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第百四十七話「ダイジェスト」

「「「「………………」」」」


 見ろこの空気を。

 いや見えないけどさ。


「お疲れ様です」

「あははは、そんなに疲れてないよっ」

「アンチさんはどうしたんですか?」

「外で魔物(みんな)に睨まれてるよっ♪

 魔石を外しておいたから大丈夫さっ」


 可哀想なアンチ君。


「召喚士のレスターさんは?」

「私はここにいます」


 あ、レスターは緑髪の触角ホストドワーフだぞ。


「……流石にこのメンバーは驚きますね」

「ふぇっふぇっふぇ、アンタはアンチに先がないと悟ったんだね?」

「異常な行動をしていたとは認識していたのですが、タイミングが合いませんでした……」

「ふふふ、賢明な判断だね」

「デューク様っ、マサゴはっ!?

 娘はどちらにいるのですか!?」

「キャスカちゃんとリッキーさんと一緒にあの部屋にいますよっ」

「行ってあげてください……スン」

「きゅい!」

「レウス君……」

「リュウリュウさんも行ってください。

 俺もすぐ向かいますから」

「うむ、待っていよう」



「ところで皆集合してるけど何かやるのかいっ?」

「……それはわざとでしょう?」

「あはははは、やっぱり早い方が良いと思ってねっ」

「えぇ、俺としても今日中に決行しようと思ってましたからね」

「さすがケント君だねっ」

「マサゴさん自身が自分の危機に気づいてないとしても、やはり良い扱いを受けていない可能性が高かったですからね。

 疲労を訴えられない人間の人質程怖いものはありませんよ」

「この度は本当に申し訳ないことを致しました!」

「ふぇふぇふぇ、謝れる気持ちが大事じゃよ」

「レスターさん、後でブルス……青竜に会わせてくださいね」

「は、はい!」

「ターコムさんやピエールさんはいなかったんですか?」

「うーん、少なくともあのアジトでは見かけなかったかなっ?」

「……奴らの事なら心配するな」

「レッドさん?」

「勤務に追われているが、通常の仕事に戻っている……」

「へぇ……」

「リュウリュウとお前ぇの名前を使って、2人とアンチと天秤に掛けさせたんだよ」

「最後は人望がものを言ったね!」

「ありがとうございます」


 アンチの活躍が全然無かったけど、ロキもロキだったし、あの血筋はそういう星の下に生まれたのかもしれんな。


「では皆さんはお外でお待ちください。

 俺はマサゴさんを治したらすぐに向かいます」

「レウスよぉ?」

「何すかパックさん?」

「俺様にそれを見せちゃくれねぇか?」

「流石に信用出来ない人がいると思います。

 ……デュークさんが後ろに付くなら許可を出せますが?」

「ま、しゃあねぇわな!」

「見世物じゃありませんが、興味のある方はどーぞ」







 結局全員来たよ!

 スイートルームがサウナルームになったよ!


「あー……えあー?」


 マサゴ……色白黒髪ロングヘアでほぼハーフエルフの女。

 歳は……わからんな?

 顔の表情筋が結構垂れてしまってるせいか、若いのに少し老けて見える。

 まぁ20歳から400歳の間ってとこだろう。


「先程ユグドラシルの葉は与えた。

 あまり変化が見られないのが残念なところだ」

「あれの効果は免疫力の増加ですからね。

 治ったとしても見えない部分が多いでしょう」

「で、では!?」

「ここからは俺の出番です。

 集中するのでマサゴさんをしっかり押さえてて下さい。

 もしかしたら暴れてしまうかもしれないですからね」

「頼む……」

「あ、因みに」

「なんだね?」

「俺を殺すならこれが最後のチャンスですよ?」

「…………私の柄ではないが、君とは正面からぶつかり合いたいのだよ」

「そりゃ嬉しいですね」

「ふふふふ」

「……始めます」

「「「「………………」」」」


 順序が大事だ……。

 触覚はあるみたいだから視覚や聴覚からか?

 いや、いきなり視界に光が入るとマサゴの場合混乱して廃人になっちまうかも?

 いやいや今が廃人みたいなもんだから……やっぱり心からかしら?


 通心ケーブルを腕に巻き付けて……と。


「……あー?」

「お邪魔しますね」



『おはようございます、こんにちは、こんばんは!

 あなたのレウスがお迎えに参りましたよ!』

『…………』

『突然のご訪問お許し下さい!

 本日はあなただけ、そうあなただけにお話しする素晴らしいお話があります!』

『……』

『この暗い辛い部屋から遂に出られる時がやって参りました!

 この機会を逃すともしかしたらもう2度とチャンスがないかもしれません!

 是非ご一考頂きたく思います!』

『……だ、だぁれ?』

『初めまして、レウスと申します。

 リュウリュウさんやミノリさんのお友達です』

『パパと……ママの?』

『えぇ、外でお待ちになってますよ?』

『外には……出られない』

『すぐそこですよ?』

『私も出たいけど、見えない壁があって出れないの』

『じゃあ俺がそっちに入りましょう』

『来れるわけない……わっ!?』

『はいお邪魔します!』

『なんで!?』

『もう大丈夫なんです』

『……え?』

『もう出られるんですよ』

『ホ、ホントッ?』

『えぇ、俺の手を掴んでくれません?』

『……』

『……怖いですか?』

『あ、当たり前よ!』

『少し眩しかったり、少し五月蝿かったりするだけです』

『簡単に言うわね』

『簡単な話ですから』

『女の子には優しくしなさいよ』

『じゃあどうすれば良いんです?』

『私を安心させて頂戴』

『安心ねぇ……』

『何、自信がないの?』

『ここから出す自信は100%ありますよ?』

『じゃあ何よ?』

『安心させる自信がないんです』

『私を助けに来てくれたんでしょう?』

『えぇ、一歩踏み出せばそこは新世界。

 素晴らしい生活があなたをお待ちしています!』

『……なんか胡散臭いのよ』

『オーベロンの時はこれで上手くいったんだがなぁ……』

『オーベロン!?

 オーベロンってあの昔魔王だったオーベロン!?』

『ご存知っすか?』

『えぇえぇ、勇者と魔王が戦いに明け暮れる毎日!

 聞いただけでゾクゾクしちゃうわ!』

『そんな大層なもんじゃないですが、聞きます?

 大長編ですけど?』

『な、なんであなたが知ってるのよ』

『だからレウスだって言ったでしょう?

 レウス・コンクルード、知りません?』

『…………』

『あれ、有名人だとか自意識過剰だったかしら?』

『きゃあああああああああああっ!!!』


「うぁあああああっ!!」

「ぬっ?」

「マサゴッ、どうしたのです!?」

「大変そうだねっ」

「頑張ってパパッ」


 大犯罪者を前に恐怖されただけなんですけどね?


『な、なんでレウス・コンクルードが私の前にいるのよ!?』

『だからお邪魔しますって言ったでしょう?』

『お邪魔しないで頂戴!』

『お邪魔してます』

『本当に邪魔よ!』

『あなたを治すようにご両親にお願いされたんですよ』

『だからなんでパパとママが出てくるのよ!』

『今もあなたの隣にいますよ』

『……証拠は?』

『あぁ、動画見ます?』

『……どうが?』


 さぁ、皆さんお待たせしました!

 大長編、「レウスの大冒険 〜大犯罪者と呼ばれた男〜」の公開であります!

 今回は編集に編集を重ね、良いとこどりのダイジェスト版となっております!


『な、なんなのよ……』


 5、4、3、2、1……スタート!











『ちょっとレウス、漏らし過ぎよ!

 スンちゃんが可愛いわ……』


『……な、なんなのあの黒い騎士達っ』


『あ、この竜知ってる、ルミさんの召喚獣だ!』


『鼻水女!』


『あ、あの騏驎(きりん)ってこんなに気持ち悪かったの!?』


『ハチヘイルって良い人ね』


『やったわ、遂に爪を斬ったわ!』


『ちょっとレウス、漏らし過ぎよ!』


『デュラハン……許せないわっ!』


『あの人顎がお尻みたいね?

 それに何よあの女、はしたない格好しちゃってさ!』


『ハティーが……女の子に!?』


『このお爺さん……怪しいわね』


『やったわ、ついにレベル150よ!』


『マイムマイムさんって頼り甲斐のあるお爺さんね』


『あ、レウス負けた!』


『何よこのモザイクってやつ?』


『ゲブラーナを離れて……ここは南の国への国境かしら?』


『あ、あれが狂神デューク……』


『ハティーが追いかけて来たわ!』


『陸魚ってホント美味しいのよね』


『きゃあ、スンちゃんがいるわ!』


『レウスとスンちゃんは友達でありライバルなのね』


『これが勇者学校……ガラテアってこんな人だったのね』


『トムとジュリー!?』


『中央国最盛期を支えたダイム王が……これ!?』


『ハティーにお兄さんがいたのね』


『それにしても、セレナ……ドンファン……デューク……スン……とんでもない家もあったもんね』


『この頃になると、レウスはもう漏らさないのね?』


『ガルーダ……ジュニアの時期か』


『白虎と大地の支配者は仲良かった……ってやっぱりこれがケミナさんなのね!?』


『あのビアンカに……子供って、これがラーナ!?』


『やだ、ここであの黒い騎士!?』


『こうやって3人のお嫁さんがねぇ……』


『テレス女王も小さい……』


『やだ、騏驎(きりん)がここで!?』


『あの塩の量……正気!?』


『あはは、青竜に手加減してもらってるー』


『オーディスってとんでもない人だったのね……』


『これがあのアーク!?

 めちゃくちゃ可愛いじゃない!』


『ここであの黒い竜と再会ね!』


『出たわ出たわっ、この人がオーベロンさんね!

 ……魔王を辞めた……ですって!?』


『リボーン……スピードストーンって……』


『世界の理から外れた存在……だから二刀でも魔石が……』


『こ、これが聖戦!?』


『あ、レウスが死んだわ……』




『あ、お疲れ様っしたー』

『……あなたも苦労してるのね』

『もう慣れましたよ』

『苦労に慣れちゃダメでしょう?』

『信じて頂けるんで?』

『信じてもらう為の「ぷれぜん」なんでしょう?』

『オーベロン回はオススメなんですよ』

『あそこの部分の「どうが」だけ少し長かったわ』

『俺の見せ場があそこくらいしかないじゃないですか?』

『面白い強さもあったものね』

『硬さが大分とれた感じで嬉しいものです』

『ふん、元に戻れるなら何だってやるわよ』

『では手を……』

『……』

『覚悟してください。

 元に戻っても、見えないし聞こえません。

 かなり辛い状態ですが、俺が徐々に治していきますので安心してください。

 誰かが触ってる感触があると思いますが、マサゴさんを支えてるのはリュウリュウさんとミノリさんです。

 だから身を預けてしっかり気を持っていてください』

『……うん!』


 コッコッコッコッ――――




「……ふぅ」

「も、戻ったかね?」

「た、魂だけは……」

「「おぉ……」」

「レウス、汗が凄いぞ……」

「キャスカ、これはただ暑いだけ。

 手拭いあるか?」

「持ってないぞ!」


 世界で一番常備しなきゃいけないだろうお前。


「きゅぅ」


 あ、天使だぁ♪


「さんきゅー、スン」

「まず聴覚器官から治していきます」


 ポォ……ィイイイイイン……。


『な、なんなのっ?』

『もうすぐ耳が聞こえる様になります。

 ざわざわして混乱するかもしれませんが、落ち着いてください』

『…………』


「よし、次は――」










「はい、終わりましたよ」

「ほ、本当かねっ?」

「マサゴさん、もう大丈夫ですよ。

 けど目はゆっくり開けてくださいね」

「…………っ。

 本、当に……出来るとは、思わ、なかった……わ」

「なにか不便は?」

「喉、が……」

「スン、ぬるめのお水を頼むわ」

「きゅきゅいー!」

「パパと……ママの匂いがする……」

「嗅覚も大丈夫そうですね」

「「「おぉっ!!」」」

「マサゴ、聞こえますか?」

「ママの声……うん、聞こえるよ……」

「おぉ……マサゴ……」

「きゅいー!」

「お水です、ミノリさんから渡してあげてください」

「ありがとうございます……ありがとうございますっ……」

「レウス君……何と言えばいいか……」

「何も言わなくて良いですよ。

 はい皆さん、もういいでしょ?

 全員外に出てくださーい」

「「「…………」」」

「ドアの外にスンに待機してもらうので、何か必要な物があれば言ってください」

「……感謝する」

「レ、レウス」

「何ですかマサゴさん?」

「目が……慣れたら、しっかり顔を見せなさい……よ」

「……では後程。

 スン、頼んだぞ」

「きゅきゅ~い♪」



 はい、暑苦しい部屋から出て、現在アジトの入り口前でございます!


「お久しぶりです、アンチさん」

「……」

「レウス~、このイケメンデュークちゃんに喉やられちゃってるのよ~♪」


 ホント、少し老けてる感じがするけど。

 寿命はどれだけ削られたんだろう?


「もう私達の回復(ヒール)じゃ回復しないみたいだから、レウスがシテちょうだ~い♪」

「ういー」


 ポォ……ィイイイイイン……。


「改めてお久しぶりです、アンチさん」

「…………殺しなさい」

「アンチ、レウス君はそんな事はしないよ!」

「そうです、そしてそれは俺が決める事じゃありません」

「なに?」

「マサゴさんが決める事ですよ」

「ばかな、マサゴは――」

「もう治ったぜ?」

「……レウスが治したのだ」

「レウス……ですか」

「大犯罪者です」

「……そうは見えないですね」

「でしょ?」

「アンチ……やはり君がマサゴを手にかけたのかい?」

「やはり、バレていたんですね」

「一体何故!?」

「……私よりドン君……いや、レウス君に聞いた方が確実な回答を得られるかもしれませんよ?

 何しろ私は、感情的になると身体が勝手に動いてしまいますから……」

「……分析が出来ているじゃないか」

「レウス、お前ぇわかってんのか?」

「推測の範囲ですけどね」

「聞かせな」


 あれ、ザーボンで締めるの?

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