればそれだけ魔石が入れられるし、鞘に入れてるだけで効果が表れるんだから、ダガーなんかを何本も背負ってれば、不恰好だがかなり有利になるんじゃ……とか考えてた?

 そう、俺も考えてた。

 マイムマイムも剣1本だったし、デュークも見た感じ剣1本だ。

 今までデカイ剣を持ってた奴はいたが、2本の剣を持ってる奴を見た事がない。

 なんでだろ?

 あれかな?

 固有スキル的なアレか?


 しかし、ビアンカとトゥース……この二人は2本の剣を振る事は出来た。

 二刀流が出来ないわけじゃない。

 しかし、1本の剣の魔石効果しか乗らなかった。

 効果が乗ったのは右手で持ってる剣の魔石のみだった。

 しかも二人は右手の剣の魔石効果しか乗らない事を知っていた。

 俺は剣の魔石効果が2本共乗ってた。

 2本の剣の魔石の効果が俺だけ乗る。

 勿論、信用できる二人だから試せたわけだし、他に二刀流で魔石効果が乗るやつもいるかもしれない。

 この話は、ビアンカとトゥースにしかしてない。

 周りには俺が物好きで二刀流にしてると思われてる。


 めっちゃ有利だけど、それでも上位ランカーには手が届かない。

 今のところ、俺がデュラハンに狙われる理由ってこれくらいかのぅ?

 俺が成長するとヤバイ的なアレなのかしら?

 まぁ、これなら一応辻褄が合うか。

 あくまで無理矢理こじつけたような理由だけどな。

 だから、前に考えた時は頭にはあったが、理由としては結びつけていなかった。

 まぁ実際今もそうだけどな。


 え、ここ最近真面目?

 おいおい今大事なとこだったろ?

 え、いらなかった?

 その後回復(ヒール)を連発させまくって(オーラ)が枯渇した。

 しばらくは自傷マニアになるかもしれん。

 くそ、厄介な設定だ。


 おやすみ。

 おはよう。

 ふふふ、早朝に出発するぜ。

 行き先を伏せ、フロントに伝言を頼みデュークと離れる作戦だ。

 俺あったまいい~♪


 そーっとドアをだな。

 開け――


「出発だねっ。さぁ行こうか!」


 この強制イベントいつまでっすか?

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