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18, Sunny Day Sunday

 選抜高校野球も終わっていよいよ全チームが夏の甲子園に向けて準備を進める時期、新入生歓迎ガイダンスが開かれた。3年生となった俺、吉野、部家と2年生となった4人の後輩の目の前には13人の1年生が並んでいる。この全員が入部すれば部員は一気に20人。一人残らずベンチ入り出来る。しかも女子の入部希望者もいて、やっと安川高校野球部にも女子マネージャーがつくことになった。

 

 ガイダンスでは過去の反省を活かし、全部員に対して厳しく練習を課し、最後の9人ででも夏の大会を戦い抜くという宣言が監督からなされた。去年の1年生(現在の2年生)による不祥事のことも同時に話され、発覚したら即退部、弁明の余地はないと取り決めた。今年の一年生は大人しい生徒が多く体も小さく弱々しい人が多い。もしもあのときの態度の悪いメンバーがいたらきっとまたいじめられていたに違いない。そう思うと、一旦廃部にしてあいつらを排除して本当に良かったと思った。


 1年生も含めて20人でのはじめての練習は、高齢の草むしりと石拾い、そして校歌斉唱。まだ校歌を覚えきれていない1年生もいるため練習の半分以上が校歌斉唱になってしまったが、それでもチームをひとつにするためには良い練習になったんではないかと思った。1年生の中には野球経験者もいるしそうでもない人もいる。野球経験者が2名以上いるため、試合や実戦形式の練習もできるようになった。2年生が率先して1年生の野球未経験者に教え、3年生は残り少ない高校野球を悔いの残らないようにしっかり自己管理する。けが人やマネージャーはサポートに回り、選手は余計な心配をする必要がない。理想的な分業が出来るようになっていた。

 

 冬の“自主トレ”によって、たしかに個々の力はついてきた。俺を含めて3人の3年生は体が一回り大きくなり、4人の2年生も、前までは毎日練習に来るという当たり前の行動ができなかったせいか、毎日練習したことで大幅にレベルアップしていた。

 しかし問題は試合観だった。慢性的に部員不足のこのチームは試合経験が少ない。いくら練習でできていても、試合になるとできなくなるということはアマチュア野球においてよくあることだ。それを防ぐために土日はもちろん、平日にも近所の高校と練習試合を組んで対応することになった。

 GWには愛媛に初の遠征も行き、また違う平日には、過去に監督が教えていた学校の教え子達が大学生となって時間があるということでチームを編成してくれて練習試合をしてくれるということもあった。


 しかし相変わらず俺の扱いは投手としてではなく外野手として、1番打者としてチームの中心にいろということだった。1年生の中には中学のときに比較的レベルの高いチームにいた投手が2名おり、監督が教え込んでいる部家と合わせて3人で投手継投を回す構想になった。あの豊田と俺が一緒に二枚看板と言われていた時期が懐かしい。新しい投手陣3人共、1年生の頃の俺の球速や球威に比べたらまだまだ。変化球だって、球種は少ないがキレが違う。もし俺のイップスが完全に治ったら、そこに入れる余地は十分にある。あと3ヶ月しかないが、しっかり治してまたマウンドに戻ってくる、そう強い覚悟で自主練習は続けた。もう監督からは完全に見放されているが、だからこそ監督の指導を聞く必要がなく、自分で自分の体をコントロールすることが出来る。まだまだフォームは固まっていないが、いけそうな気だけはしていた。

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