第十五話「新調」
さて今日はエロエロ女、ビアンカちゃんとゲブラーナ観光です。
メシウマホテルを出てもまだ時刻は8時だ。
あぁ、時計文化はあるぞ。
けど1日の総時間は24時間じゃなく、25時間だ。
なんでって?
いや知らないってば。
まぁ朝なわけだ。
「こんな時間からお店とかってやってるんです?」
「ゲブラーナは、ほとんどのお店が8時からよ♪」
「へ~」
「じゃあレウス君、まずどこに行きたいのかな?」
「そうですね、まずお金に換えなければならない物があるので換金所へお願いします」
「へぇ、やっぱり戦士なのね」
「10歳からギルドにはいましたから」
「レウス君いまいくつ?」
「12です」
「うふふ、イイ年齢だわ♪」
何が?
ビアンカがそう言いながら歩き始めた。
因みにビアンカは、20前半かと思ったら19だった。
この世界の人間は色気がすげーのか、老けてるのか……謎いな。
しばらく歩いて15分程で換金所に着いた。
町並みはそこまで変わっているという事はない感じ……良くも悪くもエヴァンスやチャベルンと大差ない。
「やぁビアンカじゃないか」
「ウェッジ、久しぶり」
こんなとこにいたかウェッジ。
「最近来ないから死んだのかと思ったよ」
「討伐はあるけど全部お金で貰ってたしね」
「あぁ、だからトゥースがまとめて換金してたのか」
「そーゆー事♪」
「で、今日はどうしたんだい?」
トゥースってのがビアンカと組んでる奴なのかね?
そういやビアンカって、実力はどんなもんなんじゃろ?
「このレウス君が売りたい物があるって」
「この子がぁ?」
はいはい、その反応にも慣れました。
「よろしくお願いします」
「よ、よろしく」
「単刀直入に言います。かなり高級な物なので、このお店にある現在金額を教えてください」
「ほほぉ、ウチはいまだかつて引き取りを断った事がないよ?」
「いえ、多分全ては買い取れないと思います」
「……ふむ」
悩むな悩むな、態度悪い子供だって思われてるのか?
まぁしょうがない。
実際態度悪そうにしてるし。
「1000万はある……とだけ言っておこうか」
1000万か……ほら足りねーじゃねーか。
んー……3本ってとこか?
「ではこれをお願いします」
そう言って、鞄からはみ出てる毛皮の中から、ユグドラシルの枝を3本出した。
「……こりゃおったまげた」
「えぇ、私も見るの初めて……」
「おいくらでしょうか?」
「……いくらで売ってくれる?」
だからなんでそうなるんだ?
やはりこういう場合は立場が逆になるのか?
んー……今回は出来るだけ欲しいからな。
400万で市場で流れるとしたら……。
「1本300万でいかがですか?」
「そ、そんな安くていいのかい?」
え?
そうなのか?
やはりとんでもないな、ユグ枝。
「まだあるのかね?」
「1000万しかなかったのでは?」
「300ならもう1本欲しいんだが、どうだろう?」
「では、お願いします」
「ハッハッハ、これはとんでもない上客だ。今後とも贔屓にしてくれよ! これを捌き終えたらこちらの元金も増えるだろうから、その時はまた頼むよ」
「そういう反応を見たら、次は値を上げてしまいそうです」
「ハッハッハ、そうだろうね。350までだったら引き取る……とだけ言っておこう」
「はい、覚えておきます」
「レウス君……本当に12歳?」
ビアンカも19歳には見えない程色っぽいぞ?
ともあれ1200万レンジゲットだぜ。
しかしユグ金貨一杯だから、鞄が少し重いぞこれ。
「さぁて、お次は?」
「勿論、魔石を見に行きたいです」
「ホント根っからの戦士ねぇ……何か目的でも?」
「強くなりたいだけですよ。そう、今なんかより比べ物にならない位ね」
「レウス君って……戦闘狂?」
「ハハ、今はそうかもしれません」
「魔石か……装飾屋は後でいいわね。そうねぇ、この時間だったら……レウス君、『市』に行きましょう」
「市?」
「魔石は勿論、様々な物を売ってる場所よ。レウス君のさっきの枝も、市で出せばもっと高く売れると思うけど」
「なるほど。まぁあれはウェッジさんに売ってもらうのが良いと思います。今は時間が惜しいですからね」
「んー、本当に12歳には見えないわ~」
さーせん。
で、着きました。
これが市というものか。
ゲブラーナの南地区の中央通りを真っ二つに割って、毛皮や茣蓙みたいなのを両サイドに敷きまくって商品を並べてる。
大体2メートルおきに一つの店があるって感じだ。
皆大声で客を呼んでる。
けどこれは……。
「魔石を探すのは大変なんじゃないですか?」
「大丈夫よ、魔石を売ってる区画は決まってるの」
ほほぉ。
しかし、魔石入りの武器……とかだと別の区画なのだろうか?
魔石と武器を売りたい時は?
謎い。
「うふふ、考えてる事が顔に書いてあるわよ♪」
「あぁ、わかりましたか?」
「男の顔色は特に……ねっ♪」
ウインクやめろ。
まじ興奮するわ。
「だから今から行くのは、武器やアクセサリー、そして魔石を売ってる区画よ」
「あぁ、簡単な仕組みだったんですね」
「武器、魔石、アクセサリーを売る際はその区画じゃなきゃ許可が下りないわ」
「つまり服や毛皮をメインで売っていても、1品でもその三つが入っていたらその区画じゃないとダメ……という事ですか?」
「さっすがー♪」
なるほどな。
確かにそういう括りにした方がわかりやすいか。
「さぁ、行きましょう」
「はい」
どうやら魔石区画は右サイドの一番奥らしい。
ゴミがヒトヒトする中で、ある時はおっちゃんの手が頭にぶつかり、ある時は綺麗なねーちゃんのケツに顔を突っ込んだ。
そしてついに――
「うふふ、大変そうね」
「小さい身体はホント不便です」
「イイ身体してるのに……」
「聞かなかった事にします」
「うふふ……そぉれ!」
レウス君、人生初の肩車!
それも19歳の女性にされた。
恥ずかしいわ。
踵から脹脛にかけて柔らかい感触が……。
役得……か。
そう思い踵から脹脛に全神経を集中させてたら、右奥区画に着いてしまった。
ちっ、勿体無い。
「もぉ着いちゃったわ……勿体無い」
同感ですお嬢さん。
ゆっくりビアンカに降ろされ、右奥区画を物色物色。
んー、やはりどこも下位魔石ばかりだ。
硬化の魔石も30万で売ってるが、今欲しいのは上硬化か、特硬化だしなぁ……。
お、あれは?
先に見えるのは白髭爺が開いてる店だった。
下位魔石だらけの中に、唯一見たことがない黒色の魔石を見つけた。
「お爺さん、これは?」
「おぉ、坊や目が高いね。そいつは成長する魔石、『グロウストーン』だ」
「へー、これがグロウストーンっていうんだ?」
ビアンカが知ってるみたいだった。
「どういう効果なんですか?」
「んーと、確か『力・速・技・硬化・抵抗』の全ての効果を持っていて、それが『時間、倒した魔物の数やその質』で成長するらしいわ」
やばい。
技と抵抗の魔石もあったのか……。
技はなんとなくわかるが、抵抗?
この世界に魔法はないだろ?
「その抵抗っていうのは?」
「主に魔物が使う火炎等の硬化では防げない攻撃を防ぐ魔石よ」
あれ、前にスンがチャッピーのブレスを硬化で防いだとか言ってたような?
って事は、あれは素面防御で防いだのか……。
……やっぱスンはとんでもないスライムだな。
「魔物限定なんですか?」
「勿論それ以外にもあるわ。戦士の高レベル者が使う剣技や、まぁ戦う事はないだろうけど、魔王クラスの特殊攻撃にも効果があるらしいわね」
それ聞いて安心したが……剣技?
「剣は硬化で防ぐのでは?」
「それは単純な剣撃よ? え、……もしかしてレベル111で剣技を……知らない?」
「えぇ……まぁ」
恥ずかしい事らしい。
斬鉄剣的なのを剣技だと思ってたが違うとの事だ。
どうやら剣技にはチート的な要素がかなりあり、習得すれば剣撃を飛ばしたり、通常攻撃では不可能な高速連撃や、高威力な剣撃も可能だとか。
「凄いですね……」
「いや、私には剣技を知らずにレベル111まで上がったレウス君のが凄いと思う……。一体どんな基礎を積んだのよ?」
空の支配者と伝説の霊獣と戯れてたと言ったら、信じてもらえるだろうか?
いや、無理だろうな。
セレナも剣技使えたんだろうが、俺が剣技使わないのを見て使用を控えたんだろう。
さすが勇者だ。
ん?
……あれ、俺って結構凄いんじゃね?
……むぅ、いかんいかん。
慢心は毒だ。
例え剣技が使えたとしても、チャッピーやマカオに勝てる気がしない……頑張ろう。
「坊や……」
「あぁ、はい?」
「それ、買うのかのぅ?」
「あ、すみません。おいくらなんですか?」
「どうせ誰も買わないんじゃ、10万でええよ」
「え、こんな便利な魔石なのに誰も買わないんですか?」
「成長速度が遅い事で有名だからね、グロウストーンは。それに首にしか着けられないし」
「へー、そんな制限が」
「どうするかね?」
「勿論買います」
「おぉ、そりゃどうも」
グロウストーン、ゲットだぜ!
「他にオススメはありますか?」
「坊やは……どうやらその若さで戦士のようだね?」
「えぇ、まぁ」
「じゃったらこれかのう……?」
マントだ、キャスカのマントによく似てたがちょいと違う。
「これは昔、魔の者が作ったとされるマント、『レジストマント』だ」
魔物ではなく魔の者か、なんとなくひっかかる言い方だな?
「心配せんでも呪いの類はない」
「……どういう物なんです?」
「なぁに、さっきそのお嬢さんが言ってた抵抗力を高めるだけさ」
「おぉ、それは便利だ」
こんなところでマジックアイテム的な物がゲットできるとは。
「高いけど買うかね?」
「高い……どれくらいですか?」
「120万じゃ」
「うわぁ……高いわよレウス君。やめておいた方が良いんじゃない? 偽物かもしれないわよ?」
「それだったらグロウストーンの時にもっと高くしてますよ。この商品を提示したのはお爺さんだけど、それ以外の物を欲しがったのは俺ですから」
「お金があるのを確かめてから売りつけようって事もあるわよ?」
「それならそれで良いです」
「あら」
「120万ならそんなに痛くないですし」
「言ってみたいわぁ、そんな事」
「ホッホッホ、大物じゃのう坊や」
「じゃあお願いします」
「はいよ、毎度あり」
俺はその場でレジストマントを羽織った。
肌にしっくりくる感じで、別段動きがぎこちなくなるという訳ではなかった。
「ありがとうございました」
「こちらこそ……」
その後、ビアンカと全ての店を見回ったが、目を引くような物はなかった。
って事で、30分程歩いてゲブラーナ東地区の装飾店に来た。
この世界ではこういう店には名前を付けないのか?
基準がわからん。
看板に魔石やら本やら服の彫刻や型があれば、それがそういった店って事だ。
ここにも魔石の彫刻が入った木製の看板があった。
「いらっしゃいませ。おやビアンカ様」
「おひさ~♪」
ビアンカはこの町の一般人みたいだ。
大抵の場所に顔が利くみたいだな。
どうやらこの店はショーケースの中に魔石を置いてるみたいだ。
面倒なやり取りがなくていいなこれ。
おお、あったあった紫色の魔石……これが技の魔石、テクニカルの魔石か。
下位のパワーやスピードが1~3万なのに対して、テクニカルは10万だな。
結構なレアって事だな。
んで抵抗の魔石がこれ……茶色の魔石だな。
土っぽい感じで、値段は硬化と同じくらいだな。
やはりこれもレアか。
あぁ、説明しとくか。
魔石には色がある。
詳しくはこちら。
■力の魔石が赤。
■速の魔石が橙。
■技の魔石が紫。
■硬化の魔石が灰。
■抵抗の魔石が茶。
■成長の魔石が黒。
■黄金魔石が金。
■?が黄緑。
■?が青。
まだ他にもあるかもしれないけど、とりあえずこんなもんだ。
あぁ、呼び名はビアンカに聞いたんだよ。
地域によって呼び方が違うらしいけど、スタンダードはこうなっているとの事だ。
つまり俺もカッペだったって事だな。
高レベル魔石の見分け方は簡単だ。
魔石の中を覗き込むと中に星のようなキラキラしたのが見える。
赤い魔石の中に1個星があったらパワーの魔石、2個ならハイパワーの魔石だ。
ね、簡単でしょう?
……んー、やはりマスター系の魔石はそうそうないのかねぇ?
ん?
おぉ、中央にでかいケースがある。
護衛が二人!
これは期待出来るな……どれどれ?
紫色の魔石だ。
テクニカルマスターの魔石きたこれ。
値段400万わろりん。
がしかし、買うっきゃあんめぇ!!
「すみません」
「はい、なあにボク?」
「あの魔石を腕輪にしてください」
「……はい?」
「てくにかるますたーのませきをうでわにしてください」
「……えーっと」
駄目だなこいつ。
「ビアンカさん」
「どうしたのレウス君?」
「あれを買うので、話つけてくれませんか?」
「400万……はぁ、マスター系は高いのよねぇ。しかも技……高レベル者の考える事はわからないわ……」
「ハハ、まぁそう言わないで」
「わかったわよ、……店長っ」
「はい、ビアンカ様」
「この子がこのテクニカルマスターの魔石を購入したいそうよ。お金の心配はしなくていいわ」
「……ほぉ」
ジロジロ見んなや。
「かしこまりました。アクセサリーにしますか? それともそのままお持ち帰りで?」
「腕輪にしてください。それとこれを指輪に、それとこれをネックレスにして下さい」
「これは……パワーマスターの魔石とグロウストーンですね。どちらも素晴らしいですね」
「レウス君そんなのも持ってたの?」
「まぁ10歳からダンジョン篭ってたら……ね」
「私だって1個しか持ってないのに……」
「どうやら素晴らしい戦士様の様ですね。ご注文確かに承りました。では、アクセサリーへの加工代金含めて400万レンジとさせて頂きます」
「それはどうも。では………………これを」
「………………はい、確かに」
周りの目は凄かったが(特に護衛の人)、なんとか購入に成功だ。
護衛の人、職無くさない……よね?