第百十九話「後2日」
はい、おはようございます。
明後日は招集会議でございます!
あの後リュウリュウからの連絡がなかった……ので、こちらから送ってみました!
《件名:昨日の夜》
《デュートさんとジャコールに遊びに行ってきました。
ツーダンって人と少しお話して帰ってきましたのでご安心を!》
ふむ……怒るかしら?
怒られたら謝ろう、なんせ俺は子供……じゃないや。
そういえばとっくに子供編は終わってたな。
まぁリュウリュウの事だから――
チーン!
《件名:報告は受けているが……》
《君なりに考えて行動したと認識はしている。
がしかし、今後は一言言ってくれると助かる》
こう返ってくるって事はわかってましたけどね。
黙っているよりかはオープンの方が行動しやすい。
そう、ムッツリよりオープンの方が楽なのだよ?
《件名:以後気をつけます》
《ご報告に行った方が宜しいでしょうか?》
さて、どうでるか……。
チーン!
《件名:本日は》
《忙しいが、夜なら空いているので、その時また連絡しよう》
忙しいのは事実だろうが、神者ギルド内にずっと居続けて会えないってのはおかしなもんだ。
おそらく会えない程じゃないだろうが…………もしかしたら昨日の詳しい話を聞いておくのかしら?
昨日俺達を囲んでた奴の中に諜報員でもいたんだろうか?
まぁ、そうじゃないと報告自体は聞けないだろうしな。
《件名:わかりました》
《ご連絡をお待ちします》
さて、現在アジトのスンの部屋で大天使と一緒にいるんですが……今日は何しよう?
あぁ、そういや対病気用の剣技について考えてみようと思ってたんだ。
「……きゅ、きゅぃい?」
「あぁ、スンおはよう」
「きゅぅいーっ」
「うん、大天使」
「きゅ?」
「えーっと、病気を治す事の出来る剣技が出来ないかなーってな」
「きゅーきゅきゅぅ?」
「ユグちゃんを治すにしても時間がかかるだろうから、その代用的な剣技があれば……便利だろ?」
「きゅいー♪」
「んー、何かアイディアないもんかな」
「きゅっきゅいー」
《レイヴンさんに聞いてみたら?》
「おぉ、魔術マスターか。
気の変質……確かにレイヴンが適任かもな」
「きゅい!」
って事でレイヴンの部屋にやって参りました。
残念ながらスンは皆の修行に付き合わなくちゃいけないから、途中で別れたぞ。
「――という訳なんだが、いかがでっしゃろ?」
「ふむ……病気の治療か。
確かに昔考えた事はあるが……まず無理だろうな」
「何でですか先生!」
「ふははははは、気の変質にも限界があるからだ!」
先生って一言で態度変わるもんだなおい。
黒い竜や銀色の狼と同じかお前は。
「そんじゃ気の変質だけ教えてくれ」
……チーン!
「ほれ」
「おい、奥義書用紙使うのかよ……」
「お前には教えておいた方が良いと思ったからだ」
「ったく、勿体ねぇな」
「ならばそれを有益にしてみせろ。
それがお前の仕事だ」
「わーったよ……んじゃ、ありがとな」
「ふん、また来い」
またスンの部屋でございます。
あぁ、俺の部屋はないんだ。
ダンジョンといっても部屋の数には限りがあるからな。
気の変質か……難しそうだがとりあえずやってみるか。
まずはイメージし易いものから……火とか水かしら?
とりあえず熱い熱いイメージを指先から…………。
ボォッ
おぉ、出た出た。
………………怖いから外出てやるか。
はい、外でございます!
ファンネルとキャスカが修行しております!
スンとマイガーも戦ってますな。
離れた場所ではポチとゴチョウがパトロール中。
そして俺の近くには……リミとケーツが!
すっごい久しぶりの登場だな。
「何してんだよレウス?」
「魔術の勉強中だ」
「あれ、前にレウスさんが、レウスさん達には必要ないとか言ってませんでしたっけ?」
「あぁ、戦闘用じゃなく、平和用の魔術を研究しようと思ってだな」
「へぇー、お前ホントに色々考えてんな」
「全部やりかけだから、全てをまとめるには時間かかるだろうけどな」
「それでも凄いと思いますっ!」
「はははは、ありがとな」
「どっ、どういたしまして……」
うむ、エミーダの顔でこれは違和感があるが…………やはり可愛いな。
「で、今は初級編って事でこうやって火を出してんだ」
「「…………初級……編?」」
「へ?」
「大きさはともかく魔術の制止維持は上級者でも無理よ、パパッ」
「ラーナ、来たのか。
制止維持が出来ないって……魔術は普通の剣技と違って、放ったら遠隔操作出来ないのか?」
「そういう事よっ。
もうっ、ホント何なのよパパはっ!」
つまり、正にガス的なアレが出来ないって事か。
ふむ、気の変質か……。
考えようによっては便利かもしれんな。
「ちょっと遊んでみるか」
「「「?」」」
「科学の時間だ」
「かが……く?」
「変質ってのは気で別の物質や液体を作れるって事だから、イメージさえ出来れば……」
そう、ミサイルだって!
がしかし……ミサイルが何で出来てるかなんて知らねぇんだよな。
だからって火薬をイメージするのは芸がない。
はい、という事で、本日ご案内するのはこちら!
直径10メートル程の気で包んだ……ガスでございます。
可燃性のものをイメージしてそれを気で閉じ込める。
1人暮らしで身近なのはプロパンガスとかかしら?
まぁ気体で可燃性ならいけんべって事で作ってみました!
「パパ……これ何?」
「皆ー、離れてろー!!」
「きゅい?」
「何でござるか?」
「ドウス、どうしたんだ!」
「……レウス様?」
「いっくぞー!」
ヒュウ…………。
このタイミングで遠隔操作だ!
ガス以外の気を火に変質させる!
カッ……ゴゴゴゴゴゴッ!!
「「「なっ!?」」」
「……ふむ、何か思ったより爆発しなかったな」
「あ、あれでかよ!?」
「確か空気中の濃度の関係があった様な……大人しく火薬の方が良いのか?」
「パパがなんかブツブツ言ってる……」
「何だ今のは!?
少し息苦しくなったぞ!」
「あぁ、悪い……そうか、酸素も燃焼されちまうからあまり至近距離でやっちゃまずいって事か……。
強力なのを作って……脅し位には使えるのか?
しかし一般人を巻き込む可能性があるから……」
「パパが……変になっちゃった……」
「レウスさん……なんか怖いですぅ」
「これがレウス様のお力……」
理から外れてるとしたらどこまで外れてるかが重要だな。
どこまでイメージだけで化学化合物を作る事が出来るか……だよな?
名前だけ知ってても、それがどういう効果なのかとかわからないだろうから……まぁ難しいか。
「難しいけど糸口が見えてきたな……」
「レウスさんは……その、何をするつもりなのですか?」
「病気の治療用の剣技開発ってとこかな?」
「ほぉ、そりゃすげぇや!
んじゃー、もし出来たらリミを診てやってくれよ!」
「リミ……何か病気にかかってるのか?」
「左耳が聞こえねぇんだ」
「あ、でも今は不自由してないですから大丈夫ですっ」
「…………生まれた時からか?」
「いえ、小さい頃転んでしまって……ちょっとした衝撃で聞こえなくなってしまいました」
「耳を打ったの?」
「いえ頭を少し」
後天的なものか……多分その時浸透回復をしたら治ったんだろうが……。
あれ……待てよ?
出来てから時間が経った傷は回復じゃ回復しないんじゃなかったっけ?
なんで1000年前に傷が出来たユグ木は少しだが回復したんだ?
……もしかして。
「リミ、ちょっと頭下げて」
「こ、こうですか?」
……ィイイイン
まず両手回復を頭に当てて、その後浸透回復を頭へ……。
「えーっとテストテスト。
左耳さん聞こえますかー?」
「っ!?
き、聞こえますっ!」
なるほど、これは俺のみの特権か。
過去出来た傷の治癒も可能って事だな。
帰ったらガイの目を治して……あの人眼帯してたけど眼球あるのかしら?
デュークが魔物に目を引きぬかれたとか言ってたから……ガイは無理か。
んじゃユグ木の回復は、俺一人でやらなきゃいかんのか……。
ユグ木の傷は土の中にあって、真新しく見えたから、あのデュークまで勘違いしちまったのか。
それともユグ木にとっては1000年程度は真新しい傷になるのかしら?
今度検証してみよう。
「おぉ、レウス、まじ感謝だぜ!」
「あ、ありがとうございますっ!」
「いや、気にしないで大丈夫だ。
これでまた一つわかったわ」
「アハハハハッ、そういう事かっ。
いよいよ人外になってきたねケント君っ」
「おはようございます」
「早朝に起きてユグドラシルの木に行って来たよっ」
「あぁ気付いたんですか?」
「いやぁ、うっかりしてたねっ」
「いや俺もでしたよ。
で……どうでした?」
「うん、やっぱりケント君の回復しか反映されないみたいだねっ」
「やっぱりかー……」
「これで急に治すのは無理になっちゃったねっ」
「毎日ユグ木通いかよ……」
「あははははっ、気長に頑張ろうねっ」
3時間で5ミリ……6時間で1センチってとこだな。
おそらく、気を枯渇させるつもりで気合い入れて間接回復とかもぶっこめば、一日で……3センチってとこかしら?
んで、傷が塞がってくれば、傷の面積も狭くなる。
徐々に回復する速度は上がるだろう。
頑張れば1年でいけるかいけないかってとこかな?
ここに神者ギルドの仕事が加わるから……あまり考えたくないな。
とりあえず頑張るか。
「僕の剣を持ってやればもう少し早いかもしれないよっ」
「毎度すんません」
「毎度どういたしましてっ」
「より強力な回復技も実現させないとだな」
「当てはあるのかいっ?」
「良い名前の人がいたんですよ」
「「「名前?」」」
「あそこの帽子が似合うお兄さんです」
「わ、私でござるか?」
「間接回復の応用で、回復効果のある気弾を複数出して、遠隔操作で浮遊維持させて、そこから魔術を使い、回復ビームを出す。
俺と気弾を紐状の気で繋いでおけば浮遊維持している気弾が無くなる事はない……」
「そ……そんなの使えるのパパだけよっ!」
「何でお前がキレてんだよ?」
「キレてないわよっ!」
「アハハハハハッ、ホントに回復系の剣技は得意だねっ」
「ドスッ!」
もはや名前でもないな。
皆も効果音にしか見えなかったんじゃないか?
「なんだハティー?」
「多分……デュークの剣が完成したのだ!」
「だそうですよ、デュークさ――」
もういないわ。
「ただいまっ」
もういるわ。
「はい、この武器から全部外してくださいっ」
「ハンマーとルーペがですね――」
「持ってきたよっ」
「あ、はい」
カカカカカカカカカーン……コロコロコロ……。
「じゃあこれをお願いしますっ」
「これがデュークさんの剣ね……どれどれ」
「15個っ?
ねぇ、15個かいっ?」
子供かお前は……。
15個までは見える……がしかし、むぅ、ボヤけて見えねぇ……。
もうちょい目力をだな…………喝っ!
「うん、16個ですね」
「「じゅ、16……」」
「あはははっ、ホントに退屈しないなぁっ」
「とりあえず同じの入れれば良いんですよね?」
「お願いしますっ」
カカカカカカカカカーンッ
「パパ、なんか早くなってない?」
「慣れだ慣れ。
日本人はせこせこと効率的にやる民族なんだよ」
「きゅきゅー?」
「そ、俺がいた世界の、まぁ技術国家だな」
「……今日のレウス見て何か納得しちまったよ」
「どうだ、ドンスは凄いんだ!」
知らない人だそれ。
「残り7個、入れる魔石はどうするんです?」
「はい、これをお願いしますっ」
「……うわ、気持ち悪っ」
「あははは、頑張って集めたよっ」
カカカカカカカーンッ
「はいどうぞ」
「ありがとうございますっ♪」
皆様お待たせしました!
超神の誕生であります!
因みに主人公は私、レウスでございます!
入れた魔石の詳細は後日ご報告しますよ!