第十六話「ゲブラーナ西の森」
という訳で、色々新調したからステータス公開だ。
―パーティメンバー紹介―
名前:レウス
年齢:12歳
種族:ハーフエルフ
職業:魔物使い(剣士)
言語:人間言語・魔物言語・エルフ言語
レベル:111
装備
■ユグドラシルの剣(常時)
■竜の剣(爪)チャッピーの剣(緊急時)
■丈夫な服(青)
■レジストマント(黒)
■ブーツ(黒)
■グロウネックレス
■硬化のバングル(左)
■テクニカルマスターバングル(右)
■パワーマスターリング(左)
■スピードマスターリング(右)
技
■鉄は斬れます
大きな鞄
■特製カンテラ
■黄金魔石
■青い魔石
■黄緑の魔石
■ユグドラシルの枝16本
■ユグドラシルの葉20枚
■ハイパワーリング
■ハイスピードバングル
■世界地図
■革袋(財布):779万レンジ
レジストマントを羽織り、装飾屋で出来たグロウネックレス、テクニカルマスターバングル、パワーマスターリングを装着。
外れたハイパワーリングとハイスピードバングルは鞄へ。
元々あったユグ枝が7本、拾ったのが13本、売ったのが4本で残り16本。
ユグ葉の数は変わり無し。
そして、ダニエルに貰った世界地図。
お金はエヴァンスにいた時点で211万レンジあったけど、スンの為に100万レンジ置いてきた。
ってわけで、111万-2万(宿代)+1200万(ユグ換金代)-130万(グロウストーンとレジストマント代)-400万(テクニカルマスターの魔石代)=残金779万レンジだ。
時刻は昼過ぎ……ってわけで、戦士ギルドに来ました。
ゲブラーナの行きたい所は全部行けたので、今日中にデスウルフリーダーでもちょんぱして来ようかと思い、魔物討伐依頼を受けに来た。
ビアンカは馴染みの仲間達と会話をしている。
「どちらの依頼を引き受けて頂けますか?」
「西の森のデスウルフリーダーで」
「かしこまりました。西の森に数多く生息する、デスウルフのリーダーを仕留めてください。リーダーは普通のデスウルフよりも三倍程大きいので、すぐわかるかと思います」
「わかりました。討伐部位は首で良いんですか?」
「はい問題ございません」
「ちなみにマッチョドラゴンは?」
「マッチョドラゴンは両肩に盛り上がった筋肉のコブがありますので、それを二つお願いします」
肩のコブ……七○の里の連中みたいな感じかね?
デスウルフが簡単に倒せたら、マッチョもちょんぱだ。
依頼は受けなくても、討伐完了報告をすればOKだ。
その代わり、受けずに完了すると、依頼報酬が3分の1になってしまう。
情報の齟齬が発生したりするだろうし仕方ない。
まぁ、今は金があるのでいいだろう。
テクニカルマスターを着け、スピードリングをはずした事で落ちるスピードが少し不安だが、魔石無しでセレナと戦えたなら大丈夫だろう。
「レウス君どうするの?」
「ちょっとデスウルフリーダーを仕留めて来ます」
おい、皆固まったぞ。
ビアンカもか。
おい、乳揉むぞ?
動けよ。
「いやいやいやいや、やめといた方が良いって坊主」
「……初めまして」
スキンヘッドで、頭の中央に大きな十字傷があるガタイの良い男だ。
目はギラギラしてて眉がない、顎が少し尻顎だ。
パッツンパッツンの白いTシャツに、ジーンズっぽい七分のパンツ……あれは、サスペンダー?
黒い革靴に……って本当に戦士か?
一応腰に剣は差してるみたいだけど……。
「あぁ、彼はトゥースよ。私とコンビを組んでよく討伐に行くの」
ほほぉ、お前がトゥースか。
「レウスと言います、宜しくお願いします。トゥースさん」
「よろしくなレウス」
うん、ビアンカが組む奴なだけあって悪い奴じゃなさそうだ。
そういえば戦士ギルドに悪い奴を見た事がないがな。
「昨日はビアンカに変な事されなかったか?」
「えぇ……大丈夫でしたけど?」
やっぱり変な事するのかあいつ。
んー……ありっちゃありだがなぁ……。
「なーに言ってんのっ。昨日、合意の上じゃなきゃしないって言ったでしょ」
あぁ、昨日声掛けてたのがこいつか。
「当てになるかよ」
「もうっ」
腰に手を置いた時、ビアンカの乳が上下にゆっさゆっさ……。
……乾杯。
「レベル127なら……まぁ大丈夫でしょう」
「……すげぇ自信だな」
「とんでもない自信ね……」
自信というか、セレナに勝った事実がないと、ここまで挑戦的になれなかったけどな。
「よし、そんじゃ俺が一緒に付いて行ってやろう」
「……レベルおいくつですか?」
俺の目の前で死ぬのだけは勘弁してくれよ?
「俺は91だ」
「却下です」
「んなっ!」
「足手まといはいりません」
「ほぉ、俺が足手まといだぁ?」
「えぇそうです。勝手に死ぬのは結構ですが、目の前で死なれるのは寝覚めが悪そうなのでやめてください」
ここは強気でいく。
たとえ相手を煽る結果になっても人死にだけは見たくないからな。
「……小僧、表出ろや」
「ちょっとトゥース、大人げないわよ!」
「レウス君も……え?」
「なっ!?」
「表……とか悠長な事を言ってるから、俺に簡単に後ろを取られるんです。わかりましたか? 足手まといなので付いて来ないでください」
釘を刺す程度だったが、少し熱くなってしまった。
俺もガキだわ。
わろりん。
「レベル111は嘘じゃないって事ね」
「……あぁ」
「失礼しました。皆さんもお騒がせしましたっ」
あーあー、あそこ行き辛くなったなぁー。
「ま、待ってくれレウス!」
なんぞ?
あぁ、トゥースか。
「何ですか?」
「……馬鹿にして悪かった!」
……確かに良い奴かもな。
「ビアンカさんには、夜には戻ると伝えてください」
「あぁ、気をつけてな!」
さて、気分も良くなったところで、ちゃっちゃとチョンパだ。
……何が西の森だよ。
町の西門の目の前が森じゃねーか。
いや、合ってるけどさ!
……道があるって事は、この先に町でもあんのか?
確かこの先は山で、何も無かったはずだが?
帰ったら戦士ギルドで聞いてみるか……。
とりあえず森に入る。
背中にユグ剣を納めて、手に持ってる竜の剣(爪)を抜く。
ん……なんだ今の感じ?
なんか竜の剣(爪)がスッと抜けたぞ?
あれ……これいけんじゃね?
竜の剣(爪)の鞘を背中に着ける。
抜刀!
……できた。
これは何故だ……抜刀技術……技……魔石?
…………。
こんなとこで活躍、テクニカルマスターちゃん。
これはあらゆる技術が向上されるって事か。
五つ全てのアクセサリーに技を装備すれば、なんか色々出来そうだな。
はい、さっそく囲まれました。
レベル91の魔物、「マーダータイガー」。
どうみても虎だが、灰色だ。
そしてネイルアートが出来そうな長さの爪。
好みは総じて女性の肉だそうだが、当然男も食う。
両○だ。
爪が長いだけが特徴の灰色の虎、それが……三頭。
おそらくトゥースはこれを仕留めたんだろう。
戦闘開始!
はやっ!
……あっぶっ!
いきなり跳躍して俺に近づいて、右の爪で払ってきたよっ。
木がバキバキバキって倒れていった。
木が倒れると同時にマーダータイガーの首も落ちたけど。
俺のが速いぜ?
お次は二匹同時です……か!
跳びかかるマーダータイガーをかわしざまに、右側のマーダータイガーの前足2本を切り落とした。
一匹戦闘不能だ。
ごめん嘘ついた!
なんか前足切られた方が酸吐いてきた!
胃酸かこれっ?
これをかわして首ちょんぱ。
振り返ると最後の1匹が跳びかかってきてた。
俺は高速で間合いを詰めて、正面から一刀両断した。
うげぇ、まじきもい……。
さて探索を続けようじゃないか。
で、約30分歩きましたが、デスウルフのデの字も出ないぜ。
あれから出たのはマーダータイガーが1匹と、十手ゴリラが2匹だ。
十手ゴリラがこの森にいたのはビックリだが、別にダンジョンを棲み処としている奴とそうでない奴がいたって不思議ではない。
えぇ、こんな世界ですし。
「……っとちょっとちょっと~!」
…………。
昨日今日とよく聞いた声が聞こえる。
くそ……封じたつもりだったけど、フラグが立ったか!
どう見ても……というかどう聞いてもあれはビアンカの声だ。
声を頼りに駆けつけるっ……いた!
マーダータイガーの群れ!?
1、2、3、4…………計8匹!
群れって程でもないが、ちと多いな。
おいおいおいおいマジかよ、トゥースまでいやがるっ。
お前さっき「気をつけてな!」って言ってたろーが……。
まぁ、十中八九ビアンカがトゥースに無理押し切って来て、それに付いて来たんだろうがな。
「ビアンカさん伏せて!!」
「え……は、はいっ!」
よし、一匹ちょんぱ!
危なかった……間一髪だったな。
「ビアンカさん! すぐ起き上がって、トゥースさんのフォローを! こっちはなんとかします!」
「え……でも!」
「いいから早く! トゥースさんが死にますっ!」
「わ、わかったわ!」
トゥースには2匹、俺には5匹か。
んー……出来るかな?
まぁ練習でやって、チャッピーに「それいいんじゃね?」って言われたからいけると思う。
左手に竜の剣(爪)……右手にユグドラシルの剣だ。
これで間合いがかなり拡がるし、剣の重さもパワーマスターの魔石のおかげで、前よりすげー楽だ。
「に、二刀流?」
どうやらビアンカの不意打ちで一匹は仕留めたらしい。
やるなビアンカ、キャスカ以上じゃないか。
俺も頑張らねばなるまい。
戦闘開始!
マーダータイガーは皆様子をうかがってる。
って事は、俺から仕掛ける!
一番近くにいたマーダータイガーに襲い掛かり、ユグ剣を振り切る。
ガキィっと受け止められたが、爪はボロボロだ。
マーダータイガーがその衝撃にビビッてる間に、左手の竜の剣(爪)でちょんぱ。
二刀流にテクニカルマスターがしっかりと働いてるみたいだ。
「グゥウルゥアアアア!!」
後方上空からマーダータイガーの声。
声から予測地を出し、そこへ振り返り様にユグ剣を振り切る。
ビンゴ……ちょんぱ成功。
しかし、その後方に重なって跳んでいたマーダータイガーが迫る。
うまい連携だなおい。
これはセレナの得意技だ……ぞっと!
まだ宙にある前方のマーダータイガーの死体を回し蹴りで払い、「まじで?」って感じの顔をしている後方のマーダータイガーに十字斬り。
「シャアアア!」
上空から!?
木に登ったのか。
もう一匹は背後……すげぇなこいつら、合計で四段構えじゃねぇか。
ってわけで、もう危険のない前方へ回避し、後ろにいたマーダータイガーがうかつにも追ってきたので、正面より撃破。
木から降りてきたマーダータイガーの着地に合わせて、ユグ剣を投げる。
「ガッ……」
5匹!
すぐにビアンカ達を!
って思ったら、向こうも丁度終わったとこだった。
「ったく……何で来たんですか」
「すまねぇ……ビアンカが無理にでも行くって聞かなくてよ」
知ってた知ってた。
こんにゃろめ。
「ご、ごめんねレウス君。心配だったものだから……」
「心配は嬉しいですけど、今の俺はビアンカさんの方が心配ですよ」
「あらまホント?」
「調子に乗るなビアンカ」
「はーいっ♪」
「……しかしすげぇな」
「えぇ……」
「連携を組んだマーダータイガーは、勇者でさえ手こずるのにな……」
え、そうなの?
確かにすげぇ連携だとは思ったけど。
「一応実力はセレナさんにお墨付きを頂いてますからね」
「セレナって……あの猛腕セレナ?」
何だその二つ名は。
あ、ユグ剣拾わなきゃ。
「確かにセレナさんは力自慢だとは言ってましたけど」
「凄い! セレナに認められるって相当だよ、レウス君!」
勝敗結果は言わない方がよさそうだな。
「そんなに有名なんですか、セレナさんって?」
「有名もなにも、あの人はゲブラーナの出身よ」
ほぉ、そら知ってて当然か。
「って事は、顔見知りでしたか」
「あぁ、最近の戦士ギルドの難しい依頼は、全部あいつがやってたんだ」
「何回か飲んだ事あるけど、あまり表情を出さない人だったわね」
「確かに、真顔で『面白い』とか言ってましたね」
「セレナは今、勇者ランキングを駆け上がってるわよ」
「戦士でもランキングを見れるんですか?」
「中央区に大きな掲示板があるんだけど、そこで確認する事が可能よ」
「一般人でも見れるんだぜ?」
「…………」
なんかこの二人あれだな、通信販売の声優みたいだな。
「セレナさんの序列は今どうなんですか?」
「確か一昨日見た時は、56位……だったかな?」
ふむ、もう少し自信レベルを上げても良いとは思うが、セレナも俺と別れてから強くなってるだろうし、やはり油断は禁物だな。
「では、俺はこれで……気をつけて帰ってくださいね」
「何言ってるの、付いていくわよ♪」
「ハハハハ、まぁ、ここまで来たらな!」
「……」
「別に襲われて走り回ったから、出口がわからなくなったとかじゃないわ」
「その通りだ。目印を見失ったとかじゃねぇんだ」
こいつらなんで今までコンビ組めてたんだ?
くそ……そういう事なら仕方ないか。
俺も方向感覚は既にわからないが、俺の鼻は今犬レベルだ。
出口の方向なんて簡単だが、それを言っても信じてもらえそうに……ないな。
「はぁ、じゃあ行きましょう」
「さすがレウス君、おっとな~♪」
「おっとな~♪」
お前さっき俺に「小僧、表出ろや」とか眉間に皺寄せて言ってなかったか?