第百二十三話「召集会議」
「えーっと……普段夜は何をやってるんです?」
「外壁の補修工事をやっておりやす!」
「まぁまだ夕方ですし、それも可能ですが……今日は皆さんの収容施設に対する要望を聞きたいと思います」
「要望……ですかい?」
「ここで暮らしてて、あった方が良いと思うモノ、なくて困ってるモノとかあれば言って下さい。
出来るだけ善処したいと思ってるので……あ、でも個人的に欲しい物とかはダメですよ?」
「へ、へぇ……」
「あくまで人間らしく生活をする為に必要なモノです」
「……そうっすねぇ……便所の数が少ないですかね?」
「おぉ、そういうのです!」
「でしたら……風呂あがりに使う手拭いが少ないっすね」
「椅子の数は足りてますが机が少ないです」
「図書室が欲しいです」
「食事のレパートリーを――」
ふむふむ……確かにそういった問題も起きてくるだろうな。
ウェポンエンチャントやって金稼いどくか。
「では現段階で可能な申告のみ消化しちゃいますか。
手拭いは後程アンジーに買って来てもらいます。
机に関しても知人を当たってみるので、もうしばらくお待ちください。
便所については業者に頼んでおきます。
知識を得る事は後の世の為、非常に良い事です。
なので、どういった本が欲しいか等は皆で話し合って決めておいてください。
食事についても少し考えてみます」
「「「「ありがとうございやす!」」」」
収容施設についてはこんなとこで良いだろう。
その都度色々聞いていけば、徐々に改善出来るはずだ。
罪人を甘やかすのは良くないかもしれないが、風呂はどうだかわからんが、普通の生活位は出来んとダメだろう。
大事なのは更生させる事だからな。
こいつらに関してはもう出来てるようなもんだけど……。
はい、何事も無く夜勤が終了しました!
テンダーと交代して、神エヴァンス城の部隊長室までやってきました!
時刻は朝の5時半。
会議は12時からだから出来るだけ寝ておくか。
ガチャっとな。
「あ、やっと戻って来やがったな」
「……なんでソージさんがここにいるんすか?」
「カギがかかってなかったから入ったまでだ、文句あっか?」
「いえ、別にないっすけど」
「おし、付いてこい」
「どこっすか?」
「レッドさんが呼んでるんだよボケッ」
「はいはい」
はい、エヴァンス北の平原でございます。
むぅ……寝る時間あるのかしら?
「……来たか」
「レッドさん眠いです」
「……すまん」
「で、どうしたんです?」
それにもう1人いるな?
「ソージ、ご苦労だった」
「ふん、もう部下じゃないんですから、今後は勘弁して欲しいものですね」
ヒュン
以上、ソージのパシリ編でした。
「……メッセージで良かったんじゃないんですか?」
「いや……」
やはり神者ギルドは、ヒューマンカードの情報を読み取れるのか?
流石に難しいと思うんだが……まぁ、用心したって事なんだろう。
「そこに隠れてる方は?」
「流石に気付いたか……」
「き……気付かれてしまいました」
チャムより小さい女の子が出てきたぞ。
身長120センチってとこか。
アークみたいな銀髪でオカッパ頭。
白い小さなローブで包まれてる。
ほっぺがプニプニしてそうで……つねったり突ついたりしてみたいかもしれん。
子供っぽい顔だが雰囲気は大人って感じ。
多分ハーフエルフだな。
「初めまして、ドンです」
「エ、エイミといいます」
「第6剣士部隊が守護する召喚士だ」
「わお」
更にわお。
……え、この子が?
この見た目7〜8歳のこの女の子が、どうやって1000年前に召喚獣を取り込んだんだ?
実は結構歳がいってるのか?
「……エイミにはお前の事を話してある」
「話しても大丈夫と判断したからですね?」
「無論だ」
「……改めてですが、レウスです。
よろしくお願いします」
「心配しなくても私から周りに話す事はありません。
…………しかし」
「しかし?」
「あなたがあの「レウス・コンクルード」だと信じたわけではありません」
「だそうだ」
「だそうだって……んじゃどうして呼んだんです?」
「……召喚獣ならば知っているはずだ」
あー、そういう……。
え、見せてくれるんすか?
「少々お待ちください」
おぉ、本当に出してくれるのか!
なんか小さい気の球体だな?
俺くらいの高さ?
もしかして…………。
「オマタセシマシタゴシュジンサマ」
「伝説の霊獣、『騏驎』です」
知ってる知ってる。
むぅ、益々わからんな?
マカオって言ったら相当な気量だが……って事は、そんなに瀕死まで追い込まれたのか。
「騏驎、この人を知っていますか?」
「…………ハい」
「……何者ですか?」
「……イ……イいオとこデす」
「……はい?」
「……あら?」
…………。
お前も「視認」だけかよ。
「どうしたのです騏驎っ?」
「やだもうっ、イイ男だと思ったらレウスじゃな~い♪
何してるのよこんな所でっ?
もしかしてまたアタシといかがわしい事でもしようっての~?
も~許しちゃうっ♪
さっ抱いて~♪」
も、もううざい……。
こいつは一番最後で良かったんじゃないか?
「「…………」」
「「また」って何だよ、お前とは一度もそんな関係になった覚えはないぞ、「マカオ」」
「もう、いけず~♪
でも、やっぱり生き返ったのね?」
「あぁ、あの時から1995年後っていう変なおまけ付きだがな」
「あぁんもう、懐かしいわね~」
「「……」」
「あ、こちら神者ギルドの第6剣士のレッドさんと召喚士のエイミさんね」
「……少し怖い目だけど、中々良い男じゃな~い。
エイミは、魂で繋がってたからわかるわよ。
一応初めましてって事で……マカオよ、ヨロシクネ~♪」
良い感じに2人の顔がひくついていらっしゃる。
伝説の霊獣様がこんなんじゃ、誰でもそう思うかもしれんがな。
とりあえず今夜は馬刺し食おう。
「……マ、マカオ?」
「レウスがアタシに名前を付けてくれたのよ~♪
そういえば他の皆は~?」
「皆お前みたいに捕まってるよ。
あぁ、チャッピーだけは目覚めてる」
「……チャッピーとは、もしやルミさんの召喚獣ですか?」
「えぇ、この前コイツみたいに俺を見ただけで目覚めましたよ。
おそらくエイミさんも、もうマカオを体内に戻す事は出来ないでしょう」
「そ、そんなっ!?」
「エイミ、やってみろ」
「え、えぇ!」
「……レウスレウス~、あの人、お相手とかいないのかしら~?」
「あの人ってレッドさんの事か?」
「…………くっ」
「そうよ~、見れば見る程アリな顔だわ~♪」
「やめとけよ、斬られるぞ?」
「それも愛のカタチの一つよね!」
「……むぅー!」
「そんなんが愛だったら、勇者ギルドで頻繁に愛が転がってた事になるぞ」
「レウス、あとで背中に「彼氏募集中」って書いて頂戴♪」
「むぅううぅっ!」
「断固拒否する」
「冗談よ冗談~…………レウスでもいいのよ?」
「きぃいいいっ!」
「ありえないな」
「うふふふふ、本当に「レウス」なのね♪」
「はぁはぁはぁはぁ……ふっ!」
「お久しぶり」
「お久しぶり~♪」
「だ、駄目ですっ」
「だからそう言ったでしょう」
「レウスは嘘は言わないわよ~」
「あぁ、今かくかくしかじかでこういう訳だからドンって名乗ってるんだ」
「へぇ~、それじゃアタシもしばらくエイミと行動した方が良さそうね♪」
「ひっ」
「話が早くて助かるが、元宿主様に怖がられてるぞ?」
「あら、恋の悩みとか相談に乗った仲なんだけど、おかしいわね?」
「お、覚えてるのですかっ!?」
なんか面白そうだな。
「相手は誰だったかしら?」
「いいいい言わないでください!」
この場で言って欲しくないって事は……もしかしてレッドか?
いや、単に自分の耳で聞きたくないってだけかもしれんが……。
「……確定か」
「信じて頂けたようで何よりです」
「ではやはり狂神も?」
「そうですよ」
「やだ、デュークちゃんも来てるの~?」
「あぁ、転生したんだ」
「うふふふ、早く会いたいわ~」
「コ、コホンッ、ああああなたが「レウス・コンクルード」だという事はわかりました。
あなたが平和を謳うのなら、それに協力しようではありませんか」
「ありがとうございます」
「ドン、詳しい話はまた今度だ。
今は帰って休むと良い……」
「えぇ、そうします」
「じゃあドンまたね~♪」
「おう、あんまり迷惑かけるんじゃないぞ」
「は~い♪」
既に迷惑そうな顔をしてるエイミの顔を…………俺は忘れない。
はい、家に戻って参りましてー……おやすみ!
そしておはよう!
少し眠いが4時間程眠れたぞ。
時刻は11時!
準備はバッチリ!
さぁ、気合い入れて向かいますか!
さて、結局顔を知らないのは8人の召喚士と、レオナかな?
はい、まずはデュークを迎えにきました!
「おはよう、よく寝れたかいっ?」
「マカオと会いましたよ」
「あははは、それは何よりだねっ」
「あまり驚きませんね?」
「ドン君と付き合ってたら大抵の驚きには慣れちゃうよっ」
「起こせたので……後9人です」
「うん、頑張ろうねっ」
「へい、おやぶん!」
「あはははは、さぁ行こうかっ!」
はい、神エヴァンス城でございます!
1階の会議室へ…………着きました!
大きな木製の扉の前に……ありゃ第3剣士部隊の副官、サイ君だね。
ミナ並にお堅い方でございます。
「お待ちしておりました、ドン様!」
因みに他の部隊の人からの「様」付けに対しては何も言ってないぞ。
流石に部隊毎で教えてる事には口出し出来ないわ。
「お待たせしたようで申し訳ありません」
「あ、お待ちしておりません!」
「あ、はい」
「では、こちらへどうぞ!」
ギィィイイ……。
「お待たせしました、第9剣士のドンです!」
「副官のデュートですっ」
ほぉ、円卓ですな。
「ドン君、そこへ掛けてくれたまえ。
副官は申し訳ないが、部隊長の後ろで控えていてくれ」
「「はい」」
はい、おさらいですよ!
第1剣士部隊部隊長のガディスと副官のティック。
第2剣士部隊部隊長のアンチと副官のサーユ。
第3剣士部隊部隊長のリュウリュウと副官のサイ。
第4剣士部隊部隊長のターコムと副官のミルク。
第5剣士部隊部隊長のザーボンと副官のエレン。
第6剣士部隊部隊長のレッドと副官? の緊張しまくってるグリード。
第7剣士部隊部隊長のピエールと副官のキングス。
そして、第8剣士部隊副官のリンジと……黒いローブをフードごと被ってて顔は見えないレオナ。
口元を見た感じ……かなり若いな?
そして、召喚士のルミとエイミ。
残りの8人も皆白いローブを羽織ってる。
「さて、少し早いが全員集まったようなので始めようか」
「今日は楽しい会議になりそうだね!」
「俺は昨日の件が気になるぜ?」
「ザーボン君の言う通り、私も気になりますよぉ!」
「ターコム、少しは静かになさい」
「かはははは、アンチさん、これは癖でしてぇ」
「……始めないのか?」
「夕方には任務があるから早い方が嬉しいね」
「…………」
なんかレオナらしき人物から凄い視線が……。
「では急ぐとしよう。
早速だが、第9剣士のドン君の自己紹介をお願いしようか」
あ、カンペ用意してきてないわ。
とりあえず普通に行こうか。
「本日はこの様な場を設けて頂き感謝します。
この度、第9剣士部隊の部隊長に就任したドンと申します。
より良い組織作り、より良い世界にするため精進していきたいと思います。
未熟な故、皆様に迷惑を掛けてしまうかもしれませんが、何卒宜しくお願いします」
「ははははは、年に合わない挨拶だね、ドン君!」
「さて、各部隊の者との挨拶は済んでいるかね?」
「面識がないのはレオナさんだけですかね?」
「うむ、ではレオナ」
「……レ、レオナだ。
…………待っていたぞ」
……え、なんだって?
お待たせしました。その7