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第百十七話「働き蟻と練乳」

 ガチャッ


「おじゃましますっ」

「ひ、久しぶりだねデュート君」

「お久しぶりですっ」

「お疲れ様です」

「ドン君もねっ」

「とりあえず返り血を拭きましょうか」

「えぇ、拭いたはずだけどなっ?

 んー……どこだいっ?」

「首から下です」

「あはははっ、了解ですっ」

「……デュート君はドン君の下が一番良いようだね」


 暗部なんかに配属したら、暗部故にお先真っ暗になっちまうからな。


「別の配属先になったら大問題になりますよ」

「はははは、その可能性は非常に高そうだね」

「確実ですよっ」



 自覚症状ありってとこがまず大問題だわ。


「ふふふ、後100歳若ければ冷や汗が止まらなかっただろうな」

「デュートさん、めっ」

「はーいっ♪」

「さぁデュート君、初めての副官会……感想を聞きたいものだね?」

「んー……気になったのはエレンさん……かなっ?」


 ……教頭先生が?


「……詳しく聞こうか」

「あの人、実力以上の強さがありますねっ」

「…………」

「どんなもんですか?」

「ドン君よりは強いと思うよっ」

「あら、読み違えたか……」


 …………あの顔はそれ以外でも気付いた感じだな。


「ふふふ、流石だな。

 彼女は魔術の達人で、更に気脳全開(きのうぜんかい)まで辿り着き、(オーラ)も柔軟に使いこなす事が出来る稀な存在なのだ」

「あははは、そうだと思いましたっ」

「……さて、第9剣士部隊が出来た早々だが問題点はあがったかな?」

「みんな何で僕が副官なんだって騒いでましたねっ」

「さて、何故だろうね?」


 ホント何故だろうね。


「強いて挙げるならば……先着順、でしょうか?」

「ははははは、第9剣士部隊部隊長の地位が先着順とはなっ!」

「それよりデュートさん、他にはなかったんですか?」

「うん、さすがに出来たばかりだし、知らない人もいたらしいからねっ」

「そっすか」

「うむ、では3日後の部隊長会議……まぁ今回の場合は召喚士を含む召集会議だが、その際にあげる議題は3つ。

 第4剣士部隊の医療技術増強の問題と、第7剣士の労働状況の問題……そして第8剣士部隊の全体的な状況確認というところだな」

「……ですね」

「ドン君の仕事は別にある事を忘れないでくれたまえよ?」

「……はぁ」

「何の事だいっ?」

「後で話します。

 ……では、本日はありがとうございました。

 失礼しました」

「しましたっ♪」



 少し整理すっか。

 1000年前の世界大戦で、狂神オブザデッドを使い神者ギルドが勝った。

 俺の身内や一族を憎んだ神者ギルドだったが、今はかなり緩和されて、怨恨等はほとんどない。

 確かにリュウリュウはそう言ったが、やはり何かを隠してる感じ。

 娘と何か関係があるのかもしれないな。

 第0剣士部隊には、ガディスの次に強いタジョウマルっていう危ない奴がいて、そいつはリュウリュウの息子だって話だ。

 暗部的なポジションの第0剣士部隊は魔界の反抗組織に対して隠密活動をしてたり、きっと多分おそらく危ない事もしてるんだろう。

 ……ふむ、こんなところか。








 はい、ビアンカとデュークの3人でユグドラシルの木までやって参りました!


「――って感じですね」

「あははは、なかなかじれったい状況だねっ」

「で、私達はソージ君って子を第6剣士部隊の副官室から出さなきゃいけないわけね?」

「そういうこった」

「さて、今日は魔石探索はもう無理だけど……こんな所に来てどうするんだいっ?」

「コイツが枯れた原因を探ります」

「あら、わかるのドン?」

「探るって言ったじゃろうに」

「うーん、原因があるって事っ?」

「それがないと枯れないと思いまして」

「寿命って事は考えられないの?」

「木から離れたユグ葉が数年以上鮮度を保ち続けるんだから、枯れるって事は考え難い。

 なら戦火に巻き込まれた事が枯れた原因に直結する」

「原因がわかっちゃったよっ?」

「直接的な原因……ユグ木が枯れた要因となった「致命傷」を探したいんですよ。

 なので……まぁ、まずは登っちゃいますか」

「「はーいっ♪」」



 はい、狂神はジャンプでユグ木の枝まで、俺はビアンカを運び空を飛んで頂上まで行きましたとさ。

 ビアンカはどうやらギリギリ届かないみたい。

 俺は完全装備なら届くぞ。

 おそらく勇者ランキング5位程の実力者が届く高さだな。


「うーん、ドン君の言う様な致命傷なんてないねぇっ」

「そうねぇ……」

「けど、見て下さい。

 ユグ葉は枯れてるけど、まだ枝から落ちてない。

 もしかしたらこの木……」

「完全に枯れてないって事かなっ?」

「ふむ……少々お待ちを」

「「はーいっ」」


 ホント楽しそうだよなこいつら……。


【おら出番だぞ】

【……すっごい呼ばれ方じゃな】

【いい加減役に立ってくれ】

【なっ、結構重要な仕事をしてるつもりじゃぞいっ】

【そんなんじゃ、まだ皆許してくれないよ】

【うーむ、ユグドラシルの木か……。

 確かに微弱ながら生命力を感じるのぅ】

【あ、もういいわ】

【なんじゃとっ!?】

【まだ探す場所があったわ。

 もしそれが間違ってたらまた呼ぶわ】

【ふん、この神の知恵が必要な時は近いぞぃ!】

【…………】

【ぬぬぬぅ……】



「お話終わったかいっ?」

「えぇ、全く役に立ちませんでした」

「あら、それじゃ今日はここまでかしら?」

「もう一ヶ所だけ調べたいとこがあるんだ」

「「?」」

「頂上は調べたけど……下は調べてない」

「「下?」」



 はい、また地上であります!


「この巨大なクレーターの数々……その下に根っこがあるとしたら」

「なるほどねっ」

「ドン、穴掘りなんてゲブラーナ以来ねっ♪」

「あぁ、デスウルフ達の墓作った時か」

「規模は尋常じゃないけどね♪」

「力も違うから問題ないべ。

 根っこ傷つけないように慎重に掘らなきゃいかんけどな

「それじゃぁ、手分けしてやろうかっ」




 只今3人で働き蟻になりせっせと作業中。

 しばらくお待ちください。



「ドーンッ、大きいのがあったわよーっ!」


 女王蟻様が発見したそうだ。




「……一番深いクレーターか。

 大きさ順じゃなくて深い順で探せば良かったか」

「あはははっ、まぁ見つかったんだから良いじゃないっ」

「でかい傷っすね」

「けど、これを見つけてどうするんだいっ?」

「知らないかもしんないですけど、植物って「生物」なんですよ」

「……つまりどういう事なの?」

「あぁ、回復(ヒール)が使えるねっ!」

「なるほどねっ」

「れっつとらい」


 ポォッ……ィイイイイッ








 …………3時間後。


「……ほとんど塞がらないっすね」

「僕達3人でこれだけ頑張って5ミリ塞がったかってところだねっ」

「傷の大きさは……約12メートル」

「長期戦ですねぇ……」

「傷の大きさ故、回復(ヒール)に回せる人員も最大10人ってとこですね」

「息子達に手伝わせるかいっ?」

「それは危険じゃないお兄ちゃん?」

「……ですね。

 暇を見つけて少しずつやりましょう」

「神者ギルドに協力を要請するかいっ?」

「急を要する段階になったらしますけど、あくまで交渉材料として考えた方がいいかもしれません。

 勿論、神者ギルド内で誰かが病気で本当にやばい場合は、それを最優先にはします」

「あはははっ、優しいねぇドン君はっ」

「当たり前でしょっ、私の旦那さんなんだからね♪」

「はいはい……収容施設の当番は今日は誰だっけか?」

「あぁ、私ねっ」

「そんじゃ一回帰ってアンジーは収容施設へ、俺とデュートさんは………………ぁ」

「ソージ君を引っ張りださなきゃだねっ」

「めんどくせぇ……」


 さて、あいつを引きずり出すには……糖分が必要だな。






 はい、戻って参りました!


 ビアンカと別れ、通常装備に戻してから第6剣士部隊の部隊長室にやってまいりました!

 レッド、デュークと一緒に作戦準備中でございます!


「ドン……なんだこれは」

「ココアにチューブ型の練乳にメロンパン、チョコレート多数、クッキー多数……まぁお菓子ですね」

「……それで何をする気なんだ?」

「ドン君が言うには……なんだっけ「あまのいわと」作戦だっけっ?」

「どういう作戦なんだそれは?」

「本来ならここを賑やかにして「なんだなんだ?」って気になって出てきたところを捕まえる感じなんですが、今回は……匂いですかね?」

「甘い匂いで釣るという事か」


 ガチャッ


「……おかし」


 おい、出てくるの早ぇよ。

 神速のキャスカもビックリだわ。


「作戦成功だねっ」

「決行すらしてないっすよ」

「あぁ、作戦だぁ?」

「ソージ、そのままでいいのか?」

「いいんすよ、もうバレちゃってんだし?

 なんなんすか、文句ありますぅ?」


 相変わらずだなこいつは……。


「いや、別にないが……」

「で、第9剣士部隊の部隊長様が何のご用でございますかねぇ?」

「リュウリュウさんに部屋に引きこもってるダメ人間を何とかしてくれって依頼されて来たんだよ」

「ほぉ、もう先輩にタメ口とは、流石出世が早い人は態度を変えるのも早いねぇ?」

「先輩に倣ってレッド(上官)への口の聞き方を真似したつもりでしたが、間違ってましたか?」

「……てめぇも猫被ってやがったか」

「被ってはないつもりですけど、そう見えたのなら謝ります」

「けっ、気に食わない野郎だ」

「レッドさん、とりあえず出て来ましたがどうします?」

「あぁ、リュウリュウの所へ連れてってくれ」

「へいへい、何の用なんすかねぇ?」


 ふむ、ちょんぱされちゃうのかしら?

 まぁ流石にリュウリュウの部屋ではないか。


「おいてめぇ」

「何でしょうか?」

「……この練乳は飲んでいいのか?」


 飲み物に分類する事を初めて知ったぞ。


「ソージさんの為に買ってきた物なのでご自由にどうぞ」

「ふんっ、じゃあ行くぞ」

「はい」

「はーいっ」

「ったく、気味の悪ぃコンビだぜ……」

「レッドさん、では失礼します」

「あぁ、面倒をかける」









 はい、再びリュウリュウルームでございます!


「むぅ、依頼したのは今日だが……」

「先に用事を済ませた方が、後が楽なので」

「ふふふ、それは良い考え方だな」

「で、リュウリュウさん、俺は何の用で呼ばれたんすか?

 規則に違反する様な事はしてませんけど?」

「無論、それはしていない。

 今回君を呼んだのは別件だよ」


 副官会を休んだ事は何も言われないのか?

 強制参加でもそれは罰則にはならないのかしら?


「はぁ?」

「転属だ」

「……は?」

「君には第0剣士部隊への転属を命じる」

「ちょ、それじゃ前線送りも同然じゃないすか!?」

「多少危険はあるがやりがいのある仕事だろう」

「嫌っすよ!」

「今ここで死ぬのと、命令に従う……どちらが希望だね?」


 殺気がピリピリ……。


「ふ、副官はどうすんすかっ!」

「安心したまえ、不慣れだがグリードが頑張ってくれてるよ」

「…………嘘だろ」

「事実だよ。

 安心したまえ、3年務めきったら転属を認めよう。

 ドン君、デュート君……ご苦労だったね、後は任せてくれたまえ」

「………………」

「不満そうだね?」

「少し横暴かと」

「では元から第0剣士部隊へ配属された者は、不憫ではないと言うのかね?」

「…………その答えは用意してませんでした」

「相変わらず正直だね」

「しかし何とかなりませんかね?」

「ふふふ、頑固なところもあったか」

「手の打ち所を伺いたいです」

「ない、これは決定事項だ」

「…………失礼しました」

「しましたっ」


 パタンッ


 くそ、少し読み違えたか……。

 確かに急を要する事態でソージにあんな態度をとられたらかなり問題だ。

 俺がこの前マイガーにやった対処と全く一緒だわ。


 押さえるとこは押さえるって事だな。

 堅実故に怖い奴だな……。



「納得いかなそうだねっ」

「酷い扱いを受けましたけど、少しはお世話……多分お世話になったのでね」

「あははははははっ」

「さてどうしたもんですかね……」

「それじゃあ一度ジャコールに行ってみるかいっ?」

「何でそうなりました?」

「前にドン君が言ってたじゃない?

 魔王って本当に悪さしてるんですかってねっ」

「むぅ……まぁ今は魔王じゃないとは思いますけど、危険過ぎるんじゃ?」

「少数精鋭で行けば大丈夫だよっ」

「……まるで行った事あるみたいっすね?」

「覗きに行った事くらいならあるよっ」


 ……覗かれた瞬間に相手が死んだりしてないよな?

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