第九十六話「異常」
いつも読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
プロローグ、他者紹介を含め100回目の投稿となります。これも全て読んで頂いてる皆様のおかげです。今後も頑張っていきたいと思いますので、是非とも応援等頂ければ幸いです。
脚を肩幅に開きバンザイして笑顔で凍ってるぞおい。
なんて体勢をチョイスしてんだこいつは……。
「……生きてるんですか?」
「勿論でございます」
「懐かしい……パパと同じ位会ってないわ」
「お腹の子供は?」
「……確かパパが亡くなってから流れたって聞いたけど」
「…………」
あーチクチク刺さるぜ……。
精神的にやられちゃったのか。
【あの……】
【何ですか原因殿?】
【グサグサ刺さるのぅ】
【……これどうやって氷に漬かってるんです?】
【自ら凍った後、微弱な気で氷を包んでおる】
【なるほど……それで保存が可能になってるのか】
【そういう事じゃ】
「ハティー様はレウス様の家を離れた後、15年程お独りで鍛練し、ギン様と会ってこの方法で自らの保存をしたとの事です」
俺が死んだ後、ギンに身体保存の方法を調べさせた……。
ギンが15年かけてそれを考えつき、その保存場所に同時進行中だった集落を選びハティーを呼んだって事か……。
「ハティーおばさんもアーク達と考えが一緒だったって事ね」
「斬新な発想だけどな……」
きっと、「レウスは転生したんだからまた転生するのだ!」とかの考えに至ったんだろう。
「レウス様、いかがしましょうか?」
「パパ、どうするの?」
「出し方はわかるんですね?」
「火で炙ればすぐでございます」
……それも斬新だ。
「パパ?」
「出したら辛い思いをさせてしまう……よな」
「……元の時代に帰る時?」
「あぁ、流石に連れていけないだろうからな」
「レ、レウス様……っ!?」
「へ?」
「氷にヒビが……」
……わお。
「レ……レ……レウ…………」
「嘘っ!?」
パリーンッ!!!
「レウスなのだーっ!!!!!!!」
「痛い苦しい死ぬぅっ!!」
力も強くなってる!?
15年の鍛練の賜物だってか!?
「待ってたのだ!!」
「火で炙る必要ないじゃないですかっ!?」
「わ、私にはなんとも……」
「レウスの声が聞こえたのだ!!」
「まぁじゃないと氷は割れないわな!」
「子供達が私に力をくれたのだ!」
「へ、流れたって聞いたぞ!?」
「身体の中に生きてるのだ!」
「抽象的なアレか!?」
「難しい言葉はわからないのだ!」
「きょ、強烈ねぇ……」
「む……お前、ビアンカか!?」
「ラーナです、ハティーおばさんっ♪」
「匂いがそっくりだぞ、お前ビアンカだろ!?」
「……嬉しいなぁ」
「あぁ、ホントそっくりだぞ」
「……本当にビアンカじゃないのか?」
「そうだ」
「レウスが言うなら信じるのだ!」
「レウス様、こちらは冷えます。
集落の方でお話しされるのがよろしいかと……」
「ありがとうございます」
はい、その集落の方とやらです!
広場の木製のテーブルと椅子をお借りしております!
「ハティー、実はかくかくしかじかなんだ」
「よくわからないのだ!」
「ですよねー」
「勇者ギルドが無くなったって事だけはわかったのだ!」
「んで今敵がいる」
「わかったのだ!」
「そいつらをなんとかしなくちゃチャッピー達を助けられない」
「任せるのだ!」
「よし」
「ちょっとパパ、それだけで良いのっ!?」
「これだけ伝えればハティーは大丈夫だ」
「そうなのだ!」
「…………」
「レウス様」
「どうしましたジンさん?」
「我々の集落もお手伝い出来る事があれば、なんなりと申し付けください」
「気持ちだけで十分ですよ。
ブラッディデビルの集落がここまで大きくなって……とても嬉しく思います」
「ギン様の意思、しっかりと伝えていきたいと思います」
「お願いします」
はい、アジトに戻りました!
「ぎゅいぃいいいいいいいいい!!!!!!!」
「カタカカカカカカタカタッ!!!!!!!」
「スン、リボーン、久しぶりなのだ!!」
「きゅいぃいいいいい!!」
「あ、ちょスン、やめるのだぁぁああああぁあぁあぁあぁあぁ!!!」
ビブラートさん、おかえりなさいませ。
約2000年ぶり〜。
「こ、こんなに素晴らしい事があって良いのでしょうかっ……」
「しかもハティーおばさん……」
「あぁ、俺より強いわ……」
「当然なのだ!
レウスを守る為に、子供達の力が私に変換されてるのだ!」
「「……?」」
【神、説明!】
【子供が流れた時に、ハティーの娘、息子の気と潜在能力がハティーに変換された様だの】
【また潜在意識的なアレですか?】
【ハティーという娘、子供の命を身体の中でちゃんと繋いでおる】
【って事は……?】
【ワシの力が戻ればその命を戻す事が可能だろう】
【そんな事ってありえるんですか?】
【ワシも初めて見たわい。
お主が色んな意味で異常な様に、ハティーはお主への愛が異常だ……子供同様な】
【魔物故、本能に忠実ってだけじゃないって事ですね?】
【無論それもあるじゃろうが、それだけではないとも言える……】
【…………良いナビゲートでした】
【そ、そうか――】
【交信終了!】
【……】
「――って事だそうだ」
「って事なのだ!
なはははははははっ!!」
「…………ありがとな」
「な、何故レウスが泣くのだ!?」
「……ありがとなぁ……」
「パパ……」
「師匠……」
「きゅいぃ……」
「カタ……」
「なんでだ!」
「あぁ、完璧だ」
「なんでなのだ!」
「良い発音だ……」
「なん、でなのだ!」
「あはは、懐かしいなぁ……」
「レウス、私に任せるのだ!」
「あぁ……感謝してる」
「そ、そうか!?」
「そ、そうだ!!」
「きゅぃー♪」
「カカカカカッ!」
「どうだラーナ、師匠は凄いだろっ?」
「えぇ……ママも幸せだったって事が手に取る様にわかるわ……」
おーし、気合い…………入れ直すぜ!!
「師匠……それで今後はどうするのです?」
「エヴァンスで剣士になるつもりだ……まぁもうなってるけど」
「なんとっ!?」
「パパ、どういうつもり?」
「顔が知られてない俺が神者ギルドに入るんだよ」
「功績を積み勧誘を待つ……と?」
「神者ギルドに入り、ここにダンジョン情報を提供する。
もしかしたら奥義書用紙もパクってこれるかもしれんぞ?」
「しかしそれは危険ではっ!?」
「2回死んだ俺を舐めるなよ?
臆病さなら世界一だぜ?」
「ハティー」
「私はどうするのだ!?」
凄いな……取捨選択が出来てる……。
いや、俺の話を聞く事が一番早く落ち着けると確信してるのか……。
出来た女房ですこと……。
「西の国だ……」
「戦士達の事か!?」
「あいつらやゴチョウとマイガーの子孫が気になる。
西の森が健在なら出来るだけまとめておいてくれ」
「任せるのだ!」
「スン」
「きゅいー!!」
「ここの連中を徹底的に扱いてやれ。
勇者ランキング20位台の実力者が数人現れればなお良しだ」
「きゅっきゅいー!」
「リボーン」
「カタカタッ!」
「大変だろうが頼みがある」
「カタッ?」
「あそこへ向かえ」
「カタカタッ?」
「そういうこった」
「カカカカカッ!」
「「魔人間親善大使が戻った」と流布すればおーけーだ」
「カタカタカタッ!」
「師匠……それはどこなのです?」
「すまんな、魔物と……俺しか行けない場所だ」
「では、何も聞きませんっ」
「ラーナ」
「……はい!」
「ジージ……大魔王とムースを探してくれ」
「……見つかるかしら?」
「変わってなければ大魔王は西の国を根城にしてる。
ムースはジャコールの南辺りを好んで生活してる」
「……正反対じゃないっ」
「あはは、頼むわ?」
「別に断らないわよっ」
「そういやジャコールはまだあるのか?」
「我々とは違う神者ギルドの反抗組織があります」
「まじか、協力出来るんじゃね!?」
「おそらく無理かと……」
「カタカタカタ、カカカカタッタッタッ」
「なるほど、魔王ギルドの生き残りの極悪人揃い……か。
とりあえずそっちは保留だな」
「師匠、私はどうすればっ!?」
「天老アーク!」
「は、はいっ!」
「お前に新たな任務を与える!」
「…………ごきゅっ」
「その名も…………中間管理職」
「……へ?」
1週間に1度、アジトで集まる日だけを決めて、俺はエヴァンスに戻った。
ラーナに貰った金だが、一般人にお礼のメッセージと共に50万レンジを送金しておいた。
なんか「!?!?!?!?」こんな感じのメッセージが届いたぞ。
エヴァンスの町で月3万レンジのアパートを借りたぞ。
多少の物価は上がってるみたいだ。
一般人の給料も少し増えてるみたい。
鍛冶用のハンマーとルーペを合計30万レンジで購入。
ヒューマンカードで一般人の知り合いに『ウェポンエンチャントを格安で行う』って触れ回ってもらってる。
50万のお礼は先行投資も兼ねてるのだ。
やはり一般人は知り合いが多かった。
既に予約も何件か入ってるぞ。
ケーツとリミにも連絡をとっておいた。
今回に関してはラーナ達との関係を伏せとこうと思ってる。
時期がきたら……かしら?
さすがに「何故黙ってたぁ!」とかにはならなそうだからな。
+1万8000レンジ(魔物討伐代)
+500万レンジ(ラーナからもろた)
-50万レンジ(一般人へのお礼)
-3万レンジ(家賃)
-30万レンジ(鍛冶道具代)
=418万8000レンジなり と。
■ドン
■剣士レベル:3
■残額:418万8000レンジ
現在はこんなとこか。
おーし……稼ぐぜ!
さーて、今日は剣士ギルドで装備の査定をしてもらってガッツリレベルを上げよう。
んで剣士ギルドについても色々調べてみよう。
…………待てよ?
俺のこの武器……査定してもらって大丈夫なのだろうか?
こういうのはテンプレだと……「盗品だ!」とか「これはあのレウスの武器!?」とかになる可能性があるよな?
んー、危険だよなぁ……。
まぁとりあえず行ってみるか。
はい、剣士ギルドです。
ふむ、見た感じこのヒューマンカード以外の文明レベルは……日本の昭和後期って感じかしら?
いや、電車とかの高速の移動手段は未だにないみたい。
俺が来た時代と同じで、六本脚の馬が車を引いてる。
魔物は…………やはりいない。
アークに話を聞いたら西の国の魔物は戦争の時にどこかへ逃げたんだそうだ。
ハティーに頼んではいるが、こっちが落ち着いたら神が言ってた通りゲブラーナに行ってみるか。
んー……さて、どうしたもんか……?
やはりこの武器の査定はやめとこう。
地道に金を稼いでいくしかないか……。
えーっと、魔物の討伐はーっと。
■トレントウォーク1体 5000レンジ
■ジャイアントフロッグ1体 6000レンジ
■レッドドラゴン1体 1万レンジ
けっ、まじでしけてやがるぜ……。
ん、こりゃなんだ?
「すみません」
「はい、なんでしょうか?」
「こっちの項目ってなんですか?」
「こちらは剣士ギルドが確認出来ていない情報の魔物ですね。
基本的に警備隊や民間から報告を受け、魔物討伐の告知をさせて頂きますが、不確定過ぎる情報ですと、いなかった場合クレームになってしまうので、「いるという保障はありません」という意味と、「注意勧告」の意味も含めて載せさせて頂いてます」
「正式な依頼ではないって事ですか」
「そうですね、これに対しての報酬は発生しません」
「うん、ありがとうございました!」
「ご武運を!」
ふふふふふ、良い事を聞いたぜ。
普通に強い魔物が載ってるわ。
その中で俺の目を引いたのがお馴染みのコイツだ。
■エヴァンス北東に「ショーグン」目撃報告有り
将軍の剣をゲット出来るかもしれんぞ!
んで、それを装備してから査定を受ければ結構なアレになるんじゃないか?
と、いうわけでショーグンを見かけたって場所、エヴァンスの北東でございます!
後は敏感なワタクシのお鼻ちゃんで探すというわけです!
はい無臭!
しかしなんか人間の匂いが……。
あ、やっぱり人がいた。
なんか……こっちに来ますね。
「お前もショーグン狙いか?」
お待たせしました、使いまわしキャラじゃない奴です。
人間……みたいだな?
薄い金髪で目が冷徹って感じ。
端正な顔つきなんだが……やはり目が鋭く怖い。
服も藍色の……なんか軍服みたいだな?
制服なのかしら?
何か腕章みたいのやら肩章みたいのがちらほら。
ボタンは銀色で……腰に長剣……ロングソードより細い感じだ。
んでコイツ……かなりつえぇな。
歳は28~32あたりか?
「あなたは?」
「……レッドという」
「もしかして……第6剣士の?」
「そう呼ぶ奴もいるな」
大体がそう呼んでるんだよ。
確かに瞳が赤いわ。
唇も赤い……うん、これは普通だ。
しかし何でショーグンなんかを?
武器の素材不足なのか?
「……で、お前は?」
「私はドンといいます」
「剣士レベルは?」
「さ、3です」
「……お前が?」
「剣士になったばかりなもので」
「ほぉ、野に埋もれてた才能……というところか」
「恐れ入ります」
「なるほど、それで手っ取り早く将軍の剣を狙いに来たか」
「ははは、お見通しですか」
「部下用の武器を集めるつもりだったが……面白そうだ、お前に譲ってやる」
「ありがとうございます!」
なるへそ、部下用ね……。
え、そんなに部下弱いの?
確かに剣士ギルドにもそこまで強そうなのはいなかったな。
案外簡単に神者ギルドに入れるのかしら?
まぁ実力では圏内だろうから……ゆっくり確実にいこう。
「……いたぞ」
「ですね」
うーん、いつも通り襲ってきたわ。
やはりブジン系は無理か。
「譲った代わりに何か一つ剣技でも見せてもらおう」
「……一つですよ?」
「あぁ、構わん」
あまり魔物臭のする技はいかんだろう。
かといってあんまり普通の剣技だと怒られそうだから……。
素手での……お久しぶりカマイタチ!
ヒュヒュヒュヒュ……。
「シャシャシャシャ……シャラップ!?」
「ほぅ、武器を使わないないのか?」
「使うほどじゃないです……よ!」
ヒュヒュヒュヒュ……。
「シャシャ…………ラ……ップ」
「ふん、あっけなかったな」
「レッドさんの方が簡単に終わらせられたでしょう?」
「褒めても何も出んぞ?」
「それは残念です」
「ではな……もしお前が神者ギルドに来た時はそれなりのポジションを用意してやろう」
「あはは、ありがとうございます」
意外な場所でコネをゲットしました!
ちょっと怖い人だけど……。
おし将軍の剣をゲットしました!!
■ドン
■剣士レベル:39
■残額:418万8000レンジ
報告したらこうなった!
おし、順調順調!
まだまだ頑張ります!
久しぶりにこれで終わるぜぃ!
おやすみ!!