エピローグ【3】
しっかし……やっぱり俺にも回ってきたか。
けど利休が「もうすぐ終わる」とか言ってたし、これはこれでいいのか。
あ、本日は調印式の一幕をどーぞ!
東の国の王、リア・ヴォルザーと、デューク。
西の国の王、ブルウス・ダリスとダイアン。
南の国の王、レイム・ダイアードとリー。
んで、登場機会が無かった北の国の女王、「ジュリアンヌ・カロット」。
何故女王を今まで出さなかった? って思ったが、接点が無かったからしゃーないっちゃしゃーないな。
ジュリアンヌ・カロット……女王って言ってもかなりの高齢の人間だから、おそらく60歳から70歳ってとこだな。
シャンプーハットみたいな幅のボリュームの髪の毛を頭の上で半円状に纏め、襟足を黒いネットでボンボンみたいに纏めてる。
どこぞのおばあちゃんヘアーで、白髪というより灰色に近い髪だな。
キツイ印象の顔で皺も目立つ。
……実際はどうなんだろうな?
細身で、身長は155センチってとこだな。
んで中央国からはリュウリュウとガディス。
エルフの里からはアイとライもいるぞ。
まぁ、ゴチャゴチャするのはご愛嬌ってか?
特例参加の俺とアークとパック。
俺達は結局神者ギルドと合併しない事になった。
これはリュウリュウのアイディアでな?
各国の警察……というか、何でも屋に近い仕事をして欲しいそうだ。
無所属の神者ギルドって感じだな。
公に神者ギルドと繋がっていない事をアピールするんだとか?
因みに、本来の調印式って、皆の前でやるもんだと思ってたんだが、ストレンジワールドでは親玉同士で決めてしまうそうだ。
「さて、始めるとするかな」
「では、世界商業同盟の調印式を始めます!
リュウリュウ様の指名により、無作法ながら進行は私、レウス・コンクルードが務めさせて頂きます!」
「「「…………」」」
「各国のお手元の調印書には、全て同じ内容が記載されています。
予め伝えていた内容ですが、今一度ご確認をお願い致します」
「レウス殿」
「何でしょうか、ジュリアンヌ様?」
「この場で伺いたかったのだが、南の国にやや利益が傾いているのは何故か?」
「事前にその事はお伝えしたと聞きましたが……?」
「そなたの口から聞きたく思います」
「……この調印式に行き着く為の功労的な部分、魔人門に作るエルフの里への出資確約の件が大きいですね。
各国に了承を得ている為、数値としての割合は適当かと思われます」
「…………」
来ているからにはここでゴネるって事は無さそうだが、少し不満のご様子。
「では、世界への貢献度に応じて数年おきに割合を変動させるというのはいかがかな?」
「レイム殿、それはどういう事かね?」
「なに、一定期間はこの割合で……その間の世界の動き次第で、数年後に再度割合を決めるという方式だよ」
「条約に更新日を取り付けるという事かね?」
「一番利益のある南の国がそう仰ってくれるのであれば、妾は構わぬが……良いのか?」
「私もここまで大きな同盟になるとは思ってませんでしたからね。
先々に変動があるとわかれば、各国も競争し、文化を発展させる事が出来るでしょう」
うーむ、そこまで考えたか……やっぱり頭一つ抜けてるな。
「しかし、その判断は皆で決めるのかね?
その判断次第で論争が起きそうだが……」
「リュウリュウ殿、ここはレウス殿に決めて頂くのはいかがかな?」
荷が重すぎるぞそれ。
「ブルウス殿、私達がそれで良くても、レウス殿が困ってしまうよ?」
「ふむ……ではリア殿はどうお考えで?」
「レウス殿には神の守護があるのだろう?
功績や貢献度の公正判断ならば、神様に頼るのが良いのではないだろうか?」
元破壊神志望で元魔王で、先日まで召喚獣だったんですけどね?
「レウス殿、それでいいかね?」
「素晴らしい代替案だと思います。
各国の合意が得られるのであれば、条約更新についての書類を作成致します」
「宜しく頼むよ」
って感じに終わりやした!
現在部隊長室に戻っております!
形式上はまだ第9剣士部隊の所属になるから、控え室代わりに使わせてもらってるんだ。
で、遊びに来たのはレイムちゃん。
「で、どうしたんですか?」
「レウス、面白くなってきたな?」
「あの国同士の血みどろの争いの事ですか?」
「くくくく、レウスはわかったか」
「更新した時、今より割合が下がる可能性があるって事を想定をしてないんですかねぇ……」
「目先の欲に釣られたのがジュリアンヌ王だ」
「他の方は?」
「ブルウスは何かしら考えがあるようだったな」
「確かにリュウリュウさんも意欲的そうでしたね」
「うむ、リュウリュウが最大のライバルだな」
「リア王はどうなんでしょう?」
「あやつは無策……だがこの付録のカラクリには気付いていたから可能性は未知数だな」
「って事は、ジュリアンヌさん……つまり北の国のみが気付いてない感じですかね?」
「ジュリアンヌ王もあれはあれで狡賢い部分がある。
そのうち気付くだろうな」
「残るはアイさんとパックさんか」
「アイ殿は……エルフの里がこれにどう絡んでくるかは不明だが、かつての最高の鍛冶師だ、何かしら発展と言えるだけの事はしてくるだろう」
「パックさんは読めませんでしたね」
「言い方は酷いが、ジャコールは人界に頼らずとも生きていけるの――」
バンッ
「そーいうこった!」
「盗み聞きはよくないですよ」
「これはビックリだな」
「ハン、あんな仕組みすぐわかんぜ!
しかしまぁ……面白い仕掛けではあるな?」
「ですね……レイム様が言った通り、利益の為に各国が競争したならば技術や経済はどんどん発展しますからね」
「更新周期は何年だったっけか?」
「3年だな」
「さてさて……俺達ゃ何をすっかなー」
「あはは、楽しみにしてます」
「そんじゃ俺様は帰んぜ!」
「お疲れ様です」
「道中気を付けたまえ」
「おう、あばよ!」
バタンッ
「さて、リーを待たせているし、私も帰るとしよう」
「では、エヴァンスの南で、以前お話した匠を付き添いにお連れください」
「ほぉ、この国に住んでいたのか」
「快適な空の旅をお楽しみくださいね」
「……ん?」
そして俺は第3剣士部隊の部隊長室へ!
コンコンッ
「入りたまえ」
なんかこれも久しぶりだな。
「失礼します!」
ガチャッ
「あまりかしこまらなくてもいいのだがね?」
「まぁ失礼な事をするのはわかってるのでね」
「ほぉ?」
「きっと俺はこの空間に慣れると、生意気な口をきくんでしょうからね」
「ふふふ、慣れとは恐ろしいものだよ」
「仮初めの平和より本当の平和ですよ」
「レイム殿との話はどうだったかね?」
「同盟のつもりが戦争になったって話ですよ」
「商業戦争の事か」
「更新の時に各国がマイナスにならない様にしなくちゃいけませんねぇ」
「利休の腕の見せ所だな」
「あー怖い」
「敵国……ではないが、技術を盗む等の工作が起きそうだな」
「産業スパイってやつか……まぁ見つかればその国にはペナルティとかで良いんじゃないですか?」
「そのスパイが吐くとは考えにくいが?
……ふっ、そういう事か」
「それを取り締まるのは俺ですよ」
「心を読める者が取り締まるならば迂闊に手は出せんか」
「まぁ他にも問題は起きそうですけどね」
「というと?」
「平和的な戦争にも見えますが、技術向上の為に民衆を酷使しないか心配ですね」
「労働者の過労か……。
ふむ、問題は山積みというわけだな」
「最初から全てうまくいくとは思ってませんから、徐々になんとかしていこうと思います」
「ふふふふ、頑張ってくれたまえ」
あれ、俺の休みっていつ?
いやいや、考え方次第だ。
今までみたいにそこまで急ぐ事じゃないしな。
ゆっくりのんびりやれば良いんだ。
って訳で、早速お休みを満喫する為にアジトへ戻って参りました!
「アーク!」
「はい、なんでしょうっ!」
「お休み下さい!」
「駄目だ」
「何で利休さんがいるんすか!?
神様が人界に干渉しちゃあかんでしょっ」
「普段の生活は変えないで主神をやる事にした」
「随分庶民的な主神もいたもんですね」
「あらかたのアプリケーションはセットしておいたからな。
定期メンテナンスを怠らなければ問題ない」
「……なんで俺休んじゃいけないんすか?」
「そろそろここじゃ手狭だろう?
昔の……ほらアレだ、勇者ハウスを再建しに行かなくてはならんだろう」
「今ですか?」
「なう」
「へいへい……」
「師匠、お供しますっ!」
「私もお供するでござる」
「ファンネルさん、期待しても良いですか!?」
「一応父に芸術のイロハは教わったでござる」
「そりゃ素晴らしいですね」
「師匠、早速向かいますかっ?」
「チャッピーが戻って来たら――」
「戻って来たみたいだよっ」
「あれ、デュークさんも来るんすか?
東の国の方は大丈夫なんです?」
「うん、僕がいない方が良いらしいよっ?」
「勇気のある父親だな」
「利休さんでももう言えるんじゃないすか?」
「死なないだけで、実力はそこまででもない。
私もこれから精進しなくてはならんな」
神より強い男、デュー君!
「そんじゃあ行きますかー」
「「「はいっ!!」」」
「チャッピー!」
「喜んで!」
はえーよ。
「あらどこ行くの~?」
「勇者ハウスの再建だ」
「それならアタシも行くわ~♪」
「あ、僕も行きます!」
「自分も行くッス!」
「我だけぇー、我だけで良いのぉー!」
「おし、皆ガラードに乗り込め!」
「何故だレウス」
「世界平和の為だ」
「合点承知之助、エ・ピローグ!」
「私も乗れますかねぇ」
「流石に飛べないぞ」
「あはは、走れば良いんだよっ♪」
流石にそりゃ鬼だな。