第十四話「西の国ゲブラーナ」
レウス君の旅が始まります。
これからも応援よろしくお願いしますm(__)m
エヴァンスの町から飛び出してから――俺はチャベルンの町に行く前に、どうしても自分の目で確認したくて、ユグドラシルの木まで走った。
ユグドラシルはところどころが焦げていた。
チャッピーの火炎が原因なのか?
損傷はあるが問題はなさそうだ。
さすがユグ木……だがやはり誰もいない。
地面のいたるところにクレーターがあり、水場の魚が、水場から離れた場所で死んでたり、水場自体が変形してた。
「凄惨……だな」
呟いてしまったが誰もいない。
ボケた老人みたいだったわ。
チャッピーとマカオがいないって事は、おそらくここら近辺でしばらく戦い。俺が逃げ切ったあたりで場所を変えたんだろう。
あいつらは生きていたら絶対にここへ帰ってくるだろうが、デュラハンを倒さない限りは戻ってこないだろう。
なぜ?
俺の身が危ないからだ。
あいつらはそういう奴らだ、馬鹿野郎共め。
だから俺は強くなりながら、あいつらを探さなくちゃいけない。
スンやキャスカと別れるのは辛いが、あいつらを失いたくないからこその決断だ。
俺頑張る!
よし、気合が入ったところで、ユグ枝とユグ葉の回収だな。
枝は金に、葉は困った時や俺が病気になった時に役立つだろう。
枝は出来るだけ売ると決めた。
大きい町、多分ゲブラーナでは、上位でレアな魔石が売っているだろうからな。
金で強い魔石が手に入るなら、それに越したことはない。
「……こんなもんか」
枝は13本、葉は20枚ゲット出来た。
これで金に困る事はないだろうが、盗みには気をつけなくちゃな。
おっといかんいかん、こんな事を思ってると盗まれるフラグが立ちそうだ。
その後チャベルンへ走り、ダニエルに粗方話した。
「なるほど、マカオ殿とチャッピー殿が……」
「スンとキャスカも行きたがりましたが、エヴァンスへ置いて来ました。二人がここへ来ても、俺の事は話さないでくれると助かります」
「……一人で背負うつもりかね?」
「不器用なもんで」
「ふふ、わかった。気をつけて向かいたまえ。そして、戻ってきたら松坂頭を腹一杯食べさせてあげよう」
「おぉ、楽しみにしてます!」
「もう行くのかね?」
「えぇ、今日中にゲブラーナに行きたいので」
「ではしばし待ってくれたまえ」
「?」
ダニエルは静かに部屋を出て行った。
別の部屋の扉の音が聞こえたがすぐに戻ってきた。
「これを持って行きなさい」
「……地図っすね」
「そう、ストレンジワールドの地図だ。ここがチャベルン、ここがエヴァンスだね」
「って事は、ここが西の国の首都ゲブラーナ」
「そういう事だ」
「ありがとうございます。ここを出たら買いに行くつもりだったんです」
「それは何よりだ」
「では、失礼します」
「うむ、帰りを待っている」
「一年毎には帰ってくるつもりですよ」
「そうか、では一年後に」
「はい!」
ダニエル・ホッパー……ほんと良い奴だ。
年は全然違うけど、友人だと思ってる。
精神年齢は近そうだな。
と、いう訳で夜に着きましたゲブラーナ。
俺が走って7時間…………遠すぎだろ。
今ね俺の速度、時速100キロ程なんだ。
信号なんてあるはずもなく、って事はノンストップで7時間。
700キロか……。
遠いわ!
まぁ、これでも少ししか疲れない身体にしてくれたチャッピー、マカオには感謝だな。
さて、宿を探さなくちゃいかんな。
とりあえず戦士ギルドに行くか。
あそこは戦士が利用できる宿泊施設もあるからな。
戦士なら割安だし。
ただ飯が不味いんだよなぁ……。
出来れば普通の宿に行きたいが、年が年だから泊まれない可能性もある。
レアな情報も欲しいし、とりあえずは戦士ギルドだ。
ゲブラーナまじでかい……チャベルン二つ分はあるな。
つまりエヴァンス14個分だ。
うん、でかい。
戦士ギルドの案内版によると、戦士ギルドは中央区にあるみたいだ。
立地がいいな。
基本的に町の作りは、チャベルンと変わらず石造建築のものだ。
違うとしたらただ一つ、中央区の少し北側にどでけぇ城があるって事ぐらいか……あれがおそらくきっともしかしてゲブラーナ城ってやつだろう。
ってなわけで着きました。
戦士ギルドもでかかった。
チャベルンの1.7倍くらいかな?
まぁ入るか。
戦士ギルドには戦士ご用達の酒場も併設されてる。
割安でまずい。
多分宿泊施設と同じ調理だろう。
うん、そうだよね。
12歳のガキが入ってきたらそんな顔するよね。
皆驚いてるわ。
なんかねーちゃんが近づいて来た。
黒髪でボインで谷間を強調するような服だな。
顔はおっとりしていて唇がぷるんぷるんだ。
妖艶って言葉が正しいだろう。
うむ、中々の逸材にござる。
「ぼくぅ、ここは戦士ギルドよ? 迷子になっちゃったの?」
だっ○ゅーのみたいなポーズで聞いてきて、俺の下半身が少しピクリとしたが、俺はキャスカの胸で多少の抵抗がついていた。
このねーちゃんもキャスカ並だ。
安心しろキャスカ。
お前にはまだ伸び代がある。
このねーちゃんは20台の前半くらい?
もう乳が大きくなる事はないだろう。
いや、大きくなって欲しいが……。
しかしこのねーちゃん良い匂いだな、反応してしまいそうだ。
平常心平常心……よし、行こう。
「知っています、受付はどちらですか?」
まぁそんな反応するわな。
目がパチクリしてやがる。
俺に惚れるなよ?
「あ、あっちだけど、何、お仕事の依頼?」
「いえ、情報の確認です」
まぁそんな反応するわな。
目がパチクリしてやがる。
俺に惚れるなよ?
てか俺の剣見ろよ。
少しは戦士要素あるだろう?
どうでもいいけどな。
受け付けに行くとしよう。
ねーちゃんが付いてくる……どこかのRPGみたいに付いてくる。
このねーちゃんの職業はきっと遊び人だ。
受け付けの人は基本的に顔が見えない。
帽子を深く被っている。
チャベルンでもエヴァンスでもそうだったけど、そんな決まりでもあるのかしら?
「お疲れ様です。どの様なご用件で?」
おぉ、さすがプロだ。
子供扱いしないでくれるのは嬉しいな。
「仕事の依頼の確認と、ダンジョン情報をお願いします」
後ろのねーちゃんが……てか周りの皆がガン見してくる。
そんな珍しいものなのか、子供の戦士って?
「では、レベル証を拝見します」
「どうぞ」
「……なっ、111!?」
前言撤回だわ。
言うなや、プロだろう?
プロ失格だな。
「ちょ、冗談でしょう?」
なんで、ねーちゃんが口出しするんだ?
「おいおい、マジかよ」
「ハッタリだろ?」
「偽造か?」
なるほど。
珍しいんだな、子供戦士。
「し、失礼しました。こちらが現在ある魔物討伐依頼です」
なになに……北の山にて判定レベル130のマッチョドラゴンの目撃情報有り。
ふざけた名前のドラゴンだな。
しかしドラゴンの2倍以上のレベルだ、相当強いんだろう。
次に、西の森に判定レベル127のデスウルフリーダーを確認……とまぁこんなところか。
それ以外にもあったが、俺のレベルより低い魔物ばかりだな。
とりあえず、セレナと対等に戦えそうなレベルである事はわかってるが、不安要素が有りすぎるので、一気に130ではなく、127で様子を見よう。
んで、ダンジョン情報は……結構多いが、レアなのは3件だな。
北の山の麓の洞窟ダンジョン、スピードマスターの魔石。
西の森奥の洞窟ダンジョン、上硬化の魔石。
南の滝裏の洞窟ダンジョン、パワーマスターの魔石。
んー、判定レベル127のデスウルフリーダーを倒して、その流れで上硬化の魔石を狙うか。
その後南に行って、パワーマスターだな。
北の山は最後でいいだろう。
まぁ、全ては明日以降だな。
「ありがとうございます。この町は俺みたいな年でも、宿をとる事は可能ですか?」
「んー、おそらく難しいでしょう……」
「そうですか……」
「ぼく、宿をお探し?」
まだいたのか、ねーちゃん。
「ええ、まぁ」
「私が保護者って事でとってあげようか? 勿論部屋は別よ?」
悪い話じゃないな。
同じ部屋とか言われたら、盗みイベントが発生しそうだが、別の部屋ならまぁ大丈夫だろう。
って事は完全に善意か。
良いねーちゃんだな。
「良いんですか?」
「勿論、可愛い子は大好きよ♪」
……。
今日二回目の前言撤回だ。
しょうたろうなアレアレだな。
……まぁ別の部屋なら大丈夫か。
え、大丈夫だよな?
「では、お願いします」
「決まりね、私はビアンカよ」
「レウスといいます」
「レウス君、それじゃ行こうか!」
黒髪のビアンカか……金髪じゃなくて良かったな。
「おいビアンカ、もう行っちまうのかっ?」
「えぇ、ごめんね!」
「ったく、その子襲うんじゃねーぞ!」
「襲わないわよ、合意の上でするのがいいんじゃない♪」
「口の減らねぇ女だ……」
良識がある……という事でいいのだろうか?
しかしビアンカはすごい服装だ。
黒いキャミソール? というかタンクトップの様な服で、下はもはや下着と言っていい程だ、ビキニ……そう、赤いビキニを穿いている。
太ももを革紐で留めたホルスターの様な物にダガー? みたいなのが入ってる。
これがビアンカの武器かな?
ブラジャーなんて文化はないから乳首が浮き出てる。
そしてこのケツ…………素晴らしきこの世界に乾杯。
そんなエロエロのビアンカと共に、宿を目指し歩き始める。
「もう夜も遅いわね……レウス君、宿のご希望は? 私、ゲブラーナは長いから、全ての宿を把握してるわよ」
「そうですね、ご飯が美味しい所をお願いします」
「あら、食いしん坊なのね♪ わかったわ、こっちよっ」
「あ、え?」
手を握られた。
なんて強引なおねー様なんでしょ。
下半身がやばいぜ。
で、着きました。
名は『メシウマホテル』……なんなの、この世界の店の名前のネーミングセンスは?
メシウマとか、地球だったら違う意味だわ。
まぁ、これで客が付いてるならいいのか。
「いらっしゃい……おぉ、ビアンカさん。お久しぶりです」
「お久しぶりー」
「お泊まりで?」
「私とこの子。部屋は別でお願いするわ」
「子供同伴とは、どうしたんだい?」
「この子、戦士ギルドの高レベル者なんだけど、この年じゃどこも断られそうだから、私が付き添いとして一緒に来たの」
「へぇ、この子が……」
「どうも」
「今度この子が来たら、泊めさせてあげてよ」
「んー、まぁお金さえ払ってくれるなら、ウチは構わないよ」
「あ、ありがとうございます」
おぉ、この町での宿確保!
ビアンカ良いな。
なかなか良いな。
これが妖艶というやつか。
ふむ……ある意味怖いな。
「やったねレウス君♪」
「えぇ、ビアンカさんのおかげです」
「うふふ、素直でよろしい」
「でー、レウス君、何泊の予定だい?」
「そうですね、とりあえず1週間程お願いします」
「1週間……んー、ビアンカの紹介って事で1万でいいぞ」
おぉ、中々割安だな。
一日約1400レンジ。
2000レンジが普通の宿だ。
この宿の作りなら、2000レンジを超えてもおかしくない。
それが1400レンジとは、ビアンカ効果……畏れ入った。
戦士ギルドなんてあんなに飯が不味いのに、一日1200レンジだぜ?
「ゴンさん。それなら私も1週間泊まるわ」
「え、戦士ギルドに寝泊りしてるんじゃないのかい?」
「今日は泊まるって決めちゃったし、私も明日で宿の宿泊予定日が終了だからね」
「なるほどね、構わないよ。二階の202号室と203号室を使いな。カギはこれ。料金は先払いでお願いね」
「では、ここは俺が払います」
「え、いいわよ。悪いし、レウス君のお金なんだから大事に使いなさい」
うむ、ビアンカで泥棒イベントは考え難くなったな。
「だから協力してくれた、ビアンカさんの為に使いたいんです」
「ちょ、聞いた、ゴンさん! 私の為にだって!」
「ハッハッハ、ちょっとませてるが、男としては一人前だなレウス君」
「いえ、それほどでも」
借りを作りたくないだけって言うのもアレだな。
「んー、でもなんか悪いわねぇ……」
「じゃあこうしましょう」
「?」
「ビアンカさん明日お暇ですか?」
「えぇ、まぁ討伐予定とかはないわよ?」
「でしたら俺にゲブラーナを案内してくれませんか?」
「なるほど、案内賃込みね?」
「そういう事です」
「じゃあお願いするわ」
「こちらこそ」
「んじゃあ2万レンジだ」
「どうぞ」
「あいよ、確かに頂いたぜ」
明日はゲブラーナ観光だな。
俺は202号室、ビアンカは203号室に入って行った。
ベッドもふかふかだ。
カギをかけて、枕元に荷物と剣を置いた。
怖いからな。
で、翌日――ノック音で目を覚ました。
「レウスくーん。朝ご飯出来たってー」
「は、はーい」
鞄と剣を持って部屋を出ると、ビアンカが小さな肩掛け鞄を持って立っていた。
ん、昨日は持ってなかったような?
「あれ、鞄なんて持ってましたっけ?」
「へぇ、女性の変化に気付くとは感心ね、レウス君」
そういうもんか?
「戦士ギルドの宿から取ってきたのよ。昨日も言ったけど、今日で部屋の予定日は終わりだからね」
そうか部屋に鞄を置いているのか……。
んー、ジャパニーズ文化ならともかく、この世界じゃ俺には怖くて出来んな。
「なるほど、早起きなんですね」
「いつもこんなもんよ? さて、ご飯食べてその足で案内に向かいましょうか」
「はい、お願いします」
メシウマホテルの飯、マジウマだった。
良い宿ゲットだぜ!