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第百十八話「魔女と狂神と魔神」

 はい、かなり久しぶりのアジトでございます!


「――というわけで『ドキドキ☆ハラハラ、ジャコール見学ツアー』に参加したい方はいますかー?」

「きゅ「私が「わふっ「このレイ「お兄様と「(わたくし)が「師匠「行く「ーいっ♪」

「ってなるとわかってたので今回はクジを用意しましたー」

「わふっ」

「はい、当たりは1枚で、行けるのはキャスカ、ハティー、テレスの3人ねー」

「師匠っ、何故私が行ってはいけないのですかっ!?」

「ボスが出ちゃまずいだろう」

「そ、それでは、いつになったら私の成長した姿を師匠に見せる事が出来るのでしょうかっ!?」

「大丈夫だアーク、十分に成長してるってわかるぞ」

「わ、私には…………身に余る言葉ですっ!!」


 急に安っぽいセリフになったなおい。


「パパ私は何で行けないのっ!」

「ジャコールに神者ギルドの潜入者がいたらアウトだからな」

「あぁ……そっか」

「また今度な」

「うんっ♪」

「スンも同じ理由でダメなんだ」

「きゅぅ……」


 残念がるスンまじ天使。

 なぜヒューマンカードにはカメラ機能がないんだろう……。

 撮影会とか開いちゃうんだけどな。


「わふっ、わっふっふ!

 わふふっふふっふふがふがっ!」

「マイガー、お前の言いたい事はわからないでもないが、今のお前が行くと完全に足手まといだし、確実に死ぬだろう。

 ゴチョウとポチはわかってるみたいだぞ?」

「ぐぅうううううっ……」

「我々もまだまだ精進が足りないという事だ」

「レウス様の足手まといにならない為に、今は修行に努めるべきだ」

「ファンネルさんも同様の理由でダメなんです。

 申し訳ないですけどご理解ください」

「はっ、もっともっと精進するでござる!」

「ありがとうございます」

「カタカカカカカッカッカ?」

「あぁ、リボーンは途中まで俺と一緒だな。

 またあそこに行ってもらいたいと思ってる」

「カタタタタ、カコカコッ」

「師匠、そういえばそちらの方の進捗はどうなっているのですか?」

「あぁ、リボーンが言うには俺の名前を知ってる魔物の一族がやはり多くてな。

 時期を見てリボーンが魔物の一族の代表を招集するから、その時に俺も顔見せして話をするって感じだ」

「おぉ、それは素晴らしい事ですねっ!」

「レウスッ、このレイヴン様が参加できないのはどういう訳だ!」

「お前には別件で頼みがあるんだよ」

「ふんっ、それを最初に言え!」

「…………ほれ、これを頼む」

「こ、これは……奥義書用紙じゃないか!」

「俺が部隊長になってから、俺とデュークさんで目立たない様にコツコツと溜めたんだ」

「ふむ、40枚はあるな……」

「これからも少しずつ持ってくるけど、魔術を含めた剣技を慎重に選んで皆にあげてやってくれ」

「……私が決めていいのか?」

「この時代の剣技についてはお前が一番詳しそうだからな」

「ふっ、見る目だけはあるようだな」

「中間管理職のエキスパートを舐めるなよ?」

「ちゅう……かん?」

「レウ……ドン!

 そんな奴は放っておいて早くクジを引きたいのだ!」

「レ、ドンッ!

 そんな奴は放っておいて早くクジを引こう!」


 ほぉ、ハティーよりキャスカの方が早く第9剣士部隊に来れそうだな。


「こ、このレイヴン様を……そ、そんな奴……だと?」

「お兄様、そんな奴放っておいて早くクジを引きましょう」

「……そんな奴」

「きゅぃっきゅぅ?」

「ふ、スン、お前は本当にいい奴だな」

「きゅぅうい、きゅきゅ?」

「…………顔を……顔を洗って来る」

「「「「「行ってらっしゃい」」」」」

「…………ぶわぁっ」


 可哀想なレイヴン……。







 まぁサブタイトルでわかってたと思うが参加者が決まりました。


「やりましたわ〜♪」

「はい、テレスに決定ー」

「レレレ、ドンッ!

 私はまだ引いてないのに何でテレスで確定なのだ!」

「おう、レレレのドンだぞ」

「ハティーちゃん、順番に引いて当たりが出た瞬間に終わりなんだよっ」

「納得いかないのだ!

 いいから私にもクジを引かせるのだ!」

「……ほれ」

「……き、緊張するのだ!」


 いいから早くハズレを引けよ。


「なっ、ハズレなのだー!?」

「はいテレスに決定ー」

「レドン、クジに細工したんじゃないのか!?」

「誰だそれは」

「キャスカさん、お兄様はそんな事しませんわ。

 それはあなたもわかってるでしょう?」

「で、でもぉ……」

「スン、バケツの用意を」

「きゅい!」

「なんだ、会議室に常備してるのか」

(わたくし)とスン殿で作ったでござる」

「さすがの匠のコンビですね」

「いやいや、祖父の作品の数々には勝てないでござる」

「はははは」

「それじゃあ行くのは僕とケント君とテレスちゃんにムースさんでいいのかな?」

「途中ムースからは降ります。

 おそらくジャコールの近くで待機してもらう事になるでしょう」

「了解しましたっ」


 因みにビアンカは収容施設で夜勤中だぞ。

 テンダーの話じゃ、どうやらあの討伐の日以来、盗賊団内でビアンカのファンが出来てるそうだ。

 よしよし、良い効果が出てるな。

 勿論狙ってなんてやっておりませんけどね。

 偶然の力は時に狙いを凌駕するのだ。








 はい、アジトの外でございます!


「んじゃムース、少し走って離れた場所から飛び上がってくれぃ」

「スンちゃん、また後でね!」

「きゅきゅ~い♪」

「れっつごー」









 魔界着!


 ジャコールまでは20キロ程の山の中でございます。


「ほんじゃ行ってくるわ」

「レウス君行ってらっしゃーい」

「気を付けて待っててくれや」

「デュークさん、レウス君を頼んます」

「あはははは、任されましたっ」

「お兄様とこういった行動をするのは初めてかもしれませんわ!」

「そういやそうかもな」

「楽しみですわ」





 ダッシュ!



 はい、ジャコール近辺でございます。

 こういう時は俺の鼻が役に立ちます。


 クンカクンカ……おや、これは……。


「どうだいっ?」

「前方300メートルに女体の神秘発見」

「お、お兄様!?」

「女性が見張りって事かなっ?」

「おそらく」

「さぁ、どうするのです?」

「さぁおやぶん、どうするんですかい?」

「いつでも逃げられる状態を保ちながら……正面から行こうかっ」

「それはどういう状態なんでしょうかね?」

「気合いだよっ」

「頑張りますわ!」

「この中で最弱は俺なんですよ?」

「あははははっ、一回テレスちゃんを抜いたのに、あの剣をあげたらまた抜かれちゃったねっ」

「ったく、笑い事じゃないっすよ」

「うん、じゃあ行こうかっ」

「レッツゴーですわ!」

「…………」




 もし死んだら神者ギルド、第9剣士部隊宛に香典を送ってくれ。

 あの世で豪遊したいんや。




 ……ふむ、遠目で見た感じ、藍色髪の細身の女性が立ってますね。

 おっ、気付かれた。


「あはははは、バレちゃったねっ」

「バレる行動をしててその発言はダメでしょう」


「敵襲だーっ!

 総員戦闘準備っ!!」


「なんで敵ってわかったんですかね?」

「なんか目印があるとか、見張りは仲間の顔を全員知ってるとかじゃないっ?」

「見た感じ強そうな方がいらっしゃいませんわね?」

「この人数でこの強さ相手では、流石に神者ギルドは手こずらないだろう?」

「ですわよね……」

「ジュリスのとこでも詳しい情報はなかったんかえ?」

「神者ギルドで手一杯でしたからね……」

「強そうな人は……中かなっ?」

「どうすんすか、囲まれちゃいましたよ」

「ドン君お願いねっ」

「お兄様、見せ場ですわ!」

「…………」


 敵は現在25名。

 実力はどいつもランキング50位前後。

 さっきの門番の女性だけが20位前後ってとこだ。

 50位前後の奴等はニヤニヤしてるけど、門番女は顔がひくついてる。

 今にも逃げ出したそうな顔してるわ。

 力の差を感じ取れるのはこの女だけか……。


「えーっと、そこのお姉さん」

「…………」

「上の人とお話がしたいんですけど、難しいですかね?

 無理なら大人しく帰ります」


「大人しく帰すと思ってんのかよ?」

「バカな野郎だ」

「あの女は俺がもらう」

「バカッ、ありゃ俺のだ」

「バーカ、全員でやっちまえやいいだろうがっ」


 このテンプレ感は久しぶりかもしれん。


「下品な連中ですわ」

「どうでしょうかね?」

「……は、話は私が聞く。

 な、何の用だ?」

「デュートスイッチオンッ」


 殺気びーむ!


「「「…………っ!!」」」


 お、男連中にも伝わったみたいだわ。

 ジリジリと後退していきますわ。


「上の人とお話がしたいんですけど、難しいですかね?

 無理なら大人しく帰ります」

「お兄様……」

「適材適所だ」

「……しばし待て」

「やったねデューちゃん」

「やったねドンちゃんっ」



 はい、しばらく待ちました!


「来ましたね」

「おそらくドン君位の強さだねっ」

「そりゃ怖いですね」


 金髪エルフの男だな。

 あ、顔ひくついた。


「忘れてたわ、デュートスイッチオフッ」

「はいっ」

「……どなたかな?」

「神者ギルドの者です」

「「「なっ!?」」」

「何の用だろうか、話がしたいというから出て来たのだが?」

「予め言わせて頂きます。

 まず俺達は独断で来たという事、そして場合によっては自衛の為武力を働く可能性がある事です」

「ほぉ、ガディスやリュウリュウの使いではないと?」

「関係を悪化させに来た訳ではないので事後報告でもいいかと思いまして」

「お前達、名前はなんという?」

「ドンと申します」

「デュートですっ」

「ジュリスと申しますわ」

「……ツーダンだ」


 スリーアウトまで後一人って感じの名前だな。


 金髪エルフで、首から上以外黒装束だな。

 洋風忍者って感じの衣装だ。

 瞳は青、額に……なんか金色の輪みたいなのを額に着けてるな。

 ふむ、孫悟空みたいだ。

 髪は真っ直ぐ下ろしてて肩に着く位の長さだな。

 悪の組織にはいなさそうな優男だな。

 年齢はおそらく280歳前後?

 身長170ちょいで、体格はとにかく細いの一言だな。


「ツーダン……確かここの組織の4番目の実力者ですわね」


 ふむ、これで4番目か……。

 だとしたら今のウチよりは戦力が低いってとこか?

 そう考えるとすると、神者ギルドよりはかなり差に開きがある。

 ジャコールという目立つ位置にいるのにもかかわらず何故生き残っていられるんだ?

 遠すぎるっていう立地故か?

 いや、おそらくこの戦力なら総力で来れば圧勝出来るんじゃないか?

 もっと強い奴がいるのか?

 リュウリュウおじちゃんの狙いがわからんな。


「さて、話を聞こうか」

「あなた方の望みが聞きたくて伺いました」

「どういう事かな?」

「何故神者ギルドと争っているのかを聞きたいです。

 ただ狙われてるだけで自衛の為争ってるだけなのか、何か目的があって争っているのか……。

 そこを知りたいんですよ」

「そんな事も知らずにここへ来たのか?」

「身内の話と齟齬があるのが怖いので、直接聞くのが一番だと思いました」

「……命知らずにも程があるな」

「最善の準備はしてきたので大丈夫です」

「あはははははっ」

「デュート……だったか」

「よろしくお願いしますっ」

「この俺が震えを抑えるので精一杯とはな……」

「触らぬ狂神(デュート)にたたり無しです」

「ふっ、こちらから攻撃しなければ大丈夫という事か」

「えぇ、なのでご安心ください」

「ちょっとした脅しでもあるが?」

「そうとって頂いても構いませんよ?」

「ふん、食えない奴だな」

「ははは……で、どうでしょうか?」

「目的……か。

 ……昔は神者ギルドを滅ぼすつもりだったが、現在では自衛……というのが正しいだろうな」

「ありがとうございます。

 それだけ聞ければ大丈夫です」

「帰るのか?

 茶くらいなら出そうと思っていたところだが?」

「ありがたい申し出ですが、ここで馴れ合うと要らぬ嫌疑がかかりそうなので、遠慮しておきます」

「お前の様な奴は初めて見たな」

「今は……一部を除いて悪意のある人が少なそうなので安心しました。

 あなた方が自衛目的ならば、争わないに越したことはないですからね」

「どうするつもりだ?」

「争わない案を上に打診するだけですよ」

「それは無理だな」

「無理なのは元より承知してます。

 でも、やってみるだけの価値はあるでしょう?」

「ふん、やってみるがいい。

 それまではこちらはこちらの好きにさせてもらうだけだ」

「……では、失礼します」

「しまーすっ」

「お邪魔しましたわ」


 今は自衛目的……これ、リュウリュウおじちゃん絶対把握してるだろう?

 そして今回俺が来たのも第0剣士部隊から報告が行くんじゃないか?

 まぁ、それは狙いの一つだから良いんだが、リュウリュウの狙いがいまいち読めんな。



 長い一日だったが、今日はこんなとこだな。

 早く帰ってスンに抱きつこう……。

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