第九十一話「第二部開始」
ヘル・デスもとい利休の訪問から約2年後だ。
俺のあの苦しいステータス更新は無意味だったんじゃないか?
まぁ無意味だとは思わないけどさ!
しかし利休の奴、俺の皮肉の仕返しとばかりに嘘付きやがったなおい。
あれから変化…………そうだな。
キャスカの出産は無事終わったぞ。
よく泣いてよく鼻水を出す男の子だ。
名前は「バンス」だ。
エヴァンスの町からとったぞ。
レウスにもキャスカにも「ス」が入ってたし、まぁいいかなーと。
結構明るい茶髪……金色に近い茶髪だな。
あ、ハティーが妊娠しました。
皆様の応援のおかげです!
ハティーは人化こそしてるが、身体の構造が人間と同じとは限らないから、10ヶ月程で産まれるのか不安でございます!
尻尾が生えてるのか耳があるのか、ウルフなのか……。
お腹が痛い毎日でございます!
で、今日はそんな私の大事な一日!
世界の理から外れた俺が挑む一つの挑戦!
成功したら皆に報告しようと思ってるんだ!
現在は俺一人!
場所は我が家の鍛治工房でございます!
武器にウェポンエンチャントする術は覚え、ある程度の武器なら作成可能の段階だ!
魔石限度数……4〜5の武器なら作れるかな?
え、そんなに簡単じゃないはずだって?
基本的に鉄から作る〜的なアレじゃないからな!
素材からの加工なら案外簡単なんだ。
むしろガルムには成長が遅いと言われたぞ!
1から作る技術はまだまだ勉強中だ。
んで、本日はウェポンエンチャントの逆、武器の魔石外しに挑戦します!
この世界で武器にエンチャントした魔石は外せないって「理」があるからな!
俺が鍛治の技術を理解してれば外せるんじゃね? って寸法だ!
ウェポンエンチャント自体が気と密接な関係でな?
右手に鍛治用のハンマーを持ち、左手に魔石を持つ。
この時気操作を使い魔石とハンマーを気で包む。
あのルーペを使い武器の中身を視認する為に、気でルーペを覆い確認。
武器の中身は魔石が泳いでる様な感じになってる。
その「空き」を目がけてハンマーを魔石に打ち下ろすと…………ウェポンエンチャントの完了だ。
ね、簡単でしょう?
んで、今回はその逆……武器の中身にある、「空き」ではなく、泳いでる様な感じの「魔石に対して」ハンマーを振り下ろす。
カーンッ…………コロッ
ほら武器の反対側から魔石が出てきた。
ガルムにはこれが出来なかったんだぜ?
魔石外しの技術を会得しました!!
さてこれを………………。
お待たせ。
俺の装備の公開だぜ?
装備
■竜剣レウス(納刀時左腰):ロングソードタイプ(右手)
エンチャント(完了):グロウストーン(★)10個
■竜の剣(牙)(納刀時背中):ロングソードタイプ(左手)
エンチャント(完了):グロウストーン(★)5個・回復・回復・回復・飛行
■冒険者の服(青)
■レジストマント(黒)
■ブーツ(黒)
■グロウネックレス(★)
■グロウバングル(左:★)
■グロウバングル(右:★)
■グロウリング(左:★)
■グロウリング(右:★)
な、スッキリしただろう?
身体の状態も現在これ位が丁度良いから。
これ以上は着けられなさそうだ。
あ、回復魔石はデュークがいらないからってくれたぞ!
いやー、笑っちゃうよなこれは……。
この装備で現在ガラテアやエミーダレベルってとこだろうな。
デュークやオーベロンには少し遅れをとるかもしれないってとこだ。
通常装備での強さ?
んー…………ミカエルよりやや強い?
その位かな。
もっと戦い慣れればデュークも倒せるんだろうが、生き死にの戦闘機会が少ないから、最強まではもう少しってとこだな!!
さて、皆に報告してくっかな!
離れに併設された鍛治工房から勇者ハウスへ……………………………………。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ………………。
雨が降りそうだな。
空から悪魔でも降ってくるのかしら?
ゴロゴロゴロ…………。
……へ?
ガガガガーーーッン!!!!
なっ!?!?!?
「いや、申し訳ない…………お久しぶり剣人君……」
「おい」
「ごめん……君、老衰で死ぬ予定だったのじゃが、ちょっと雷神と喧嘩してしまってのぅ。
平地に落ちるはずだった雷が君にストライクしちゃったわけで……」
「おいおいおい」
「………………」
「………………」
「………………」
「え、第二部ってこういう事?
流石に皆キレるよ?」
「………………」
「……また転生っすか?」
「えーっと……今ウチ停電しててですね……」
「…………」
「スタッフ一同、精一杯復旧作業中でして……」
スタッフって何だよ。
「あ、ちょっと待ってね、あぁ……うん……そうそう……「ストレンジワールド」の「レウス・コンクルード」って人。
うん…………そうそう、Ctrl押しながら「C」を押して……Ctrl押しながら「V」で貼り付け…………」
…………どんなシステムなんだよ。
「そう、で、範囲選択して……ドラッグ……うん……うん…………出来た?
……ふふふ、待たせたな剣人君!」
「…………」
「先ほど予備電源に切り替わって、キミの肉体の再生に成功した!
中身もコピペしたから問題ないだろう!」
「何でプロローグの時やってくれなかったんすか……」
「いや、その……初めての試みっす」
「生き返れるって事ですかね?」
「…………多分おそらくきっと」
「…………」
「…………」
「何か問題あったら全力でサポートさせますから覚悟しておいて下さい」
「はい」
「……お願いします」
「蘇生開始じゃ!」
ここから記憶ないわ。
目が覚めてみれば裸で草原…………おい、ここどこだよ。
【…………】
【聞こえてるんでしょう?】
【…………はぃ】
【ここどこっすか?】
【剣人君がいるストレンジワールドの…………2000年後かな?】
【…………】
【…………】
【とりあえず服って用意できますかね、かみさまよう?】
【少々お待ち下さいませ…………ぁ】
【今の「ぁ」が非常に気になるんですが?】
【その……ワシも一緒に2000年後に来ちゃってるもんで……】
【…………】
【そのアクセス制限解除のパスワードが…………変わってるみたいなんですね?】
【それ、察した方がいいですか?】
【……できれば】
【つまり今の神は……何も出来ないと?】
【…………はぃ】
【つまりこの2000年間、神が管轄してた……文字通り「全世界」が、神不在だったって事っすか?】
【あぁ……多分、副神が代行してると思います】
【…………どうすんだよこれ】
【ワシが天界へ帰れれば……なんとかなるかも?】
【可能性は0じゃないって事っすね?】
【おそらく……】
【それまでは神は役立たず……と?】
【ナ、ナビゲートくらいなら?】
【むっさいナビゲート・○クシーもいたもんですね】
【あの可愛さはワシには出せん】
【要求はしてないっす】
【しかし、老練な可愛さなら……なんとかいけるかもしれん】
【結構です】
【はい】
【まずは服だよな…………待てよ?】
【はい?】
【魔石も装備も一切無いって事か!?】
【そうですね】
【俺が作ったあの最強の剣もないの!?】
【そうですね】
【飛べないし回復力も人より少しだけ優れてるのみ!?】
【そうですね】
【レウス(強)が数話じゃねーか!?】
【そうですね】
【死ぬかもしれん……待てよ、身体の状態は…………あぁ、大丈夫だ。
気も使えるし、気脳全開も…………装備無しで……マイムマイム程か?】
【そんくらいですね】
【2000年か…………魔物の誰かなら生きてそうだから、まずはそれを頼るか……】
【流石ですね】
【ナビゲートする気あります?】
【もちろんじゃ】
【んじゃまず、人に見つからず服を調達出来そうな場所をお願いします】
【それはちょっとわからないですね】
【…………】
【…………】
【ナビゲートする気あります?】
【もちろんじゃ】
【どこへ?】
【天界へ行ける場所までじゃ】
【それ以外は?】
【…………】
【…………】
【…………】
【つまり……ただのコンパスって事ですか?】
【ワシは神じゃぞ?】
【じゃあ他に何が出来るんですか?】
【老練な可愛さ――】
【結構です】
【はい】
【ちょっと引っ込んでていいですよ。
何さらっとレギュラー狙ってるんですか】
【御用の際は……脳内――】
【知ってます】
【はい】
【…………】
【では……】
大変長らくお待たせしました。
さぁ皆、不本意ながら第二部の開始だ。
た、楽しみだなっ?
2000年後のガラードとか……もしかしたらスンとかもいるかもしれないぞ!?
まっ裸で申し訳ないが、まずは服を探させてくれ!
2000年か~……ハーフエルフの寿命分だから……アークやノエル……もしかしたらまだ生きてるかもな!
いや~たのしみだな~!
…………俺がいなくなった時間……キャスカやビアンカ、ハティーやラーナやレンやバンスはどう感じて過ごしたんだろうな。
申し訳ない気持ちでいっぱいだわ……。
辛かったし寂しかったんだろうな……。
……鬱だわ。
何とかして戻らないとだが、この時間軸? ではもうすでにその思いをさせてしまったから取り返しがつかない…………生きてる人や子孫に会ったら謝ろう……まじで。
……とりあえず獣か何かを探し、毛皮を用意して昔の俺みたいな格好を目指そう。
おのれまた修行編かよ…………だからほぼ3年間何もなかったのか……くそっ、忌々しい……。
エンディングのクレジットに出て来た壱弐参って奴……相当性格が悪いな。
おのれ……。
「何者だ!?」
「へ?」
「お前、そんな格好で何をしている!?」
一般人がいる……。
何か鉄の軽そうな鎧を着けて「槍」を持ってる一般人がいる。
……子孫か?
「質問に答えないかっ!」
あ、やべぇ、とりあえず言い訳…………。
「お、追い剥ぎに遭いました……」
「な、なんとっ!?
それは大変だったでしょう……」
良い人発見しました☆
「で、出来れば……何か着る物を貸して頂けないでしょうか?」
「あぁ、これは申し訳ない……10分程ここでお待ち下さい!」
「ありがとうございます!」
マジ良い人発見しました☆☆
約10分後…………。
「お待たせしました!
さぁこれを……」
「これは……」
「先祖の友人が好んで着用してた服に模したものだそうです」
「大事な物なんじゃ?」
「いやいや、申し訳ないですがウチはそこまで裕福でないもので、そんなボロ位しか……」
「必ず恩返しさせて頂きます」
「ははは、お気になさらず」
装備
■冒険者の服(超色落ちしてボロボロの青)
■ボロブーツ(カビが生えてる色落ちした黒)
これ俺の服ソックリだな?
手抜きか?
友人の服に模したって事は一般人が俺の服に似せたのをオーダーしたのかしら?
しかし2000年も残らないだろう?
保存に適した何かでもあるのかしら?
まぁ2000年後だから……こんな服やキャラの使いまわしが多発するんだろうな。
親しかった人が敵だったり、敵だったりした人が味方になったり、でもやっぱり敵になったり…………。
装備が整ったらなんでも来いや! って感じなんですがね?
「大丈夫でありますか?」
「あ、あぁ、そういえばここはどこら辺になりますか?
……頭を打たれ気絶していたので……ちょっと記憶がこんがらがってまして……」
ふ、この程度の言い訳ならお手の物だぜ!
「そ、それは大変ですね!
ここは大都市エヴァンスの町のすぐ近くですよ」
ほぉ、エヴァンスも成長したもんだな。
「すみません、旅人で何も手持ちがないので……。
腕に多少の自信があるので……何かお金になる様な仕事はないでしょうかね?」
「腕に?」
「えぇ、そこら辺の戦士には遅れはとりませんよ」
「むぅ、追い剥ぎは相当な手練だったという事ですね?」
あ、やべ。
「しかし戦士とは古い言い方ですねぇ……」
「へ、今は違うんですか?」
「今?」
あ、やべ。
「あぁ、長く人里から離れてたもので……」
「1000年程前から変わってるはずですが……?」
「と、年寄りが多い場所でしたからですかねぇっ?」
「そういう事でしたかっ、今は戦士とは呼ばず「剣士」と呼ばれてますよ!」
…………確かタイトルの「()」の中にそんな文字が入ってたな、おい。
タイトルに書いてあるのに剣士の「け」の字も出てこないと思った皆様、大変お待たせ致しました。
剣士パートの始まりです。
勿論、魔物も出ます!
今後も宜しくお願いいたしますm(_ _)m