第二十八話「序列23位」
帰りたい あぁ帰りたい 帰りたい。
現在、ゲブラーナ東の街道からかなり外れた平地に来ております。
目の前には可愛い女の子が裸でウロウロ……なんてするはずもなく、いかついジジおっさんおります。
見物客には――
トゥース、ビアンカ、ダイアン。
「ハティーなの、だ!」
何故アピールした?
そして切る部分が違う。
というかそれは切らなくて良い。
ロンド、ブルーム王、ナディア、ナザー、レティナ。
あいつら絶対暇人だろう?
なんか城組3人はマイムマイムに連れて来られてたな。
ブルーム王よ、父親参観みたいに手を振るな。
「さて、レウス君」
「はい」
「全力で来なさい」
「そのつもりです」
23位との差……そうだな、ジジおっさんの本気を少しでも出せたら及第点じゃないか?
むぅ違うな……名ワード回収ミッションにしよう。
――ほう……やりおる。
――次はこちらから行くぞ。
――なに!?
この3つを回収出来たら褒めてくれ。
連絡先は勇者ギルドで頼む。
あー、腹痛い。
戦闘開始!!
初っ端から!
「十字飛剣っ!!」
叫ばなくてもいいけどほらアレだっ、何したかわからないだろ!?
ブゥン……ゴゴゴゴゴ。
「ほぉ、勇者になりたてでこれか。やりおる」
おっけ!
これオッケーだろ!?
1個目回収!
「ぬぅうううううっ……かぁああああっっっ!!」
バチィィィィンッ!!
気を込めた右裏拳だけで払われたぞ?
あの右手はきっと神の右手とか言われてるんだ、そう思いたい。
「次はこちらから行くぞ」
あ、これは儲けもん……しかし最後のは不可能そうだなおい。
「かぁ!!」
あれは……飛剣!?
しかも手刀で!?
俺の十字飛剣よりでけぇ!!
範囲が広い、上しかない!
上空での隙を防ぐ為、降下しながらカマイタチ連射っ!!
バチッバチッバチッバチッ!
ハエを払う様に消えていくな……。
脚に気を移動し、着地と同時にダッシュ!
「ほっ、操作も中々だのう」
余裕……じゃねぇかっ!
バババババババババババッ!
キキキキキキキキキキキィンッ!
俺の剣が手刀だけで弾かれてるが……両手は使わせてる。
それでも……ばけもんジジおっさんだ。
「くふふふ……ランキング40位台ってところだな」
「ほ……めこと……ばとして、受け取り、ますっ!」
今から魔物臭い事しますっ。
口に気集中!
……いける!
「がぁああああああっ!!」
ゴォオオオオオッ!!
気口砲の完成っす!
「ぬっ……くっ!」
おぉ!
それ回収ワードにすれば良かった!
ジジおっさんの顔が……少し焦げた! ……だけかよ!?
「……発想が面白いな。お返しだっ!」
嘘っ、学習能力早過ぎるだろっ!?
「がぁああああああああっ!!」
屈んで緊急回……ひっ!?
「ガッ……はっ!」
腹蹴られたっ。
少しだけ後方に跳んだけど、結構まともに入ったっ!
痛い……というより超苦しい!
「は……かっ……ひゅ……」
息吸えねぇええ。
……やはり勇者ってのは蹴りを多用するのか?
ジジおっさんめ、人を足蹴にするとは良い教育を受けてないな?
あ、俺もだわ。
「続けるかね?」
上からだなおい。
ええ、かなり上の方でございます。
やれるだけやりたいしな……。
「も、もう少、し……だけ……」
「くふふふ、それでこそ勇者よ」
だからその笑い流行らないってば。
えーっと、気を身体だけじゃなく、剣にまで移動させて……。
長く持たないだろうけど……やるっきゃねぇ!
「ほぉ、それをするとすぐに気が枯渇するぞ? まぁ、わかってて使っているんだろうが……」
「もう“少し”って……言いました、から」
お、ようやく呼吸が!
出来た、気剣でございます。
さっきジジおっさんが両手でやってたのと一緒だけど、身体全体にも気をまわしてるからすぐなくなりそうだ。
「っしゃああああ!!」
ジジおっさんに向かいダッシュ!
「なら私も剣だな」
ようやく抜かせた――って嘘っ、抜刀はぇええ!
既に上段構えてやがる。
足はもう……どうにも止められないっ。
十字受けでっ!
ギィイイインッ!
おっも!
くそおっも!
おうち帰りたい!
ないけど!
嘘、もっかい!?
ギィイイインッ!
ギィイイインッ!
ギィイイインッ!
ちょちょちょっちゅおちょっちょってゃあやまかめろってばあああ!!!
すまん、読めないか!?
ちょっと前のトゥースみたいだ。
緊張感なくてすいま……っせん!
「ほっ! ここで最初の技か!」
受け様に十字飛剣飛ばしましたが、見事仰け反られてかわされました。
も、もう気が……限、界……。
「はぁ……はぁ、はぁ……はぁ……参った。参り、まし……た」
やっぱり差は……でかい。
「うむ、見事だった。40位前半に迫るものがあったな」
だ、そうです……けどそれもおそらく瞬間的な部分だろう。
神系統の魔石がゲットできれば……いや、自身を鍛えなきゃだな。
……課題は山積みだ。
「ほれ、特硬化の魔石だ」
「あ、ざす」
「これからは戦闘前に提示品を貰うのが良い」
「は……ぃ」
こっから記憶ない。
夜…………夜中か?
どうやら誰かが部屋に運んでくれたみたいだ、感謝感謝。
さて、どうしたもんか。
俺の右隣にハティーが寝ている。
俺の左隣にビアンカが寝ている。
勿論3人オンベッドだ。
狭い……左を向けば目の前に爆弾があるし、右を向けば…………ないな。
しかしこの状況で俺の息子は既にバーニングファイヤーだ。
一体どうしてくれるっ!
違う事を考えるべきだ。
んー、そういや今日の戦いでマイムマイムは魔石を付けてたか?
思い出せ……えーっと剣を振ってた時……あぁ両手にしてたわ。
首だけ見えなかったけど、装備してる状態であれなら……あれで23位かぁ。
くそぉ……悔しいなぁ……。
はいおはよう。
朝になったらハティーが床に落ちてたので、ベッドの右側から脱出した。
マイムマイムの戦い方、俺が普段皆を相手にしている時と同じで、両手が気状態だったな。
やはりあーゆう戦い方があるのか。
つまり方向性は間違ってないわけだ。
しかし、基本奥義が気操作か……この先の戦いは全て気使いだろうな。
魔王クラスもそうだろう。
となると、うすうす考えてたが、チャッピーの奴も使えるんだろうな。
勿論マカオもな。
俺との修行もホント手を抜いてた訳だ……にゃろめ。
確かに左手と右手、顔だけであの程度の強さなのかと悩んだ事はある。
50%の模擬戦と違いすぎたからな。
あの模擬戦は気を使用していただろう。
50%のチャッピーとマカオを今の俺と比べて……んー、客観的に考えたら大きくて5分の1、小さくて10分の1ってとこだろう。
つまり今の俺の実力は、あいつらの本気の5%~10%位の実力だな。
遠いわ!
急成長イベントはないのか!?
俺にチート機能を搭載してくれ!
せめてなんとかと時の部屋が欲しい……。
鑑定が必要な魔石の詳細が気になるところだ。
うん、今夜発とう。
ん?
そういや関所とか国境でどうやって勇者を証明するんだ?
勇者証明見せて、「通れ!」ってなるか?
ならん。
俺ならこんな生意気そうなガキがいたら、「お家に帰ってママの乳でもしゃぶってろ」と言うだろう。
まぁ流石に言わないだろうが……ちょっとレティナに聞いてみるか。
今日中に挨拶回りしてくか。
話して問題ない人のみだが。
まずはブルーム王、ナディア、ナザーに話して、その流れで北区の勇者ギルドに行こう。
というわけで城です。
門番のおっちゃんに話したらすぐ入れてくれた。
むしろ俺が来たら、音を置き去りにする程早く知らせろと指示があったらしい。
なんか変な言葉だなおい。
はい、というわけで謁見の間です。
「レウス君、昨日の具合はもういいのかね?」
目が……アクサンシルコンフレックスの連なりみたいだな。
わからない?
んー……「^^」これだ。
…………許せ。
「はい、すっかり良くなりました」
「して、本日はどうしたのだね?」
「明日、ここゲブラーナを発つ事にしました」
「なっ!?」
目が……セミコロン二つだな。
んー……「;;」これだ。
…………まじでごめん。
おぉ、回復してきた。
「いつ戻ってくるのだね?」
「わかりません」
あ、回復した分ダメージ受けた。
……おぉ、回復してきた。
「どこへ行くのだね?」
「エルフの里の後、修業しながら魔界を目指します」
あ、瀕死の目だ。
ナディアが一歩前へ出た。
「帰りを待っている」
「はい、用事を済ませられたら必ず戻ってきます」
「……待ってるから」
「…………」
いかついオールバックのおっさんに、こんな言葉を言われる日が来るとは思わなかった。
城を出る前に兵舎に行き、ナザーにも話しておいた。
「寂しくなりますな」
「魔物達の事、宜しくお願いします」
「かしこまりました」
さて北区に行くか。
ガルムのおっちゃんもあそこだし。
……先に勇者ギルドかな。
「こんにちはっす」
嘘だ。
胡坐をかきながら小指で耳をほじってるレティナがいる。
小指を「フッ」ってル○ンかお前。
掴みかけたレティナファンに謝罪しろ。
あ、俺に気付いた。
超速で姿勢正した。
「レウス様、本日はどろようにゃご用件でっしょうか」
慌てるな、顔を赤くしすぎだぞ。
まぁ、流石に完璧な人はいないよな。
「あぁ、関所等を通る際はどうすれば良いのかと思いまして」
「簡単でしゅ」
もう少しで治りそうだ。
「関所の門の前で大声で勇者と名乗ってください」
治った。
しかし大声は恥ずかしいだろ。
「すると門まで案内されます。安心して下さい。例え子供であっても門までは案内されます」
そう仕込まれてるって事か。
「そこからは勇者証明がなければダメですけどね」
どういう意味でっしゃろ?
まさか勇者証明に反応して自動的に開くとか?
……ないない。
「勇者証明に反応して関所の門が自動的に開きます」
……携帯電話作れるだろ、この世界。
それともこれは機械的じゃなく、気的に開くのか?
まぁそこまで踏み込むつもりはない。
めんどくさそうだからな。
因みにエヴァンスとチャベルンの間には関所とかないぞ。
100年位前に同盟を組んだ時に全部ぶっ壊したそうだ。
その時の関所勤務の人間たちのその後を、俺は知らない。
「む、レウス君か」
メッサッソンだ。
間違えた、マイムマイムだ。
もう少し早く来ればレティナの痴態が見れたぞ?
「私は今夜ここを発つ。レウス君はどうするつもりだね?」
「俺も今夜発ちます。なのでその挨拶をと思いここに来ました」
「そうか、この後の予定は決まっているのかな?」
「鑑定が必要な魔石があるので、まずはエルフの里へ向かいます。その後は修行しながらランキング50位以上を目指します」
「……強くなりたいか?」
「勿論です」
「では、エルフの里の後は中央国へ向かいなさい。勇者の専門学校があるからな」
………………学校編……だと!?
勇者の学校……しかし勇者は100人しかいないんだぞ?
上位ランカーは大体が魔界……ってことは50位以下の為の学校って事か。
ジジおっさんは俺を40位台と言った。
過信じゃなければ少し修行をして、提示品さえ手に入れれば魔界入りが出来そうなんだが……。
「魔界で生きてく為の知恵を授ける場所だ」
知識か……今のままじゃ死ぬぞという目だな。
わかったよ、行けばいいだろ。
急がば回れだ。
「無論、強くなる術も教えてくれるぞ?」
行くわ。
なんでも吸収しちゃる!
「わかりました。行きます」
「くふふふ、詳細は中央国の勇者ギルドで聞くと良いだろう」
「はい」
「ところで鑑定が必要な魔石とは?」
「えーっと……この2つです」
「これは……レウス君、これをどこで?」
「黄金魔石から出ました」
「ほぉ、アレを持ってるのか」
なんかわかるのか?
わかるに越した事はないんだが。
「この青い魔石はわからんが、黄緑の魔石はわかる」
でじま?
しかし結局エルフの里には行かないと行けないみたいだ。
「これは回復魔石じゃな」
なんだって?
奥義書もらった後にこれかよ。
「ウェポンエンチャントでしか効果は出ないがな」
いらねー。
「剣技の回復の効力を高めてくれるぞ」
めっちゃいるわ。
この後竜の剣(爪)に埋め込もう
「上位勇者が喉から手が出る程欲しい物だな」
チートではないが、運は良いようだ。
「ありがとうございます」
「では魔界で会おう」
「はい!」