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第百四十六話「自由」

 はい、ユグドラシルの木に戻って参りました!

 面子は俺とデュークとケミナとチャッピーのみ!


 ユグ木の状態?

 もうふっさふさであります!


「わぁ……昔のままです!」


 ストッ


「はい、ユグドラシルの葉とってきたよっ」

「ありがとうございます」


「レウス、葉がうまいぞ!」

「よかったなー」

「あ、良いタイミングだねっ♪」

「あぁ……来ましたね」


 バサッバサッ……トッ。


「ぬっ、離れろレウスッ!」


『やかましいのがいるな』

『お久しぶりです』

『……見事だレウス』

『でしょ?』

『そこは謙遜するところだろう?』

『頑張って褒めてもらえてプラマイゼロです』

『……お前は不思議な奴だな』

『久しぶりだなハーピークイーン』

『相変わらず図体だけはでかいな、空の支配者(スカイルーラー)

『お主の気色悪い色も輝いておるな』

『お前のその肌はまるで邪なお前を象徴しているかのような色だな』

『こ、この色は全ての者が畏怖する為のものだっ』

『私は畏怖していないぞ?』

『お主もそのうちわかるであろう!』

『3000年程前にも同じ事を言われたが、お前の言う「そのうち」とはいつの事なんだ?』

『そのうちはそのうちだ!』

『話にならんな』

『分からずや!』


 なるほど、こういうカラクリか。


『分かりたくもないな、なぁレウス?』

『そうっすね』

『レウスッ!?』

『お前は昔から口下手なんだから口で勝とうとするなよ。

 それに、男なら黙ってやる事をしっかりやれば良いんだ』

『レウスだってよく喋るじゃん!』

『俺は別にそんなプライドなんてないですし?』

『プライドを捨てたら男は終わりだぞ!』

『じゃあ男が終わったらどうなるんだ?』

『え……えーっと、その……』

『チャッピーの言い分だと俺はもう男じゃないらしい。

 じゃあ一体なんなんだ?』

『レ、レウスだ!』

『性別にそんな特別枠はねーよ』

『分からずや!』

『そーだねー』

『……レウス、面白いかわし方だな?』

『今度伝授しますよ』

『ふふふ、それは楽しみだ』

『レウスなんてもう…………知ってる!』


 知ってる知ってる。


『初めましてハーピークイーンさんっ』

『……狂人か』

『斬らないので安心してくださいっ』

『お前が遠目で見えて、降りようか降りまいか悩んでいた。

 どうやら魔族言語が喋れるようだな』

『あははは、今日はケント君からお願いがあるそうですっ』

『ほぉ?』

『うまくいけば相互利益になる話です』

『お前の話は聞いて損はないと認識した』


 何て言えば良いんだろ?

 娘さん達を僕に下さい! とか言えばいいのか?

 いや、怒られそうだな。


『えーっと、まずお願いしたいのは人間達との共存です』

『ばかな、出来る訳がない』

『今人間達は広がる土地と土地の間の移動にかなりの時間を要してます。

 これをあなた方の飛行能力で助けて欲しいんです』

『誇り高い私達の一族に、「人間に使役されろ」と言うのか?』

『いいえ、「人間と共に歩んで欲しい」と言っています』

『物は言いようだな』

『もちろん人界で使うお金を、運ぶ距離に見合った対価としてお支払いします』

『そんな物私達は――』

『いやー使いますよ』

『ほぉ?』

『見たところハーピークイーンさんは胸を布で隠していますよね?

 これは人間が作った物です。

 これをあなたが着用しているって事は、娘さん達は少なからずその布に「憧れ」を抱いているはずです。

 そう、娘さん達はお洒落がしたいはずなんですよ、勿論人間達は便利な道具を色々作っています。

 これを平和的に購入出来るというのは非常に大きいと思います』

『…………』

『勿論、ハーピーのお嬢さん方の速度は俺達ならともかく一般人には非常に危険ですが、訓練し安定した安全な速度を維持する事が可能になれば、その実現は簡単です』

『私達が認めても人間達が我らを恐れるだろう?』

『なので最初のお相手はある程度の実力を持った者、ハーピーさん方を恐れない者を相手に運んで頂きたいと思っています。

 この期間を訓練期間とし、そしてお金も発生させます。

 お金というシステムを、娘さん方に理解してもらう期間でもありますね』

『事故というものは付き物だと思うが?』

『これは馬車でさえ起こるものです。

 防ぐ事なんて不可能です。

 しかし、馬車より事故が起こる可能性を減らす事は出来ます。

 馬は確かに賢いですが、ハーピーさん達は馬に劣るとは思えません』

『馬鹿にするなと言いたいところだが、これに関しては乗せられといてやるか』

『いかがでしょう?』

『全ての条件を聞いてから決める事だ、先に話すがいい』

『このユグドラシルの木、一角だけは人間にも使わせてください』

『理由はわかる……。

 がしかし、それなら最初から譲らなければ良いのではないか?』

『魔物と人間が共存する……まずはこれが目的なんです。

 そして、より生産的な生き方を知って欲しいんです』

『私達にか?』

『どちらにもです』

『…………』

『レウス終わった!?』

『台無しだよ』

『とりあえずここは使わせてもらうが、その条件に見合うだけの事はしてくれるんだろうな?』

『悪人以外の人間を襲わないと約束してくれるなら、この地の安全を約束します』

『我らを外敵から守ると?』

『デュークさんより強い奴が現れたら守れませんからね』

『それは世界の終わりを意味するな』

『まぁその時は俺も諦めます』

『本当にそうか?』

『出来る限りの事をやってから諦めます』

『ふふふ、そうだろうな』

『レウス終わった!?』

『チャッピー黙ってなさい』

『チャッピー……か』

『我の名前いいだろう?』

『ふん、今からもらうところだ』


 え、そういうところだった?


『レウス、私に名前を付ける事を許す』


 久しぶりの名付けイベントだな。


 ハーピークイーンか……。

 んー、安直にハッピーとかで良いんじゃないか?

 ……いや、チャッピーと少し被っててどっちにも怒られそうだ。

 ハッピー……ハッピー……を、普通にすればいいか。


『ハピネスというのはどうですかね?』

『ハピネス?』

『幸福、幸せって意味ですね』

『……女心をよくわかってるじゃないか』

『レウス、我の名前の意味はっ?』

『昔飼ってた犬の名前だ』

『それは聞いたし!』

『その名前を付けられたら、もれなく俺に可愛がられるという意味だ』

『フハハハハハハ、聞いたかハピネスよ!

 これが我とお主との差だっ!』


 ……少し恥ずかしい。


『苦労しているようだな』

『日常茶飯事ですよ』

『そういえば白虎……今は舞虎(まいこ)だったか?

 あいつも戻っているのか?』

『えぇ、お会いになります?』

『そうだな、久しぶりに話がしたいものだ』

『わかりました、帰ったら伝えておきます。

 それと、ここに警備の者を常駐させるようにしておきますね』

『私もここへ娘達を連れて来よう』

『気を付けてくださいね』

『ふふふ、中々嬉しいものだな』

『何がです?』

『人に心配されるという事だ』

『どこかで聞いたような……』

『我ぇー、それ昔言ったの我ぇー!』

『あぁ、そういえば言ってたな』

『ではまたな』

『また後日遊びに来ます』

『……待っている』


 バサッバサッ……。


 チーン!


 おや、なんじゃろな?


 《件名:聞いて驚け!》

 《エルフの里を発見したぞ!

 場所は魔人門から人界に沿った崖の上だ!》


 …………俺が送ったメッセージ見ろよ。


 《件名:助かった!》

 《レイヴンのおかげでかなり楽になった!》


 とりあえずこれでいいか。

 舞虎(まいこ)にも悪い事したなー。

 必死で探したからこそ、俺のメッセージに気付かなかったのかもしれないからな。

 レイヴン(あいつ)の場合は特にな……。


「あれケミナ、デュー君はどこ行った?」

「なんか凄く嬉しそうな顔で「僕より強い人を探してくるっ♪」って言って、どこかに行ってしまいました」


 どいつもこいつも自由だなおい!

 何かのゲームのキャッチフレーズみたいだわ。

 俺の言葉が全て現実になると思ってるんじゃないかあいつ?


 チーン!


 《件名:嘘が下手なんだよ!》

 《アイさんから話を聞いたから知ってるんだよバーカ!!》


 あ、すみませんでした。


 《件名:すまんすまん》

 《ユグドラシルの木が復活したから舞虎(まいこ)さんと一緒にそこまで来てくれ。

 ハーピー達の警護をお願いしたい》


 チチーン!


 今度は誰だよ?


 《件名:凄い事を思いついたぞ》

 《通心ケーブルを使って、常時私とレウスを繋いでいればいつでも会話が出来るじゃないか。

 幸い神の力とやらで(オーラ)量が不足する心配はないのだろう?

 このアイディアはどうだろうか?


 追伸:アンチの居場所をつきとめたぞ》


 おいおい、本文と追伸が逆だろうがビーナスちゃんよ。

 とりあえず返事しとくか。


 《件名:ありがとう》

 《今度休みがとれたらゆっくり話そうなー!


 追伸:アジトに戻って待機、俺と合流後に作戦会議だ》


 って事はもう1件のメッセージはハティーからか。


 《件名:なはははははは!》

 《ハティー様にお任せあれだ!


 追伸:追伸ってなんなのだ?》


 辞書の丸写しは意味がない事がわかったな。

 まだ終わってないだろうけど、反省文とかでいいかもしれない。


 《件名:お疲れさん》

 《帰ってガラードと鬼ごっこでもしてなさい。


 追伸:俺もわからない》




「レウスさんも苦労してるんですね……」

「あぁ、見てたのか?」

「えぇ、覗いてました!」


 ケミナは携帯を黙って見るタイプかもしれんな。

 まぁ俺はオープンだから関係ないけど。


「さて、デュー君には帰りながらメッセージ送るとして……チャッピー!」

「今日は何して遊ぶ!?」


 教育番組の掛け声みたいだな。


「帰るぞー」

「何っ!?」

「チャッピーの背中が恋しくてなー……ほれ、ケミナも」

「チャ、チャッピーさんに乗ると風が気持ち良くって最高なんです!」

「我の広大な背中で、快適な空の旅をお楽しみください!」

「おし帰るぞー」







 はい、アジトでございます!


 会議室にはデュークとレイヴン以外の主だったメンバーが集結しております!

 アークやラーナ、リュウリュウにガディスにパック等など


「少し狭いですねぇ……」

「レウス君、気合いだよ気合い!」

「囚人の私も参加してよろしいのですか?」

「ジョゼフさんなら歓迎ですよ」

「おいおいこんなとこで会議とか無理だろうが!

 息苦しくて死んじまうよ!」

「女性のスペースは相当あるんですから我慢して下さい、パックさん」

「レウス、文字が私を襲ってくるのだ!」

「ハティーは部屋に戻って反省会を続けてて構わんぞ?」

「ぬぅううっ」

「よくここまで集めたねレウス君?」

「もう少しでリュウリュウさんをこき使えますよ」

「なんとも面白そうな楽しみも出来たものだね」

「パパ、デュークおじさんはっ?」

「師匠、父上と連絡がとれないのですっ!」

「アンチさんの住処であるダンジョンの場所は俺が伝えておいたから、決行する時にはここ、もしくはそのダンジョンに現れると思うから安心してくれ」

「まったく、ドンさんと一緒であの人も上官としての意識が足りません!」

「ミナさん、世界最強の男である狂神デュークですよ!

 きっと何かしらの考えがあるんですよ!」


 いや、自由なだけだぞ。


「おいレウス!

 てめぇケミナさんと結婚してるとかデマ拡げて何考えてやがんだ!

 さっさと訂正して回りやがれ!」


 何て謝ろう?


「……五月蠅いな」

「そうかぁ?

 俺にゃちょうど良いがな?」

「すいませんレッドさん、もう少々我慢を……」

「わふ……わふっ!」

「レウス様、ご指示をお願いします」

「レウス、主従の契約をいまこそ果たす時だ」

「そろそろ始めましょっ♪」

「へいへい」

「きゅっきゅいー!!!」


「「「「…………」」」」


「えーっと……それじゃあマサゴさん救出とアンチさん捕縛作戦の作戦会議を始めたいと思います」

「「「「…………」」」」


「ではまず――」



 ガチャッ


「ケント君っ、マサゴさん連れてきたよっ♪」

「……終わりたいと思います」


 な、自由だろ?

記念すべき150回目の投稿がこれですよ。

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