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第百八話「新人……達」

「ジェイドです、宜しくお願いしますっ!」

「よろしくねっ」

「宜しくお願いします」

「よろしくジェイド君」

「ミナさん、連れて来てくれてありがとうございます」

「そんな……これが私の仕事ですから構いません」


 ほぉ……一時は神者ギルドを脱退した人を、転属した人を連れてきて「仕事」と言ってくれたな。

 本人は気づいてないが少し前進って感じだな。


「ドン様が部隊長だったとは驚きました……」

「ジェイドさん、「様」付けは禁止です」

「ジェイド君、あの方は捻くれてるので「さん」付けで呼んであげてください」

「は、はいっ!」


 んー、悪口を言われる位にはなったか。


「それで、ドンさんは資料室で何を調べていたのです?」

「あぁ、先日チャムさんに鍛冶の仕事を教わる約束をしていたので、それについて調べてました」

「あぁ、そうでしたか……」


 ふむ、やはり気の抜けた感じになったな。

 少し疑ってたんだろう。

 予め言い訳を考えておいて良かったわ。


 まぁ、俺が今一番驚いてるのは、このニコニコ顔のお義兄(おにい)さんなんですけどね。

 お前数十分前にココ出たばかりなのに、なんで既に戻ってるんだよっ?


 俺の最速でもアジトからここまで往復50分はかかるぞ!?

 デュークが出て行ってから……35分から40分ってとこだな。

 この10分から15分の差は本当に埋められるのだろうか……。


「あははははっ、頑張ろうねドン君っ」

「へ~い」

「「……?」」

「ところでジェイドさんは何か得意な事はあるんですか?」

「ぼ、僕は雑務処理が得意です!」

「……言い切ったな」

「あ、でも、お茶とか入れるのも結構得意です!」

「あはははっ、執事さんだねっ」

「ジェイドさんがそれを苦痛に感じたりしないなら俺達の身の回りの仕事をお願いするけど?」

「ぜ、是非やらせてくださいっ」

「それでミナさんも少しは楽になるでしょ」

「え……そ、そうですね」



 チーン!


 誰だろか?


 《件名:今、時間あるか?》

 《時間が出来たので地下1階に来てくれれば色々教えてやる》


 チャムからか……。


「ミナさん、依頼はまだ残ってるんですか?」

「いえ、リュウリュウ様より数日中に1件依頼するとは聞いていますが、現在はありません」

「そっすか……。

 今から俺、チャムさんに会ってくるけど、ウェポンエンチャントの依頼がある人います?」

「僕は大丈夫かなっ?」

「依頼は特にありませんけど……見学に行ってもよろしいでしょうか?」

「あ、僕も!」

「面白いもんじゃないでしょうけど、別に構いませんよ?」

「あはははっ、楽しみだねっ」


 お前も来るのかよ。









 はい、地下1階の宮廷鍛冶施設です!


「なんか凄い団体で来たな」

「チャムさんの仕事が見たいそうです」

「お前に鍛冶仕事を教えるだけだというのに」

「ちゃんと毎日鍛錬してますか?」

「仕事の合間にちょくちょくやってるぞ」

(オーラ)総量が増えて、気の達人(オーラマスター)がこなれてきたら教えてください」

「うむ、千里の道も一歩からだな」

「そんじゃあ張り切っていきましょうか」

「まずは材料から武器を作成する工程を説明する」

「鉄鉱石とか砂鉄とかコークスとかのアレが必要なんすよね?」

「そうだ、その後特殊な加熱法で玉鋼(たまはがね)というのを作るんだ」


 そういやそんな事をアイさんもガルムも言ってたな?


「これを見ろ」

「見ました」

「…………」

「見ました」

「……この量で約12キロの玉鋼(たまはがね)だ。

 これを加熱し、打ち伸ばし、様々な工程を経て…………さぁ何本の武器が出来ると思う!?」

「1本」

「なんで間違わないんだ!?」

「じゃあ2本」

「じゃあってなんだ!」

「やっぱり1本」

「ぬぅ……」

「チャム様、相手が悪いかと思われます」

「相変わらず人を食った悪魔の様な奴だ……」


 悪魔デビューしました。

 今後もよろしくお願いします。


「その様々な工程の部分を知りたいっす」

「よし、積み沸かしの説明からしていくぞ」

「おなしゃーす」

「折り返し鍛錬に進む為にまず――」



 鍛冶の説明受講中。

 しばらくお待ちください。









「それじゃあ説明した通り、とりあえず適当に1本作ってみろ」

「まじすか」

「何事も慣れが大事だ。

 幸いココは神者ギルド、大きい声では言えないが材料は無駄にある」

「チャム様、私は聞かなかった事にします」

「それは助かる」

「んじゃー見事に失敗してくれてやりますよ!」

「あぁ、存分に失敗しろ!」














 1週間後…………。



「おい」

「はい」

「これは何だ?」

「……ロングソードですね」

「そんなのは見ればわかる」

「なぞなぞですか?」

「中身は見たか?」

「………………見てません」

「いや、お前は絶対見たはずだ」

「言いがかりですよ」

「言いがかりもクソあるか!

 巨大顕微鏡の限界倍率にしても魔石限度数がわからなかったぞ!?」

「いやだなぁ……気脳全開(きのうぜんかい)使えば余裕でしたよ」

「いくつだ!」

「18歳です」

「こんな時にふざけるな!」

「12個っす」

「……本当は?」

「14個です」

「真実を言え」

「………………15個っす」

「…………」



 こんな事にまで俺のアレが反映されるとは思いませんでしたよ?

 んー…………なんて言い訳しよう?

 幸い剣の仕上がりに立ち会ったのは俺とチャムと――


「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」


 アレ(・ ・)だけなんだがな?


「じゅ、じゅ……じゅうごこだってっ……アハハハハハハッ!!」

「おい、デュートをなんとかしろ。

 うるさくてかなわんぞ」

「なんとも出来ません。

 強過ぎて敵わないんです」

「……で、この件は報告するのか?」

「しないで頂けると助かります」

「だろうな、お前に発注依頼が殺到しそうだ」

「さすがにそこまで暇じゃないですし、チャムさんへの修行もありますからね」

「何故かいいわけに使われた様な気がするが……?」

「そんな事ないですよ。

 誰かに言ったら修行は無しとかそんな事ないですよ。

 えぇ、断じて」

「……ちょっとした脅しじゃないか」

「ドーン君っ」

「…………曲刀だけ作りゃ良いんでしょ」

「さっすがーっ」

「あ、そういえば飛行魔石入ってるあの剣って、誰の剣だったんですか?」

「あぁ、あれはリュウリュウ殿の剣だ」

「へぇ……」



 飛行魔石を持ってるのか……やっぱりあのおっさんは要注意だな。

 まぁ、2000も経ってれば持ってる奴もいるだろう。

 なんたって1000年に1個のペースだろ?

 って事は後1個以上は出てる可能性があるよな……?

 いや、この2000年で黄金魔石も増えてるとしたら、もう少し出回ってる可能性もあるな。

 何にしてもリュウリュウは要注意だ。









 はい、久しぶりのアジトでございます!

 尾行が怖かったですが、信用されてるのか発見出来ませんでした!

 デュークが言うんだから間違いないでしょう!

 勿論、空からの尾行にも注意したぞ!


 久しぶりにリボーンもいたので現段階での全員集合って感じだ!


「――というわけで勧誘が出来る地位まできました、イェイ!」

「「「おめでとーっ!」」」

「まだ神者ギルドに入って1月も経ってないのに……師匠はホント素晴らしいですっ」

「普通の企業だったらありえないけど、実力主義ってとこが幸いしたな」

「カカカカカッ!」

「うん、リボーンがもし入ったらあっという間だ」

「レウス殿、(わたくし)はどうでござろうか?」

「ファンネルさんなら……部隊の序列3位を狙えるんじゃないですかね?」

「おぉ、もっともっと精進するでござる!」

「実際ファンネルさん徐々に強くなってるみたいですね」

「きゅっきゅいー♪」


 天狗スン激カワ。


「うん、スンとキャスカのおかげだな」

「ふっふっふ、神速のキャスカに不可能はない!」

「うん、スンのおかげだな」

「なんでだレウス!」

「はいはい、キャスカも頑張ってるねー」

「うぅ、雑に扱われた気分だぞ……」

「スン、手拭い」

「きゅぃ!」

「なははははは、レウスこれを見るのだ!」

「おま……ここで半ケツだすなよ……」


 はい、男性は俺以外目を反らしました!

 紳士の集まりで素晴らしいですね!

 皆がガチで想像してるのは知ってるから安心してくれ!


「ほお、尻尾が5センチ程しか出てないな?

 ちょっとしたボンボンみたいだ」

「頑張ったのだ!」

「ふむ、これなら問題なさそうだな」

「剣士部隊とやらに入れるのか!?」

「まずケツをしまえ」

「…………はっ!!」

「今気付いたのかよ……」

「ちょちょちょちょちょっと毛づくろいをしてててくるのだっ!!」

「……行ってらっしゃい」

「お兄様、行ってあげなくて良いのですか?」

「俺が行ったところでどうにかなるなら既にそうなってるはずだろ?」

「……正論ですわね」

「テレスはどうするんだ?」

「行きたいのは山々ですが、ここも心配なので(わたくし)は残りますわ」

「申し訳ないな」

「うふふ、前にも言った通り、お兄様の為ならなんのそのですわ♪」

「良い妹をもって幸せもんだわ……」

「うふふふ……」

「ところでレウス、私達はいつからエヴァンスに行っていいのかしらっ?」

「ビアンカが1番だろうな……うーん、すぐに来ても構わんぞ?」

「やったわっ♪」

「レウス、なんでだ!?」

「俺の事を「ドン」、デュークさんの事を「デュート」と言える癖をつけてくれ。

 それとビアンカを姉と呼べる様にな」

「あぁ、そういう事でしたかっ。

 流石師匠でありますっ!」

「合格基準を出す審査員はスン先生にお願いします」

「きゅいっきゅ!」

「勿論皆の偽名も言えなきゃダメだからな」

「神速のキャスカに不可能はないぞ、レウス!」

「……先は長そうだな」

「そうそう、ケント君が作った気持ち悪い剣を持って来たんだけど……誰か使うかいっ?」


 気持ち悪いって言うなよ。

 泣いちゃうぞ?


「剣……でござるか?」

「ロングソードタイプだから、使うとしたらテレスかスンが良いかもしれん」

「魔石限度数15個だよっ♪」

「「「…………」」」


 この剣はどういった括りになるんだろうか?

 伝説の武器の次は究極武器で……究極の次ってなんだ?

 しかも究極の次の次の次位の段階だろコレ?

 …………案外デュークの言ってた「気持ち悪い」ってのが適当かもしれんな。



「こっちに戻る度に皆の武器を少しずつ作るから、材料の確保だけ頼むわ」

「わ、わかりましたっ!」

「さすがお兄様ですわ」

「パパって本当に…………ママの言ってた通りって感じよねっ」

「どう言ってたんだよ、ママ?」

ドン(・ ・)は変な人、これだけよ♪」

「……それだけじゃない事はわかった」

「あら、わかっちゃったかしらっ?」


 うむ、やはりビアンカはしっかりしてらっしゃる。


「ところでゴチョウ」

「なんでございましょうレウス様?」


 あ、ゴチョウは「様」付けが確定してるみたいで直せない……というか直さないみたいだ。

 こういう所は頑固なんだろう。

 あまり強制は出来んしな。


「マイガーの…………その口輪はなんだ?」


 黒い口の拘束具みたいなのつけてやがる。

 もちろんSM的なアレじゃないぞ?


「…………わふっ」

「マイガーなりの努力でしょう。

 問題がある様でしたら外させますが……?」

「いや大丈夫だが……んじゃあまだ3回残ってるのか?」

「いや、マイガーは既に2回失敗しているぞ」

「そりゃ必死になるわ……。

 ポチ達、疲れは感じてないか?」

「主に心配されるようでは我々もまだまだだな」

「あ、すいませんでした」

「……わふっ」










 はい、ビアンカをテイクアウトして神者ギルドへ参りました!


「初めまして、アンジーといいますっ♪」

「…………に、西の国の三つ子剣士」

「はいっ♪」

「妹のスーレも後日入隊予定ですが、現在身辺整理中なのでアンジーのみ連れて来ました。

 ジュリスに関しては忙しい様なので誘えませんが、かなりの戦力になるはずです。

 仲良くしてあげてください」

「ジェ、ジェ、ジェイドですっ!」


 もしかして、これがやりたいが為のこの名前か?


「ミナと申します、以後お見知りおきの程を……」

「はい、よろしくねっ♪」

「ドンさん、やはり私が序列3位というのは……」

「問題ありません」

「ありませんっ」

「ありませんっ♪」

「……はぁ」

「ふふふふ、ミナさんのそういう表情、僕初めて見ました!」

「ちょっと緩んだ顔も可愛いですね」

「なっ……か、からかわないでください!」


 こんな事を言ってもビアンカはちゃんと許してくれるんだぞ!

 マジで俺にはもったいないお嫁さんでございます。


「あははははっ、順調に人材確保も進んでるねっ」

「そうですねぇ……あ、そういえばデュートさんってリュウリュウさんに挨拶しました?」

「あぁ、本日はその事でお話がありお待ちしておりました」

「へ?」

「本日デュートさん、ジェイド君とお話がしたいとリュウリュウ様よりご連絡がありました」

「俺とデュートさんには連絡がないですけど?」

「ふふふ、先程偶然お会いしたのでしゅ」


 あ、噛んじゃった。

 言い訳用意しといて余裕ぶったのが敗因ですね。


「…………」


 ふむ、真っ赤な顔も中々可愛いな?

 兄貴、助けてやってくだせぇ!


「あはははっ、それじゃあアンジーちゃんも一緒に連れて行こうかっ」

「はーいっ♪」

「き、緊張しますぅ……」



 リュウリュウとデュークの対面か……面白そうだから俺も付いて行くか!

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