第百二十四話「召集会議2」
「レオナ、「待っていた」とは?」
「い、いや、第9剣士部隊の噂を聞いていたからな。
楽しみにしていたという意味だ」
「はははは、ドン君すまないね!
妹はたまに変な事を口走るんだ!」
「へ、へぇ、妹さんなんですね……」
「うん、仲良くやってくれたまえ!」
「では召喚士の紹介に移ろう。
……ルミにはこの前会っていたね?」
「えぇ」
ここでエイミに会ったとは言わない方が良いか。
「では、エイミから自己紹介をお願いしよう」
「エイミです、ドンさんのお噂はかねがね聞いております。
以後お見知りおきの程を……」
「宜しくお願いします」
「エイミは第6剣士部隊が守護する召喚士なのだよ」
知ってる知ってる。
「へぇ、そんなんですね」
「次、シャミー」
「シャミーといいます、宜しくお願い致します」
シャミー……アーク達が情報集めて名前だけは知ってる。
身長170近い女性で……ハーフエルフか?
見た目、人間の20代後半ってとこか。
目尻が上がっててキツイ印象だが、目は優しい感じだな。
髪が……ないな?
なんか尼さんみたいだ。
眉は茶色で、瞳は黄土色。
唇がプルンプルンで、めっちゃ色っぽいのが好印象です!
「宜しくお願いします」
「彼女は第5剣士部隊が守護している。
そして第4剣士部隊が守護しているのが――」
「リッキーと申します、宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
リッキー……黒髪短髪でちびっこい。
……おそらくハーフドワーフ男。
身長は140センチ程で……目を瞑ってる?
もしかして目が見えないのかしら?
後天性なら俺が治してやれるが……どっかでいきなり治すと混乱してしまうとか聞いた事があるな?
落ち着いたら本人の了承の下、片目ずつ治してあげよう。
断られたら断られただな。
見た目は30歳後半位かしら?
「ふふ、お優しい方のようですね」
「ふふふふ、流石だね」
「優しい気を纏っていますから」
「そんな事がわかるんですか?」
「リッキーは特別だよ」
しかしミルクといい、リッキーといい特別が多いな……?
2000年前はこういう人材いなかったんだけどなぁ。
見かけなかっただけなのか、それとも俺のせいでこうなったのか……。
「そうなんすね」
「さて次は、第3剣士部隊が守護する2名の召喚士だな」
やはりリュウリュウには……あれ、2人?
剣士が8人いて召喚士は10人なら、リュウリュウには「3人」じゃないのか?
「あり、どうなってんだ?」
「ザーボン、後程話す」
「あいよ」
「まずはカエデからだな」
「カエデです、よろしくお願いします」
「宜しくお願いします」
カエデ……黒髪のオバチャンエルフ。
凄いパーマおばちゃんだわ。
見た目は40歳後半位で……地味に皺が目立つな。
身長155センチ前後の、ややグラマーの熟女って感じ。
左頬に大きな黒子があるのが印象的だな。
「カエデさんはリュウリュウの奥さんでもあるんだよ!」
リュウリュウゥウウウッ!?
熟女好みだったのか!?
カエデ……この年齢で2人の子供産んだのかっ?
オバチャンおそるべし……。
「これガディス……」
「はははは、別に良いじゃないか!」
「ガディス様、恥ずかしいですわ」
「カエデさん、気合いだよ!」
何がだ?
「ゴホン、ではミノリ……君の番だ」
「ミノリです、宜しくお願い致します。
ドン様、本日は第9剣士就任、おめでとうございます」
「宜しくお願いします。
ご丁寧にありがとうございます」
ミノリ……見た目30歳後半の……こいつはクォーターエルフか?
茶髪でサイドテールのお母さん風な女性。
身長150センチ前後の細身体型だな。
地味に小皺が目立つ右頬に大きな黒子がある……って、もしかして?
「ミノリさんもリュウリュウさんの奥さんだよ!」
リュウリュウゥウウウッ!?
……うーむ、意外な一面かもしれん。
タジョウマルがこの人の子供なのか?
それとも2人ともこの人の……?
「まったく……会議とは関係がないだろうに……」
「こういった情報も大事だよ、リュウリュウ!」
「ガディス様は相変わらずですね」
「はははは、褒めてもらって光栄ですね!」
褒めてないと思うぞ?
しかし、リュウリュウの周りには和名が集まる仕様なのだろうか?
まぁこれに関しては深く考えなくて良いか。
「さぁ次は……おっと第8剣士部隊をとばしていたね」
「ジョゼフと申します、以後お見知りおきを……」
「宜しくお願いします」
ジョゼフ……人間の……見た目70歳前後の男性だ。
白髪をオールバックでまとめ、眉も白く長い。
髭も……口を囲う様に白い髭を整えてるな。
なんだろう……ざ・執事って感じだな。
背筋もピンと伸びてる細身の……身長175前後ってとこだろう。
「そして第2剣士部隊が守護するレスターだ」
「レスターです、宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
レスター……眼鏡をかけた緑髪のホスト風、触角髪男。
見た目30歳手前のイケメン。
だがしかし、ドワーフ……。
うーむ、非常に残念な要素だな。
魔人門の門番をしていたキィ以外で、囚人服を着てないドワーフは初めて見たかもしれん……。
身長は145センチ前後で体格は普通。
「そして第1剣士部隊が守護するグラマールだ」
「グラマールじゃ、宜しくのぅ」
「宜しくお願いします」
おそらく2000歳近いハーフエルフのばあちゃん。
腰は少し曲がってて……T字型の木製の杖を持ってる。
身長はおそらく145前後
髪は白髪で……ほとんど抜け落ちちゃってる感じだ。
顔も皺だらけで、歯もほとんどないんじゃないか?
よく召喚士になったな。
……もしかして長生きしたかったのかしら?
「そして最後に……本日付で第9剣士部隊が守護担当をする、召喚士の『ケミナ』だ」
わっつはぷん?
リュウリュウの召喚士のおこぼれを頂き、それが……ケミナだと?
いやいや、別人かもしれん。
「ケミナです!
ドン様、宜しくお願いします!」
うん、ケミナ大人バージョンだったわ。
しかし2000年経ってるのにかなり若いぞ?
プリプリの20代前半だ。
身長は相変わらず130センチ台だが、パイが……育っております。
きっと多分おそらくF~G級の大物だ。
問題は年齢だが……もしかしてかなり若いうちから召喚士になったのか?
確かレイヴンは、俺が死んでから数十年で召喚術が出来たとか言ってたから……可能か。
「あ、よろしくおねがいします」
「本人の強い希望でドン君の部隊へ移す事になった」
「へぇ、リュウリュウがケミナを手放すとは思わなかったぜ」
「最初から誰かの守護を担当させようと思ってはいたのだが、ドン君の噂を聞いたケミナがドン君に興味を持ってな。
丁度良かったので問題はない」
「それじゃあケミナさん、これから宜しくお願いします」
「はいっ!」
デュークは平常運転だが、心の奥底で大いに笑ってるに違いない。
いやぁ久しぶりだなぁ……。
そして色々不安だなぁ……。
だがしかし、これでまた召喚獣の1人をゲット出来るぜ!
にしても、ケミナはなんで神者ギルドにいたんだろう?
会議が終わったら聞かないとだな。
「さて、これで全員の挨拶は済んだかな?」
「えぇ、問題ないと思います」
「うむ、ではこのまま本日の議題へ移りたいと思う。
異議のある者はいるかね?」
「リュウリュウ、昨日の一件の事を聞かせろよ」
「むっ……ザーボン、それに関してはターコムが流した速報通りだ。
ガディスからの証言もとれている」
「イマイチ信じられねぇんだよ。
確かにドンも強ぇだろうが、ガディスとの差がありすぎる」
えぇ、部隊長の中だと最下位の実力でしょうし!
「……ふむ、ドン君?」
「えーっと……ガディスさんに勝ったのは偶然……って言っても信じてもらえないと思うので、少しだけ種明かしします」
「少しだけかよ」
「ザーボン、剣技の詳細についての質問はご法度だぞ」
「あー、わかってんよ。
さぁ聞かせろや、ドン」
「使ったのは魔術で、魔術の中身に関しては……「毒」の一種です」
「毒……か」
「確かに僕はあの時、急に意識が遠くなったね」
「それだけか?」
「えぇ、これ以上は秘密です」
「ふむ、では少し考えてみようか……。
魔術ならば……エレン、何かわかるかね?」
エレンは、ザーボンの副官で、魔術の達人で、俺より強いっていう教頭先生タイプのおばちゃんだぞ!
そして、俺とデュークの考えでは…………エレンがおそらく『タジョウマル』だ。
デュークが前に気になったって言ってただろ?
んで、その後に俺が「あの顔はそれ以外でも気付いた感じだな」って言ったのを覚えてるかな?
あの後聞いておいたんだが、デュークの見立てではおそらくアンチより強いって話だ。
多分、身体操作的なアレで変装しているんだろうって事だ。
第0剣士部隊……ジャコールに無理に攻める必要はないから、敵派閥の……警戒心の薄いザーボンに付かせてるんだろう。
もし2人っきりで任務になったら殺せるだろうし、色々弱みを探せそうなポジションでもあるからな。
おそらく言い訳も完璧だろう。
ホントあのおっちゃん、油断も隙もねぇわ。
「はい、周囲の意見から「何も見えなかった」との情報がありました。
これに対しドン様の「毒」という情報……。
おそらく空気中に目に見えない毒素をばら撒いたのかと思われます」
うぉおおっ、ほとんど正解じゃねーかっ。
毒ってヒント与えなきゃ良かったけど、対策まではわかんないだろうな。
……え、わからないよね?
「問題はガディス様に傷がなかったという事です」
そうそう、毒は傷口から入るって認識が、一般常識っていう文化レベルですから。
「仮定ではありますが……ガディス様がそれを吸い込んだ事によるのが原因ではないかと……」
はい、バレました。
さようなら、俺の勝利。
「だとするならば、その魔術を出した段階で、体内に取り込まないような気移動をすれば?」
「はい、防ぐ事が可能でしょう」
「しかし、目に見えない毒の生成など……出来るものなのか?」
「ほとんど目に見えない……という毒ならば私にも可能です」
「なるほど、ドン君はエレンに似たタイプだという事か」
「いやいや、剣の腕も中々だったよ!」
「ふふふふ、類稀な天才というやつか」
ケミナが当然だって顔をしていらっしゃる。
そして平常運転に見えるデュークは、笑いを堪えているに違いない。
「さて、ザーボンにターコム……これで良いかな?」
「あぁ、魔術もバカに出来ねぇってこったな」
「ぅ私も納得であーりまーす!」
「うむ、それでは会議に移る!」
お待たせしました。その8