第二十話「レベル150」
さて来ましたよ、西の森奥の山のダンジョン。
今日はビアンカちゃんとトゥース君におこし頂きました!
「あ、あの森の奥だからな……注意しろよ」
「な、なんだか不気味ね」
どもるレベルで付いて来るんじゃねーよ。
『レウス、あの者達は大丈夫なのか?』
あぁ、今日はハティーちゃんもいらっしゃってます。
俺が『付いてくるか?』と聞いたら「ガウッ!」だそうだ。
喋れよ。
『おそらく大丈夫じゃないな。護衛は頼んだぞ』
『任せてくれ』
とりあえず入ります。
チャッピーのカンテラはホント便利です。
……これ流行らせるか?
丈夫ってだけで別にユグ木である必要はないからな。
2日後、ガルムの爺に話してみるか。
はい、今回は岩だらけのダンジョンです。
マグマとかは見えないけど、火口の付近なのか暖かい……というか暑い。
当然ビアンカをガン見だ。
汗がエロい。
ないすダンジョン。
という訳で敵が現れました。
あれは判定レベル94のマグマラビット。
名前の通りだが普通のウサギより一回り位大きい。
頭からマグマが垂れ、足元に回るり、それをまた頭へ循環させてるような感じだ。
怖いのは体当たりと、口から吐くマグマだ。
マグマを吐くと少し縮むらしい。
魔物大図鑑に書いてあった倒し方は――
「素早く剣で斬り倒すか、怯ませて剛剣でダメージを狙え!」
「「了解っ」」
今回はビアンカとトゥースが敵を倒し、俺とハティーが護衛だ。
もし二人だけでマグマラビットを倒す事が出来、奥に魔石があればあげようと思っている。
マグマラビットが……2匹。
さてどうだろう。
トゥース編、戦闘開始!
トゥースがダッシュ……遅い!
マグマラビットが跳びあがり、トゥースとの間合いを詰める。
トゥースが気持ち悪い顔をしながらそれをかわす。
少し耳に当たる。
「あちゃちゃちゃったたたたったーっ!」
何語だ?
着地したマグマラビットが反転して、再度トゥースに跳びかかる。
トゥースは汚い脂汗をまきちらし、それを剣の腹で受ける。
マグマラビットが地に向かい落ちながら、トゥースにマグマを吐いた。
危ないぞ!
トゥースの立ちながらのエビ反り。
キモイぞ!
尻顎にマグマが1滴、2滴当たる。
「あちゃああちゃちゃたかささふぇな!」
読めない!
おぉ!?
お返しにという感じでトゥースがマグマラビットに唾を吐く。
ばっちぃ!
それが当たる。
ジューってなった!
「ビビビィイイイイ!」
大ダメージだ!
背中に当たった唾のおかげで、その場でくるくる回ってる。
トゥースの接近に気がつかない兎さん!
逃げて兎さん!
トゥースが大きく振りかぶって……下ろした!
ドゴン!
剛剣炸裂☆
見事仕留めたようです。
戦闘終了!
ビアンカ編、戦闘開始!
先手はマグマラビットだ。
ビアンカの足を……脚を狙い地面を駆け回る。
ビアンカはその場でマグマラビットの攻撃を避ける為に、足……脚を上げたり下げたりだ!
もも上げ訓練みたいだが、うまい事かわせてる!
乳が揺れる揺れる揺れる揺れる揺れる揺れるぅううう!
レウスに大ダメージだ!
攻撃が当たらないと悟ったマグマラビットは、ビアンカの足元から真上に跳びあがる!
ビアンカは少し上体を反りかわす!
あー!
かわしきれてない!
タンクトップの左の下乳部分が裂けた!
惜しい!
真ん中であれば!
ビアンカの頭上まで来て、宙で一瞬止まったマグマラビットに勢いよくハードダガーを投げつける。
ヒット!
見事仕留めたようです。
戦闘終了!
マグマラビットは生命活動を停止すると黒い兎……焦げてる兎みたいになった。
ビアンカはダガーを引き抜いてる。
「お疲れ、討伐部位はその耳を2つだ」
「よっしゃ、これで94だぜ」
「わたしもよっ♪」
確かに、生きて帰れればレベル94だな。
『レウス、さっきのトゥースとかいう奴の方は、助けた方が良かったんじゃないか?』
『危なかったら助けてたよ』
『あのマグマを吐かれた時は?』
『トゥースの顔にまずいって表情がなかったからな』
『……そこまで見てたのか』
『監督しながら戦わせる事に慣れてるだけだよ』
『ほぉ』
キャスカの方がよっぽど危ないからな、あんなのは楽な部類だ。
さて、奥までいくぞ。
ん、なんかトゥースが紙に書いてるぞ?
「トゥース、何やってるんだ?」
「あぁ? マッピングに決まってるだろ?」
「へ~……」
「もしかしてお前……いや、なんでもない……」
「うふふ、トゥースもわかって来たじゃない♪」
『言語がわからないと不便なものだな』
『機会があったら教えてやるよ』
『本当かっ!?』
『そんなに人間と話したいのか?』
『レ、レウスと人間言語で話したい訳じゃないのだぞっ』
あぁ、これは……なり切れるタイプのアレだな。
『今度な』
『本当かっ!?』
『今度な』
『本当かっ!?』
『こ――』
『本当かっ!?』
……。
教えてやるか。
さて、奥に来ました。
少しでこぼこしてるけど開けた場所です。
出てきました変な奴、判定レベル97のアンデッドランサー。
ほぼ骸骨の槍使い。
動物の皮を腰に巻き、風呂が造れそうな灰色の布を…………昔の俺じゃん。
今更だが、臭いがやべぇ。
なんかトゥースの汗の臭いと、ビアンカの良い匂いと、腐臭と、動物の皮の臭いと、ハティーの体臭で、おろろろろろろろろろろろろろろって感じだ。
「こいつは一匹みたいだから、共闘で倒してくれ……げぷ」
「確かに臭いわね」
「そんなに臭うか?」
お前は鼻毛が剛毛過ぎるんだよ。
下から見てみたら寒気がするほど生えてるぞ?
全部抜いて並べたら10メートル位になるんじゃないか?
戦闘開始!
ビアンカが乳を揺らしながら駆ける!
既にレウスは前かがみだ!
後方からトゥースが大きく息を吸い、バスタードソードを振りかぶった!
あれは飛剣の構えか?
アンデッドランサーが前方に槍を突き出す!
違う部分に突かれたビアンカを見てみたいが、ビアンカは助走をつけた状態でアンデッドランサーの頭上に跳ぶ。
既にレウスのあるポジションは修正済みだ。
ハティーに見られてたけど気にしない!!
後方のトゥースが飛剣を放つ。
既に正面に槍を突き出しているアンデッドランサーは飛剣を防げない!
アンデッドランサーに飛剣がクリーンヒット!
ふらついているがまだ生きている。
上空のビアンカが天井に足をつけ、地面に向かい跳ぶ!
良い感じでアンデッドランサーが上を向く!
首ちょんぱ成功。
かなりのダメージを負ったアンデッドランサーだが、まだ生きている!
おぉっと、飛剣を放ったトゥースがいつのまにか駆けつけていた!
トゥースがアンデッドランサーの武器を持つ腕を狙い斬りつけた!
斬った……というか、へし折った!
アンデッドランサーの身体がバタリと倒れる。
戦闘終了!
なかなか面白いコンビだな、長所と短所をうまくフォローし合ってる。
『なかなか面白いコンビだな、短所と長所をうまくフォローし合ってる』
おいこれコピペだろ?
逆にすればいいってもんじゃねーぞ?
お?
んー……やっぱり武器を持ってる魔物は、武器を持つ腕と首の二つでとどめなのかな?
けど般若オーガは首で死んだしなぁ。
アンデット系のみか?
闇王デュラハンの弱点、腕かもな。
けど、背中に武器持ってたから…………わからん。
さて、着きました。
おそらくこれが最後の部屋――そう俺の鼻が言ってる。
『おそらくここで終わりだろう』
『やっぱそうか』
『ほぉ、良い鼻を持ってるな』
『あぁ、だからお前、今度水浴びして来い……臭いぞ』
『なっ、本当か!? すすすすすすすまないっ!!』
すが多い。
『くそぅ、あんなに毛づくろいしたのに……』
『……』
獣はちょっと……。
うほ、久しぶりだね。
ダンジョンのボスは双頭百足!
判定レベルは111。
「111か……」
「強敵ね……」
「右は俺、左はビアンカ、任せたぞ!」
「えぇ!」
戦闘開始!
双頭百足が先制をしかける。
不意を突かれたのか駆けだした二人が急ブレーキだ!
あ……まずい。
『ハティー、ゴー!!』
「ガァアアアアッ!」
俺も最速で駆ける。
二つの頭が体当たりをかまし、ビアンカとトゥースが後方へ吹き飛ぶ。
『ハティー、キャッチ!!』
『任せろ!』
はい、ちょんぱ。
んー、今のこいつらはいけて100ってとこだな。
「怪我は?」
「おぉレウス……死ぬ前に頼みがある……」
「大丈夫そうだな」
「おい、心配しろよ!」
「ビアンカは?」
「あぁレウス……死ぬ前に一度口づけを……」
「……ちゅ」
え?
良いんだろう?
そりゃするだろう?
「…………ぇ……ぁ」
『レレレレレレウス! 何をしているのだ!』
「あぁあああああ!! レウスがビアンカにっ!?」
やかましい奴らだな。
「さ、行くぞ」
『ぬぅうううう!』
「……」
「……そういう冗談が通じないってこったな。ハッハッハッハッハ!!」
さて、あるかなーっと……。
ありました赤い光。
「パワーマスターげっと!」
「おぉ、やったな!」
「……や、やったわね」
『ぬぅうううう』
おい、ハティーそんなにビアンカを睨むな。
何故俺を睨む…………しょうがねぇな。
『ハティー』
『何だっ、レウス! 私は今機嫌が悪いのだっ!』
『今日は手伝ってくれてありがとな……ちゅ』
「ハッハッハッハッハ! レウスはキス魔だな!」
「あぁ、その通りだ」
「……いいもん、私、口だったしっ」
『……………………』
『おいハティー、大丈夫か?』
『……? ……あぁレウフ? らいよーぶなのら?』
『重症だな』
まぁいいか。
「さぁ帰ろう」
「おう!」
「えぇ!」
二人で倒しては意味がない……という事で、アンデットランサーの討伐部位は持ち帰らず、マグマラビットの討伐部位だけを持ち帰ったビアンカとトゥースだった。
ほんと人が良いなこいつらは。
西の森でハティーと別れる時、デスウルフのワン公達が、ハティーの状態を見てめっちゃ焦ってた。
『またなハティー』
『……ぅん』
リーダーの威厳がなくなってきたな。
他人行儀がとれてきたと思えばいいか。
ボスを倒しちゃったのでパワーマスターの魔石は俺が預かった。
見た感じ、トゥースはパワー型で、ビアンカはスピード型&テクニカル型だ。
なので、トゥースにはスピード系の魔石を、ビアンカにはパワー系の魔石を着けさせよう。
こいつらを鍛える事でおれの経験値も上がりそうだし、何よりこいつらの熟練した連携は中々に勉強になる。
その夜。
隣にあるビアンカの部屋から悩ましい声が聞こえて来ました。
レウスレウス言ってたわ。
これがイケメン効果っすか!?
とりあえず自家発電を我慢しつつ寝ました。
そして、ビアンカ……というか町に叩き起こされました。
超騒がしい。
え、真夜中だぞ?
「レウス、大変よ!」
「あぁビアンカ、もう慰め終わったのか?」
「なっ……聞こえてっ!?」
「レウスレウスってな」
あーあー、真っ赤だな。
「で、どうしたんだ?」
「……ばか」
「大丈夫だ。俺もビアンカでした事がある。問題ない!」
あーあー、超真っ赤だな。
「で、どうしたんだ?」
「……西の森……燃えてる。戦士ギルドの動ける人は西門に集合だって」
「よし、行くか」
「……うん」
「ビアンカ!」
「は、はい!」
「したかったらいつでも言えよ!」
あーあーあー、涙が溜まってらっしゃる。
からかい過ぎたか。
さてさて、ハティー達を最優先で助けなくちゃな。
で、すぐ着きました、西門ちゃん。
なんだあれ?
鎧着た兵士みたいなのが沢山おる。
あ、ハゲ発見!
「トゥース!」
「おう、レウス来たか!」
「レウスさんお疲れ様です」
「あれ、あんたは判定員の……」
「ダイアンと申します」
「で、ダイアン、これは?」
「判定レベル150の古代竜が、ここゲブラーナに向かっています」
「ほぉ」
「……落ち着いていらっしゃいますね」
「気づいただけだ。レベル150ならば雑魚だと」
「ではお願いしても?」
「ダイアンはいいのか? 判定員ってくらいだから強いんじゃ?」
「私はレベル111の双頭百足をギリギリ倒せる程度ですよ」
「そうか」
「トゥース、ビアンカ! 森にいるハティーやデスウルフ達をここに避難させろ!」
「おう!」
「うん!」
「戦士ギルドの皆!! あの兵士邪魔だ! なんとかしといてくれ!」
「「「おぉ!!」」」
森が燃えてるって事は、その古代竜ってのが近くにいるって事だな。
「っしゃ、やるかっ!!」