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第百二十一話「へんほーひゅう了!!」

 コンコンッ


「入りたまえ」

「失礼します!」


 ガチャ


「待たせたねドン君」

「いえ、俺も落ち着いた頃だったので大丈夫です」

「さて、何から話したものかね……」

「敵に既に戦う意思がなかった……というのは言い過ぎかもしれませんが、良好関係になれば良いなくらいには思ってるみたいですよ?」

「ではその事から話そうか」

「お願いします」

「ドン君、悪とは何かね?」

「一概には言えませんが、大半の人間が悪と認識したものが悪だと思います」

「なるほど、その年にしてわかっているようだな」

「悪とは人間が決めるものです」

「そう、善と思ったモノが悪になり、悪と思ったモノが善になる事等ままある事だ。

 一般的に言う悪、例えばその悪だけの世界で善をすれば、それは悪にとっての悪になる。

 善悪とは人間のエゴで決まるのだよ」

「自然界にはそんなもの存在しませんからね」

「その通りだ。

 しかし我らは人間……人間は善で動かねばならん……とは言わないが、善の道しるべとして悪は必ず必要なのだよ」

「……それが彼等だと?」

「話が早くて助かるね」

「しかしでっち上げは良くないと思いますが?」

「ふふふ、だからこそ一番の秘匿としてたのだが……神者ギルドに入りたての新人に見破られてしまった」

「追及するつもりはありませんよ」

「ほぉ?」

「ただ、引き際が肝心だと思います。

 リュウリュウさんもそろそろ引こうと思ってたのでは?」

「……君は私の心が読めるのかね?」

「そっちの方がリュウリュウさんにとって都合が良いですから」

「ふむ、それはどうしてかな?」

「俺には利用価値があると思いますからね」

「はっはっはっはっは、いや参った!

 うむ、正直に白状しよう……私は君が欲しいのだ」

「デュートさんの間違いでは?」

「無論そうだが、君を手に入れればセットで付いてきそうだからな」

「可能性は高いですね」

「さぁ質問だ……いつ気付いたのかね?」

「ミナさんを俺に付けた時ですね。

 俺が不審で不信な奴なら殺す……逆に有用性のある奴なら取り込むと、そう思いました」

「うむ、正解だね。

 どうやらミナの監視は最初からバレていたようだね」

「毎日のようにリュウリュウさんに報告してましたからね」

「ははははは、尾けられていたか。

 つくづく侮れないな君は」

「そんな事ありますよ」

「ふふふふ、気持ちの良いものだね」

「で、俺をどうするつもりなんですか?」

「どうにか出来るとは思ってないよ。

 ドン君がどうにかなった時、神者ギルドが崩壊する事がわかった」

「どういう事です?」

「先程……そう、君が来る直前にデュート君が来たのだよ」

「あらま」

「「ドン君に何かあったら殺す」……そう言って出て行ったよ。

 ふふふ、この私が部屋に侵入されて気付かないのだよ?

 おそらくガディスでさえ気付かないだろう。

 先日会った時と明らかに別人だったよ」


 そう、別神なんです。


「そうですか……ホントあの人は神出鬼没ですね」

「やはり君の意思では無かったと?」

「意思があったら即行で乗っ取ってますよ」

「ふふふ、それもそうだ」

「というわけでソージさんの件、なんとかならないですかね?」

「これで第0剣士部隊の増強も必要無くなったからな。

 図らずともドン君の思い通りになったわけだ」

「第0剣士部隊は出来るだけ休ませてあげてください。

 そして落ち着いたら第7剣士部隊の助けとしてください」

「ほぉ、それは名案だな。

 がしかし、それにはまだ時間が必要だな」

「ゆっくりで構いませんよ」

「ミナはどうするかね?」

「あれでいて結構可愛いところもあるんです。

 今夜皆で食事に行く予定なんですよ」

「ほぉ、あのミナと……」

「なので暫くは今のままで良いでしょう」

「全て……でいいのかね?」

「急に報告をやめろって言われたら彼女は混乱しそうなので」

「なるほど、よくわかっているじゃないか」

「では明後日を楽しみにしています」

「うむ、とても有益な時間だったよ」

「失礼しました」


 パタンッ


 ふむ、順調に行き過ぎてる感じがしないでもない。

 俺としては嬉しい限りだが、物語的に盛り上がりに欠けるんじゃないか?

 しかし、これが平常運転でもあるとも言えなくもない。

 まぁ何にせよ用心するに越した事はないか。



 はい、部隊長室(マイルーム)です!


「ドンさん、お帰りなさいっ!」

「おかえりなさいませ」

「密会してきました」

「はい、存じております」

「密会してきました!」

「はい、存じております」

「…………」


 何で密会内容聞かないんだよ。

 たまにどっか抜けてるよなミナって。

 まぁそこが可愛いとこでもあるか……ん?


 ガチャッ


「あら、お帰りドン♪」

「アンジーさん、部隊長の部屋にノック無しに入るのはどうかと思います」


 ジェイドは掃除とかで入室を許可してるけど、常時部屋に居座ってるミナ(お前)にも似た様な事が言えるんだぞ?


「失礼しましたー♪」

「以後気をつける様にしてください」

「はーい♪」

「アンジー、この後皆で飯行くんだがどうする?」

「勿論行くわよっ」

「おし、少し早いけどもう出ちゃうか」


 ガチャッ


「…………」


 何でソージが入って来るんだ?


「ソージ様?」


 ノックの話はしないのかミナちゃん?


「どうしたんすかソージさん」

「…………になった」

「聞こえないっす」

「……ここになった」

「はい、もう一踏ん張り」

「新配属先がここになったって言ってんだよぉ!!」


 ……わろりん。


「……リュウリュウさんの指示ですか?」

「そういうこった。

 何か知んねぇけど第0への転属が急遽変更になったんでな」


 ふむ、真実は知らない方が良さそうだな。


「……あの化け物はいねぇのか?」

「この後会いに行く予定です」

「そうか…………言っておくが俺はてめぇの下なんか真っ平ごめんだかんな!」

「対等でかまいませんよ。

 その代わり形式上の指示には従って頂きます」

「ふんっ」

「逆らった場合はデュートさんとの強制デート権利が付いてきますから」

「わーったよ!」

「ところで、今から皆で飯食いに行くんですがどうします?」

「……ケーキか?」


 それはデザートとかのカテゴリだな。


「そうですね……ジェイド君、ご飯もデザートも美味しいお店を知ってますか?」

「ちょっとお値段が張ってもいいのなら知ってますよ!」

「構いません、今日は俺のおごりです」

「エヴァンスの中央区に「ウマ☆アマレストラン」ってお店がありますよ!」


 ……世界を支配してるのは神者ギルドではなく、ゴンさんの意思かもしれんな?


「それじゃそこに行きましょうか」

「「はい」」

「はーいっ」

「……ふん!」




 ようやく落ち着けた感じだな。


 はい、ウマ☆アマレストランに到着しました!


「ソ、ソージさん、何で生クリームしか食べないんですかっ?」

「うるせぇなガキ、さっさとそこの砂糖が入った瓶をとりやがれ!」

「は、はいぃ!」

「ドン、はいアーンッ♪」

「あーん」

「ソ、ソージさん、何で生クリームをビニール袋に詰めてるんですかっ?」

「うるせぇな、さっさとウェイターにタッパ頼みやがれ!」

「は、はいぃ!」

「このイチゴショートケーキ……酸味と甘味の絶妙なバランス、生クリームのなめらかな舌触り、程よい甘さ、綿の様なスポンジの弾力と断層毎にある――」

「ミナ、酸味なんて外道だ!」

「なっ、ソージ様、あなたこそ道に外れてるかと存じますがっ?」

「ドン、はいアーンッ♪」

「あーん」

「わかってねぇな、俺の1日は練乳で始まりカラメルで終わるんだよ!」

「偏食が過ぎますっ、いつかお体を壊されますよ!」

「ソ、ソージさん、何でお冷の中に砂糖を入れてるんですかっ?」

「おっと間違えたぜ」

「何で砂糖の中にお冷を入れてるんですかっ!?」

「うぅ、それを見てると胸焼けがします……」

「はん、修行が足りねぇんだよ!」

「ドン、はいアーンッ♪」

「あーん」








「お、お会計が……127万6400レンジでございます」


 テーブルの上に生クリームのないスポンジが山積みなのは、俺の目の錯覚ではないはずだ。

 ソージがいなければ半額以下で済んだんじゃないか?

 ふむ……ある意味トルソと仲良くなれるんじゃないだろうか?





「んじゃ、俺は帰んぜ」

「この後、収容施設で2次会ですけど?」

「……アイスか?」


 …………。





 はい、収容施設です。

 と言ってもコンクリの外壁で覆われた長方形型の建物ですけどね。

 んで、一応グラウンドみたいな広場も併設されてるぞ。

 あぁ、テンダーはここに住んでるんだ。

 囚人の部屋は5人で1部屋、一応コンクリと鉄格子で覆われているが、現在鉄格子の扉には鍵をかけていない。

 どう考えても無駄だからな。

 だがしかし、やはりテンダーの指導が良いようで逆らう者は皆無だ。




 プゥーンップゥーンップゥーンップゥーンッ


 非常事態アラートが……。


『ぴんぽーんぱんぽーんっ♪

 全囚人に伝えますっ。

 所長の厚意によりご飯と飲み物の差し入れが届きましたっ♪

 各自椅子を持ってグラウンドに集合してくださいっ♪』


「……こんな設備あったのか」

「これ1回やってみたかったんだよねっ」

「うーん、確かにやってみたいかもしれないです」

「僕もやってみたいですぅ!」

「ドンさん、ジェイド君……これはむやみやたらと使う物ではありませんよ」

「私は昨晩使ったわっ♪」


 ……何に使ったんだ?


「おら、さっさと行くぞ部隊長さんよ」

「な、なんでテンダーさんがこんなとこいるんすか!?」

「おうソージ、元気そうじゃねーか」

「ま、まさかあなたも第9剣士部隊……?」

「察しが良いな、お前もそうなったなら今度看守の仕事がまわってくんぞ」

「は、はぁ……」



 はい、グラウンドです!


「「「「所長、お疲れ様ですっ!!」」」」

「ありがとうございます。

 皆さんもお疲れ様です」

「「「「差し入れありがとうございやすっ!!」」」」

「気にせず食べちゃってください。

 足りなかったら買ってくるんで言ってくださいね」

「「「「ありがとうございやすっ!!」」」」


「……凄いっすね」

「あぁん?

 こいつらならいつもこんなもんだぜ?」

「だと思ったからテンダーさんを凄いと言いました」

「はっはっはっは、あんがとよ!」

「ドンッ、てめぇアイスがねぇじゃねぇか!」

「あったかい物と一緒に買うと溶けちゃうから買ってないですよ?」

「じゃあさっさと買ってこいやっ!」

「あ、あの、僕が買ってきます!」

「いや、食べたい人が買いに行くべきです。

 食べたければ買ってきていいですよ?

 領収書を貰ってくれば後程送金します」

「くそがぁ……韋駄天ソージ様を舐めんなよっ!」


 ヒュンッ


 行ってらっしゃい。


「ほぉ、あいつが自分の飯を買いに行くとは驚きだな」

「面白い性格してますよね」

「お前もな?」

「デュートさんもね?」

「ミナちゃんもねっ♪」

「ジェ、ジェ、ジェイド君もね?」

「あはは、アンジーさんもですね?」

「テンダーさんもかしらっ?」

「ったく、変な部隊だぜ……」

「さぁ飯だ飯、皆で食いましょう!」


「「「「おぉおおおっ!!」」」」




「ドン、はいアーンッ♪」

「あーん」

「ドン君っ、はいアーンッ♪」

「いや、いらないです」

「ドン、はいアーンッ♪」

「あーん」

「ドン君っ、はいアーンッ♪」

「………………あーん」

「アハハハハハハハッ!」

「腹抱えて笑うなら最初からやらないで下さいよ」

「ソージ、酒はねぇのか!?」

「そこのバニラアイスが溶けてるので飲むとうまいすよ!」

「こんなドロドロの甘ったるいもんなんか飲めるかボケッ!」

「あー、今、糖に対する侮辱しましたね!」

「いいから酒買ってこいよ!」

「自分で買いに行きゃいいっしょっ!

 こっちは今チョコレート(あぶ)ってて忙しいんですよ!」


 垂れてる垂れてる。


「てめぇ俺に対して強気とは、中々良い度胸じゃねぇか!」

「序列は3位まで、今、俺とテンダーさんは平隊員ですよ!」

「ほぉ、良い度胸だ……剣を抜け……」

「はんっ、いつまでも昔の俺じゃないって事を見せてやりますよ!」

「クソガキがぁ……」

「上等っすよ!」

「ドン君っ、はいアーンッ♪」

「………………あーん」

「アハハハハハハハッ!」



 皆が端っこに避難して勝手に戦闘開始!!


 ソージとテンダーが同時にダッシュー。

 ソージが2連飛剣を出すー。

 ソージがそれを追い越すー。

 テンダーとソージが衝突して鍔迫り合いー。

 一瞬でソージが力を抜きしゃがみこむー。

 ソージの背後に迫った2連飛剣をソージがかわし、それがテンダーに襲い掛かるー。

 テンダーが瞬時に2連飛剣をは弾き上げるー。

 ソージがテンダーの股下を潜り抜けながら斬り上げるー。

 テンダーが前方に跳び回避ー。

 テンダー、すぐさま反転してソージに飛び掛かるー。


「ドン、はいアーンッ♪」

「あーん」


 んんふーが、ほーじほはははほひひへへはふうー。


「いってぇえええっ!」

「へん、どうだ俺様のゲンコツは!

 久しぶりに思い出したか!?」


 へんほーひゅう了!!


 ゲプッ。

 あ、ごめんなさい。

んんふーが、ほーじほはははほひひへへはふうー。

⇒テンダーが、ソージの頭を右手で殴るー。

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