悪魔の囁き
余命いくばくも無い男がいた
悪魔が男に囁いた
『君が死んだら恋人はすぐに君のことなど忘れ新しい恋人を作るぜ、もしずっと思っていて欲しいのなら魂の一欠を僕に預けるんだな』
恋人にいつまでも忘れないでいて欲しいと思った男は、悲しくなって魂の一欠を預けてしまった
男が死んだ後、恋人はいつまでも花を欠かさないでいてくれた
春には春の花、夏には夏の花を
時が経つにつれ男は恋人のその姿に心を痛めた
言葉を交わせない者をいつまでも思い続けるのは哀しく、それを見続ける男にも辛いことだった
男は悪魔に魂のさらに一欠を渡しお願いした
呪いを解きどうか僕のことなど忘れて新しい人生を歩んでくれるようにと
悪魔が呪いを解いて時が経った
それでも恋人は花を絶やすことはなかった