第九話「成長3」
半年経ったぞーい。
11歳になって身長は145センチ近く……かな?
変わった事?
そうだね、結構あるんだぜ?
前回に引き続いて黄金魔石の話からしようか。
半年、つまり6ヶ月だ。
6個生まれました。
■硬化の魔石
■スピードの魔石
■光の魔石
■パワーの魔石
■ハイスピードの魔石 2個
更に7つのダンジョンに潜った。
アタリは4つ……体感的には60%って感じだな。
手に入れた魔石がこちら。
■光の魔石
■スピードマスターの魔石
■パワーの魔石
■スピードの魔石
レアきました。
硬化とスピードマスター。
スピードマスターはスピード系の最上位の魔石だ。
当然俺が着けるぞ?
この前出た黄緑色の魔石は、誰に聞いても何の魔石かわからなかった。
チャベルンの装飾屋で聞いたところ、エルフの民ならわかるだろうとか?
ふむ、サブクエストが発生したわ。
当然そのスピードマスターの魔石のダンジョンの敵は……弱かった。
俺とスンの敵じゃなかった。
キャスカが苦戦する?
そんな感じのレベルだ。
そこのボスはおっきくて固くて黒い、巨人だった。
ゴーレムは茶色って固定概念があったわ。
黒いんだねこの世界のゴーレムは。
ダンジョンにはいつもマカオが懐中電灯役で付き添う。
魔物には手を出さないが、危なくなったら手を貸す役目だ。
今のところ、手を貸された事はないぞ。
巨人はキャスカ一人で倒させた。
危ない時はスンや俺がガードしてた。
その甲斐あって、キャスカは巨人の首を落とす事に成功した。
その瞬間ビビった。
巨人だよ?
血がブッシャーってなったわ。
あいつに血が通ってるなんて俺知らない!
巨人の首をギルドに提出したキャスカは、レベル55に上がってた。
おそらくキャスカの実力レベルは52、3位だろう。
産まれた魔石と、ダンジョンの魔石の中のスピードの魔石2個、パワーの魔石2個はビックスの店に売った。
スピードが5000レンジ、パワーが1万レンジ……合計3万レンジなり。 ビックスは俺がダンジョンに潜っている事に驚いていた。
そりゃそうだよな。
11歳はそうそう魔物と戦わないもんな。
光の魔石はチャッピーに頼んで、ユグドラシルの木でカンテラを作ってもらった。
台に魔石を固定して、その外側にスライド式のカバーを作った。
カバーをスライドさせると四方八方を照らせて、いらない時はそれを閉じる。
夜の読書なんかに便利だ。
マカオがいない時のダンジョン探索とかもできそうだ。
現状そんな事にはなってないけど。
懐中電灯より便利だし、戦闘で困ったら照らさず置けばいいしな。
このカンテラをもう一つ作ってもらい、キャスカにあげた。
相変わらず泣いてた。
鼻水もブッシャーだ。
さてここでステータス紹介だ。
誰が何の魔石を着けてるかはここで確認してくれ。
――パーティメンバー紹介――
名前:レウス
年齢:11歳
種族:ハーフエルフ
職業:魔物使い(剣士)
装備:ユグドラシルの剣・丈夫な服(青)・ブーツ(黒)・硬化のバングル(左)・ハイスピードバングル(右)・ハイパワーリング(左)・スピードマスターリング(右)
その他:大きな鞄・特製カンテラ
技:斬鉄剣
言語:人間言語・魔物言語・エルフ言語
レベル:74
名前:スン
年齢:約7歳
種族:スライム(緑)
職業:レウスの親友
装備:ユグドラシルの剣・ハイスピードリング(尾)・硬化のバングル(手形成時)・ハイパワーネックレス(首? 頭?)
技:酸・形態変化・スンアタック・大盾・斬岩剣
言語:人間言語・魔物言語・エルフ言語(どれも読み書き、ヒアリングのみ)
レベル:65
名前:チャッピー(スカイルーラー)
年齢:約3004歳(人間でいうところの17歳位)
種族:犬
職業:忠犬
装備:背中にレウスとスンが乗ってくれない・ハイスピードバングル(角)
技:咆哮・火炎・尾撃・わがまま・落胆・ユグ葉落とし・ユグ葉食い・他
言語:人間言語・魔物言語・エルフ言語・他謎
レベル:測定不能
名前:キャスカ
年齢:16歳
種族:人間
職業:神速、ようやく疾風
装備:ユグドラシルの剣・マント(黒)・ブーツ(黒)・ショートパンツ(青)・シャツ(白)・スピードリング(左)・ハイスピードネックレス(首)・スピードバングル(右)
その他:鞄・特製カンテラ
技:斬岩剣・鼻水・泣く・喚く・帰る
言語:人間言語・魔族言語(会話のみ)
レベル:55
名前:マカオ(騏驎)
年齢:5001歳(たぶん人間でいうところの35歳位)
種族:オカマ
職業:オカマ
装備:黄金のネックレス(首)・スピードリング(角)
技:神速(本物)
言語:人間言語・魔物言語・エルフ言語・他謎
レベル:測定不能
気付いた?
かなり変わってるっしょ?
キャスカが毎日、俺とチャッピーとマカオの話を聞いてたら、いきなり魔族言語喋り始めた。
最初は普通すぎて気付かなかった。
スンが「きゅきゅきゅきゅきゅ!?」とかチャッピーに言って、チャッピーが「あ、喋ってる」とかぬかしてきたよ。
次はマカオ。
今までダンジョンの中にある魔石の詳細文が、人間言語で書いてある事から、毎回ダンジョンに潜ってたらしい。
馬鹿らしいと思った俺が、マカオに人間言語の読み書きを仕込んだ。
そしたらマカオがお礼にって事でエルフ言語を教えてくれた。
読み書き会話バッチリな奴だった。
魔石鑑定に必要だし覚えておいて損はないだろう。
スンもチャッピーも習ってた。
流石なのかどうなのかわからんが、チャッピーは頭が良かった。
キャスカは現在、スンに魔族言語の読み書きを教わっている。
キャスカの相手する機会が多いスンは、キャスカとめっちゃ仲が良い。
アタシ妬いちゃうわっ。
スンの剣技が上達した。
岩もスパスパだ。
ある日の朝、「出かけて来る」という置き手紙(ユグ葉)だけ残して、夕方に帰って来た。
手にはブルードラゴンの首があった。
え、何この子、怖い。
とか思ってたら、襲われたそうだ。
仕方なく首ちょんぱしたってさ。
仕方ないなら仕方ないな。
偉いぞスン。
ところで何の用事だ?
謎い。
「きゅきゅ!」
可愛い。
ブルードラゴンの首でスンはレベル65になった。
因みにブルードラゴンは、青い身体の竜なんだけど、羽は無く飛ぶ事は出来ない。
ブルードラゴンなのに瞳は赤かった。
やべぇ、負けらんねぇ……。
俺の衣服を新調しました。
青い素材の服とブーツを黒にしました。
そしたらキャスカがショートパンツを青にして、ブーツを黒にした。
「ぐぐぐぐぐぐ偶然だなぁっ!」
とか言ってたよ。
んなわけあるかボケ。
俺が衣服変えたの確認してから、お前が服買ったの知ってんだよ。
んで、スンやキャスカに負けたくなくて、ある日俺は早朝に外出した。
俺だけ41だぞ?
やってられっか! って思って、チャベルンの北にある山まで来た。
チャベルンの町の魔物討伐依頼で、この山にいる魔物のレベルが高い事を知っていたからだ。
その中に見つけましたよ奥さん。
でっかい蟷螂!
どす黒い肌にキモチワルイ複眼。
蟷螂なのに鎌がねぇ。
鎌の代わりに、腕が両刃の鋼鉄の剣なんだ。
体長は7メートル位……え、怖い。
キラーソードマンティス、レベル74判定の魔物だ。
戦闘開始!
キラーソードマンティスが右手の剣を振りかぶり、俺がそれを受ける!
受けた後すぐに懐に入り込み、キラーソードマンティスの左腕を叩き斬った。
ナイス、ユグ剣。
どうやら俺は鉄を斬れる様になったっぽい。
斬鉄剣だ!!
これにはちょっと感動。
右腕で襲い掛かるキラーソードマンティス……だったけど、左腕が無くなったせいかバランスを失って空振り。
前方に上体を崩したキラーソードマンティスの背後に回り込んだ俺は、そのまま首をちょんぱ。
キラーソードマンティスの首、ゲットだぜ!
その流れでチャベルンで討伐依頼の清算と共に、レベル証を発行してもらった。
レベル74になりました。
因みに討伐報酬は5万7000レンジ……ごっつぁんです。
さてさて、チャッピー大先生との修行のお話ですよ。
ようやくチャッピーの顔が出現した。
これでデス○ムーアだ。
因みにチャッピーと戦う時は、両者とも魔石を外す様になった。
俺だけ多いしアンフェアだしな。
これにはチャッピーやマカオも感心してた。
だって修行じゃ死ぬ心配ないじゃん。
……多分ね。
噛み付き攻撃をしてくる時のチャッピーマジこえぇ。
牙がかてぇ……。
角がぁああああああ!!!
……初日はマジで死にそうだった。
あ、チャッピーの身体の中で一番固い部分はあの一本角だぞ。
その次に牙、その次に爪だ。
どうにかその角で剣を作れないかチャッピーに相談したところ、
「え、まじ勘弁」
だそうだ。
そりゃそうだわ。
スンも間も無く両手を攻略出来そうな感じだ。
キャスカは相変わらず左手に苦戦中。
がしかし、皆成長しとりますよ!
マカオとの修行ではアドバイスこそもらえるが、段階的なものがない為、なかなか成長を実感出来ない。
しかし、アドバイスが細かくなってきてるのは事実だ。
多分成長してるって事なんだろう。
2ヶ月位前かな?
警護兵を10人位連れて、ダニエルのおっちゃんがユグ木に来た。
警護兵10人は、チャッピーを見て死を覚悟したそうだ。
チャッピーはちょっと怯えてた。
「え、我……この状況、どうすればよかと?」
もうお前の口調については突っ込まねぇよ。
「あぁダニエルさん、いらっしゃい。
チャッピー、挨拶!!」
「やぁ、チャ、チャッピーだよっ☆」
……。
あれはあれで真面目なんだろうな。
「これが君が町に住めない理由か……」
「さすがにこいつは町には……ね」
「ハッハッハッハ、なるほどなるほど……娘に良い土産話が出来たよ」
娘いんのか?
紹介しろや。
警護兵の皆は全員腰を抜かしてたけど、次第にチャッピーと話すまでになっていった。
ダニエルはチャッピーとよく喋ってた。
チャッピーもダニエルを気に入った様だった。
大きい町の長には失礼かもだけど、ここら辺で一番美味いサウロスタウロスの肉をご馳走したぞ。
ダニエルはお土産を持ってきてくれた。
マカオには黒い鞍だ。
マカオはめっちゃ喜んでた。
スンには、俺がキラーソードマンティスと戦った山の麓に湧いてる天然水を、樽で持ってきてくれた。
重かっただろうに。
警護兵に感謝。
で、俺には松坂頭の肉を持って来てくれた。
まじダニエル神。
チャッピーのお土産がなかった為、チャッピーが少し拗ねたが、俺の松坂頭の肉を、少し分けてやったら速効で機嫌が治った。
半分にしても、チャッピーの舌先にちょろっとしか置けなかったけど、めっちゃうまいって事はわかったみたいだ。
はしゃぎ過ぎて火炎吐いた時は皆ビビってた。
キャスカも途中から合流して、なかなか楽しい宴会になった。
帰る時、俺からもお礼がしたかったので、ダニエルに1本、警護隊10人全員で1本の計2本のユグ枝をあげた。
本当は人数分あげたいところだが、チャベルンの経済が狂ったり、警護隊がだらけそうだったりっていうのが気になったので、2本にとどめた。
めっちゃ驚いてた。
でもま、チャッピーかマカオいないと採れないしな。
警護隊の皆は、それを売った金で、酒をかっくらうなり、女を買うなり好きにしてくれ。
その代わり、だらけるなよ?
前にチャッピーとマカオが模擬戦した時、落ちてきたユグ枝は残り8本。
使い道がないんだよなぁ……。
金に困る事でもあるようなら、その時売ればいいか。
「では、レウス君、キャスカちゃん、スン君、マカオ殿、チャッピー殿……また遊びに来るよ」
「はい、いつでも遊びに来てください」
「「「お邪魔しました!!」」」
ダニエル達は良い奴だ。
ああいう人達を大事にしたいもんだ。
そうそう、これと似た様な事がもう一件あった。
この前言ったかもしれないが、ダニエルの家に泊まった時、ベッドがめっちゃ気持ちよかったんだ。
ってわけで、エヴァンスの町でベッドを購入した。
ついでに耳栓も。
運ぶのをチャッピーに任せようと思ったけど、あいつはベッドを落とした上に踏み潰しそうだからやめた。
マカオに縄を括りつけて持たせようとしたら、
「あぁん……く、食い込むぅうううううっ!!」
とか言い出したからすぐやめた。
早速耳栓が役にたった。
と、いうわけで、一般人が荷馬車に乗せて持ってきてくれました。
事前にチャッピーの話を耳にタコが出来るまで話しておいたので、あまり驚かなかったが、それでもやはりビビってた。
まぁ、これは仕方ないだろう。
「いやぁ、たまげたよ……流石に半信半疑だったけど、まさかホントにチャッピーさんがいるとはね……」
「あれだけ言っただろうが……」
「マカオの事だけでも凄かったからね」
「褒めても何も出ないわよ~♪」
帰りに一般人にユグ枝をあげた。
相変わらず拒否してたけど、荷馬車の中に入れておいてやった。
……ベッドだ。
ユグドラシルの木にベッドがある!
素晴らしい。
その日から毎日、スンと一緒にベッドで寝た。
マジ気持ちいい。
疲れもめっちゃとれるわ。
今まで損してたな……。
約10年間野宿みたいな生活してた俺……。
さぁ、もうすぐチャッピーの爪の加工が終わるぞ。
これも楽しみだな!