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第百二十九話「飼い主と狂犬」

 え、俺の活躍?

 部隊長のドンは、ドンと構えてましたよ。

 おう、これが言いたかっただけだよ。

 ごめんなさい。


 現在俺の峰打ち指示に従わなかった皆さんのおかげで、怪我をした兵の回復(ヒール)作業に追われております。


「はい、次の方どうぞー」

「あいたたたっ」

「あぁあぁ、こりゃ見事な桂剥きだわ……」


 見てるだけで痛い。


「ミナさん減点です」

「なっ!?」

「はい、おーけーです。

 お大事にどうぞー」

「それくらい軽傷ですよっ」

「命令違反は減点です。

 今日のおやつ抜きです」

「そ、そんな……」

「次の方どうぞー」

「宜しくお願いする……」


 ……やたら豪華な着物を着たおっちゃんだな?

 豹柄の着物で、なかなかにダンディな40歳位のイケメン。

 やや色黒で、優しい印象だが怒ると怖そうで、眉間に皺が寄ってるな。


「あなたは……うわ、これ四肢の腱とか色々アレしてるじゃないすか」

「はっはっはっは、久しぶりに息子にしてやられたよ」

「…………陛下?」

「うむ、リア・ヴォルザーである」

「第9剣士部隊部隊長のドンです」

「いや失礼をしたな。

 あのセバスチャンの喉が詰まりそうな声は、本当に久しぶりであった」

「いえ、こちらこそ大変失礼をしました」

「あの悪ガキの手綱を握れているようで安心したよ」

「きっと、とんでもない悪ガキ……いや、恐ろしい子供だったんでしょうね」

「ふふふふ、よくわかっているじゃないか」

「久しぶりに会っていかがでした?」

「どうやら息子に世界は狭いらしい」

「ごもっともで…………はいおーけーですよ」

「後程、レイジーを連れて謁見の間へ来るがよい」

「はい、お邪魔させて頂きます」

「うむ、では失礼する」


 なかなかに良識人だな。


「いやぁ、斬った斬ったぁっ」


 うん、親子に見えない。


「ドン君、どうだったっ?

 面白いでしょココッ!」

「自分の家を遊園地のように言わないでください。

 ちゃんと峰打ちしましたか?」

「うん、死んだ人はいないはずだよっ」

「峰打ちしてない事はわかりました。

 ……はい、次の人ー」

「ドン、お願いします!」

「なんでキャスカ(スーレ)が現れるんだよ」

「ドンに回復(ヒール)してもらいたくて!」

「自分で使えるだろうに……。

 ってか、お前が怪我したのか?」

「鼻をかみすぎて鼻の頭が少し切れちゃったんだ」

「…………」

「ドン、まだか!」

「はいはい……。

 あ、デュートさん、皆を集合させておいてください」

「了解しましたっ」






 はい、謁見の間でございます!

 (リア)胡坐(あぐら)、俺とデュークも……ミナでさえ胡坐(あぐら)

 昔はこんなだったのか……。

 お姫様とかだったら正座なんだろうが、全員剣士ですからねぇ。

 にしても俺も含めてだが畳が似合わな過ぎるな。

 この世界だけで育ってれば普通に感じるんだろうが、まぁこれはしょうがないか。


「では改めて自己紹介といこう。

 東の国の王、「リア・ヴォルザー」である」

「ではこちらも改めて……。

 お初にお目にかかります陛下、第9剣士部隊部隊長のドンと、その副官デュート、こちらは供の者でございます」

「うむ、息子の帰還は嬉しいものではあるが、本日はどのようなご用件でいらしたのかな?」


 12年ぶりだってのに、喜びが淡泊過ぎるんじゃないか?

 まぁデュークならこんなもんか。

 いや、相手が神者ギルドだからってのがでかいのか?


「本日は、神者ギルドの現状の考えをご申告させて頂きに参りました」

「と、いうと?」

「現状の変化が見られなければ、神者ギルドはこの地を離れ、防衛ラインを下げる……との事です」

「…………やはりそうか。

 駐留している第8剣士部隊の人員だけではどうしようもないという事……理解しておる」

「心中お察しします」

「いや、構わぬよ。

 遅かれ早かれこうなる事はわかっていた」

「さてドン君、どうしようかっ?」

「む、何か策があるのかね?」


 さてどうしたものか……。

 現状こっちにきてる魔物はどうしようもないし、元を辿ると魔界から来てるわけで……。


「やはり魔人門ですかね?」

「うん、それが一番だと思うよっ」

「魔人門を閉じるのか?」

「お言葉ですが、それは不可能です」

「ミナさん、それにはどんな理由が?」

「あの魔人門を根城にしている、おびただしい数の魔物達に殺されてしまいます。

 隙を突いて通り抜けるだけならまだしも、閉じるまでの時間……となると不可能です」

「なんだ、案外簡単そうですね」

「何を馬鹿な……いくらデュート様でもあの数では死んでしまいますっ」

「ドン君、確かにあの数だと僕の手に余ると思うよっ?」

「そこまでっすか……でもまぁ大丈夫でしょう」

「なんなんだよその自信は」

「僕は何をしたらいいですか!」

「それじゃあ、皆さんはしばらくアグニス周辺の魔物討伐をお願いします。

 ミナさんはリュウリュウさんに報告、「ドンが暴走してます」って伝えてくれればいいです」

「止めても聞かないのを「暴走」と言いますから間違っていません」


 オープンでリュウリュウに報告させるように仕向けて、以降もオープンで報告出来るような仕組みを作ってしまえばミナもそのうちきっと……多分な。


「ドン、1人で行くのか!?

 私も頑張れるぞ!」

「んや、これに関しては俺とデュートさんだけの方が良い。

 スーレとアンジーは皆の事を頼む。

 ソージさんはこの国にいる第8剣士部隊の人達に話を通しておいてください。

 ケミナは……」

「おいおい、こそこそ何やってんだよ!」

「オバルスさん連れて来てもらえます?」

「あぁ、魔人門閉じるならオバルスさんですねっ」

「秘密の指示です」

「何で俺らにまで秘密なんだよボケが!」

「そうです、ソージ様もっと言ってやってください!」

「ジェイドさんは……お茶の準備をお願いします」

「はい!」

「本当にやるのかね?」

「仕掛けるだけならタダですからね」

「まぁレイジーがいいと言うなら構わんが……」




 はい、バレないように装備を取りに帰り、完全武装して魔人門近辺まで来ました!

 確かに通り抜けるだけだったら可能みたいだが、目で確認出来る程の数の魔物がうようよと……。

 見た感じサードレベルからトップレベルの魔物が多いな。

 オーバートップレべルの魔物、「コウテイ」と「ダイアモンドトレント」、そして強そうな「ブレイブアンデッド」が数体ってとこだな。


「結構隠れてるものいるから、見つかったら襲ってきますねぇ」

「コツコツやれば倒せると思うけど、今回だけでやるんだったら、ちょっと(オーラ)が足りないと思うよっ?」

「これを身体のどこでも良いので縛ってください」

「これは、(オーラ)で変質させた……紐?」

(オーラ)の譲渡が可能です。

 あと、回復(ヒール)も送れます」

「アハハハハッ!

 なるほど、これならイケるねっ!」

「大きな声出さないでくださいよ、見つかりますぜ?」

「……これでいいかいっ?」

「なんで首につけるんすか……」

「さぁドン君っ、思い切り引っ張ったら僕を殺せるよっ」

「やらないのわかってて言ってるでしょ?」

「うんっ!」

「ったく……まぁこれで人から(オーラ)もらえれば、ユグ木の再生が相当早いかなーと思って作りました。

 ここで役に立つとは思いませんでしたけどね」

「あはは、ドン君を経由すれば誰にでもあげられるんだねっ」

「まぁそういう事です。

 というかこれで大抵のものは送れます」

「へぇ……例えば?」

「剣技を送れます」

「えぇっ!?」

「今、竜角(りゅうかく)送りました。

 修得してなくてもイケルみたいですね」

「……構えは?」

「今、動画送りました」

「動画っ!?」

「はい目閉じて」

「…………こ、これは凄いね」

「もう1つ送りました」

「……あはははっ、これは僕が転んだ時の記憶だねっ」

「便利でしょ?」

「キモチワルイねっ!」

「最高の賛辞ですね」

「これで奥義書用紙がいらなくなったね」

「確かにそうですね」

「これ、なんて剣技なんだいっ?」

「通心ケーブルです」

「ふーん……よくわからないけど、もしかして、これなら召喚獣を抜きとれるんじゃないっ?」

「……ふむ、それは考えてなかったですね。

 後でケミナに使ってみよう」


 もしかしたら俺のとこに来たら進化とかしちゃうんじゃないか?

 いや、何か特別なアイテムとかを持ってたり……ないない。


「あ、という訳で四肢損々(ししそんそん)もらっておきました」

「アハハハハハッ、人の剣技も盗り放題かっ!」

「そうっす、追い剥ぎ狩りしてる時あたりから構想してまして、先日完成したんすよ」

「強奪だねっ」

「人聞き悪いですね。

 盗るのはデュートさんからだけですよ。

 それ以外の人からは、その人の了解の下に盗りますのでご安心を」

「繋がってれば僕からも送れるのかいっ」

「れっつとらい」

「うんっ」

「……なんすかこれ」

「アンジーの小さい頃だよっ」

「アンジーが泣いてて……これ大笑いしてるのデュートさんすか?」

「僕の主観だから声だけでの判断になるけど、そう、僕だよっ」

「何したんすか……」

「お菓子の取り合いをして、僕が勝った時だねっ」


 弱肉強食のルーツはここだったか……。


「それにしても便利だねぇっ」

「出し入れ自在、柔らかくも硬くもなり、太さも色も思いのまま!

 そんな魅力的な大人グッズ、本日稼働!」

「なんかアレだねっ」

「アレっすね」

「さぁ、そろそろ行くかいっ?」

「んじゃ背中に乗ってください」

「へ、飛ぶのかい?」

「何事も用心が肝心ですよ。

 まず上空の敵を掃除して、そこから孤立してる魔物、単独行動してる魔物の順で行きます。

 行き先の指示はお任せします」

「了解しましたっ」




 お掃除開始!!!


 デュークが俺の背中にライドオン!

 いつもの発動!

 上空に群がるハーピー達に突っ込みます!

 デュークが平常運転で斬る斬る斬るぅうっ!

 羽を斬られたハーピーが地上に向かい落ちていく!

 地上や魔人門の上にいる魔物達が俺達に……気付けない!

 俺の速度で動けば目で追える魔物は少ないぞ!

 まぁ未だに簡単な飛行しか出来ないけど、そこはデュークの飛剣とかでなんとかフォロー出来てる!

 更に上空にトップレベルのアサシンワイバーンが7体!

 どうやら気付かれたようです!


「ギャーギャー!」

「ガァアアアッ!」

「シャシャラップ!」


「ここからだねっ」

「最初から引き締めてください」

「あは、すみませんっ」

「あ、一直線で動いてるの気付かれた」

「僕の新技のお披露目だねっ」

「れつごー!」

「はーいっ……暗剣・血空夢無死苦(ちからむなしく)っ」


 血が空になって夢すら見れず苦しんで死ぬそうです!


 チン♪


 ザァーーーーッ


 空から血の雨が降ってきたぞ……。


「……7体いたアサシンワイバーンはどこ行ったんすか」

「今落ちてったよっ♪」


 血が空になるんじゃなく、血が空に舞うのか。

 いや、前者の意味もあるんだろうな。


 おそらくミンチ以上に細切れになってほぼ水分になっちゃう技だろうな。


 うわっ、よくわかったねっ!

 流石ケント君っ!


 …………おい、「」が……括弧がねーよ。


 通心ケーブルのおかげだねっ!

 ねぇケント君っ、僕も神様と話せるのかなっ!?


 ……わろりん。

やっと出来ました。

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