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アナテマ・メサイア  作者: 明星ナル
第一章「罪ノ神、邂逅」
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第六話「第二の首都へ」

『今日、正式にスラーコーポレーションが設立されました。この企業は

オリュンポス社から分離した企業で―』


ニュースで大々的に取り上げられているのは新しい企業の話。オリュンポス社

という大企業から分離、独立した企業で既に名前が知れ渡っている。

隣でボーっとテレビを見ているミッシェルは未だに寝ぼけているようだ。


「朝、早いのねぇ…」

「そういう仕事でしょ、パイロットって。普通は寮にいるものだしさ。

私は絶対に嫌だね!訓練とか、マジ無理ぷー」

「へぇ、運動が苦手なのね?」


事務所のインターホンが鳴ったので応答する。扉を開けると隻眼の老人が

立っていた。どうやらジークリンデの噂を聞いて、依頼をするために

来たらしい。ウォーダンと名乗った老人から話を聞くことにした。


「これは?」

「この鏡、借りたまま返し忘れてしまってのぅ…。持ち主を探して儂の

代わりに返して欲しいんじゃよ。ちと遠くに行かなくてはならなくてな」


よっこいしょと老人が立ち上がった。どうやら彼は元々艦隊の指揮官を

していたらしい。


「艦隊って?」

「アクネストに瓜二つの名も忘れ去れた星を観測する星連艦隊というのよ。

結構権力があるのよね…。連邦には上空都市があるのは知ってる?」

「あそこ凄いよね。上にあるのに、こっちの日光は遮らないとか」

「エーテルを利用して、最新技術をフル稼働してるの。実際にあそこには

本物の太陽は無いわ。人為的に天候が操作できるの。基本的にはこちらと

あちらで天気は変わらないのよ。お互いに不干渉で、連邦政府は上空都市を

支配する艦隊に命令を出したり、むやみに彼らのやることに首を突っ込むことが

出来ないわ」


連邦政府とは異なる艦隊によって支配されているのが上空都市。滅多に

行くことなんて無いだろう。連邦政府と星連艦隊との間には不可侵、不干渉の

契約がある。立場としては後者の方が何故か上らしい。大人同士、政治家同士、

読み合いがあるようだ。


「報酬はこれでどうかね」

「これって?」


老人ウォーダンが手渡したのは、とある書類の入った封筒。


「開けても?」

「まだ。駄目じゃよ。儂が許可するまで、それは開封できぬ。そういう

魔法、儂、得意なんじゃ」


ウォーダンはにこりと笑った。契約や秘密にまつわる術を彼は得意と

しているらしい。その技術を買われて、艦隊に入ったとか。機密事項も

多いので、他人にどんな仕事だったか話すことは無い。

彼は不意に机の上で指を滑らせる。妙な印を指で描いた。


「この話は必ず、時が来れば必ずお前たちの為になる。覚えておきなさい―」


眼帯の奥、機能しない右目が青く輝いたように見えた。空間が変化する。

事務所の一室から宇宙空間へ。高密度なエーテルを感じる。本来、互いの

距離が遠いはずの惑星たちが近距離を保っている。ゆっくりと回転し、

近づく星の名をジークリンデが口にする。


「―海王星」

「ほぅ、詳しいな」

「なんとなく、ね。夢や幻想、無意識なんかも象徴する星とされている。

ミッシェルは知ってる?」

「勿論。あたし、これでも占い師よ?」


占星術も学んでいるらしい。ミッシェルはまだ自覚していない。

ジークリンデは彼女に眠る光を感じ取っていた。それこそが彼女の才能。

才能、祝福である。


「地球はアクネストであり、アクネストは地球である。数多の真相を

知る男は、お前たちの旅の果てにて待っておるぞ。お前たちが計画も

艦隊の裏の顔も暴くことを、待っておる―」


瞬きをした。元の、見慣れた部屋。もうそこに老人の姿は無かった。

依頼承諾書。依頼人が書くべき部分は全てボールペンで記入済み。

そして老人曰く時が来るまで如何なる方法でも開封できない封筒も

そこに置かれていた。依頼書の上に、例の手鏡が置いてある。

深い青緑色の鏡。まるで海の中のようだ。

ジークリンデは手鏡をミッシェルに手渡した。


「私が持っていて良いの?」

「うん。なんだか、ミッシェルが持っていた方が良い気がするの」

「分かった。私が責任をもって預かっておくわ。それで、探偵さん。

探す当てはあるのかしら」


ジークリンデのことを探偵と呼んだ。呼ばれた本人は満更でも

無いようで、普通に話を進める。


「ウォーダンさん。艦隊の指揮官だったらしいし…。この住所」


連邦エードラム市ではない。第二の首都と称される場所。マゼラン市と

いう場所だ。昔から住んでいるのなら、誰かがウォーダンという男と

仲が良かった女性について知っているかもしれない。


「旅日和じゃない?今日の天気」


本日の天候、雲一つない晴天。暫く雨の予報は出ていない。目指すはここ、

エードラム市に隣接する第二の都市であるマゼラン市。そこでは

ジークリンデの探偵業だけでなく、どうやら過去にまつわる騒動も

起こるようだ。



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