表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アナテマ・メサイア  作者: 明星ナル
第一章「罪ノ神、邂逅」
7/20

第七話「絡み絡む」

スラーコーポレーション。大企業オリュンポス社から独立した企業として

名前が知れ渡っている。ここに足を運んだお偉いさんはまさかの連邦の政治家。

それも特に強い権力を持つ政治家の一人だ。第五等星に座す人物。

名をエラン・クレスウェル、彼が暗躍を始める。独立したこの企業は

私兵部隊を擁している。エランともう一人、第六等星に座す政治家に託された

仕事は徹底した隠蔽工作である。この企業も隠れ蓑でしかない。秘密裏に

行方が分からなくなってしまった、とある研究資料を探しているのだ。

そして邪魔になる姿を消した国主アローゼ・グリフィンの行方も密かに

捜索している。気に入らなかった。自分より年下のくせに、実績も無いくせに

下民たちは皆、彼に信頼を寄せる。


「あの生き残りも、小僧の捜索を依頼されて動き出したか。ふんっ、

大企業の社長も堕ちたものだな」


アリア・ローゼンクロイツ。旦那から継いで社長となった彼女を嘲る。

彼女のことも抹殺対象である。彼女の旦那は消えた研究資料を隠している

可能性があったが、真相を知る前に病死している。ならば妻であるアリアが

情報を引き継いでいる可能性が高い。なんとしても資料を見つけ出したい。

手柄が欲しいのだ。この地位を守り続けたい。




「―で、ご存じないでしょうか?」


色んな人に声を掛け続けて今に至る。誰もかれもが、そんな人は

知らないと告げる。相手の名前をサロメア・キュルイアという女性。

彼女こそがウォーダンという老人が探している女性。彼から預かった

手鏡の本来の所有者だ。


「ここ…だよね?ここ、廃墟じゃない」


書かれていたウォーダン自身の住所に足を運ぶも、もぬけの殻だ。

誰もいない。空き家となっている。聞けば、一か月前に住んでいた住人が

引っ越したらしい。だが妙だ。


「その引っ越した人、この人ではありませんでしたか?」

「いいえ。眼帯なんてしてなかったわよ?女性だったし。研究員らしいわよ。

最近できた…えっとぉ…なんだっけ…」

「スラーコーポレーション、ですかね」


そう言うと女性は頷いた。この辺りにはその企業があるために、働く

職員が多く住んでいるようだ。不可解なことが起こっている。ここの

住所であることに間違いない。しかしここには女性が住んでいた。

ウォーダンでは無かったのだ。矛盾が生じている。


「あのおじい様、詐欺師とは思えないのよねぇ…」

「何かを伝えようとして、回りくどい手を使ってるとか?」


もう彼に会えないかもしれない。さて、どうしようかと次の行動について

考える。手鏡の持ち主すら実際に存在するか否か不安になって来た。

ピンッとジークリンデの第六感が何かに気付いた。どこかから視線を

感じる。


「ちょっと…」

「?」


ジークリンデはミッシェルに頭を下げるように指示をする。可能な限り

口を開かない。不思議に思いながらもミッシェルは指示に従った。

物陰に隠れて、ジークリンデは一定の方向を凝視する。


「私たち、狙われてる気がする」



ジークリンデたちが身をひそめる場所から十キロメートルほど離れた高層ビル。

ふく射姿勢でスコープを覗く女は構えを解いた。これは、もう無理だ。

完全に気付かれてしまった。エラン・クレスウェルに雇われた人間。狙撃手

アゼリアという女。彼女は舌打ちする。


「何よ、あの女ぁ!クッソ、あのジジイに騙されたわ。どんくさい奴だって

聞いてたのに…」


狙撃手として最悪の失敗をしてしまった。標的に存在を知られてはならない。

アゼリアの手の甲にはどこかの組織の紋章がタトゥーとして刻まれている。

その組織はデウス・ウルト作戦に大いに関係があると同時にあちこちに太い

パイプを持っている。それこそ、連邦政府よりも強い権力を持つ星連艦隊にも

近しい組織にも。


「お前の腕は悪くないよ、アゼリア。ありゃあ、噂通りのずば抜けた第六感が

あっての反応さ」


アゼリアの師匠である壮年の女。彼女はかつてデウス・ウルト作戦に参加

していた。エリーゼという名前の彼女は弟子と違って依頼人の話だけでなく

独自に情報を収集して仕事に挑む。エリーゼは溜息を吐いた。


「何度も教えただろ。自分でも標的についてじっくりと調査すべきだと」

「はぁい…」


パヴァリア教団という組織、それこそが彼女たちの属する組織だ。

メシアの碑文を否定する組織。アクネストという星元来の神を信仰するのだ。

他にも同じ目的で動く組織がある。

なんとスラーコーポレーションは裏でこの組織とも繋がりを持っていたのだ。

パヴァリア教団は他にも裏で繋がりを持つ企業や政治家たちが多いとみて

良いだろう。アゼリアたち以外にもジークリンデたちを狙っている人物がいる。

その男は元軍人、エラン・クレスウェルよりスカウトを受けた。直接依頼を

受けたのだ。


「殺しの依頼?俺、殺し屋じゃないけど…」

「軍人だっただろう。人を殺す訓練だって積んでいるだろう。それを実践しろ、

そう言っているんだ」


ゼノ・トリプレット、あーあ面倒な奴に捕まっちまったなと思いつつ

どうにかポーカーフェイスを作る。上っ面では従順を装い、標的について

聞くとすぐに裏切る準備を開始するのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ