第十二話「実力」
この話には非常に下品な描写が書かれております。
予めご了承くださいm(_ _)m
白髪の美女「セレナ」は勇者だった。
話を聞いてみると、彼女は勇者になったばかりとの事だ。
なんでも勇者ランキング84位だそうだ。
……多いな勇者。
つまりレベル151以上の人間が84人いるという事だ。
強い奴多すぎ。
人間と括ったが、俺みたいなハーフエルフやエルフ、他の種族もいるかもしれない。
「きゅぅ?」
流石に魔物はいないだろう。
戦士ギルドの受付が、戦士ギルド初の魔物戦士って言ってたし、そこから繰り上がるシステムならいないはずだろう。
セレナは83位の奴とランキング戦を行いたくてユグ葉を採りに来たらしい。
中々堅実だな。
俺だったら10位くらいかっとばして挑んでしまいそうだ。
それとも賭ける品を手に入れるのがそんなに難度高いのかしら?
なんて事考えてたら、チャッピーが変な事ぬかした。
「セレナ、ちょっとレウスと戦ってくんね?」
何でそうなる?
そして人にものを頼む態度じゃねーな。
「ほぉ、何故かな?」
「現在のレウスの実力が、人間達のどの辺にいるのか知りたいのだ。
なぁに、勝っても負けても葉はあげよう」
「非公式のランキング戦という訳か……いいだろう」
「……」
どうやら俺の意見は聞いてくれないみたいだ。
聞けよ。
「レウス、魔石は外す様に」
「まじで?」
「外して勝ったらイイコトしてあ・げ・る♪」
糞はスルーだ。
けどスルーしても喜ぶんだよな、あいつ……。
「セレナはそのままで結構」
「なんだと?」
「万全の勇者に挑ませたいだけだ、他意はない」
「ふむ……いいだろう」
俺がよくねぇよ。
……結局俺はユグ剣だけで勝負する事になった。
「それは……ユグドラシルの剣か?」
「えぇ」
「見事な作りだな」
やめろ。
おい、それ以上言うな。
「さぞや名のある者の作品なんだろう」
あーあー、チャッピーが尻尾ブンブンだ。
「我だよ、それ作ったのわれぇ♪」
そんな顔だ。
さて、そろそろ始まりそうだな。
「かかって来なさい」
まぁ、俺が言いたいセリフだけど、やるっきゃねぇか。
戦闘開始!!
セレナに駆け寄る!
セレナは少し驚いた様子で俺の剣を受ける。
力つえぇ!
びくともしないね。
押し返された俺は、後ろに後退。
それを追ってきたセレナは上段から剣を振りおろしてきた。
あっぶっ。
受けた、受けれた。
けど重ぇ……。
と、思ったら腹に衝撃きたこれ。
いってぇ。
右足で腹蹴られた。
下品な戦い方だな。
嘘、負け犬の遠吠えです。
「あらあら、もう下位の勇者位なら戦えるのかしら?」
「まだわからんな、セレナはまだ実力を出してない」
聞こえてるっつーの。
俺の戦意を喪失させる発言するとか、ほんとにこいつら俺の師匠か?
「きゅきゅ!」
スンは可愛い……ぞ! っと。
ほとんどかわされるな。
「頑張れ、レウス!」
あぁ、そういや神速いたのか。
頑張ってるから泣くなよ?
慰めの言葉はもうストックがない。
セレナの攻撃。
この人の力やべぇっ!
攻撃受ける度に態勢が崩される。
右から払ってきた。
受けて、飛ばされる。
頑張って着地!
また上段だ。
右にかわして俺が払う。
セレナが後退してかわす。
俺が追って正中線に斬り上げる。
セレナが身体を左に捻ってかわす。
お、少し良い感じだ、押せてる?
嘘ついた!
捻りざまに斬り払いきたこれ!
屈んでギリ回避!
ってか、試合って言うか命のやりとりじゃんこれ。
この世界には回復魔法なんて便利なもんは……ねーんだ、ぞっ!
おぉ、これも受けられた。
結構息切れしてるな、俺。
なんかバトル漫画っぽいな。
お、相手も少し息切れしてる。
あれ、なんで剣しまうの?
終わり?
終わりか?
「ふむ……私の負けだ」
「そうだな、我もそう思う」
「レウスやる~♪」
え、なんで?
圧倒されてたのは俺だぞ?
「私は力自慢でな……首に着けているスピードマスターの魔石以外は、全てパワー系だ」
通りで重いわけだ。
「それに、このバスタードソード」
かっこいいよな、それ。
「硬化の魔石とスピードマスターが入ってる」
硬化……なんで硬化を入れるんだ?
あぁ、剣の硬度が上がるのか。
それでユグ剣とも張りあえるのか。
そういう使い方もあるんだな。
勉強になる。
さすが勇者。
「これだけ着けてやや私が有利……。
これに対し、レウス君は魔石無しだ。
そのユグドラシルの剣にも魔石が入っていないのか?」
「えぇ、まだ入れてません」
「……とんでもないな」
なるほど、魔石の恩恵フルでも差が出なかった事で、負けを認めたと。
……こういう訳だな。
あれ、俺勇者になれるんじゃね?
「レウス君、君は今何歳かな?」
「11です」
「……2年後、勇者ギルドは荒れるかもな」
なんで2年……?
年齢制限があるのかしら?
聞いてみよう。
「2年?」
「勇者ギルドは成人からしか所属出来ないのだ」
この世界は13歳で成人なのか。
元服ってやつか?
「そうなんですね」
「……勉強になったよ、世の中は広い」
「いえ、ありがとうございました」
こっちのセリフだわ。
皆、つえーんだな。
んー、セレナは勇者になったばかりだしな。
実力的にはどれくらいの序列になるのかわからない。
セレナ先生の今後の活躍にご期待ください。
セレナはこの後少しだけくっちゃべって、ユグ葉を持って帰ってった。
うむ、美人だったな。
……ふむ?
魔石を装備すればレベル150が行けるのか。
今度スンとマカオでユグダンジョン行こう。
危ないからキャスカに黙ってな。
「見事だったなレウス」
「チャッピー大先生のおかげだよ」
「大……われだいせんせえ!☆」
……。
「レウス約束通りイイコトしてあげる♪」
「いらない」
「あぁんもう、いけずぅ♪」
何をするつもりだったのかも聞きたくないな。
「レレレレレレウス!」
俺はそんなレレレのレウスじゃない。
「なんだよ?」
「そ、その……か、かっこ良かったぞ」
ちょっと照れるな。
キャスカはすげー真っ赤だけどな。
マカオがニヤニヤ笑ってる。
今日も良い馬刺し日和だな。
「スン」
「きゅ?」
「今度キャスカ置いて、マカオと三人でユグダンジョン行こうな」
「きゅー!!」
「よしよし」
「きゅぅうう」
天使だ。
キャスカを連れて行けない意味もわかってるみたいだ。
「レウス、内緒話はずるいぞ!」
「キャスカにも今度教えてあげるよ」
「本当かっ!!」
……ちょろいな。
けど、今度もう少し人を疑う事をしろと教えるか。
数日後。
魔石フル装備の俺、スン、懐中電灯兼、護衛役のマカオ。
この三人でユグドラシルダンジョンに潜る。
思った通り、沢山根が張っている。
マカオの光がいらない位明るいな。
スンが少し緊張してる。
周りの気配がそうさせてるのか。
確かに、「100以上になってから」……だからな。
100が適正レベルって訳じゃない。
110かもしれないし、130かもしれない。
なんたって特硬化の魔石……レアである硬化の魔石の最上位魔石だ。
硬化の魔石、上硬化の魔石・特硬化の魔石って感じな。
つまりかなりレアだ。
ハズレない事を祈る。
「スンちゃん大丈夫よ、アタシが付いてるわ♪」
「きゅー!」
因みに今日はユグ剣じゃなくて竜の剣(爪)を持ってきた。
臆病だし仕方ない。
魔石があったらスンにあげるんだぜ。
とか思ってたらキモイのきた。
マカオと比べたらどっちがキモイ? と聞かれたら、マカオと答えるかもしれない。
でかいムカデだ。
身体が赤くてキモイ複数本の脚は黄色い。
顔が二つありますね……ってか見た事あるな?
確かレベル表で、……名前は双頭百足だな。
レベルは111。
レベル表の大体の魔物は把握出来てた。
しかし、こんな大きさだとは思わなかった。
チャッピーの3分の1位の大きさだな。
死なない様に頑張ります!
「スン、左側頼む!」
「きゅ!」
「マカオはスンの後ろでスタンバイ!」
「は~い♪」
左側からスンが駆けてく。
まぁ、地面這ってだけど。
敵の動きは遅い。
俺は右側から跳んで頭を一刀両断……出来ちゃった。
111か……成長しとるな。
スンも凄い。
剣で斬れないと解ると、酸を吐いて首元に損傷を与える。
そしてその損傷部分から剣でちょんぱ。
弱くなった部分なら斬れると判断したのか。
頭良いな。
……うし、終わった。
こいつは確か……左右の頭に付いてる触覚を、合計四本戦士ギルドに持って行けばOKだ。
触覚がキモチワルイ。
虹色です。
なんか水に流れた油みたいな色。
まだ分かれ道に出てないから、切り取ってここに置いて行こう。
双頭百足が出てきた穴から先へ向かう。
少し暗くなったが、まだ大丈夫だ。
なんかいた。
……ゴリラ?
紫色の毛のゴリラだ。
「あれは十手ゴリラね♪」
十手と言わないのか。
大きさは地球のゴリラと変わらないんじゃなかろうか?
肌はピンクだ。
なんかキモイな。
あれは?
……背中から合計8本の手が生えてる。
用途があるのか?
あと普通の手で合計10本だな。
あぁ、だから十手か。
1、2、3、4、5体だな。
「スン」
「きゅ」
「一気に駆けて奇襲だ」
「きゅ」
スンはホント頭が良い。
俺が小声で話すとスンもちゃんと小声になる。
空気を読める奴って最高よ?
戦闘開始!
まず俺が先陣を切る!
すぐ見つかったけど、1匹はいけそう。
なんかゴリラの背中の後ろから石が上がってきた。
なんだ、そんな手の使い方があるのか?
しかし、ここはユグ木のダンジョンだぞ?
石なんてあるわけがな……っ!
うお、あれ糞じゃねぇか!
いや、マカオじゃない、ウン○だ。
かわす!
後ろに飛んでった!
よし、一匹斬った!
どうやら背中に生えてる一番下の手が、ケツから糞をすくい、背中の8本の手で上まで運搬するらしい。
で、普通の手がそれを受取り、奇襲するってのがあいつらの戦法らしい。
……。
全部の手糞まみれじゃねーか?
もっと使い分けろよ。
しかし、あれはほぼ岩だな。
めっちゃ硬そうだ。
あいつらのケツ穴はどうなってるんだ?
俺なら血まみれになるぞ?
まぁ、かわせたし問題ない!
「おいし~♪」
糞が飛んでいった方から糞の声が聞こえてきた。
……。
「スン!」
「きゅきゅ!」
「聞かなかった事にするぞ!」
「きゅきゅきゅ!!」
スンが激しく頷いた。
スンにも糞が飛んでいく。
スンのお腹だけ穴が開いて、通り抜けていった。
どうやらスンも当たりたくない様だ。
まぁ、当然だな。
「ぜつみょ~な味ぃ~♪」
……。
よし、2匹斬った!
スンもスンアタックで一匹ぶっとばした。
頭がくちゃってなった。
あと2匹。
腕振り回してる。
あの手にも触れたくないから……やはり首か。
すぐに背後に回る!
うぉ、一番下の手が糞持ってる!
手首のスナップで投げてきた。
はぇえ!
避けられたけど。
よし、首ちょんぱ!
「きゅっ!」
スンのユグ剣がかちあげられた!
マカオ呼ぶぞ。
「マ……っ!」
うおぉおおお!
スンの腹からランスだか棘みたいなのが飛び出て突き刺さった!
「やる~♪」
「スン、ナイスだ!!」
「きゅぅ!」
可愛い。
「スン、怪我は?」
「きゅきゅ!」
「よし、行こう」
「きゅ~」
「おい、マカ……っ」
俺が最後に避けた糞の方から、カリカリって音が聞こえてくる……。
あぁ、ゴックンって聞こえたわ。
「スン!」
「きゅぅうう!」
「行くぞ!」
「きゅい!」
後ろの方から「あ~美味しかった♪」とか聞こえないから。
2回の戦闘でスンの緊張もほぐれたみたいだ。
あれからしばらく歩いた。
あれ……分かれ道がないな?
敵もほぼいない。
遭遇したのは、最初の双頭百足、それに十手ゴリラ5匹。
その後に見かけたのは双頭百足1匹だけ。
一本道なのか?
「そろそろ最奥かしら?」
マカオがそう言う。
鼻が利くのか、マカオの言う事は大体当たる。
今までのダンジョンがそうだったからな。
で、勘レベルだけど、俺も最近わかる様になってきた。
……そろそろボスだ。
はい、いましたボス。
なんかユグ木の根っこをペロペロ舐めてる……。
ベロンベロンってのが正解かな?
角が2本左右の額から出てて、色白というか白。
目は1つで、舌がめっちゃ長い。
結べそうなくらい長い。
身体が白くて茶色い腰巻。
って事は恥ずかしさはあるのか?
身体は……でかいな、5メートルってとこか。
身長より少し短い槍持ってる。
猫背で天井スレスレだ。
「般若オーガね」
マカオは魔物博士だ。
知らない魔物なんか皆無なんじゃなかろうか?
「ごわす」
喋った……。
「ごわすごわす!」
つまりそれだけってことだな。
驚かせやがって。
あ、やべ、見つかった。
「スン!」
「きゅ!」
「槍に注意しながら足を狙え!」
「きゅぃい!」
「スンは右、俺は左……ゴォー!」
「きゅぃい!」
そして俺達は駆け始めた……。
見かけ倒しってあるもんだな。
なんだあの白いの。
目が一つだから死角ありまくり。
スンが般若オーガの注意引いたら、俺の攻撃がクリーンヒット。
足ちょんぱだ。
そしたら俺の方向くじゃん?
スンの攻撃がヒットだよ。
そしたらスンの方向くじゃん?
俺が首ちょんぱだよ。
……あれだな、多分1対1なら結構手強い感じなんだろうな。
是非時間をかけて進化して、二つ目になる様に祈ってるよ。
さて、最後の部屋に行くかね。