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事件の結び

 翌日。頭痛にさいなまれながらも、僕は生きていた。


 防護服を着た看護師の女性がやってきた。


「百瀬七海さんが逮捕されたそうよ。父親が昔黄熱の研究をしていたらしいわ。そこから黄熱ウイルスを持つネッタイシマカを12匹盗み出して、メガネケースに忍ばせたって。4匹は捕獲されて国立感染症研究所に送られたんだけど、あとの8匹はまだ行方不明。おかげで日本中は大混乱だわ」


 なんてことをやりやがったんだ。


 さらに、看護師さんは一枚の手紙を見せてきた。


「百瀬さんからあなたへのお手紙なんだけど。読みたい?」


「……いえ、いいです」


「……了解」


 看護師さんはゴミ箱に丸めて捨て、去っていった。


 どうせあの紙には、ろくでもない殺人動機やら僕を巻き込んだ謝罪やらが書かれているのだ。


 七海からの恋心は最近少しずつ感じていた。健斗が割と相手を突き放すようなタイプだから、嫌気がさしたのかもしれない。


 でも僕は氷雨一筋だった。七海だって可愛いのだけど、時々明るい性格の裏に闇が垣間見えることがあった。


 多分七海は、まっすぐな氷雨に嫉妬していたのだと思う。


 黄熱は致死率100%の病気ではない。ちょっと苦しめてやろうぐらいにしか思っていなかったのかもしれない。


 でも僕は一生涯許すことはないだろう。


 一生涯……って何だ? 死ぬまでのことか?


 いや、死んでからもずっとだ。魂が消えてもずっと、氷雨を奪った七海のことは許さないだろう。


 額に手を当てる。また熱が上がってきたのを感じた。一部の皮膚が黄色くなっている。これ、相当重症なんじゃないの?


 急に気持ち悪くなってきた。ナースコールに手を伸ばす。伸ばすのだけど……届かない。


 頭がフワフワして、何も考えられなくなった。


 突然、目の前が真っ暗になった。


(了)

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