【番外編】 ~トゥースの鼻毛~ 【第二巻書籍化記念SSその3】
すっごく遅れましたが二巻発売の記念SSです。
現在俺、ビアンカ、トゥース、ハティーと共に、とあるダンジョンに潜っている。
このダンジョンにはなんと、特抵抗の魔石があるって言うじゃないか。
しかし厄介な事に、このダンジョンには判定レベル123の《ベノムフライ》という、すばしっこい大型の毒の蠅の魔物が生息していた。
「レウス! そっちに言ったわよ!」
「トゥース! 任せたぞ!」
「お、俺なのかよ!?」
「レウスなのだ!」
ハティーはまず言語をしっかりと学べ。
「トゥース、任せたぞ!」
「だからなんで俺なんだよ!?」
「素早い魔物だから速度を鍛えてるお前に回すんだよ」
「そりゃあ有難い……なっ!」
「ビィイイッ!?」
ほぉ、通常の動きでレベル123の魔物を仕留めたか。
ちょっと前のハティー位の速度はあったはずだが……成長するもんだな。
「おーし、ここら一帯は片付いたな。もうすぐ最深部だな、俺の鼻がそう言ってる」
「とんでもない鼻だな」
「お前の鼻毛には勝てないわ」
「なっ、そんなに生えてるのか?」
「そりゃな。身長が低い分よく見えるもんだ。最初見た時寒気がしたぞ。よく鼻呼吸が出来るな?」
「確かに……口で呼吸する事が多いような?」
「うふふ、鼻毛の手入れも大事って事ね♪」
「鼻なの、だ!」
「そうだな、鼻だな。んで切るとこが違うな」
それでもしっかり覚えようと努力してるあたり、流石なんだけどな。
「さーて、そろそろだな。今回のボスは……いた」
判定レベル129、マーチングボウイ。
口元に……というか口が笛で、小さな人型の岩石でできた魔物だ。腕はドラムのスティックみたいに出来てて腹にある太鼓で鳴らして遊ぶんだ。
え、可愛いけど本当に魔物なの?って?
普通に襲いかかってくるぞ? ……トゥースにな。
「ったく、また俺かよ!」
「動きは遅い。離れてけん制しつつ攻撃に移れ! 攻撃を食らったら鼻毛ちょんぱだ!」
「そいつぁ勘弁だなっ!」
「勘弁、な、のだ!」
「あ」
俺の言う通りにけん制に入ったトゥースを横目に、ハティーが一瞬でマーチングボウイを吹き飛ばした。
岩壁にめり込むように叩き伏せられてKO!
マーチングボウイが一瞬でも皆に殺気を向けたのが原因で、ハティーの攻撃のトリガーになったのか。
「ハティー、なんでやっちゃったよ? ビアンカと鼻毛の修行だぞ?」
「おい、しれっと名前間違えてんじゃねーよ!」
「うふふふ、やっぱりハティーは強いわねっ♪」
「なはははは! お任せ、なのだ!」
うーむ、ハティーのキャラが定着してきたが、ボロが出るとここまで変わるものなのか。
魔物恐るべし。
「――……ねぇな、このダンジョンはどうやらハズレみてぇだ」
「しゃあないか、そんじゃ帰るかー」
「はーい♪」
ん、これオチはどうなるんだ?
「鼻毛を剃、るのだー!」
「ちょ、俺攻撃食らってっ!? あぁあああっ!!」
「あらあら……そこは鼻毛じゃなくて……」
髭……だな。
せっかく尻が隠れるように伸ばしてたのに……可哀想なヤツだ。
「さぁ帰るぞ尻!」
「鼻毛の方がマシだっつーのっ!!」
第三巻の発売は2015/11/14土曜日予定となっております!