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転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)  作者: 壱弐参


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第百十二話「続・レイヴン」

「ふん、どうやら覚えていた様だな」

「あぁ、アークから聞いてるよ。

 俺の葬式にいち早く来てくれたそうだな?」

「…………覚えてないな、そんな事は」


 相変わらず口は悪いが優しい奴だわ。

 年を重ねたせいか勘違い属性が消えてるのかしら?


「……2000年経ってその姿って事は……お前まさか召喚士になったのか?」

「そうだ、この身体の中にムースが入ってる」


 そりゃ探しても見つからないはずだわ。


「なーんでお前がムースを?」

「話は後だ」

「あ、はい」

「出すからなんとかしてやってくれ」

「出すって……ムースを?」

「それ以外に誰がいる?」

「へいへい、わーったよ。

 さっさとゲロっちまってくれ」

「口からは出ないわ!」


 相変わらずからかい甲斐のある奴だな。

 おぉ、(オーラ)の球体を作るのか……。

 んで……その球体が大きく平面に広がってく感じだ。

 ……かなりでかいな。

 あぁ、この中からムースが出てくるんだとしたらこんなもんか。


『ガァアアアアアアアアッ!!』


 おぉ、ムースのやつカッコ良く登場したな……。


「ゴシュジンサマ、ゴヨウハナンデショウ」

「さぁ、早くなんとかしてやれ」

「なんとかって言われてもなぁ……」

「利休から「レウスが来ればなんとかなる」って言われてたんだぞ!」


 だから喋り方がわけーんだよ。

 リュウリュウみたいな喋り方が似合うはずなのに…………勿体無い奴め。

 しかしどうしたもんか?

 チャッピーにとっての俺の姿……か。

 ならば……!


「ムース!」

「ナニモノダ……」

「スンちゃんファンクラブ会員番号第0号だ!

 こんなところで何をしている!

 すぐに起床し、すみやかにスンちゃんを守れ!」

「…………」

「お前、何を言ってるんだ……」

「スンちゃんファンクラブ会員番号第1号!

 すぐに起床し、すみやかにスンちゃんを守れ!」

「ぬぅうっ……」

「先着1名につき、スンちゃんと1日一緒に遊べる権利が与えられます!

 どうぞお早めに!」

「ぐぅ…………ス、……スン……」

「今なら添い寝サービス付きでございます!」

「ス、スンちゃんっ!!!!!」

「はい、おはよう」

「ば、ばかな…………」

「お前、「なんとかしろ」とか言っておいて、なんとかなる可能性を考えてなかったのかよ?」

「こ、こんな単純な事でいいのか……」

「キーワードは俺の声だ」

「……よくわからんっ」

「あっれ、レウス君じゃん?」

「お、覚醒したか?」

「おぉムース!」

「レイヴンまで…………あぁ、思い出した。

 戦争が起こって……瀕死の状態になった俺を、利休とレイヴンに助けてもらったんだわ」

「あれから約1000年経ってる」

「へぇ、それじゃ戦争は終わったのか?」

「我々の負けだ……」

「そ、そうだスンちゃんは!?」

「アーク達と反抗組織を作って元気に頑張ってるぞ」

「よ……良かった……」

「それよりレイヴンは何でアーク達とコンタクトをとらなかったんだよ?

 皆…………レイヴンはともかくムースの事探してたんだぞ?」

「あ、相変わらずグサグサと刺し込んでくるなお前ぇは……」

「事実を隠されるよりは良いだろう?

 それにお前はそんな事位じゃ参らないのは知ってるからな」

「お、お前ぇは昔から人の事を見透かし過ぎるんだよ!」


 お前が見え見えなだけなんだよ。


「んな事はどうでもいい、なんでコンタクトとらなかったのさ?」

「見つけるのが困難……まぁ1000年も探せば見つかったとは思うが、それよりも皆に合わせる顔が……無かった……」

「なんでまた?」

「レウス君よ」

「おう?」

「敵の使っていた召喚術をレイヴンが使えた。

 これに答えがあるとは思えないか?」

「…………答え」


 レイヴンっていったら、あまり才能が無く伸び悩んでいた勇者……そして召喚術。

 …………あぁ……そういう事か。


「つまり…………レイヴンが魔術や召喚術を編み出したのか」

「そういう事だ」

「……本当にすまない」

「んなの気にする事ないって」

「なっ、お前俺の最大の悩みを簡単にあしらってくれるなよ!」

「ガハハハハ、レウス君ならそう言うとは思っていたぞ!」

「考えてもみろよ、確かにお前は召喚術を自力で習得したかもしれないが、使ったのは別の奴等だろうが。

 道具を作ったのはお前、使ったのは別の人。

 ならこの世界の武器を作ってる人が全員お前みたいになってるか?

 答えはノーだ。

 剣という道具をどう使うかはその人次第だろう。

 どういう経緯で敵の手にその剣技が渡ったかは知らないが、それはお前のせいじゃない。

 盗まれたのならば盗んだ奴が悪い。

 騙されたのであれば騙した奴が悪い。

 譲渡したのであれば、それはお前が良かれと思って譲渡したとしか考えられん。

 そこら辺に落ちてる石やレンガでさえ人殺しの道具になるんだ。

 簡単な話、召喚術(レンガ)を作って怒る様な奴は俺の身内にいねーよ」

「…………」

「どうしても傷つきたいのであれば事実も教えてやる。

 勿論、お前を非難する奴はいるだろう。

 ……まぁこの時代にはいないかもしれないが、戦争中はいたかもしれん」

「…………」

「しかしそんなモノはどんなモノにも集まるもんだ。

 飯を食って不味いと言う者がいる。

 本を読んで面白くないと言う者がいる。

 人を殺してでも世界平和に導こうとする勇者を否定する者がいる。

 平和ボケした人間をダメ人間と言う者がいる。

 さっき言った武器にだって危険だと言う者がいる。

 ……どんな「存在」にでも非難の声ってのは集まる様になってんだよ」

「…………」

「現にお前は俺を否定し続けてただろ?」

「…………顔を……顔を洗って来る」

「行ってらっしゃい」

「……中々面白い意見だったな」

「意見というより事実しか言ってねーよ」

「まぁそうだな……がしかし――」

「あぁ、人間ってのはマイナスの事実を受け入れるのには時間がかかるもんだ」

「レウス君、自分が人間じゃない様な言い方だったな?」

「人間半分、魔物半分だとは思ってるよ。

 どっちでも0歳から育ったからな」

「特異な経験故……という事だな」

「かもしれないな?

 まぁ、俺が異常なのは前からわかってる事だからいいんだわ。

 それよりも現状の説明だけしておくか」

「スンちゃんと添い寝出来る話を詳しく聞きたいものだな」

「…………覚えてたのかよ」

「1日遊べて先着1名に添い寝サービス付きなんだろ?

 俺は先着1名に入れたのか抽選結果が気になるところだ」

「しゃあねぇな」


 別にスンはムースが苦手でもなんでもないから問題ないけどな。

 あの子は誰とだって寝るぞ!

 ……あれ、なんかスンが汚れたような?


 気のせいだ気のせい。

 しかし最近あれだな……「会話」が無駄に多いよな!

 俺の独断ステージがどんどん追いやられてる様な気がするのは気のせいじゃないはずだ。

 確かに潜入ミッション的なアレですから?

 仕方ないとは思いますけどね?

 もう少しは俺の活躍をきちんと描写して頂きたいのが本音であって――


「レウス!」

「決して主人公から遠ざかりたいとか、そういう事を思ってはいないわけです!」

「……何言ってるんだお前?」

「悪意ある妨害工作を無視してやっただけだ。

 ……で、どうした?」

「私は……私はお前を否定した覚えはない!」

「さいですかー」

「ぐぬぬぬぬぬっ!」

「レウス君、現状の話の続きをお願い」

「えーっと……実はかくかくしかじかでアレがズキューンでバキューンでアハーンでオーイェス! って感じだ」

「……ほぉ、やはり利休も捕まったのか」

「詳しい話は知らないが、利休程の実力者が捕まったって聞いた時はビックリしたわ」

「……私が話そう」

「知ってるのか」

「ムースを取り込んだすぐ後の事だからな」

「そういえばあの時確かに多くの敵に追われていた……」

「聞かせてくれ」

「今はもういないが、あの時神者ギルドには最強の存在がいたんだ」

「最強……?」

「狂神デュークのブレイブアンデッド」


 ……世界の終わりだろそれ。


「どうやって……って、つまりそれも召喚術か」

「そういう事だ。

 デュークさんのブレイブアンデッドを作り、それを召喚術で取り込んだ。

 ブレイブアンデッドは(オーラ)を内包していないからな。

 うまい使い方だとは思ったよ」

「母体である召喚士が操れば体外に出した時に(オーラ)を使える……」

「がはははは、正に天災というやつだな!」

「敵がデュークさんの遺体を手に入れてたって事は、かなり昔から召喚術が出来てたんだな」

「お前が死んでから50年位で完成したんだ」

「すげーなお前」

「ふん、褒めても何も出ないぞ」

「って事はデュークさんの遺体をしっかり火葬しなかったって事か」

「あぁ、皆が管理している土地内に土葬したそうなんだが……」

「それを何者かに持ち去られ、誰も気付かなかったって事か」


 土葬でも人里の近くならブレイブアンデッドにはならない。

 敵がそれを持ち去り、どこか人里離れた場所でブレイブアンデッドになった瞬間を狙って取り込んだとしたら……それは可能だな。

 敵もよく考えるこって……。


「しかしアークやラーナ達は、デュークさんのブレイブアンデッドの件を知らなかったみたいだぞ?」

「当然だ、敵の初公開と共に、その場で仕留めてその場の全員が捕まったんだ。

 知ってるのは俺だけ…………俺は影から隠れて見る事しか出来なかったよ。

 足手まといになるとわかってたからな……」


 ふむ、確かに今のレイヴンも長く生きてるとはいえ勇者ランキング20位前後の実力だろう。

 そりゃ隠れるしかないか……。


「利休だけじゃ1段階強くなって(オーラ)も使えるデュークさんを止められないだろう?」

「ムースが周囲から多数の攻撃を受け瀕死になった時、利休が助けに入った。

 利休の驚異的な戦闘力を前に敵はついにブレイブアンデッドを出したんだ。

 その時私はムースを取り込み既に隠れていたが、利休の窮地に助けに入ったのがギャルオ、スズメ、舞虎(まいこ)、ブルス、トルソだった」


 そうか、トルソも頑張ったのか……。


「トルソがいなかったら勝てなかっただろう」

「まじか」

「トルソが弱点を発見し、召喚士……つまり召喚獣の母体を倒したから、ブレイブアンデッドが力尽きたんだ」

「あぁ、そういえば召喚士を殺すと召喚獣も死ぬって聞いたな」

「トルソはあの身体を活かし、うまく敵の死角を突いて召喚士を倒した。

 しかし全員が力の限りを尽くしていた為…………」

「全員別の召喚士に捕まったと……」

「そういう事だ」


 とんでもない大戦争が人知れず行われていたのか。


「その一件があってから拮抗していた力関係が崩れ、我々が負けたと言っても良いかもしれん」


 とりあえずデューク初登場時のラスボスフラグをここで回収したか。

 しかしデュークのブレイブアンデッドねぇ……おそらく今のデュークレベルまではいかないだろうが、俺なら怖くて役にたたないわ……。

 世界大戦敗北の原因は相棒(デューク)にもありました。

 うん、こりゃ衝撃の事実だわ。


「んで、お前の召喚術は何で敵さんに渡っちゃったんだよ?」

「……アクセルさんがやっていた勇者塾を覚えているか?」


 覚えてるけど、そんな事皆が覚えてると思うなよ?

 忘れた人は……確か第七十話「東の地へ……」に、ほんと少しだけ書いてあるぞ。

 マジでちょろっとしか出てこないからな?


「あぁ」

「私が引き継いで塾長をやってたんだが、そこの生徒にオーディスの子孫達がいたんだ」

「卒業と同時に……魔術と召喚術でも教えてやったってとこか」

「見透かしすぎなんだよ!」

「見え見えなんだよ」

「がはははは、まぁ皆生きてるではないか。

 スンちゃんの為に頑張ろうではないか」

「それは同感だな」

「お前らどういう思考なんだよ……」

「皆戻ればスンが喜ぶんだよ」

「がはははは、流石第0号会員殿はわかってるな!」


 おーし、行方不明者は全員見つかったな!

 あれ……ラーナに与えてた仕事を全部俺がこなしちゃったぞ?

 もしかして怒られるかもしれんな?















「ったく、パパが何でも出来るとか思ってはいないけど、何で何でも解決しちゃうのよっ!」


 理不尽に怒られております。


「いいじゃねーか別に……」

「勿論いいわよっ、えぇいいですともっ!」

「じゃあ何でそんなむくれてんだよ」

「わ、私だってパパの役に立ちたいんだもんっ!」


 あらやだこの子可愛いわ。


「ま、まぁ十分役に立ってると思うぞ?」

「「まぁ」って何よっ!」


 おっと、口癖がこんなとこで失敗を生むとは……。


「じゅ、十分役に立ってますよ?」

「「まぁ」って何よっ!!」


 皆も知っての通り、人生にリセットボタンやセーブポイントはないんだぜ?


「「まぁ」というのはですね、「ま」と「ぁ」の連なりでして――」

「そんな事は聞いてないわよっ!」

「おし、何でも1つ言う事聞いてやんよ!

 それで機嫌直せし!」

「本当、パパッ!?」


 もう直ったぞ☆


「出来る事でお願いします」

「うふふふ、じゃあデートしてっ♪」


 お前、全世界指名手配中だろうに……。

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