詠唱第一 英雄の伝説
今から3000年ほど前、まだ『魔法』が存在していた時代。
今の『魔術』とは形態が違い、魔術に必要な精霊との契約が必要なく、個人の体内にある『魔力』を使用して使うことのできる『魔法』。個人差はあれど、全ての人間が使用可能だった。
勿論才能によって力の強さは違ったが、最初は4つの自然属性の内の一つしか会得できないという点は、今の魔術と同じである。
自然属性とは、炎、水、風、雷の四属性。それと禁呪とされている『闇』、完全に先天性の『光』があった。
『闇』はさらに昔、魔王と呼ばれた災厄の化身が使用していた魔法で、圧倒的なまでの破壊を生み、術者ですらその力を使いこなすことはできず、魔法に心を喰われ、朽ちて死ぬとされていた通称『絶望の箱』。
『光』は、才能がある者には生まれたときから使用可能だが、そうでない者にはどんなことをしても使えない通称『聖者』の力。
この魔法の時代に、二人の男がいた。
二人は属性は違えど、魔法使いの中でも一・二を争う才能の持ち主であった。
風使いの名を『リンドヴルム』、炎使いの名を『バーニングラル』といった
彼らは幼き頃より共に過ごし、魔法の腕を競い合っていた。
しかし、あるとき、その日常はもろくも崩れ去る
リンドヴルム、通称『リヴ』はあるとき、小さな黒い箱を拾う。それはなぜかリヴの心をひきつけ、リヴは箱を開けてしまう。それが『絶望の匣』とも知らずに・・・・
箱から噴き出した黒い霧に包まれ、リヴは意識を失った
バーニングラル、通称『ラル』は、リヴの失踪を聞いて、すぐに捜索に向かった。
しかしどこを探してもリヴは見つからず、半ば諦めかけていた。その時、ラルは確かに見た。ずっと探していたリヴの姿を。そして、リヴの姿が異形と化しているのを。
最初は信じられなかった。リヴは、あたりまえのようにラルに攻撃してくる。脳裏によぎった可能性。それは『絶望の箱』だった。
必死の攻防の末、ラルはリヴを殺し、ラルは英雄として、リヴは魔王として、伝説に名を刻んだ・・・