第一話 俺の夢は地位向上
家に帰った俺を待っていたのは、説教という名のつらぁ〜い地獄だった。
人一倍心配性である母さんは、わざわざ玄関前で俺を待っていて、顔を見た途端に大声で怒鳴り始めた。
「あんたって子は本当にどうしてこうなの!? 少しはお姉ちゃんや妹を見習いなさいよ!」
散々怒鳴り散らして、今度は俺の二人の姉さんと妹のいいところを言い始めた。
確かに俺は、他の二人と比べてできが悪い。頭も悪けりゃ運動神経もゼロで、誰にも腰が低くてとても頼りない。家でもみんなに怒鳴られて、情けないの連発。
どうして俺はこうなんだろう。自分が嫌になってしまうわけが、毎日分かってしまう。
「……はぁ〜。まあ続きは後ね。とりあえず、さっさとご飯食べちゃいなさい」
*
キッチンに入った俺は、壁にある時計を見て絶句した。
今現在の時間は、七時十五分。部活をやっていない俺は、大抵四時頃には帰宅する。母さんが怒鳴るのも無理はないだろう。
四月の中旬でも、さすがにこの時間には暗くなってしまう。何故気がつかなかったのだろう。
「あ〜腹減った。いただきます……」
少し惨めな気分で、俺は用意された夕食を食べる。するとすかざず、エビフライを奪いに来る者がいるのだ。
「……おい麗華――れいか――、隠れてるのバレバレだぞ?」
机の下に気配を感じて、俺は小さな声でボソリと呟いた。と、同時にスルリと手が伸びてきて、俺の皿からまんまとエビフライを頂戴した。
「へっへっへ〜!! りょうちんは弱いから、エビフライすぐ取れるんだよねぇ〜♪」
――くそったれ。
小学二年生の妹にここまで茶化されて、黙っているような人間はいない。
俺は勢い良く椅子から離れ、たった一つしかないエビフライを取り返すために、麗華めがけて突進した。
「お前なぁ〜!! 少しは自分の兄貴を敬ええぇぇぇええぇぇえええ!!」
ゴン。
勢いよく突進したのも虚しく、麗華は即座に身をかわしてみせた。
おかげで俺は、向かいの机の脚に思い切り頭をぶつけてしまい、とんでもなく痛い思いをした。本当に許せない。
「……ったく、もういいよ。食いたきゃ食えよ。バカらしいったらありゃしねぇ〜!!」
ガツガツをやけ食いをした俺は、さっさとキッチンを後にした。胸の当たりがムカムカしくる。
こうなったら、明日もう一度あの不良グループに頼むしかない。あのグループに入り、自分の地位向上を、絶対に成し遂げてみせる!!