第7・5話
「……くそ」
第7話を投稿した俺は、素直に悔しいと思った。
「(俺一人じゃここまでの話は考えられなかった……。これは生徒たちが自分の意思で動き、成長に繋がった結果だ……)」
生徒たちが自分の意見を口にするときは、基本二人一組。
ペアで長めの会話に参加させ、読者に自然と名前を覚えてもらえるようにしていた。
クラウスとリリアは一人で会話に混じることもあるが、他のキャラより個性が強く、覚えやすい。
無料小説投稿サイトでは、多くの読者がキャラのビジュアルを頭の中で自由に想像してくれる。
そのため、一人ひとり特徴を説明しなくとも、クラウスは〝燃えるような赤髪〟だとイメージできる。
リリアはおそらく淡い桜色の髪だろう。
個人の性格がそのまま髪の色に反映される、わかりやすい暗号化だ。
「(俺が書こうとしていた作品のイメージとはまったく違う……。でも、これはこれで悪くない……)」
俺はいつの間にかキースというキャラクターが好きになっていた。
このまま死なせるには惜しいと思うほどに……。
拷問で苦しませるなんてもっての外だ。
「(これでキースを死なせたら、読者はがっかりするだろうな……)」
ティゼルと対決させるのは、やめておいた方がいいのかもしれない。
仲間に加えるのはさすがにやりすぎだが、読者はきっと二人の和解を望むだろう。
「……明日が楽しみだ」
気づけば俺はこのシナリオのファンになっていた。
続きが気になって仕方がない。
俺は一応の続きを考えながら仏壇の前に移動した。